If回 第2弾。
前話同様の、編集版です。
それは、死に逝く者が最期に望み見た幻想か…
それとも常人の世とは また、別の次元での現実なのか…
星降る夜の上、桜のマークの枠に そう書き込まれたスタンプのデザインのシャツを、白衣の下に着た若い女性…雪村あぐりが、心からの祝福の笑顔で、導かれる様に ゆっくりと天に昇ってくる殺せんせーを、両手を広げて迎えようとしている。
「死神さん…いえ、殺せんせー、お疲れ様でした。
そして…ありがとう。」
うっすらと涙を浮かべ、感謝の表情を見せるあぐり。
「はい、雪村先生…」
それに対して殺せんせーは、やはり笑顔で応える。
徐々に縮まる両者の距離。
「おお、雪村先生…の、
この儘行けば、ヌルフ…ヌルッフフフフフフフッ!!」
ピッカァ!!
「にゅや!?」
「え?えぇ?」
邪念丸出し、事故に見せ掛けての胸元顔面ダイブでも企てていたのか、締まりの無い顔をした頭ピンクのエロダコが、その身体の色も黄色からピンクに変え、まさに今、あぐりの胸元(推定E)に飛び込もうとした その瞬間、何処からか放たれた強烈な眩い光が、2人に向けられ、2人の…正確に言えば、タコの天に昇ろうとする動きが止まる。
「にゅ…あと、ほんの少しだったのに…」
ピンクのエロダコが、心の底から残念そうな顔をしてる中、その場は夜の空の筈が、一瞬にして辺り一面真っ白な、光溢れる空間となった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「「??」」
そんな いきなりの環境変化?に、何が起きたのか把握出来ない2人の
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
その【穴】が轟々しい音と共に、全てを吸い込まんとばかりな、強大な重力を放つ。
「にゅやーーーーーーーっ!?」
「殺せんせー!?」
先程の邪全開な発想の罰が当たったのか、その重力の前に殺せんせーが捕まり、抗う術も無く、あっさりと【穴】の中に引きずり込まれた。
「殺せんせー!!」
吸い込まれた殺せんせーを助けんと、あぐりも自ら【穴】の中に身を乗り出して手を伸ばし、引っ張りだそうするが、【穴】は彼女を拒むかの如く、その重力…引力とは真逆の力を発揮し、
「きゃあっ?!」
あぐりを弾き飛ばし、寄せ付けない。
「殺せんせー?!」
「ゆ、雪村先生ぇ~っ!?」
互いに名前を呼び合っている中、殺せんせーは【穴】の奥深くまで堕ちて行き、最後には その中の黒い空間に溶け込む様に、姿が見えなくなった。
それから【穴】が消えたのは直後の事。
同時に光に満ちた白い世界も、まるで手品の様に一瞬に、夜の星が輝く空の上、元の場所に戻る。
「…………………………………。」
その場に1人取り残された、あぐり。
自分の常識の外の展開、状況に理解が着いて行けないと云う、茫然とした顔をしている彼女は暫くの間、黙り込み、
「な、何なのよ、一体~っ?!」
我に帰ると同時、ヤケクソ気味な叫び声を夜空に響き渡らせるのだった。
▼▼▼
「にゅや~~~~~~~~っ?!」
一方その頃。
殺せんせーは墜ちていた。
暗闇の中を只、堕ちていた。
「な、何故、飛べないんですかぁ~っ!?」
自分には飛行能力が有る筈が、それを行使出来ず、重力?に身を任せるしかない状態に不安を覚える。
「あ~、神様仏様、ゴメンナサイごめんなさいゴメンナサイごめんなさい!!
もう、雪村先生の胸に、邪な考えを持ったりしませんから!
スーパーの特売タマゴ、御1人様1パックを分身と変装を駆使して、何個も買うのも止めます!
アイドルや女優さんも、もう胸で差別したりしません!!
教え子や同僚の恋愛事情に
それから世界中の山に捨ててある、エッチな本を拾い集めたりもしません!!
それから、え~っと…」
最後には神頼み。
自身の過去の悪事?を告白し、懺悔し始めた。
「もう吉良君を、星座カーストネタで弄るのも、止めますから~っ!!」
ひゅーん…
「にゅやーーーーーーーっ?!!」
それでも落下は止まらない。
▼▼▼
「にゅ?」
それから暫くの間、自然落下が続く。
漸く終点なのか、暗闇の空間の中、堕ちて往く先に、僅かな光が差し木漏れる。
殺せんせーは重力に従い、その光の中に牽かれる様に飛び込んで行った。
ざわざわざわざわざわざわざわざわ…
「にゅる…此処は?」
困惑する殺せんせー。
光を抜けた先には、自分の教え子と ほぼ同年代の、少年少女が多数 居た。
少年達の髪や顔立ち、そして揃いの制服を着ている処を見るに察し、どうやら此処は外国の学校の講堂の様だ。
「…………………………。」
そして自分の正面には、唖然とした表情を浮かべたピンクブロンドの髪の小柄な少女が立っており、その傍らには、恐らくは教師なのだろう…髪の毛が やや寂しい、中年の男が居る。
他の生徒達?は、自分と その2人を囲む形となっている。
「「「「「「「……………………。」」」」」」」
一般人から見れば異形の風体。
しかも報道によって、今の自分は月を破壊し、地球を滅ぼさんとするモンスターとして、世間に認知されている筈。
しかし そんなモンスターを前にしても、逃げ惑いパニックになる気配は制服の学生達には微塵も無い。
只単に、いきなり現れた妖しいタコを、怪しい目で見ているだけだ。
「あ、あんた、何…なの?」
そんな中、目の前のピンクブロンドの少女が話し掛けてきた。
「………………………………。」
嘗て自分が人間だった頃、死神と呼ばれていた殺せんせーは この時、確信した。
自分以外の『神』と呼ばれる者の存在を。
そして、未だに自分に『死』を赦そうとしない その神を呪い、そして、自分の様な者に、未だ
確かに あの時、自分は死んだ筈。
ならば何故、自分は今、こうして生きているのか?
決して幽霊等ではない。
自分は確かに今、間違い無く生きている。
此が本当に、神と云える存在の仕業なら、何か意味が、理由が有る筈と、殺せんせーは考える。
それは一体何なのか…
だが、今は そんな事は、どうでも良い。
そう思いながら、彼は目の前の少女の質問に答えるのだった。
少女が口に出した、初めて聞く、自分が知らない筈の言語。
しかし、何故か識っており、何故か話せる、その言葉で。
「ヌルフフフフフ…私は…殺せんせーです。」
椚ヶ丘中学校、3年E組の少年少女の物語は、終わりを迎えようとしている。
だが どうやら、殺せんせーの物語は、まだまだ終わらない様だ。
次回より本編再開。
高校編突入です。