「可愛い姉ちゃん、沢山 連れているじゃないか。
俺等にも少し、分けてくれよぉ…」
「「「「…………。」」」」
中間試験明けの土曜日、椚ヶ丘市内のショッピングモールに繰り出していた響達。
それなりに店内を遊び歩いている中、彼等に声を掛けたのは、如何にも…な雰囲気な6人の男達。
男2人 女4人と云う女子率高めな このグループに、下種い思考でも持って、響達に近付いてきたかと思えたが…
「知ってる顔が1つ…いや、2つか?」
「「…。」」
響は その中の1人…いや、同じ顔立ちな2人に声を向けると、
「成る程 成る程。確か、ギリ…だったか?
…て事は そっちが、話に聞いた、双子の兄弟とやらか。」
「「……。」」
少し挑発めいた言葉使いに、その2人は更に 響を睨み付けた。
魏利逢徒と魏利誠冨。
椚ヶ丘中等部に在籍していた この双子の兄弟は、昨年の2学期期末テストにて浅野理事長(当時)が制定した緊急特別ルール、
【E組内の試験順位最下位の生徒より下の順位の者は、エスカレーター進学の権利を剥奪する】
…これにより、
その後 椚ヶ丘の外部受験を受けるも不合格となり、最終的には市内でもレベルの低い高校に通っていた。
「あのな…え〜と、 弟の方か。
お前、普段から俺やカルマを目の敵にしてるみたいだが、それって逆恨みって気付けよな?」
兎に角その様な理由でE組…今回の場合、響を敵視している魏利弟の方に、それは筋違いだと諭そうとするが、
「だ、黙れ! 全ては お前等の所為だろうが!」
「お前等がE組の分際で、余計な活躍を見せてくれるから…
E組はE組らしく、底辺を這い着く張っていたら良かったんだよ!
そしたら、今頃も こんな事には…!」
「「「「「うっわ…」」」」」
この、如何にも所謂 本校舎思考丸出しな発言に、外から椚ヶ丘入りした5人が どん引いてしまう。
「………。」
更識が無言で【 www 】と書かれた扇子を広げ、
「いや、マジに無いっスわぁ…」
「ええ。本当に最低ですね。
『最も低い』と書いて、最低です。」
「ん。改めてって言うかさ…リアルで見て、まじダッサ。」
「あのさ…そういう考えは、真剣に改めた方が良いと思うよ?
僕もE組の事、ニュースや吉良から聞いた時は、『まさか そんな恥ずかしい真似してる人達が…』って余り信じてなかったけど、本当に居たなんて…」
餅多が、恵海が、晴華が、そしてアカシが、其々に その感想を溢す。
「……。」
そして響は、今更 改めて驚く事でも無いとばかりに、冷めた顔での様子見な沈黙を
「…だよな? 傍から見たら、そうだよな?
だから俺も最初 転校した時、外から見た者の代表としてコイツ等に言ったんだぜ?
『お前等まじ恥ずいから止めとけ』って。
でも誰も…誰1人として、聞き入れてくれなかった…悲しーwww」
「「だ、黙れぇッ!?」」
…する筈も無く、アカシ達の台詞を前座にしての、煽りをぶち撒けた。
「ふん、んな事ァどーでも良いんだよ。」
そうした中、魏利兄弟とは別の、このグループ内ではリーダー格と思わしき…髪を金に染めた、恐らくは
「俺達は只な、そっちの姉ちゃん達と、遊びたいだけなんだよ。」
「ギャハハ。そういうこった。」
「そっちのギリ弟が、『多数の女を連れてる、ムカつくヤローが居る』って連絡してきてな?」
「だから俺等は『それは羨まけしからん!』と、態々 注意しに来てやったんだよwww」
それに続く、やはり20越えと思われる茶髪の男と、高校生らしき2人。
「そんな訳だ。
痛い目に遭いたくないだろ?」
「コッチは6人だ。」
「まさか お前…勝てるとか、思ってないよな?www」
「心配しなくても、姉ちゃん達とは お前等に変わって、俺達が お楽しみしてやるよ♡」
「あ゙?!」
更に続く、余り頭が良くないと思われる…所謂DQN丸出しな言動。
それに琴線…いや、逆鱗に触れたかの様に、響が反応。
「おい双子、お前等なら分かるよな?
お前等から『危険人物』と呼ばれてた俺なら この程度の人数差、全く問題じゃないって事を。
余り こういうのは言いたくないが、俺…E組の中じゃ
「「…!?」」
そして その数の差に怯む事無く、寧ろ戦闘上等とばかりに前に出る。
ス…
「え? 朱塚君?」
「大丈夫。大丈夫だから、恵海さん。」
同時にアカシも、連中の御目当てである女子を護るかの様に、前に出た。
「…僕は吉良みたいに、ケンカは強くないかもだけど…そ、それでも皆の、
「「「「(ひゅーひゅー♪)」」」」
カクカクと膝を嗤わせながらも、女子達…正確に言えば恵海の盾となるべくなアカシに、響達4人が心の中で囃し立てる。
「ふ…ん…キラ、だったか?
キケンジンブツだか何だか知らんが、所詮は椚ヶ丘…お坊ちゃん学校の中の話だろ?
俺等、洞究高校だぜ?」
「そしてコッチの馬渕さんと鹿島さんは、何と!…あ·の、怒羅権組だぞ!」
「ククク…そーゆー事だよwww」
「ケケケ…」
洞究高校。
椚ヶ丘市内、いや東京都内でも不良高校として名高い、極楽高校と双璧を成すと言われる程の、所謂バカ学校。
「「「「「「…。」」」」」」
そして怒羅権組。
洞究高校の1人の言い回しからして、恐らくは
「ドラゴン組?…ん〜、聞いた事、無いかなぁ?」
「うん、私も。」
そして その中で、何故だか有名処なヤクザなら よく知ってるかの様な、反応を見せるのが2人。
アカシと更識だ。
「はぁ!?」
「ガキィッ! 舐めてるのか?!
東京湾に沈めるぞ、ゴラ゙ァ゙!!?」
その態度に、怒羅権組…馬渕と鹿島が即応でブチギレ。
「いや、そのガキが言うのもアレだが、ヤクザ名乗って圧力掛けるのは、普通に脅迫罪だぜ?」
「いや、それを差し引いても『東京湾に沈める』で、脅迫罪っスよ。」
「「あ゙あ゙あ゙っ!!?」」
そして それに、ガソリンを投入するのが約2名。
ざわざわざわざわ…
そして この場は休日のショッピングモール内。
これ等の やり取りは沢山の人前での事で有り、その尋常で無い展開に、当然ながら周囲は ざわついていた。
「ほら、ギャラリーさんも沢山居るし、警備員の人や お巡りさんが来る前に、もう撤退を勧めるぜ?
「「…!!」」
そして その中、燃料追加する響。
「巫山戯てんじゃねぇぞ、クソガキ!」
「おらぁっ!」
それに引火して、暴力団を名乗る2人が響に襲い掛かるが、
スカッ…
「「はぁっ?!」」
この2人掛かりの攻撃を、響は簡単に躱す。
「テメェッ!」
「躱してんじゃねー!」
その余裕な表情、しかも如何に頭に血が昇った人間でも判る様な、ワザとギリギリ…ズボンのポケットに手を入れた儘、紙一重で避けるという動きは更なる燃料追加なのか、馬渕、鹿島が更に頭に血を昇らせ、手を出し足を出しな連打を仕掛けるが、響の神技ディフェンス(
「クソが…ちょこまかと…!
おい賽子、渋丸、魏利! 何ボヤっとしてやがる!?」
「お前等も見てないで、さっさと手を貸せ!
コイツ、全員で殺っちまうぞ!!」
「「「「は、はいっ!」」」」
ザッ…
「…。」
こうして6人に囲まれる形となった響だが、焦る様な素振りは見せず。
これが仮に、椚ヶ丘学園敷地内での出来事なら、今頃は既に正当防衛成立と同時に過剰防衛な形で終わらせていただろう。
しかし、今は違う。
中学卒業前、クラスメートを傭兵から守る為に、少なくない大衆の前で派手な立ち回りを披露した事も有ったが、その後の面倒な展開から学習したのか、今は防御に徹していた。
狙っているのは この乱闘騒ぎに駆け付けてくるだろう、警備員か警察の介入からの事態の収束だ。
「クソが…!」
そうした中、6人掛かりでも触れる事も出来ない…6人掛かりと云えど実質、同時に攻撃を仕掛けられるのは3人が限界である…響に業を煮やしたか、この暴力集団のリーダー格の馬渕が、その囲みから離れた。
「…?!」
アカシと、彼が背にして守っている、女子達に、だ。
恐らくは、女子を人質に捕るのが狙いだろう、そちら側に走り出す馬渕。
「「……!!」」
それに対し、アカシが不慣れ不格好な格闘の様な構えを取り、更識は左右の手に其々【霧纏の淑女】【学園最強(予定)】と書かれた扇子を広げ、迎撃の構えを。
尚、アカシと違い更識の方は、様になっている。
「…しまっ…?!」
これに対し、響が初めて少しだけ慌てる素振りを。
アカシ達が視界に入らない様に、自分だけに
ガッ…
そして響は、この戦闘で初めて、相手の攻撃に対して回避で無く
バギィッ!
「ぐえっ?!」
そして反撃。
洞究高校の1人、賽子の右拳を左腕で止めたと同時、左の蹴りを顎下に突き上げ、吹き飛ばした。
「晴華!」
それにより出来た
「どけっ、チビ!」
それよりも先、先ずは邪魔な
ガシッ!
「お前…何してんだ?」
「…?!」
しかし、その拳もアカシの頬を撃ち抜く前に、横から入ってきた掌の中に収められた。
「アカシ…何か
そして その掌の主…日焼けした肌に蒼髪の、鋭い顔立ちの男が、アカシに何事かを尋ねるのだった。