暗殺聖闘士   作:挫梛道

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最終回! 
 


団円の時間

  

ガラ…

 

「起立! 礼!」

「「「「「「「「おはよーございまーす。」」」」」」」」

7月の月曜日の朝。

響が教室に入ると、クラス委員の号令の元に、挨拶をする面々。

 

「ああ、おはようって…花澤?」

「…どんより。」

それに応える様に響が教室内を見渡せば、着席と同時に突伏、背中から黒雲の如くな、明らかな凹みオーラを放っている女生徒が1人。

花澤蜜璃。

高校1年生とは思えない程な…響が学生時代の同級生、当時の矢田すらも駕ぐ程な見事な体型の持ち主だ。

そして そ(・)れ(・)だけで無く、愛らしい顔立ちと明るい性格(キャラ)で、クラス内だけで無く、学校全体からの人気も高い。

 

「どうか、したの…か?」

「…。」

見るからに世界中の不幸を背負っているかな雰囲気の彼女に、担任教諭としては無視の出来ない響。

何事かと、相手は女生徒故に言葉を選びながら尋ねてみると…

 

「せんせー、この子 昨日、デートだったらしいんだけど…」

「「「「「「な、何ィーーーーーーーいッ??!」」」」」」

 

ガタ ガタッx多

 

花澤の代わり、事情を知るらしい女子生徒の一言に、クラス内の男子ほぼ全員…と女子数名が、驚きの声と共に、席から一斉に立ち上がった。

 

「花澤さん、彼氏、居たの?」

「何処の何奴だよ?!」

「赦さ…ん…!!」

「ぶっ●してやるーっ!!!!」

「あー、お前等 座れ座れ。そして落ち着けw…で? 竹達?」

「それでね…」

荒れ狂う男子生徒の群れ…と女子数名を宥めながら、響は恐らく事情を知っているであろう、花澤とは普段から仲の良い、女子の1人に尋ねてみると…

 

≫≫≫

「…成る程 成る程。つまり花澤の服のセンスが余りにもポンコツで、それで彼氏君に どん引かれてしまった…と。」

「で、でも! ファッション誌に載っていた服だったんですよぉッ?!!

上も!下もぉっ!!」

「1つ1つは、ね。

…でも、その組み合わせがクソダs…残念過ぎたのよ…」

…だったらしい。 

 

「うわぁあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!?」

 

▼▼▼

…その日の夜の、都内のオフィス街。

烏間は匿名からの呼び出しを受け、指定された場所に向かう途中、何者かに尾行されている事に気付く。

面倒を避ける為、街裏の狭い路地に入り、少し進んだ先で

「…何者だ?」

振り向く事無く、その追跡者に話し掛けた。

  

「…その、懐の物騒なブ(・)ツ(・)から、手を離して下サイ。

私は、アナタの敵では、有りマセン。」

「……………。」

 

≫≫≫

「何…だと?!」

「…そうデス。12年前の事件は、まだ完全に終ってないのデス。」

結論から言えば、この尾行してきた者こそが、烏間を呼び出した当人だった。

 

「…………………。」

このキジヤマと名乗る男から教えられた、最悪な情報。

 

「必要な備(・)品(・)は明日、アナタの勤め先に送られる手筈デス。

追加の備品等が必要な場合ハ、其れ等に添えられた連絡先に知らせて下サイ。

それと…この先この件を誰に報せるかは、アナタに全テ お任セシマス。」

「…。」

「…待ち合わせ場所に行く必要は、無くなりましたネ。

それでは私は、これで失礼シマス。」

「………。」

そして詳細が書かれた手書きのメモを烏間に渡すと、キジヤマは その場から立ち去って行った。

   

≫≫≫

「あ·な·た〜♡ お帰りなさ〜い♡

私にする? 私にする? それとも、わ·た·し♡?」

「………………。」

帰宅。玄関先にて満面の笑顔で出迎えてくれた妻(イリーナ)に、烏間は先ずは何処から突っ込めば良いか…な、複雑な表情を浮かべた後、

「…な、何ですって??!」

自分が先程 知った情報を、その儘 告げた。

既にメモ紙は、其れに書かれてあった指示通り、焼却処分している。

  

「嘘でしょ? まだ、終ってなかったなんて…!?」

その内容に、イリーナも驚きと動揺を隠せない。

  

「とりあえず、明日だ。

防衛省に明日、俺宛で色々と荷物が届くそうだ。

俺達が どう動くかは、それからだ。」

「……。」

 

コク…

 

烏間の言葉に、結婚から10年が経とうとしているが未だ新婚の若妻気分なイリーナが、瞬時に殺し屋…いや、今は諜報員か…の表情に豹変、無言で小さく頷く。

…しかし そのエ(・)プ(・)ロ(・)ン(・)姿(・)では、説得力に欠けると云うか、イマイチ締まらなかった。

  

 

【挿絵表示】

 

 

▼▼▼

3日後。

某県の山中に隠れる様に建つ施設。

 

「律、頼んだぞ。」

『了解です、烏間先生。』

余(・)程(・)な(・)施設なのか、建物の扉は全て、電子施錠式。

しかし其れ等は今は全て、システムに干渉した律によって掌握、制御され、建物内に居る者は監禁状態に。

その強固な警備体制(セキュリティ)が仇となった形だ。

このアシストを得て、烏間は自身の配下とキジヤマが派遣した特殊部隊を引き連れ、この建物に突入した。

 

≫≫≫

「ぅ…」

「ぅう…」

「い、痛い…」

「…フンッ!」

その場には、荒事に長けた者は居らず、全員が、白衣に身を包んだ科学者…研究者だけ。

故に戦闘は…それを戦(・)闘(・)扱いして良いかと悩める程に即座に終了、その場の制圧に成功した。

正直な処、大部隊を率いる必要も無く…自分1人だけでも事足りたと思わせる余りの呆気無さに、床に蹲る科学者達に一瞥くれると、烏間は この部屋の中央に設置された、巨大な試験管の様な装置に目を向ける。

 

「……………。」

「「「「「…!!!?」」」」」

その中の薄紫色の培養液に漬けられた中に浮かぶ、極小の胎児の様な生物を見て、烏間は修羅の形相に変化。

その様は、同行していた部下達が慄く程だ。

  

「コレがヤ(・)ツ(・)の遺伝子…クローン?!」

キジヤマから手渡された資料から、大まかな事は分かっていたが、改めて そ(・)れ(・)を直に見て驚愕。

 

「クソッ! 兵器利用の可能性を、まだ捨てなかったと言うのか!?」

 

ガシャァンッ!

 

怒りの感情を隠す事無く、烏間は この試験管装置を破壊。

 

パァンッ!

  

そしてガラス片と溶液が撒き散らされた床に転がり落ち、ピクピクと蠢いている この謎生物に、胸のホルスターに携えていた拳銃で発砲。

 

シュゥ…

 

通常の実弾で無い、特(・)殊(・)素(・)材(・)の弾丸で撃たれた生物は、身体が…細胞が霧散する様に この場から消滅した。

 

「ぁ゙〜、何て事を?!」

「そ(・)れ(・)を此処迄 育てるのに、どれだけの時間と金が、掛かったと思っている!?」

「…黙れ。」

「「「「…!? (」°⁠o(」°⁠」」」」

 

≫≫≫

「ほら、きりきり歩け!」

「さっさと乗れ!」

「ひぇっ、暴力反対!」

「横暴だぞ!?」

「こんなのが許されると思っているのか?!」

「覚えてろ! 逆に訴えてやるからな!!」

その後、この場に居た研究者…嘗て柳沢の助手だった者達は拘束され、次々と護送車に乗せられて行く。

その際 数名…特に顔の左半分を大きく腫らせた男が、烏間や部隊員達に吐き捨てる様に文句を言うが、烏間を筆頭に誰も事務的な表情を崩さない。

 

「…貴様等の やってきた事が、普通に公の場で裁かれるとでも思っているのか?」

「「「「「…!??」」」」」

そして それに対しての烏間の返しに、研究者達は顔を青くして黙り込む。

元より、国際間で禁止されている研究だ。

12年前、月を破壊したという存在は確かに明らかにされたが、その出自…即ち【反物質計画】や、超生物(殺せんせー)が それによる人体実験の末に産まれた存在、そして その実験の過程に於いて、月が破壊された等の真相は、未だ公にされていない。

全て突如 現れた、正体不明の謎の怪物の仕業で片付けているのだ。

表沙汰に…単に日本国内での裁判等で終わる筈も無いだろう。

何より、この儘 此処から専用機で、アメリカに直行させる段取りなのだ。

   

「勿論、お前達だけで終わらせる心算も無い。…律?」

『はい。お任せ下さい♡』

当然、この研究者達を捕らえ処しただけで、全てが終了な訳も無く。

この研究に出費した、スポンサー的な存在が居るのは明白。

施設内の通信機器や研究者個人の携帯端末等の履歴全てに律が探りを入れて、今回の最奥の黒幕や、他にも関わりを持った存在全てを突き止める流れだ。

その先が個人だろうが組織だろうが…或いは何処かの国家だろうが、国際機関が追い込みを掛け、秘密裏に断罪するだろう。

  

▼▼▼

4日後。

 

「何…だと…?!

キジヤマ、それは本当なのか!?」

「ハイ。あの研究者達を少し拷m…失礼、尋問してみたら、素直に話してくれタそうデス。」

「…今更 言葉を取り繕う必要は無い。

あの時、守(・)り(・)役(・)みたいな者が居なかったのは、そういう事だったのか…」

「ハイ。全員が、ア(・)チ(・)ラ(・)側に出張っていたみたいデス。」

防衛省にキジヤマが訪ねてきた。

アポ無しだったが、烏間は受け付けからの連絡で その名前を聞くと自身の執務室に招き、面会に応じていた。

そしてキジヤマの口から直接 聞かされた新たな情報は、前に この男から聞いた情報と同等…いや、それ以上に厄介な物。

  

「我々も また部隊を派遣しマス。互いに連携して、早急に事を片付けマショウ。」

「………………。」

烏間は苦虫を噛み締めた様な表情を浮かべての数秒の沈黙の後、スマホを操作。

 

「…律、また、頼めるか?」

 

▼▼▼

翌日の夕方。

 

「マジ…ですか?」

「はい。その様な理由で、貴方と貴方の奥様には、既に護衛が付いているのを知らせておきます。」

都内の総合病院の待合室。

ロビーチェアに腰掛け、背中を向き合わせての会話。

響は烏間の直属…日本政府の諜報員を名乗る人物から、と(・)あ(・)る(・)事(・)情(・)により、自身と晴華に暫くの間 護衛(ガード)が付く事を伝えられた。

  

「当時のE組の皆様や 近しい関係者には全員、ガードが付きますが、その事を直接に報せるのは早乙女様…貴方を含めて数名です。

…ですから この事は、クラスメートの方々とも、会話するのは御遠慮願います。」

「了解です。成る程、護衛に気付きそうなヤツには…って感じですか?

渚とカルマに茅野ちゃん…かな?」

「その辺りも、ノーコメントです。」

「了解ですよ。ああ、すいませんが今直ぐ烏間先生に連絡、取れますか?」

  

≫≫≫

『な…?! 早乙女君、君は本気で言ってるのか?』

「勿論。事(・)を知った以上は、『護衛ヨロ♪』だけで済ませる訳にも往きませんよ。

だからこそ、直ぐに事を済ませる策を提案しているんです。

それに元より、そ(・)う(・)い(・)う(・)事(・)態(・)も想定した上での護衛でしょ?

それなら向こうから やって来るか、自分から首を突っ込むかの違いでしかない。」

『しかし、今の君は、少しばかり情報を知っているだけの一般人に過ぎない。

それに今の君を、進んで そんな危険な目に遭わせる訳には…』

「ア(・)レ(・)関連では、今でも充分に…いや、俺達は ずっと関係者ですよ、烏間先生?

それにですよ? 危険なのは どの道 同じです。

だからこそ それなら…もう1度 言いますが、俺は早く終わらせて、平穏な日常を送りたいんですよ。

…その為には、どんな危険も厭わない!」

『……分かった。協力して…くれるか?』

「勿論ですとも!

一体 俺を、誰の教え子だと思っているんですか?

もっと頼って下さいよ?」

 

≫≫≫

「ハイ。」

烏間との やり取りを終えた後、響は諜報員にスマホを返す。

 

「そんな訳ですから、まぁ、護衛、宜しくです。

それと…俺は兎も角、晴華に何か有った時は…その時は、俺がアンタ等を殺すかも…?」

「…??!」

そして その際の一言と共に、一瞬だが放たれた、凶悪な殺気。

 

「…だから、晴華の事は、頼みましたよ。」

「………。」

多少の心得を持つとは云え、常人が出すとは思えない その殺気に、この諜報員は畏れの表情を隠す事は出来なかった。

 

▼▼▼

烏間達が最初、未だ秘密裏に行われていた【反物質計画】の研究施設に突入した時。

その場に居た研究者達は確かに、全員が取り抑えられた。

その研究体…反物質生物(殺せんせー)のクローン体も、確かに その場にて処分した。

…しかし、それで全てが終わった訳では無かった。

その後の拷問尋問により、精製中のクローン体の他に もう1体、触手細胞を移植された人間…実験体が居たのが判明。

そして その実験体は烏間が研究施設に突入する前日に、研究者を3名程 殺害して、施設を脱走した事も。

烏間達が施設に押し入った時に、警備役の様な者が居なかったのは、その全員が脱走した実験体の捜索に出ていたからだった。

そして その実験体は、嘗てのE組の面々と、因縁が有る人物。

どういう経緯で、その男の身柄が研究者達に渡ったのか…それも詳しく調べる必要が有るとして、政府が響達E組関係者に護衛を付けたのは、それ故にだった。

 

≫≫≫

それから数日後の土曜日の夜。

 

「…。」

響と烏間にイリーナ、更には日本政府と某国より派遣された特殊部隊は、椚ヶ丘学園の裏山…12年前の暗殺教室の舞台である、旧校舎を目指して進んでいた。

 

 

【この先 私有地により関係者以外の立ち入りを禁ず】

 

 

広範囲にロープを張り、一般の出入りを禁止している山だが、それを伝える看板は破壊されており、ロープも断ち切られている。

何者かが山の中に入ったのは明らか。

 

「計画通り…かしら?」

「いや、コレは単に、其処等のバカの仕業かも知れませんよ?」

「???」

それを見たイリーナの呟きに、否定的な響。

件の実験体(ターゲット)は、施設脱走の際、研究者のスマホを奪っていた。

その情報を逆手に、律による情報操作。

E組メンバー30人分のダミーアカウントによる、虚偽の やり取り。

このスマホのみ閲覧可能な会話。

椚ヶ丘市を中心に都内在中の元E組が、この日の夜、集合可能なメンバーで旧校舎にてBBQパーティーを行うと言う、偽情報を流していたのだ。

国会議員秘書の寺坂や官僚となっているカルマ、海外出張の中村、そして現在 北海道住まいの杉野と神崎は欠席予定とさせる中、呼び掛け役設定の響は勿論 …最終的には渚、烏間を含めて半分の人数が参加する様に設定。

そして この偽情報は、既読されている事を律が確認していた。

  

「ヒビキ、それは どういう意味かしら?」

だからこそ、それを踏まえて標的(ターゲット)が山に侵入したと判断したイリーナが、響に問い掛け。

 

「まぁ、それなら それで、面倒な話になりますけどね。

…とりあえず、急ぎましょう。」

「???」

 

≫≫≫

「これは…」

「この刺突の跡、間違い無いわね。」

「やれやれだ。

こんな予感、地味にしてたんですよ。」

山登りの道中、響達一行は、若い男5人…の死体と遭遇。

彼等の荷物だろう、酒やスナック菓子の入ったコンビニ袋が1つ、落ちていた。

そして その死体…死因であろう傷痕から、自分達の標的(ターゲット)も山に侵入、烏間達が撒いた餌…偽情報に引っ掛かったのを確信。

 

「…。」

そして響からしたら この5人の内3人は、見覚えある顔だった。

 

「ふん。だから此処は、私有地で立ち入り禁止だっての。

このDQN高の奴等、どうせ盛り上がった後はゴミは やりっぱにして、その儘 帰る心算だったんだろ。

悪いがコレに関しては同情は出来ないな。

寧ろ『ざまあwww』だ。

そもそもコイツ等 未成年だろ? 酒を飲もうとしてる時点でアウトだよ、天罰覿面。

まぁ、悔やむなら『立ち入り禁止』の意味を理解出来ない、自分達の常識と脳味噌の無さを悔やむんだな。」

「早乙女君!!」

凡そ教育者とは思えない、その冷たい対応に、思わず烏間が嗜める様に声を荒げる。

自分にとっての大事な場所が荒らされた…その心情は理解した上で、だ。

 

「…しかし、これだけ派手に傷跡を残されたなら、コレ等を単なる殺人事件として公にするのも難しいな。

残念だが彼等は、この先ずっと行方不明者として、裏々で処理するしか無いか。」

「どうせ普段から、家に帰らないってのも ざらだったんじゃない?

家族が心配して、警察なんかに捜査願いを出すのも、時間が掛かりそうね。」

 

≫≫≫

そうした中、嘗ての学び舎に到着した響達。

校庭の中央に集まり、旧校舎に目を向けた その時、

 

ドッガシャアッ!!

 

「「「!!!!?」」」

その存在に反応…確認したかの様に、突然 校舎の壁が内側から破壊され、其処から飛び出したのは大柄な体躯の男。

その背に生えた無数の触手の それぞれが、まるで別の生物の如く、蠢いている。

この人間(ヒト)を舐め異形と化した男が、狂気と憎悪を孕んだかの様な、歪んだ嗤い顔を浮かべ、突進してきた。

  

「きぃらぁああ゙ぁあああぁあっ!!

かあ゙らすまあ゙ぁあぁああぁあ゙っ!!!!」

  

響と烏間の名を叫びながら、迫る異形。

響の名を先に口にしたのは、響への怨みの方が強いのだろう。

 

「今の俺は、早乙女だっての!」

「ヒビキ、下がりなさい!」

「チィッ! 総員、撃てェっ!!」

 

パパパパ…ッ!

 

場違いな?突っ込みをする響をイリーナが後方に退かせ、烏間の指揮で特殊部隊が銃を構え、一斉射撃。

 

「ひゃは!」

しかし それをこの異形は常人とは思えない跳躍で、上空高くに回避。

 

ヒュンッ!

 

…から、無数の黒い触手を鞭…いや、槍か或いは矢に見立てたか如くに伸ばし、響達に突き付けてきた。

 

 

…グシャァッ!!

 

 

しかし、その刺突は誰にも届かず。

真っ直ぐに延びてきた触手は急に その動きを止めて垂れ下がり、空中静止していた異形の本体も、浮力を失ったかの様に垂直に落下、頭から その巨体を地面に打ち付けた。

 

「撃て、撃てェッ!」

 

パパパパパパパパパパ…!

 

そして再び、烏間が一斉射撃を指示。

地に倒れ動く気配の無い異形の身体全体に、特殊素材の弾丸が浴びせられた。

 

シュゥ…

 

この銃撃で、異形の触手は細胞レベルで浄化される様に霧散。

異形の屍は多数の銃痕は有れど、元の人間だった時の姿に戻った。

 

「…。」

その物言わずに横たわる…元·同僚の姿を見た烏間は、一瞬どう表現すべきかな、そんな無念の表情を浮かべ、

「標的(ターゲット)死亡確認。これより、撤収準備に入る!」

「「「「「「了解(ラジャ)!!」」」」」」

それでも最後は冷徹に、任務を遂行していくのだった。

 

≫≫≫

 

 

 

…積尸気冥界波からの、鬼蒼炎ってね。

 

 

 

烏間の部下が異形だった男の亡骸を、特殊素材製の拘束着で包む中、天体学者曰く、地球との距離は近くなったが、引力の関係や軌道衝突等の問題は無い…らしい、地上からの見た目は12年前の異変前と変わらない球状となった月…今宵は三日月を見上げながら、誰にも聞かれる事の無い小声で ぼそりと呟く響。

 

RRRRR…

 

「?」

そうした中、響の懐のスマホが鳴った。

 

「もしもし…あ、はい、お義母さん……………………って、ぃゃ、早い早い早い早い??!

予定は明後日…いや、既に明日ですか?…だった筈じゃ………………………勿論、今から飛んで行きますよ!」

 

pi…

 

「烏間先生、ビッチ先生! 実は斯々然々で…!」

「な…分かった早乙女君、後は俺達に任せろ!」

「ヒビキ、急ぎなさい!」

通話の相手は義母…晴華の母親だったらしく、その会話の内容を烏間に話すと、響は一足先に下山。

途中、異形に殺害されたであろう若者達の死体を尻目に…これも後で秘密裏に回収するらしい…麓迄 着くと、即座 停めていたバイクに跨がり、病院を目指すのだった。

  

▼▼▼

週明けの月曜日。

  

ガラ…

 

「起立! 礼!」

「「「「「「「「早乙女せんせー、赤ちゃん おめでとうございまーす♡」」」」」」」」

「ぉ…応…」

普段とは違う挨拶に、少しばかり戸惑う響。

 

「情報が早いな?…って お前等、誰から聞いた?」

「「「シイコ先生からでーす♪」」」

…らしい。

 

「…って早乙女せんせー、こーゆーのは私達にも直接、教えて下さいよ〜。」

「何の為に連絡先、交換してるんですか〜?」

「…応、すまない?」

悪戯な笑みを浮かべる教え子達からの指摘に、苦笑しながら謝る響。

しかし その顔は、締り無く緩んでいた。

 

「せんせー、写真、撮ってるんでしょ?

赤ちゃん、私達にも見せて下さいよ〜?♡」

 

▼▼▼

 

そして、年月は流れ…

 

 

        

 

 

 

 

 

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁ~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」

「どうしたんですか、早乙女先生?」

「永井先生…」

3月末日の昼過ぎ。

職員室にて、まるで この世の終わりかの様な溜め息を吐き、机に突伏している響に、先輩教師が心配そうに話しかけて来た。

 

「…これ。」

「はぃ?」

その教師に響は、1枚の用紙を見せる。

それは4月から響が受け持つ、新クラスの生徒が記された名簿。 

 

「理事長(あのヒト)、絶対にワザとだ…」

項垂れながら呟く響。

この年の響の受け持ちは1年。即ち新入生。

そして その名簿には知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)名(・)字(・)が、何人か有ったのだった。

 

 


 

20XX年度 1年A組 名簿

 

1:赤羽 渾(かおす)

    …

3:烏間 亜李奈(ありーな)

4:烏間 恵理菜(えりーな)

    …

7:潮田 あぐり

    …

 

 


 

 

「そしてコイツ等、 絶対に問題児だ!…少なくとも赤羽と烏間 ! !」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【完】

 




 
…そんな訳で、今回で『暗殺聖闘士』本編を完結とします。
一応、本当に最後として、番外編?を1つ2つアップします。
 
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