暗殺聖闘士   作:挫梛道

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テストの時間

中間テストはE組の生徒も本校舎で受ける決まりになっている。

E組教室の立ち会い…否、「見張り」を受け持つ大野が わざとらしい咳払いや貧乏揺すり、教卓を指で弾く等の雑音を立て、露骨に集中を乱す嫌がらせという完全アウェーの中、E組生徒は試験に取り組んでいた。

 

▼▼▼

その頃、殺せんせーは旧校舎のある山の上から、自分の生徒達がテストを受けている本校舎を眺めていた。

 

シュッ…

 

その背後から、殺せんせー目掛けて飛んでくる、対せんせーナイフ。

 

「本気なの? クラス全員50位以内に入らなければ出て行くって…」

ナイフを投げたイリーナが話し掛ける。

 

「はい。」

「出来る訳ないじゃない!

つい最近まで底辺の成績だったんでしょ、あの子等!」

ナイフを躱した殺せんせーの返事に、呆れ顔のイリーナ。

呆れながらも、その顔は険しい。

しかしながら殺せんせーは

「どうでしょう?

確かに最近とやら迄は知りませんが、今は私の生徒達です。

ピンチの時にも、ちゃ~んと我が身を守ってくれる…私が彼等に授けているのは、そういう武器ですよ?」

自信たっぷりの表情で言うのだった。

 

「はぁ…やれやれね。」

先程とは別の意味合いでの、笑みを含んだ呆れ顔をするイリーナ。

 

「…で、どうするの?」

「にゅ?」

「あの子達が全員、トップ50入りして、本校舎に復学。

E組(ここ)に誰も居なくなったら どうするのかって聞いてるのよ?」

「………………。」

E組救済処置システム…

定期テストで学年50位以内に入り、尚且つ元の担任がクラス復帰を許可すれば、差別対象であるE組から抜け出せる。

だが、元々成績不振だった上に、万端でない学習環境では、厳しい条件でもあった。

 

「あの子達、E組(ここ)に残るかしら?」

「ヌルッフフフ…」

イリーナの疑問に、殺せんせーは不敵な含み笑いをして…

 

 

「どどど、どうしましょう~~~~っ??」

大泣きしながらイリーナの足に しがみつくのだった。

 

「え〜い、離せ! このセクハラタコ!!

そこまで考えてなかったんかい!?」

 

▼▼▼

「うわぁ!」

「来た来た来た来た!!?」

数式という強固な鱗に被われた巨大な空飛ぶ鰐・問4がE組の生徒達を襲う。

 

「ど、どーすんだ、これ?」

「こんな問題(バケモノ)、ナイフ1本じゃ()れないよ!」

難問を前にして、完全に萎縮する生徒達。

 

「…よっと!」

「はいっ…と!」

その怪物の鱗に、冷静に対処、的確に刃を穿つ2人。

「慌てるな!大した問題じゃないぜ?」

「皆、落ち着こうよ?

あのタコに教わった事を思い出そう?」

「吉良…」

「カルマ…」

「「「「「「………………。」」」」」」

しかし、響とカルマが それを難無く攻略したのを見て、隣に居合わせる者同士が顔を向かい合わせ、無言で頷き合う。

 

「「「「「「「よし、殺ってやる!!」」」」」」」

E組の皆が、目の前の強大な問題に立ち向かっていった。

 

「落ち着いて!」

「殺せんせーの授業を思い出すんだ!」

「確かに凶悪レベルなテストでも…」

「何処かに攻略の きっかけがある筈だ!」

「1ヶ所ずつ問題文を見極め…」

「それらを…繋ぐ…!」

「そして、全身を見れば…」

「「「「「「「「解った!!」」」」」」」」

気付けば巨大鰐に見えていた問4は小さな青魚になっており、生徒達の手にしたナイフで三枚に降ろされる。

殺せんせーの授業の成果が現れ始めた。

問題文の重要部分の解析、解き方のコツ…

それ等を見極める力を、マッハの授業で教わった生徒達。

答案用紙にペンを走らせる その姿は、明らかに2年の3月に成績不振でE組行きとなった生徒ではなかった。

 

凶悪な牙を持つ肉食獣を連想させる問5

鋭い爪と嘴を持つ猛禽類を思わせる問6

火炎放射器を持つモヒカン男の様な問7…

 

その見掛けに惑わされず、次々と問題を解いていくE組の面々。

 

「…ぇ?」

しかし、問11…漆黒の闇を纏った影の巨人が背後から振り上げた狂爪の前に、殆どのE組生徒は力尽き倒れたのだった。

 

▼▼▼

2日後。

 

「…これは一体、どういう事でしょうか?

公平さを著しく欠くと感じましたが…」

烏間が本校舎に抗議の連絡を入れる。

テスト2日前に、出題範囲を全教科大幅に変更した事についてだ。

いや、変更云々ではない。

その事をE組側に伝えていない事についてだった。

しかし、本校舎側は、烏間サイドの連絡ミスの一点張り。

烏間は焦る。

 

  

あの理事長…自分の主義の為に()()迄やるか!!

椚ヶ丘は進学校。

直前の詰め込みに順応出来るか試すのも、教育方針の1つ。

その辺りは まだ良い。理解出来る。

問題は浅野學峯理事長自らが、本校舎側で変更部分の教鞭を取ったという点。

余計な妨害をしてくれた…

今、暗殺対象(コイツ)に このE組から去られたら、元も子もない!!!!

 

 

≫≫≫

E組教室では、当然の事だが、生徒達も沈んでいた。

 

磯貝悠馬……合計点数367点 学年69位

片岡メグ……合計点数364点 学年71位

竹林孝太郎…合計点数357点 学年77位

神崎有希子…合計点数350点 学年84位

       ・

       ・

       ・

潮田渚………合計点数315点 学年105位

       ・

       ・

       ・

       ・

       ・

寺坂竜馬……合計点数230点 学年161位

       (3年生徒数180人中)

 

自信はあった…

しかし、予想の遥か外から仕掛けられた問題(こうげき)に、為す術が無かった…

 

「……………………………………………………。」

だが、生徒以上に沈んでいる人物?が1人いた。

生徒達に背を向け、黒板の前で俯く殺せんせーだ。

 

「…先生の責任です。

どうやら この学校の仕組みを甘く見過ぎていた様です。

…君達に顔向け出来ません。」

「………」

殺せんせーの心情を察してか、生徒達も完全に黙り込む。

 

…………………………………………。

 

何の気配も感じさせない、無音の教室。

 

シュ…

 

「にゅやっ!?」

 

ガァン! カラン…

 

そこに、殺せんせーに向けて投げられたナイフが黒板に当たり派手な音を立て、静寂を破る。

 

「あ~、惜っしい!」

投げたのは赤羽カルマ。

 

「良いの~? 顔向け出来なかったら、俺が殺しに来んのも見えないよ~?」

笑いながら教室の前側に進むカルマ。

 

「か、カルマ君! 今、先生は落ち込んで…」

 

パサ…

 

「………?!」

怒る殺せんせーに、カルマは自分のテスト結果の用紙を見せる。

 

「俺、問題変わっても関係無いし〜♪」

 

赤羽業…………合計点数491点 学年4位 

 

「うおっ!?」

「マジか、カルマ…」

「すっげぇ…」

驚くE組の面々。

 

「俺の成績に合わせてさぁ、あんたが余っ計な範囲まで教えてくれたからさ。

そうだろ、吉良っち?」

「ああ、全くだ…!」

 

吉良響……合計点数498点 学年…1位!!

 

「な、マジかよ、吉良?!」

「うっそぉーっ!?」

「お前、アタマ良かったのかよ!!?」

「凄い! 吉良君 凄い凄い凄い!!」

さっきまでの静けさは何処へやら、一気に騒がしくなるE組教室。

 

「言っとくけど、俺はE組(ここ)、出る気は無いよ?

前のクラス戻るより、暗殺(こっち)んが、全然楽しいし。」

そんな中、カルマは言う。

 

「同じく。」

そして このカルマの発言に、響も同調。

 

「…で、どーすんの、そっちは?」

「全員50位に入んなかったって言い訳付けて、ここから尻尾巻いて逃げちゃう訳?」

「それって結局さぁ…」

「いやいやカルマ、流石に それは…」

「でもさ、吉良っち?」

「…あ〜、やっぱり? もしかして?」

ここで響とカルマは最高に()い顔で、

「「ビビってるんですかぁ〜? ビビってるんですかぁ〜? ビビってるんですかぁ〜? www」」

セリフエコー付きで、煽り言い放つのだった。

 

ピク…

 

この完全に人?を舐めきった挑発っぷりに、思わず頭に青筋を浮かべ、悔しい表情を浮かべる殺せんせー。

これを見た片岡メグが隣の席の前原に、何かの合図の如く、肘で突つく。

これに察する前原。

そして他の面々も、次々とアイコンタクトを交わして通じ合う。

 

「なぁーんだ。殺せんせー、怖かったのかぁ?」

「それなら正直に言えば良かったのにぃ〜?」

「ねー?『怖いから逃げだい』」ってw」

 

ピクピクピクピク…

 

笑顔を浮かべる生徒達からの集中口撃に、顔を真っ赤にして、頭中に血管を浮かべる殺せんせー。

 

「あんた達、あんまりイジメてやるんじゃないわよ!」

「え? ビッチ先生…?」

「おぉ~、イリーナ先生~!」

ここで生徒達を窘めたのはイリーナ。

まさかの発言に驚く生徒達と、不意に見せた優しさに、思わず号泣の殺せんせー。

 

「このタコね、逆に皆がトップ50入りして、本校舎に行ったら寂しい…って、あたしに泣きついた位なんだから!

あまり そんな事、言うんじゃないの!」

「にゃや〜?! それ、言っちゃダメなヤツ〜!」

 

どどっ!!

 

大爆笑に包まれるE組教室。

その時のイリーナは、先程の響とカルマ以上の()い顔だ。

 

「にゅや~~~~~! そんな事、言っていません!」

「へ~? なあカルマ、タコって寂しいとストレスで死ぬのかな?」

「ん? 実験する価値はあるかもね~?♪」

  

どどどっ!!!!

 

この2人の発言に、教室内は更なる笑いに包まれる。

  

「にゅや~~~~~~~~~っ!!!!

恐くて逃げませんし、寂しくもありませんし、それで死んだりもしません!

と・に・か・く! 期末テストでリベンジです! 倍返しですよ!!

てゆーか君達、いつまでも笑っているんじゃないですよ?!」

最高に顔を赤くしたタコが絶叫する。

 

「だいたい、何が可笑しいんですか?

悔しくないんですか、君達わ!!」

しかし、暫くの間、教室内の笑い声は止む事がなかった。

          

≫≫≫

そして その日の放課後、理事長室に数名の教諭と生徒が呼び出された。

 

大野健作(A組担任・3年学年主任)

瀬尾智也(A組)

烏間惟臣(E組(副)担任)

吉良響(E組)

 

「さて…今回、君達を呼んだ理由は解っているよね?」

椚ヶ丘学年理事長の浅野學峯が冷たい笑みを顔に出して問う。

 

「勿論。俺のA組復帰と瀬尾のE組堕ちについてですよね?」

響が意味深い笑みを瀬尾に向けて答えた。

 

「うぐ…」

顔を挽き吊らす瀬尾。

新学期前の3月、響がE組行きの理由となった『浅野・瀬尾血祭り事件』。

成績優秀者至上主義の椚ヶ丘で当時、転校したばかりの響は定期テストを受けておらず、成績未知数。

一方の瀬尾は成績上位者故、本来ならば響は先に手を出された被害者であるにも拘わらず、一方的に…正当防衛を通り越して過剰防衛感は否めないが、断罪されたのだった。

しかし響が その不当性が訴え、ならば次の定期テスト…即ち、今回の中間テストの結果次第で、当時の響の正当性の容認と、瀬尾の過失を認め、改めて処分するという約束を学年主任の大野と、響は理事長の前でしていた。

 

「先に言いますが、理事長先生?

俺がトップ取れたのは、結果からすりゃ、E組の先生方の指導による物ですから。

今更、本校舎でヘボ教師の授業を受けて、成績落ちるってのも馬鹿みたいですよね?

だから俺は赤羽同様、E組残留の方向で お願いしますよ。」

「だ、誰がヘボ教師だっ?!」

響の言葉に大野が過剰反応するが、

「大野先生…?」

「ぅ…」

理事長の言葉に黙り込む。

 

「ついでに言えば瀬尾(コレ)E組(ウチ)には要りませんから。

これは予め聴いておいた、クラス全員の意見です。」

後ろに立っている瀬尾を振り向かずに親指で差し、()()扱いで要らないと言い切る響。

 

「まあ、今回の試験で、『僕は悪くない』が証明された訳ですし、約束通り、瀬尾のペナルティーと、俺の不当にE組行きとなった、約2ヶ月分の賠償的?な件の話し合いとしましょうよ?」

まるで、某・過負荷の様な不気味な笑顔をして、自分中心に話を進める響。

とりあえず、響が求めたのは…

    

          

※3-E 吉良響はE組在籍だが、あらゆる権利や待遇を本校舎生徒同等とする。

※3-A 瀬尾智也はA組在籍だが、あらゆる権利や待遇をE組生徒同等とする。

具体例:

①学食や図書館等の使用禁止。

他生徒等の許可や同行は不認。

②本校舎のエレベーター使用禁止。

補足:足を怪我した等の場合、松葉杖や他の生徒のアシストを得た上で、階段を使用する事。

尚これは、過去に足を怪我したE組生徒の待遇の実例に基づく物である。

③全校集会等、全校生徒、或いは全同学年が集まる集会がある場合、E組生徒の最初の1人目が その場に来る前に直立して待機しておく。

…他々等々

※学内に置ける、授業必需品以外の購買の禁止。(パン、ジュース等)

※瀬尾智也の生徒会からの退会(今日付け)

…他々等々

※尚、上記に反したのが確認された場合、ペナルティーとして…

 

 

「よくもまあ、此処まで具体的に…

職員室で赤羽君や中村さん達と、何やら話しながらパソコンで打ち込んでいたのは これだったのか…」

A4用紙5枚に渡って書き込まれた事項を見ながら、呆れ顔で言う烏間。

あの時の響達に、角やら羽根やら尻尾やらが見えたのは、やはり幻覚では無かったと、少し疑ってしまう。

 

「瀬尾、コレ全て呑むか それともE組に来るか、好きなの選べ。

こっちの出した条件の譲歩や妥協は、一切認めんぞ?

尤も、オマエが今更E組に来たも…まあ、どーなるか想像付くよな?

あ、第3の選択肢。

この場で自主退学宣言♪

担任や理事長先生が居るから、余計な手間が省けるぜ?」

総合的に見れば、E組以下な扱いに成り得る部分があり、A組担任の大野が一部異を唱えるが、

「あー、分かりました。

じゃ、こっちの出した条件は、最初から無かった事にして、瀬尾はE組って事で良いですよ。」

この一言に瀬尾が待ったを掛け、響(達)の条件全てを受け入れる事で収まった。

因みに途中、大野や瀬尾が助けを求めるかの様に浅野理事長に顔を向けていたが、理事長はニコニコと微笑むだけで、何も言わず、大野達も黙るしかなかった。

 

「まあ、大野先生からしたら、悔しいでしょうねー。

あれだけの妨害工作やっといて、結局は俺がトップだもんなーw」

追い打ちに響がイヤミったらしく呟く。

「妨害…?」

「ほう…?」

響の言葉に烏間と浅野が反応する。

 

「何だ? 範囲変更は、其方の連絡ミスだろうが?」

大野が反論するが、

「いやいや、そっちでなくて…ゲホッゲホゲッホッ!」

わざとらしく咳き込むと、

 

DANDANDAN!DANDANDAN!DANDANDAN!DANDANDAN!

 

大きく音を立て足踏みしながら理事長の机の前まで歩み寄り、

 

タタッタタッタタッタタッタタッタタッ… 

 

机の上で指を弾き始める。

 

ゲホッ!ゲホゲホゲッホッ!

DANDANDAN!DANDANDAN!DANDANDAN!

タタッタタッタタタッタタッタッタタッタタッタタッタタッタタッ…

 

咳、足踏み、指弾きの三重奏…

 

「やかましい!」

たまらず大野が怒鳴りつける。

しかし、

「ですよねー。五月蠅いですよねー。

こんなの1限から5限まで1日中、テストやってる中で こんなの されたりしたら、堪ったもんじゃないですよねー?

それでも学年トップだった俺SUGEE!みたいな?」

「馬鹿な、俺は其処まで五月蠅くはしていないぞ!」

「な? 其処までって…?

アンタ、そんな事を…そんな事迄していたのか!?」

「いや、それは…」

響の言葉に言い返した大野の台詞に烏間が過敏に反応、大野を問い詰める。

『マジモード』の顔となった烏間に大野は何も言える心理状態ではなくなった。

 

「烏間先生、落ち着いて下さい、その件については後から大野先生に事情を聴きましょう。」

「…はい。」

浅野の言葉で烏間は退く。

 

「とりあえず、瀬尾君と吉良君の件は終わったから、2人は帰って良いでしょう。

吉良君の提示した件については、約束通り明日から、いや、今から実施しましょう。

とりあえず瀬尾君は、明日から2ヶ月の停学を、この場で正式に言い渡します。

それで宜しいですね?」

「…っ…は…い…。」

響の出した条件には、E組降格相当にも拘わらず、今まで温々とA組に居た分の罰として、同等期間の停学も含まれていた。

因みに これはカルマのアイデアである。

 

「では、失礼します♪」

「…失礼、します…」

響と瀬尾が退室した後も、理事長と2人の教諭の話し合いは続いたのだった。

 

 

瀬尾智也(A組)…停学2ヶ月及び生徒会除名

本校舎生徒としての あらゆる権利を無効、E組降格相当の待遇とする

 

大野健作(A組担任)…減給3ヶ月、及び学年主任退任

 

 




原作では大野は確かD組担任でしたが、この小説ではA組担任としておきます。
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