暗殺聖闘士   作:挫梛道

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改革の時間

「…だから お前は、加減てヤツをだな…」

「ぅ…面目無い…」

 

新学期初日。

この日は始業式が終われば、生徒達は帰宅だが、教師や他 職員は、まだ業務が残っている。

昼休み時間、職員室にて響が渚に、所謂DQNな生徒を黙らせる為に、殺気解放した件について、苦言を呈していた。

弁当を食べながらの軽い注意。

響は晴華手製の愛妻弁当。

そして渚も、誰が作ったか、手作りの弁当だ。

 

「殺気を飛ばす範囲が広過ぎ、ついでにダダ漏れなんだよ。

教室内に留める事って出来なかったのか?」

響的には相手を威圧するのに、殺気を放つ それ自体は、別に悪い事だと思っていなない。

…コイツも やっているし。

しかし渚の場合、その殺気の放出量が多く、そして範囲が広過ぎた。

自身が担当しているE組の教室を飛び越え、隣の響が担任しているD組、更に隣のC組に迄…当然、反対隣のF組にも、その殺気は届いただろう。

そして そうする事で騒がしかった複数の教室を、一瞬にして黙らせたのだ。

嘗ての暗殺教室にて、No.1だった殺し屋の殺気は尋常で無く。

 

「いや、そういうコントロールって、考えた事、無かったから…」

「…やれやれだな。」

しかし、本当に その世界…殺しやら戦いやらな世界に進んだ訳で無い渚には、そう云った『殺気を抑える』等の概念や発想は無かったのだろう。

 

「…でも僕は、暴力は振るってないよ?」

「いや、俺だって寸止めだし?

『殺す』って言葉の重みを教えてやっただけだし?

ガキが先に言った()()も有るし?」

そして渚も言われるだけで無く反撃。

それに必死に自己弁護の言い訳する響。

只、響の正拳寸止めについては、理事長の浅野にも既に、自分の口から報告している。

…事前に浅野から渡されていた、ヴォイスレコーダーに収めされた音声と共に、だ。

このレコーダーは響だけで無く渚にも…教員全員に有事の証拠証明の為に渡されていた。

 

『ぶっ殺されてーのか!!?』

 

この()()の お陰で正当防衛が成立?されて、響は今回、特に お咎め無し。

理事長·浅野學峯は決して、成人君子等では無い。

寧ろ体罰…暴力、恫喝も教育に於ける選択肢の1つとして、認める側の人間だ。

…それ()()の人間なら、無能認定だが。

そも、成人君子はE組の様なシステム等を思い付いたりしn…したとしても、実践しない。

そして今回の件、仮に響が本当に寸止めで無く、手を出したとする。

それで生徒側が騒ぎ立てたとしても その時は『殺す』という脅迫音声を証拠とし、説得(OHANASHI)を以てして、正当防衛として終わらせる。

もしも それで終わらなかった場合…保護者等の生徒側が騒ぎ立て、裁判に迄 発展したとしても、その時は浅野がプライベートで懇意な弁護士に出張って貰い、()便()に片付ける。

 

「まぁ、俺も かなり強力な弁護士の先生さんと知り合えたから、いざと云う時は、ふとし君に仲介して貰って…」

…浅野は私立極楽高校を、本当に底辺学校から名門校への転身…謂わば魔改造を真剣に考えている。 

しかし、それは決して綺麗事だけでは終わらないのも事実。

少なくとも、現在のマイナス状況をゼロの位置に引き上げる迄は、多少の強引な教育指導も必須。

去年から実施している、問題を起こした生徒は即時退学(はいじょ)も、その一環。

自分だけで無く、教職員にも茨の道を歩ませる覚悟である。

だからこそ、有事の際には職員へのフォロー、バックアップも万全の構えなのだ。 

…そして因みにだが、響が知り合いとなった弁護士と、浅野理事長が懇意にしている弁護士は、実は同一人物である。

 

≫≫≫

「俺は勢いとハッタリで、黙らせたけどね。」

殺気云々の話の後、響と渚の会話に参加してきたのは、同期同僚の北倉マモル。

 

「あの時…早乙女先生や潮田先生も感じなかったかい?

何だか分からないけどさ、一瞬 空気が引き裂かれた?張り詰めた?…みたいな感覚。

それで其れ迄 騒いでいた生徒達が黙り込んだ瞬間、今がチャンスだと思ってキレ芸演技と、ドイツ語での罵詈雑言暴言連発だよ。」

「ドイツ語?」

「あぁ、マモ…北倉先生は、ドイツ語が得意なんだ。」

どうやら北倉は渚の殺気を、それと気付かず利用した様だ。

  

「何しろドイツ語だからね。

どうせ彼等は、俺が何言ってるか分かんないだろうけど、それでも迫力に押された?…後は皆、大人しくなったよ。」

「…………。」

「潮田先生? 『それなら自分は英語で…』なんて考えてるなら、それは止めておいた方が良い。」

「え?!…なな、何で??」

北倉の話を聞き、それなら…と考えていた渚に、それを見抜いた様に、響が止めに入る。

  

「北倉先生の場合は、ドイツ語だから、問題無かったんだよ。

この学校のバ●共だ。知ってるドイツ語って、精々がダンケ位だろう。

それと、いえーがー!

「そうだね。英語なら万が一…特に この学校の生徒なら、スラング英語等は逆に…普通に理解出来てそうだからね。

暴言教師って言われて、責められる可能性は結構 有るかな?」

  

▼▼▼

この日の夜。

 

「…マジか。」

「本当だね〜。」

テレビから流れたニュースに、響と晴華は結構 驚いていた。

  

「コレは明日の朝、当人から報告が有るか?…の、前に…」

  

≫≫≫

次の日の朝。

 

ガラ…

 

…きりーつ、れー、

「「「「「「ぉはざぁーす…」」」」」」

響が教室に顔を出すと、元気…と言うか、覇気の無い挨拶が。

  

「何だ? えらく元気が無いな? 昨日の御無礼無尊無法感は、何処行った?」

「「「「はぁっ!!?」」」」

笑いながら話す響に、生徒が過剰に反応。

   

「早乙女え…お前、ニュース見てないのかよ?」

「ニュース見て少しは世の中 勉強しろっ()ったの、オメーだろうが!?」

「呼び捨てとオメーは止めろ。

…で、何のニュースだ? もしかして、アレか?

磨瀬榛名の婚約、妊娠、&引退のニュースで凹んでるのか?」

「「「「「「「分かってんぢゃねーか、テメーッ!!?」」」」」」」

「「「「「「「知ってて言ってんだろ????!」」」」」」」

響の煽りとも受け取れる台詞に、クラス内から総ツッコミが。

人気若手女優としては早過ぎる結婚と引退、ついでに妊娠。

相手は一般人Aさんと報じられた そのニュースは、響も昨夜のテレビで知っており、即座に()()()に直接、電話で その事について問い質していた。

更に言えば この日の朝の職員会議にて、その()()()本人が、相手は誰か等は伏せているが、結婚の報告をしていた。

  

「…俺が言ったのは芸能とかで無く、政治や経済情勢のニュースだったんだけどな。

まぁ、何も見ないよりかはマシか。

…てゆーか、お前等、皆ファンかwww」

「「「「「「「うるせぇーえっ!!」」」」」」」

どうやらクラス内の殆んどが、女優 磨瀬榛名…即ち茅野のファンだったらしい。

  

  

言いてぇ…真実を言いてぇ…www

そのAさんてのが実は、隣の担任(なぎさきゅん)、で〜っすw…って。

しかし それは まだ、理事長に止められてるからなぁ…

…っにしても、茅野ちゃん、もう妊娠2ヶ月?

時期的に、前の飲み会の頃には既に…な話だよな?

そうか あの2人、俺の出来婚疑惑の時に、余り会話に参加しなかったのは、自分達に被弾しない為だったのか!

渚…お前は後で、OHANASHIだ。

 

  

▼▼▼

「理事長…やはり、やり過ぎだったのでは?」

「…そうですか?」

新学期から、1ヶ月が経過。

この日の月1回の、校内全職員が参加する会議…会議室は、かなり思い空気が支配していた。

5月の連休が明けた時点で、何かしらの問題を起こし、退学処分となった生徒が20人を超えてしまったのだ。

1ヶ月で20人。

喫煙、窃盗、暴力沙汰、etc etc(その他その他)…普通なら?とりあえずは停学処分を下す処を、正しく悪·即·斬とばかりに1発退学にした結果が…である。

無論、この厳しい措置については、新学期の際に生徒本人には勿論、保護者…家庭にも伝えている。

それでも…な この結果は、浅野も少しだけ、想定外だった。

この学校の生徒の頭の悪さや常識の無さが、自身の見積もりを遥かに下回っていたのだ。

当然、生徒や保護者からの『厳し過ぎる!』と言うクレームも来たが、其処は浅野學峯。

保護者の異議訴えを、軽く一蹴したのは言う迄も無く。

 

「1ヶ月という短期間…で、大量の退学者を出した学校として、ネットを通じて全国レベルで話題になっています。

テレビ局からも数件、取材の申し込みが…」

生徒指導主任の教諭が苦々しい顔で現状を報告するが、

「構いませんよ。インタビューは全て、私が応じましょう。」

「はぃ?!」

それを浅野は、涼しい顔で返した。

 

「其れ等は無視していると、余計に話が拗れるでしょうし、失礼ですが貴方達に取材の応対を任せると、保身的な言い訳の果て、余計に炎上しかねない。

それならば全ての大元である この私が最初に正面に出て、適切に話した方が、被害が少ないでしょう。

…同じ炎上となるにしても、ね?」

「し、しかし…!?」

「確かに今は逆風に見えますが、それを追い風にする術は、幾らでも在りますよ?」

「は…はぃ?」

それでも不安を隠せない教諭に、浅野は『我ニ策アリ』とばかりな、不敵な笑いを見せる。

 

「理事長…1つだけ、宜しいですか?」

「…どうぞ、早乙女先生。」

此処で響が挙手。

 

「テレビの取材に応じる…は良いですが、それで理事長が あの、()()()()()()()()()()()()()だった事に気付く、或いは思い出す人も少なくないと思います。

そんな人物による強行処分だと知れば、余計な非難 反発(バッシング)が、それこそ全国レベルで起きるのでは?

…尤も、それも既に、折り込み済みでしょうが。」

「ふふふ…早乙女先生。其処迄 発想が至っているなら、私が何を考えているかは分からないにしても、もぅ お解りでしょう…心配御無用ですよ。

それに今は まだ、先行投資の時期です。

この一斉大量処分も、我が校を名門とすべくの、布石に過ぎません。」

「「「「「(」°⁠o(」°⁠…!!?」」」」」

響の質問からの浅野の黒い笑みを含めた返しに、幾人かの職員が戦慄。

 

()()()は確かに、世間は私の…いえ、私が世の中の敵に なりましたが、今度は世の中が…その全てとは言いませんが、私の味方に なってくれますよ。」

「「(ぅゎあ…)」」

そして約2名が どん引いた。

 

≫≫≫

それから数日経過。

 

『渚さん吉良っちさん、本当に大丈夫ですか?』

「大丈夫だと思うよ?」

「ウチの理事長、誰だと思ってる? ()()、ラスボス先生様だぜ?」

渚と響がスマホを通じて話しているのは、嘗てのE組クラスメートの1人、自律思考固定砲台…律だ。

響達が中学を卒業した2日後。

()()を開発した科学技術者達は、E組教室に設置されていた彼女本体を回収したのだが、その時には既に、律の人格(プログラム)はネット回線の世界へと脱出(エスケープ)していた。

本体に彼女製作の、ダミープログラムを残して。

そして電脳世界で様々な情報を得ての進化を繰り返し、E組メンバーに色々な分野での情報提供や、私的な お悩み相談等のアシストをしていたのだ。

…そして今回。

極楽高校の大量退学処分の件で、浅野が理事長としてマスコミ対応した事で、響の一応の不安視が的中。

テレビ等では触れられなかったが、ネット世界にて、浅野が嘗てE組のシステムを作った暴君として、大々的に拡散される。

その情報を得た律が、関係者である響と渚に『何か、手助けが必要ですか?』と渚のスマホに接触(コンタクト)してきたが、2人は自分達の上司への信頼からか、心配無用と余裕の返しをしていた。

そして結果は、響達の読み通り。

確かに大量退学処分については暴君による横暴な措置として叩かれる一方、極楽高校の元々の悪名と云うか評判からか、『即時退学は妥当』『良いぞ もっと殺れ』『DQNざまあwww』『流石はラスボス理事長』等の、一連の冷徹判断を支持する声の方が多かった。

それでも、浅野を叩こうとする者も、全体的には少数派だが、その数自体は、少ない訳で無く。

ネットでの関連ニュースのコメント欄には数多くの誹謗中傷や、学校に直接、脅迫めいたメールや電話をしてくる者も居た。

尤も其れ等は即座、浅野と件の弁護士とのタッグで次々と名誉毀損や脅迫罪、威力業務妨害罪等で警察沙汰裁判沙汰となり、次第に沈黙。

実刑に処される者こそ出なかったが、執行猶予付きの有罪判決…前科者が大量に世に沸く事になる。

そうした者の殆んどは、俗に言う批判厨と呼ばれる者や、単なる騒ぎ便乗の野次馬だった。

しかし それとは別に、浅野に何か思う事でも有ったのか…椚ヶ丘中等部の卒業生だったり、同校の元教諭だったりも それなりの数が居たのだが、それは また、別の話。

 

「だから、言ったろ?

律の手を借りる必要は無いって。」

『…みたいでした♪』

「…て言うか『ラスボス』って…

このコメントしたの、絶対にE組の誰かだよね?!」

 

▼▼▼

そして…

この一連の騒ぎで、現在の私立極楽高校は ()()()()学校だと都内中心に全体的に認識され、翌年の入試では ()()()()中学生の受験志望者が例年に比べ激減。

素行不良中学生の最終の駆け込み寺のイメージが、完全に払拭された形に。

更に それから3年後には、一般的な学力レベルの高校となり、それを機に校舎の全体的な改装を開始。

改装終了の翌年から、男子校から男女共学の高校になるのだった。

 

≫≫≫

 

「…そんな訳で2人共、これからは同じ先生として、ヨロシクね♡」

「「は、はぃ…」」

      




 
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