暗殺聖闘士   作:挫梛道

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E組の時間:2時限目

「「「「「「「……………。」」」」」」」

   

ぐぃ…

 

殺るか、否か?

E組全員による意思確認の後、ダメージにより動けない殺せんせーの身体を、多数の触手を、E組の全員で抑え込んだ。

2学期期末テストの結果に、御褒美として殺せんせーが彼等に教えた自身の弱点。

 

◆殺せんせーの弱点◆

全員で体を押さえれば、捕まえる事が出来る!

  

殺せんせーはスピード特化で、(パワー)自体は実は大した事は無い。

一見、パワーも凄そうに見えるが、それはマッハのスピードによるパフォーマンスで、そう見えていただけ。

…らしい。

 

「「「「「「………。」」」」」」

だからこそ、教えられた当初は、「だから その、抑え込むのが とりあえず無理ゲーだろうが!? 巫山戯るな このタコ!!」と、有効策扱いされなかった その弱点。

だが今は動けない殺せんせーに、E組一同は今がチャンスとばかり、全員で その身体を抑え込む。 

 

「ヌルフフフ…どうしましたか、皆さん?

押し付ける力、余りにも弱いですよ?」

しかし まだ迷いか遠慮が有ったのか、申し訳程度に押さえていただけの手。

 

「「「「「「…!!」」」」」」

 

ぐいっ…!

 

「そうです。それで良い。」

しかし殺せんせーの言葉に、それは間違い…1年間 自分達を導いた恩師に対して不敬と気付き、その手に力が入った。

 

「心臓…」

「ネクタイの…下…」

「最後は…誰が…」

そして注目される、殺せんせーの胸元、心臓…急所。

最後の一手を、誰が実行するかという段階に到達した時、

 

ザッ…

 

「…僕が、殺るよ。」

1人、それに名乗り出る者が。

 

「皆…お願い…」

「誰も文句なんて無ぇよ。」

「クク…逆に、他に誰が居るってんだい?」

「…確かに、な。」

「まぁ、妥当っしょ? このクラスじゃ…」

「渚君…キミがナンバー1だ!!」

「皆…ありがとう。」

そして それに反対する者は、この場には誰1人として居なかった。

 

「いよいよ、ですね。

しかし その前に、君達の これから先の長い人生、それを歩んで行く為のアドバイスをしてあげましょう。」

 

≫≫≫

「「「「「「長いんだよ!!」」」」」」

「にゅやっ!?」

…それからの殺せんせーの話は長かった。

要約すれば、

 

 

自分達は この先、様々な社会の理不尽に遭うだろう。

しかし それで社会に原因を求めては いけない。

社会を否定しても いけない。

それはハッキリ言って、時間の無駄。

そういう時は、『世の中そんなもん』と割り切り、そんな世の中を如何に上手く やり抜くかに思考を切り替えろ。

そうして殺る気を棄てずにいれば、いつか必ず、良い結果に結び付く。

…その方法は、既に教えている。

 

 

…な感じな良い話だったのだが、その余りにも長過ぎる…例えば その都度、響や寺坂、前原辺りをキャストにした具体例な長話に、総ツッコミを浴びてしまう殺せんせー。

 

「にゅ…それでは改めて、いよいよです。

本当は1人1人に、最後の…個別のアドバイスをしたいのですが、流石に それは時間が有りません。

その辺りは教室に置いてある、私特製の卒業アルバムに記しているので、そちらを見て下さい。」

「「「「「「「「……。」」」」」」」」

E組一同は確信する。

殺せんせー特製卒業アルバム。

恐らくは修学旅行の時の特製栞…或いは広辞苑すら霞む程の、完読するのに どれ位の時間を要するか予測可能な程の、大層ページのアルバム。

しかし それは、前にE組だけのアルバム作りの話を聞いた時から皆、ある程度の予想はしていたので、今更それについては誰も指摘する事は無かった。

 

「…それでは! 最後に出欠を取ります。

名前を呼ばれたら元気に返事!

全員が返事出来たら殺って良し!!」

 

「「「「「「…。」」」」」」

 

ドクン…ドクン…

 

生徒達の鼓動に緊張が走る。

 

「…その前に、烏間先生とイリーナ先生?」

「「…?」」

そんな空気な中、殺せんせーは烏間とイリーナに首を向け、

 

がくっ…!             

  

その緊張感を崩され、生徒達は大いにコケた。 

 

「ヌルフフフ…イリーナ先生?

貴方は この暗殺に、参加しないのですか?

もう賞金には、興味が無いと?」

「…クス♪」

この質問に、イリーナは小さく笑うと、

「ガキの手柄の お零れを貰うなんて、そんな恥ずかしい真似は出来ないわよ。

この暗殺は、ガキだけで完結させるのに、意義…意味が有るのよ。」

「ヌルフ♪」

この受け応え。

それに殺せんせーも、嬉しそうに微笑んだ。

 

「…それに私、もう殺し屋は引退してるし♡」

「ヌルフフフ…そうでしたね。」

「…………………。」

そして続く言葉に、更に顔を綻ばせる殺せんせー。

この遣り取りに、少し複雑な表情を浮かべているのは烏間。

生徒達も その意味は理解しており、普段なら「ひゅー♪ ひゅー♪」と捲し立て囃し立てるのだが、場の空気を読み、今回は自重。

   

「そして、烏間先生?」

「…。」

続いて その烏間にも、殺せんせーは話し掛ける。

 

「貴方には本当に感謝しています。

貴方が居なかったら、彼等に此程迄の成長は無かったでしょう。

…しかし、彼等は まだ若い。

願わくば、これからも彼等の相談に乗ってあげて下さい。」

「…ああ、任された。

心配するな。彼等は俺の、教え子でもあるからな。」

この殺せんせーの申し出を、烏間は嫌な顔をせずに了承。

 

「…全く、お前には色々散々と苦労させられたが、それも今は、笑える思い出だ。

この1年間の事は、一生忘れないだろう。

さよならだ…殺せんせー。」

「ヌルフフフ…初めて その名前で、私を呼んでくれましたね?」

「…フ…ン…!」

それは同僚への、最後の感謝の気持ちの表われだったが、やはり少し照れが有ったか、そのニヤけた返しに烏間は顔を背ける。

  

「…お待たせしました。

それでは改めて、出欠を取ります。」

「「「「「「「「…。」」」」」」」」

再び周囲に、緊張が走り、

「…って、まさか、もう帰った人なんて居ないですよね?

このタイミングで返事が無かったら、先生ショックで自殺しちゃいますかr

「「「「「「「「「早よ言えっ!!」」」」」」」」」

またも場の緊張が壊され、再びの総ツッコミと、

「渚、退いて!」

「このタコ、やっぱり俺が殺って殺る!!」

「ぁ、余りの段取りの悪さに、委員長ズがキレたぁ?!」

「ふ、2人共、落っ着け!」

渾沌(カオス)が、その場を支配するのだった。

 

≫≫≫

「…それでは本当に改めて、」

その後、何とか委員長ズの怒りを鎮め、本当に最後の出欠を取り始める殺せんせー。

 

「赤羽(カルマ)君。」

「…はい。」

「磯貝悠馬君。」

「はい。」

「岡島大河君。」

「はい。」

「岡野ひなたさん。」

「は…ぃ…」

「奥田愛美さん。」

「は、はいっ!」

岡野は半泣き。

普段の元気者の面は消えており、まともに返事が出来ず。

逆に何時もは控え目な奥田は、無理に声を出して自分の名を呼ぶ声に応える。

 

「片岡メグさん。」

「はい…」

「茅野カエデさん。」

「…はい」

「神崎有希子さん」

「はい。」

「木村正義(ジャスティス)君。」

「はい!」

「吉良響君。」 

「…〜っす。」

「倉橋陽菜乃さん。」

「は、はぃ〜…」

()()を呼ばれた木村は力強く、響は普段通りな返事。

倉橋は涙を堪えきれず、喉から声を絞るかの様に声を返した。

 

「櫻瀬園美さん。」

「はい。」

「潮田渚君。」

「はい。」

「菅谷創介君。」

「…はい。」

「杉野友人君。」

「はい。」

「竹林孝太郎君。」

「はい。」

「千葉龍之介君。」

「はい。」

「寺坂竜馬君。」

「………応っ!」

「中村莉桜さん。」

「はいは〜ぃ♪」

寺坂は普通に返事をするか迷ったのか、僅かな間の後、普段通りな強気な返事を。

そして中村は迷わず、畏まる事無く普段な返し。

 

「狭間綺羅々さん。」

「…はい。」

「速水凛香さん。」

「…はい。」

「原寿美鈴さん。」

「はい。」

「不破優月さん。」

「はいっ。」

「前原陽斗君。」

「…はい。」

「三村航輝君。」

「はい。」

「矢田桃花さん。」

「…はい…!」

「村松拓哉君。」

「応よ。」

「吉田大成君。」

「は…ぃ…」

矢田も既に涙を堪えきれず、吉田も普段の強気な性格(キャラ)が潜み、泣き出す寸前となっている。

 

「自律思考固定砲台…律さん。」

「…はい。」

そして律。

その目から流している涙は、転校初日の夜に施された殺せんせーの魔改造による、自我に目覚めた感情からの物。

  

「堀部糸成君。」

「…はい。」

「宜しい。皆、此処に居る様ですね。」

最後にイトナの返事を聞き、満足と…本当に途中で帰った者が居ないか不安だったのか…安堵の笑みを浮かべる殺せんせー。

 

ㇲ…

 

そうした中、渚が殺せんせーの体に跨がり、ナイフを構えた。

 

ㇲ…

 

そして そのナイフをネクタイの三日月に近付け、心臓に狙いを定める。

遂に()()()が訪れたのだ。

 

「「「「「「「「…。」」」」」」」」

E組一同、全員に この1年間の記憶が走馬灯の様に巡り巡る。

 

ドクン…ドクン…ドクン…

 

皆が鼓動を高く鳴らし、弱冠 顔を青くして、冷や汗を流す。

 

ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク…!

  

その中でも一番、心臓を高く早く鳴らし、顔をあおざめさせているのは、やはり渚。

 

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク…

 

通常 片手持ちのナイフの柄を両手で確りと握り絞めた その手も、震えが止まらない。

 

ハァーッ ハァーッ…

緊張から呼吸も荒くなり、迷いを消すかの様に、その眼には狂気が…しかし同時に、恐怖と悲哀が宿る。

 

ドクドクドクドクドクドク…

 

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク…

   

やがて その鼓動と震え、緊張は最高潮に達し、

 

ギュッ

 

改めてナイフを力強く握り直し、

う、があぁあぁぁあぁぁあっ!!

眼には涙を溜めながら、鬼の如くな雄叫びと形相で勢い良く、両手持ちのナイフを振り上げ、そして振り落とす。

 

ガシ…

 

ピタ…

 

ギュ…

 

「…?」

「…ダメだよ?」

「違うだろ?」

「いけませんね、そんな感情(きもち)で殺そうとしては。」

しかし その直前、カルマか゚ナイフを握った両手を掴み、殺せんせーは触手を首筋に当て、超振動マッサージでもしたのか、渚の精神を落ち着かせた。

 

「カエデ…?」

そして茅野は、背後から渚の体を抱き締めていた。

  

「ほらほら、そんな怖い顔しない。

さ、笑顔の練習♪ にぃ〜♡」

「??!」

渚の正面に回り込み、両の人差し指で渚の唇を釣り上げる茅野。

 

「憎くて殺す訳じゃないだろ?

小動物が らしくない、憎悪剥き出しな顔してんなよ。」

「…うん!」

カルマも笑いながら、普段の からかう調子で渚に話し掛け…この2人のアクションで緊張が解かれたのか、渚も笑顔で それに応える。

 

「…さよなら、殺せんせー。」

「はい、さようなら。」

改めて、殺せんせーと顔を向かい合わせる渚。

その涙か゚零れる顔は負の感情は消え落ち、今は恩師に対しての感謝の笑顔。

それに殺せんせーも、最高の笑顔で受け応えた。

 

スゥッ…

 

そして遂に…本当に反物質生物特効のナイフが、三日月マークのネクタイを、そして殺せんせーの体を抵抗無く突き刺さり、その身体の内側 心臓にも到達、貫いた。

 

シュゥ…

 

「「「「「「「「…!!?」」」」」」」」

その瞬間、殺せんせーの全身が眩しく静かに弾け、無数の白い光の粒子となり、天に昇る様に消えて行く。

 

生徒達の手から、その身を押さえていた殺せんせーの感触が消える。

其処に残ったのは修士服と学士帽、そして三日月の刺繍が縫われた幅広の黒いネクタイ。

 

 

 

「あ…ぁああ…」

「ぅ…ああ…」

「ぁゎゎわ…」

「「「「「わぁぁぁあああああぁっ!!!!」」」」」

それから数秒の間が空き、その場の少年少女、皆が涙を溢す。

 

「ぅ…ううぅ…」

「あ…あ…ぁ…」

ある者は その場で立ち尽くして涙を流し、

「ぅ…わぁああああん!」

「ぅぐ…えっぐえっぐ…」

「わあぁぁぁぁぁぁっ!!」

ある者は膝から崩れ落ち、両手で顔を押さえての号泣。

 

「…………っ!!」

ある者は唇を噛み締め涙し、

「うぉおおーーーーーーっ!!」

「あっあ゙ぁ゙あーーーーーーっ!!」

ある者は跪き、大声で泣き叫ぶ。

  

「…。」

「………。」

「…………………。」

そして また ある者は、周りの者達に背を向け、無言で夜空を見上げている。

 

「「……………。」」 

その様子を烏間とイリーナは、只 黙って見ていた。

この様な場面で、生徒達に何を言えば良いか…その言葉が浮かばないのだ。

只 黙って見守るしか出来ず。

幾人か、落ち着きを取り戻した生徒を確認した後、タイミングを見計らって「外は冷えるから」と、教室に入る様に促すだけだった。

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付が変わる直前、日本政府…いや、世界からの超生物暗殺の依頼を完遂した椚ヶ丘中学校3年E組の生徒達は、学校の卒業式より一足早く、暗殺教室を卒業した。 

 

 




 
完結迄 残り数話(予定)!
過去全話、最後の矛盾点の確認、調整中!
 
とりあえず、「光速の時間」と「黄金の時間」は少しだけ、加筆しています。
 
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