暗殺聖闘士   作:挫梛道

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卒業式の時間

 

 

❀たいへん よく できました❀

                  

 

星降る夜の上、桜のマークの枠に そう書き込まれたスタンプのデザインのシャツを、白衣の下に着た若い女性…雪村あぐりが心からの祝福の笑顔で、導かれる様に ゆっくりと天に昇ってくる殺せんせーを、両手を広げて迎えていた。

 

「死神さん…いえ、殺せんせー。

お疲れ様でした。そして、ありがとう。」

「いえいえ、お礼を言うのは私ですよ。

ありがとう…雪村先生。」

 

やがて両者の距離はゼロとなり。

三日月を背に、2人は涙しながら、熱い抱擁を交わすのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

「お、お姉ちゃんっ!?」

その大声と同時、茅野が目を覚ました。

 

「…ん~、ゅ、夢…?」

寝惚け眼、目を擦りながら周りを見渡せば、E組の教室内、クラスメート達が各々の席で、眠りに就いていた。

…皆が机の上に置かれた、分厚いという表現すら不適当と言える程な、分厚過ぎる冊子を枕にして。

 

「…ん?」

「何だぁ〜?」

「何…?」

「ふぁ…」

「…知ってる天井だ。」

そして この茅野の声が呼び水になったのか、数人の生徒も目を覚ます。

  

 

≪≪≪

少し時間は巻き戻る。

 

あれから…殺せんせーが光の粒子と化し、この世から姿を消した後。

皆が一頻り涙を零した後、烏間の呼び掛けで教室に入ってみると、各々の机の上には2冊の冊子が。

1冊は皆 共通の殺せんせー作:E組特製卒業アルバム。

そして もう1冊は、同じく殺せんせー作の、生徒1人1人に宛て、個別に作られた将来に向けての…以前の進路相談に基いたアドバイスブック。

 

「「「「「……………。」」」」」

アルバムについては、殺せんせーから最後の暗殺時に聞かされていた。

その際、皆が大容量ページなのは予想していたが、それでも その予想を遥かに超えるページ数。

…しかも、それと同等の厚さの物が、もう1冊。

ついでに言えば、その脇にはオリジナルの卒業証書やアルバムに収録しきれなかったのだろう…様々な写真データが収められていると思われるUSBメモリが数ケが入った筒。

因みに このメモリ、中身が写真だけで無く、殺せんせー自作の超大作RPGや高校大学に向けての参考書だと生徒一同が知るのは、これから約半日程先の話。

 

「「「「「「…………………。」」」」」」

この、分厚いながらも無駄に読み易い内容なアルバムやアドバイスブックを涙目でページを捲っている内、それでも読み疲れたのか寝落ち…皆、涙を忘れて熟睡していたのだった。

 

≫≫≫

「ん〜…晴華ぁ〜♡」

「「「……。」」」

「…殺して良いかしら?」

「応、殺れ殺れw」

そして現在。

殆んどの生徒が目を覚ました中、未だ爆睡している者が約1名。

 

「…律。とりあえず この様子、動画 撮っていて。」

「はい♪ 既に撮っています♡」

「よし、それ私に送っ(まわし)てよ。

晴華っちに送ってやるwww」

 

≫≫≫

「皆、食べながらで良いから、聞いてくれ。」

…それから少し経ち、教室に入って来たのは烏間とイリーナ、そして烏間の部下の3人。

その言葉に、朝食として渡された弁当を口に運びながら、烏間に注目するE組一同。 

先ず、烏間が言うには、対せんせーレーザーは予定通りに撃たれたらしい。

 

「…。」

政府からの公式報告らしいが、それに「大嘘乙w」と内心苦笑する者が1人。

その後に現れた現場検証部の者達に対しても、「校舎内、そして生徒達は俺の管轄だ」と、烏間が全て、校舎の外で相手をしていたそうだ。

時間的には響達が、アルバムやアドバイスブックを読んでいた頃である。

 

「…そんな訳で、君達には納得出来ない部分も有るだろう。

当分の間、世間から注目されるだろうし、機密事項の口止めを頼んだりもするだろう。」

「「「「「「……………。」」」」

烏間の説明を、生徒達は黙って聞いている。

 

「勿論、可能な限り、君等を守る心算だが…先に俺から謝らせてくれ。」

そう言って頭を下げる烏間だが、

「大丈夫っスよ、烏間先生。」

それに前原が言葉を返した。

 

「俺達も上手い感じに収まる様、頑張りますから。」

「そうそう。烏間先生、困らせたくないし〜。」

これに菅谷と倉橋が、続いていく。

 

「…その代わりと言っては、何ですけど、」

そして片岡。

 

「今日の椚ヶ丘の卒業式には、出席させて下さい。

本校舎の皆との戦いも、殺せんせーと一緒に作った大切な思い出ですから。

これは、E組全員の希望です。」

「…ああ、分かった。

その辺りの手配は、俺に任せてくれ。

その為に、俺は此処に居るのだからな。」

その言葉に、満足そうにアイコンタクトを交わすE組一同。

 

「全員、起立!」

 

ガタッ

 

そしてクラス委員長、磯貝の号令で全員起立から、

「烏間先生、イリーナ先生。

この1年間、色々と教えて頂き、本当に ありがとうございました!」

烏間とイリーナに、感謝の言葉を贈るのだった。

 

「(T_T)じーん…」

先ずは その言葉に、イリーナが感涙。

普段のBITCH呼びで無く、きちんと名前で…その名付け親であるカルマや響からですら…呼ばれたので尚更か。

 

「…!!」

そして烏間。

彼も この言葉に何か思う事が有ったか、目頭を押さえて俯いている。

 

「…♪」

それに気付いたイリーナは微笑ましく見つめ、

「「「…www」」」

そして烏間直属の部下…鶴田、鵜飼、園川の3名は、それが色々な意味でレアな光景だった為か、やはり揃って俯き、笑うのを堪えていた。

 

「 ( ◣ _ ◢ ) お前等 後で、覚えとけよ?!

「「「(」°⁠o(」°⁠ひいぃぇっ!?」」」

 

…しかし それは、烏間に気付かれた模様。

 

≫≫≫

 

ごんっ!!                  

 

「(T_T) 痛ひ…」

椚ヶ丘中学校の閉鎖は まだ解かれておらず、卒業式は市民館で執り行なわれるらしい。

その為 制服に着替えに、1度 自宅に帰った響を待っていたのは、両親からの説教と拳骨だった。

因みに響の父親は空手三段、母親は柔道と合気道が三段である。

一応、吉良家にもE組の事情は知らされている筈だったが、それでも1週間近く、家族に何の連絡も入れなかったのは、流石に戴けなかったらしい。

特に響の場合、【群狼】による拉致からは逃れた為、家族にも「息子さんが戻ったら〜」な話をされていたから尚更だ。

 

「…で、事は片付いたのか?」

「…まぁね。全部、終わったよ。」

「そうか…それなら、それで良い。

お前も色々と、大変だった様だな。」

 

▼▼▼

そして卒業式。

浅野理事長の開式の挨拶から始まり、国歌、校歌斉唱を経て、A組の生徒から順番に、卒業証書授与が行われていた。

 

「…君が本年度では、一番の問題児(ゆうとうせい)だったよ。」

「どうも♪」

「余程、担任が良かったのかな?」

「違いないですね。」

そして響も、卒業証書を受け取る際に、理事長と一言二言。

 

≫≫≫

「「はい、凄く お世話してましたwww」」

「カ、カルマぁ〜?! 吉良君〜〜っ!?

何、言ってんだよぉ〜!!?」

式も恙無く終わり、談笑していた響、渚、カルマに話し掛けて来たのは渚の両親。

渚母の「息子が世話になっています」に対しての、ある意味お約束な2人の返しに、顔を赤くした渚の突っ込みが炸裂。

その後もクラスメート達と和気藹々と話しながら、市民館外に出た時… 

 

「卒業式、終わったみたいだぞ!」

「そら、インタビューだ!」

「E組の皆! 話、聞かせて!!」

「「「「「「「…!??」」」」」」」

響達E組一同を待ち構えていたのは、報道陣の群れだった。

 

パシャパシャパシャッ

 

「一言、聞かせて!」

「今の心境は?」

「ねぇ、あの怪物、本当に君達が殺したの?」

「「「「「……!!?」」」」」

多数のフラッシュが焚かれる中、無遠慮にマイクを向けてくる報道陣。

 

「「「「「…!!」」」」」

それに響達は卒業の充実感から一変、不快感MAXを顔に隠せない。

 

「皆、早く駐車場へ!」

「バスを待機させているから!」

「急いで!!」

「おいオッサン、邪魔するな!」

其れ等を、揃って脳天近くに大きな たん瘤を作っている鶴田、鵜飼、園川の3人が抑えようとしているが、余りにも人数が違い過ぎる。

 

 

 

 糞ゴミ共が…ッ!!!!

 

 

 

バタァッx多!!                 

 

しかし そうした中、 突然その報道陣がカメラマン インタビュアー関係無く、全員が その場に倒れ込んだ。

それは少し前、響達に押し寄せたマスコミ達の再現。

まるで、()()()()()()()()()()()()かの様だった。

 

「…皆、走れ!」

「「「「「「お、応!!」」」」」」

それを見て、磯貝が即座に指示。

E組の皆は待機してるというバス…一般の其れで無く、自衛隊仕様のバスに、駆け込んだ。

 

≫≫≫

「全く…学習能力が無いのか、何も考えてないのか…

いや、もしかしたら前の時、簡単に生き返ったからとか、或いは殺せんせーは死んだから、もう大丈夫とかな楽観思考か…ん〜、ブツブツブツブツ…

「…吉良?」

「あ、何でも無いよ。独り言 独り言。」

「???」

そして走るバスの中、窓ガラスに張られた金網越しに外の景色を見ながら、

 

 

…さて、どうする? 今回は もうマジ、この儘 死なしとくか?

でも それ殺ると、後で文句 言われそうだしなぁ…

 

 

…そんな物騒な考えをしている者が、約1名。

 

≫≫≫

やがてバスは旧校舎の在る、山の梺に到着。

 

「皆、荷物は纏めた?」

「「「「「「お〜う。」」」」」」

「「「「「「は〜い。」」」」」」

最後、教室内に残していた私物を回収、E組の面々が山を降りる。

 

「……………。」

 

ペコリ。

 

…誰と示し合わせた訳で無く、自身のタイミングで個々に振り返り、この1年間 苦楽を共にした学び舎に一礼をして。

    




 
【補足】
潮田家…別に渚母が"2週目"を拗らせては いません。
少しだけ、「女の子が欲しかった」とか思っている程度です(渚の髪が長いのは その名残)。
夫婦別居も していない、普通の家族です。
原作では『潮田』は母方姓だった様ですが、今作は父方姓とします。
 
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