この小説の原作は『暗殺教室』です。
遥か昔のギリシャ・アテネ。
一般の者には、決して その存在を知られる事のない、
戦の女神、アテナを主神とする
その聖域の中にある、夜空に輝く黄道12星座を概念とした12宮と呼ばれる宮殿の内の1つ、巨蟹宮にて、1人の黄金に輝く鎧を纏った少年と、漆黒の鎧を身に着けた多数の男達が対峙していた。
「ら、ラダマンティス様ぁ!」
「はぁはぁ…冥界三巨頭って言っても、大した事ないんだね…」
少年の足元には、黒い鎧を着た男が倒れている。
「「「「「何だと、このガキがぁ!」」」」」
「「「殺っちまえ!」」」
自分達の上官に当たる男を倒した少年に、残る黒い鎧の男達が一斉に襲い掛かかる。
「ふぅ…」
圧倒的不利な人数差にも拘わらず、少年は一呼吸すると、右手人差し指を天に向け、
「積尸気冥界波ぁ!」
「「「「「ぅぎゃあーーーーーっ!?」」」」」
少年の指先から放たれた青白い靄の様な物が男達の体に纏わりついた瞬間、彼等は断末魔と共に全員が其の場に崩れ落ちた。
まるで身体から魂を抜かれた様に…
≫≫≫
「ふぅ~…」
目の前の敵を片付けた少年が一息ついた時、
「アセルス様!」
白銀の鎧を纏った少年を先頭に、色取り取りの鎧を身に着けた少年達が巨蟹宮に駆け込んで来た。
「君達は…ゴメン、そこの
アセルスと呼ばれた少年の言葉に、白銀の鎧を着た少年が答える。
「はっ! 私は
この巨蟹宮には、こちらの
「
メルヴィルと名乗る少年から紹介された、緑色に光る鎧を着た東洋系の少年が一歩前に出て名を名乗り、一礼した。
「アセルスだ。よろしく頼む。」
明らかに自分より年上であろうムソウに対し、高圧的に接するアセルス。
「メルヴィル。現状で冥界三巨頭の内、既に2人は倒してはいるが、此方も
油断は出来ないぞ。
だが、命を捨ても使命を果たすとか、その様な事は考えるな。
それは自己満足に過ぎない。
アテナも そんな事は望んではいない。
残る全員…生きて勝ち抜くぞ!」
「「「「「「承知!」」」」」」
「ではムソウを除く、他の者は、次の宮へ急ぐんdぁ痛たたたたた?」
「おいおいおい、10歳に満たないガキが少し生意気だぞ? コラ?」
「「「「て、テヅガぁ?!」」」」
少年の1人がアセルスの背後に立ち、こめかみに拳を押し当て、グリグリとしだした。
「痛い痛い痛い痛い! 兄ちゃん勘弁!」
「こ、こら、フェニックス!
貴様、何をやってるかあ?!」
ガン!
「痛!」
年齢は別として、上役に無礼する下っ端の図。
慌ててメルヴィルがテヅガと呼ばれた少年を、拳骨で止めに入いる。
「兄ちゃん酷いよ…
チクショウ、どうせ兄ちゃんは自分の師匠のスピカ姉ちゃ…
イジメられたってチクってやる…!」
「ゔ…す、すまない、俺が悪かった!
アセルスに慈悲の心があるなら、あの女にチクるのだけは止めてくれ! 頼む!」
両方の掌を合わせ、必死に謝るテヅガ。
「はぁ…分かったよ、もう、さっさと次に行きなよ。
てゆーか、全員さっさと行く! 駆け足!」
「「「「「「は、はい!」」」」」」
謝るくらいなら、最初からしなければ良いのに…と思いながら、ため息を吐き、この場に残るムソウ以外を次の宮に進ませるアセルス。
メルヴィルを先頭にテヅガ達は次の宮、獅子宮へ向かい走って行った。
「やれやれだ…テヅガ兄ちゃんは本当に勘弁して欲しいよ。」
「…何か、すいません。」
アセルスの愚痴に何故か自分の事の様に謝るムソウ。
「いや、君が謝る事じゃないし。
それより、
手伝ってくれるかい?」
「は、はい!」
アセルスとムソウは巨蟹宮に転がった
『スピカ姉ちゃん…聞こえる?』
『あら、アセルス? 何かあったの?
もしかして怪我したの? 大丈夫?』
『テヅガ兄ちゃんにイジメられた…』
『な、何ですって! あのクソガキィ…
分かった。今度 会ったら殺しとくから!』
普段は実の姉の様に慕っている、
▼▼▼
「!!アセルス様!」
「…ん。分かっている。」
巨蟹宮に攻めて来た
「既に白羊宮と金牛宮は実質素通りみたいな物だろうし、双児宮は…レックスさんタバサさん…両方、まだ帰って来てないみたいだし…
ムソウ! 僕達が実質、最初の守護者だ!
気合い入れていくぞ!」
「はい!」
カツン…カツン…カツン…
やがて巨蟹宮に侵入した1人の足音が響く。
そしてアセルスとムソウの前に、その姿を見せる侵入者。
「…お前は?!」
「そんな…お前は確かに俺が…」
「………………………………。」
ボロボロに割れ欠けした
「…………………………………。」
自分が倒した筈の男が、自分が死体を片付けた筈の男が目の前にいる。
目の前の敵は、そんな何故?を考える時間を許す事なく突進してきた。
「「!!」」
咄嗟に攻撃を躱す2人。
「…………………………………」
その2人に対し、無言で追撃のラッシュを仕掛けるラダマンティス。
「喰らえ! ノーザンライト・ブラスター!」
敵の猛追を避けながら
掌から放たれた
「やったか?」
しかし、ラダマンティスは、何事もなかった様に無言で起き上がると、再び、2人の若い
「そんな…確かに手応えあったのに…」
「下がってろ、ムソウ!」
アセルスが
「アクベンス・シュナイダー!」
放たれた
そう、まるで糸の切れた操り人形の様に…
「出てきなよ。居るのは分かっている。」
「ふっ…見事だ。若き
「なっ…お前達は…?!」
アセルスの呼びかけに対し、文字通り湧いて出たかの様に、無数の
「グフフ…こんなガキが
「さっき この巨蟹宮に攻めてきた奴等も、全く同じ事を言ってたよ?
そして、そのガキに殺られる
「何だと? このガキ!」
「アセルス様、ここは俺が!」
アセルスの前にムソウが出る。
「ガキ共が! 2人纏めて葬ってやるわ!この天敗s
「ノーザンライト・ブラスター!」
「ぎゃあーっ!…この、天b…」
しかし この
「ほう…
無数の
どうやら、この男が、この場の
「名乗らせてもらおう…。
冥界三巨頭が1人、天貴星グリフォンのミーノスだ。」
「三巨頭…!」
ムソウが構えを取ると、ミーノスもムソウに向けて掌を翳す。
…が、
「お待ちくださいミーノス様!」
「こんなガキ共、ミーノス様の手を煩わせる事もありませぬぞ!」
「ここは、我々が!」
ミーノス配下の
「…好きにしろ。」
「「「「「「はっ!」」」」」」
そして それに対するミーノスの言葉に、彼を除く
「「「ひゃっはー!」」」
「「「ガキ共、大人しく死ね!」」」
「舐めるな! 爆ぜよ! 俺の
ノーザンライト・デス・スター!!」
「「「ぎゃーっ?!」」」
「「「うわぁーっ!?」」」
しかしムソウの放った無数の光弾が、襲ってきた
「どうだ!…って、え?」
ガシィ!
会心のガッツポーズを決めるムソウ。
しかし次の瞬間、ムソウは後ろに居たアセルスに向けて拳を放ち、アセルスはそれを掌で受け止める。
「これは? 体が勝手に…?」
「コズミック・マリオネーション…
小僧。貴様は既に、私の操り人形だ。」
コズミック・マリオネーション…
「おい、この2匹は私が仕留める。
お前達は先に、獅子宮に向かえ。」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
ミーノスが残っている配下の
「くそっ! こんな糸、いつの間に?」
「ふっ…最初に貴様に手を翳した時、部下共が余計な口出しをしていた時には既に糸を放っていたのだよ!」
「くっ…!」
ガシィ! ガシィ! ガシィ!
ムソウが放つ拳や蹴りを、冷静に捌くアセルス。
「成る程ね…さっきのラダマンティスと同じな訳だ。」
アセルスは冷静に分析すると
「アクベンス・シュナイダー!」
ラダマンティスの時と同様、
「はぁ、はぁ…」
ガクッと両膝両掌を床に着け、荒い呼吸をするムソウ。
自身の耐えうるスピード…音速の遥か上、光速に近い速度で無理矢理に体を動かされていた反動で、ムソウの肉体は限界に達していた。
「ムソウ…少し休んでいろ。コイツは、僕が倒す!」
ガシィ! ドガッ! ドゴ! ズガッ!
そして激しく ぶつかり合う、アセルスとミーノス。
「こ、これが
何かが高速…否、光速で ぶつかり合う様な音は聞こえているのだが、既に2人の姿は、ムソウには目で追えず。
「ふははははははははははは!
素晴らしいぞ少年よ!
どう? 今からでも遅くはない、ハーデス様に忠誠を誓う気はないか?
今なら私が口添えしてやるぞ!」
「寝言は死んでから言ってくれないかな?」
幾千幾万の拳を、蹴りを互いに撃ち合いながら会話をする2人。
「そうか…それは残念だ!ならば死ね!
コズミック・マリオネーション!」
ミーノスの両掌から放たれた不可視の糸がアセルスに纏わり憑く。
「………………………………………。」
「ふはははははははははは! 終わったな.少年。
これで貴様も、私の操り人形だ!
手足を有り得ない方向に曲げて捻じ切って、達磨にしてやろうか?
いや…その前に、そこで膝を着いて動けない
「な…!?」
「………………………………………。」
ゆっくりと歩き出してムソウの前に立つアセルス。
「アセルス様!」
ムソウの呼びかけも虚しく、アセルスが右手を手刀の形にして右腕を上げた瞬間…
「ふはははははははは! さぁ、殺せ!
貴様 自らの手で己の仲間を殺すがいい!」
ボゥワ!
「な、何だと?!」
アセルスの体全体から、青白い焔吹き出て、
「こ、これは…?」
「積尸気鬼蒼焔。本来は積尸気冥界波で引き抜いた魂を直接燃やす技なんだけど…
先にムソウに技を仕掛けたのは、はっきり言って失敗だったね。
「ば、馬鹿な! 私の技は完璧だ!
くらえ! コズミック・マリオネーション!」
「無駄だよ! アクベンス・シュナイダー!」
「ぐはぁ…!」
「まだまだ! 積尸気冥界波!」
「ぬぅああああっ?!」
そして続け様、ミーノスの肉体から魂を引きずり出し、
「~か~ら~のぉ、積尸気ぃ魂葬破ぁ!!」
ドゴォオオオン!!!!
その魂を大爆発させた。
「す、凄い! アセルス様!」
ムソウが思わず喜び勇んで叫ぶが、
「…あちゃあ…しくった…」
「え?」
ぽた…
「ふっくくくく…只では死なん。
少年、貴様も道連れだ…」
「ミーノス! まだ生きていたか!?」
ムソウが叫ぶ。
「くくくくく…コズミック・マリオネーションの糸には1本だけ、デュランダル・ストリングと言われる絶対破壊不可の糸があるのだよ…
その糸で、貴様の心臓を貫かせて貰った…
…こんな風にな!」
ドスドスドスドス!
破壊不可の糸が生きているかの様に動き、アセルスの心臓を
プシャー!
心臓部、体の前後から、糸が開けた無数の穴から一気に血が、勢いよく吹き出した。
「く…」
膝を着き、アセルスは其の場に倒れる。
「少年…先に…地獄で…待って…るぞ…」
その一言を最後に、ミーノスは動かなくなった。
そして…
「アセルス様! しっかりしてください!」
ムソウが自身も動くのは儘ならない体を動かし、アセルスを抱きかかえるが、
「ムソウ…悪い。
僕はもう、駄目っぽいよ…。
あはは…自分で死ぬのは許さないとか言っおいて、凄く格好悪いね…」
「アセルス様、喋らないで!」
ムソウが自らの
「まあ、良っか…
とりあえず これで三巨頭は全て倒れたし、後は残った
ムソウ…君にも期待してるよ。
…スピカ姉ちゃん…ごめんね…」
次第に少年の視界は黒に染まる。
「アセルス様、アセルス様ぁ!」
アセルス様、アセルス様ぁ!…♪♪♪♪♪
そして暗闇の中、いつまでも巨蟹宮に響き渡るムソウの叫ぶ声が、いつしか軽快な音楽に変わっていった…♪♪♪♪♪♪♪♪♪
▼▼▼
『♪〜♪♪♬♬♪♪〜』
スマホが軽快な音楽を鳴らし、着信を報せている。
ピッ…
「Ναι…?」
『もしもーし!ひーびきぃー!
起~きてる~?』
「!!…その声…晴華? 一体、何事?」
吉良響がベッドの中から枕元に置いてあるスマホに手を伸ばして出てみると、その向こう側からは、元気な少女の声が。
『何って、響が昨日、「二度寝したら遅刻したw」とかメールしたから、わざわざ優しい優しい彼女様がモーニングコールしてやったんじゃないの!
まだ寝ぼけてんじゃない?
てゆーか電話 出た直後の『ね』って何?
日本語の発音じゃなかったよ?』
「何でもねーよ。晴華…ありがとな…」
『じゃ、もう大丈夫みたいね?
あたしは また、寝るから~。じゃ、お休み~♡』
ピッ…
「……お前は寝るんかい?
夢だったか…久しぶりだな、あの時の夢を視るのは…」
ベッドから起き上がる響。
「さて…と、それじゃ行くか!
流石に2日連チャンで遅刻はマズいよな…」
【
ギリシャ起源の星座じゃない、今作品のオリジナル
因みに北斗七星、ギリシャ神話では、大熊座の尻尾の部分だったりします。