暗殺聖闘士   作:挫梛道

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旅行の時間:3時限目

≪≪≪

時は ほんの少しだけ巻き戻る。

レッドアイが三寧坂での殺せんせー暗殺を試みていた頃、渚達も自分達が暗殺計画に選んだ場所に足を運んでいた。

この京都で、渚達4班が暗殺の舞台に選んだのが…

 

「へ~? 祇園って奥に入ると、こんなに人気無いんだ…」

「うん…一見さんお断りな店ばかりだから、目的もなくフラッと来る人もいないし、見通しが良い必要もない…」

茅野の呟きに応えたのは、この祇園町を推した神崎有希子。

 

「だから、此処を選んだって訳ね?」

「ん~♪ 暗殺にはピッタリかもね~?」

「流石 神崎さん、下調べ完璧ですぅ!」

「ん! 凄いよ!神崎さん!!」

 

ザッ…

 

「こんな人気ない所で、何をしようとしてるのかな~? 中学生?」

「何かイケない事でも、しようとしてたんでね?」

「なぁ、俺等も混ぜてくれよ? ケケケ…」

「「「「「!!?」」」」」

そこに現れたのは、如何にも「俺等、バッカで~す!」な風体の3人の高校生だった。

 

「…何、お兄さん等?

観光が目的っぽくないんだけど?」

「男に用は無ぇーよ。

女 置いて、とっとと消えな?」

既に分かってるけど、一応は聞いてみますよ、という、人を舐めた表情のカルマの問い掛けに対し、ガタイの良い、坊主頭を金髪に染めた男が口を開いた直後、

 

ドガッ!ガン!

 

「ごっぷ?!」

カルマの掌打が金髪坊主男にアッパー気味に決まり、その儘 顔を鷲掴みにして、後頭部を電柱に思い切り打ち付ける。

 

ドン!ビシ!ズガァッ!

 

「ぬぺらっ!?」

「わをん?!」

そして それと同じタイミングで、響が残る2人の内の1人の胸元に、体当たり式の肘鉄から顔面への裏拳を見舞わせ、更に振り向き様に、もう1人の鳩尾にソバットを炸裂させる。

3人の高校生は、あっと言う間に地面に這いつくばったのだった。

 

「「「く~……」」」

「ホラね、渚君。目撃者居ないトコならケンカしても問題ないっしょ?」

「ああ、全く…だ…!」

 

パチィ-ン…!

 

良い音を鳴らして、ハイタッチする響とカルマ。

 

(((最凶のコンビだ!)))

この時、渚、茅野、杉野の3人は、彼等の背後にモヒカンヘアで顔にはペイントを施し、そして無数の棘が付いたプロテクターを着込んだ2人のプロレスラーの姿を確かに見たのだった。

 

「ああ。ケンカには、打って付けな場所だな…?」

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

ゾロ…

 

しかし其処に…細い路地の前後から、合計で約10人の高校生達が新手として現れる。

 

「挟み撃ちね…」

「渚、杉野!お前等は女の子、きっちりガードしとけ!」

「ぉ、おぅ…!」

「うん!」

「(ボソ…)神崎さんに良いトコ見せるチャンスだぜ?」

「な!? き、き、き、きらあ?」

「?」

響が杉野の耳元で囁くと、瞬時に顔を真っ赤にして動揺しまくりな杉野。

彼にとって幸い?なのは、神崎自身が、今の響との やり取りで何があったのか、分析が出来ない(この分野では)天然さんだった事だろう。

 

「あっ!この人達…!」

「「「えっ…?あぁっ…!」」」

奥田愛美が思い出したかの様に声を出すと、渚、茅野、神崎も続けて声を上げた。

 

「新幹線で擦れ違った高校生…?」

「ご名答~!はい、正解の景品~♪」

 

ポイ…

 

リーダー格の男が神崎に向けて、手帳の様な物を放り投げる。

 

「あ…これは、私の栞…?

無くなったと思ってたら…」

「あんた達が、あの時に掏ってたのね?」

茅野が男を睨みつけるが、リーダー格の男…リュウキは臆する事無く、口を開く。

 

「くくく…駄目だぜ、中学生?

こんなに細かく予定を、住所なんかまで書き込んじゃってよ~?

こりゃ『どーぞ攫って下さい』って言ってるのも同じだろ~?♡」

「………!?」

下衆な発言に絶句する神崎。

 

「大丈夫…神崎さんは悪くないから…

自分の責任と思っちゃダメだ!」

「杉野君…」

ここで透かさず杉野がフォローに入る。

 

((お、杉野、やるじゃん!))

これに響とカルマが、心の中で呟いた。

ただ2人には、純粋に仲間思いなナイスな奴という感想な響に対し、カルマは悪魔の角と羽根と尻尾を生やし、邪な笑みを浮かべて興味深く観察しているという違いがあったが…

 

「どーでも良ーから、男は女 置いて、さっさと失せろや!

そーすりゃ見逃してやる!

どーせ、戦力になるのは、その2人だけなんだろ?

それが この人数差でも、どーにか出来るつもりでいるのか?」

動じる気配が余りない中学生達に、少し苛ついたリュウキが口早に言い放つ。

 

「へ~?本当に女子を置いて行けば、俺等 男は見逃してくれる訳?」

このカルマの言葉に対して

「ああ、約束するぜ?」

リュウキは男には興味無し…と、ばかりに言うのだが、

「「だが、断る。」」

当然の如く、言い切るカルマと響。

 

((((((( なっ…?)))))))

この時、この場にいる全員が、2人の頭上に あの伝説の漫画家の姿をイメージしたのは言うまでもないだろう。

ついでに言えば、もしも この場にクラスメートの不破優月が居たら、涙を流して感動していたに違いない。

 

「悪いな、それは男として、絶対にやっちゃイケない行為の1つだぜ?」

「吉良っち~?こーゆー輩に『NOと言うのが大好きだ』…で、良いんじゃない?」

そして煽りに入る、E組危険人物コンビ。

 

「テメェ等…巫山戯やがって…!

おい、コイツ等、殺って犯るぞ!!」

「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」

この2人の台詞に釣れたが如く、完全に頭に血が登った高校生達が襲い掛かってきた。

 

≫≫≫

「うぅ…」

「クソッ…」

「ガキ…がぁ!!」

「ん? もう終わりか?」

「情けないねぇ~? 10数人掛かりで、そのガキ2人に瞬殺される高校生って…何なの? 括弧爆~♪

ねぇねぇ、今、どんな気持ち?どんな気持ち?www」

「「「「「「~~~~~~!!」」」」」」

所謂、『(爆)』を、わざわざ言葉として言い放つカルマ。

結果から言えば、この高校生達に、E組最凶コンビの相手は無理ゲー過ぎた。

 

「ちっ…巫山戯やがって!

エリート学校はケンカもエリートってか?」

腹を押さえ、舌打ちしながら、リュウキが吐き棄てる。

 

「エリート? 兄さん達、勘違いしてね?」

それに返したのはカルマ。

 

「何だと?」

「確かに俺等、一応は名門校だけどさ、校内では落ちこぼれクラスなんだぜ?」

「ああ…でも、俺等は お前等クズ共と違って、他人様に迷惑を…掛けたりは…しないぜ…ん、しない。」

「吉良君…其処は自信持って言おうよ…」

「少し前までは、学校内の差別対象にされて、自分に自信が持てなくて無気力だった時もあったけどさ…」

「そ、そうです!今は…」

響達は まるで示し合わせたかの様に言葉を並べていくのだが、リュウキに その声は届かず、

「五月蝿ぇ!そんなの知るかよ!!」

「きゃあ!?」

「「「「「「神崎さん?!」」」」」」」

一瞬の隙を突き、神崎の腕を掴むと、攫う様に逃げ出したのだった。

 

「ちぃっ!」

 

タッ…

 

「吉良!」

「吉良っち!」

「「「吉良君!」」」

直ぐに行動を起こしたのは響。

 

「渚! お前は女子を連れて、人通りの有る広い場所に出とけ!

カルマと杉野は そこに倒れてる奴等を見張ってろ!」

「「お、おぅ…」」

渚達に指示を出すと、リュウキと神崎を追って走り出した。

 

▼▼▼

「乗れよっ!」

「きゃっ…?!」

京都到着早々、盗んだワンボックス車。

予め、すぐ傍に停めていた車の後部席に神崎を無理矢理に押し乗せたリュウキは運転席に入る。

 

「神崎さん!」

それを見つけた響も、車に向かってダッシュする。

 

「いくらなんでも犯罪ですよ?」

「言ってんなよ? 知ってるんだぜ?

他のエリートちゃんは知らねーが、お前は俺等と同類だろ?」

「…!!」

自分達と『同類』という言葉に反応して、過敏に反応する神崎。

 

「お前は人質だよ!

奴等は後で、きっちりと制裁くれてやるからよぉ、それまで楽しもうぜぇ!!」

「…!!」

そう言いながら、リュウキはエンジンを回すのだが…

 

プスプス…

 

「ん?何だ? さっきまでは普通に動いていたんだぞ? ちぃっ!?」

 

プスプス…

 

何度もエンジンを回そうとするが、一向にエンジンは掛からない。

そうしている内に、

 

ガチャ…

 

「どうした?エンジンが掛からないか?

バッテリー内の電気が飛び散って、ついでにガソリンも全部、何処かに消えて行ったんじゃないのか?」

「な…!?」

 

バギィッ!!

 

「どふらみんご!?」

運転席の扉を開け、リュウキを引きずり降ろした響は、その誘拐犯の顔面に、強烈な膝蹴りを見舞うのだった。

 

「吉良君…」

「神崎さん、大丈夫?」

神崎を車から降ろし、無事を確認する響にリュウキが口を開いた。

 

「くくく…何だソイツ? お前の女だったか?」

「「え゙??」」

「その、如何にも清楚な大和撫子な見た目に惚れたってか?」

「いや、ちょっと待て?」

「ケッ! お前はコイツを見ても、今までと同じ接し方が出来るか?」

何だか少し、勘違いしているリュウキは そう言うと、懐からスマホを取り出し、記録データから1つの画像を画面に表示して響達に見せつけた。

 

「これは…?」

「…!」

思わず それを刮目する響と、目を背ける神崎。

そこには長い髪を茶色に染め、やさぐれた格好の目つきがキツい少女が写っていた。

 

「去年の夏頃のゲーセンだけどよ…

これ、お前だよな?

まさか、名門校の生徒様だったとはな~?

常連みたいだったから、仲間と攫う計画してたんだけどよ、いざ決行しようと思った途端、ゲーセンから姿を消してやんの。」

下衆な笑顔でリュウキは話し続ける。

 

「残念だったな?

彼氏君に正体バレちまってよ?

まあ、心配するな、俺等は そんなの関係なく可愛がってやr(ドガッ)ばれらぁっ?!」

だが、喋っている途中で響の左拳がリュウキの顎を撃ち抜いた。

 

ガシャーン!…グシャ!!

 

「あーっ!?」

そして響はスマホを奪い取ると、勢い良く地面に叩きつけ、更に思い切り踏み潰す。

 

「ふーん…で、だから、何?」

事も無げに言う響。

 

「昔は知らんよ? 大事なのは今だろ?

さっきも言いかけたけど、俺達はエリート校の中のバカクラスでよ?

確かに少し前までは、人生終わらせてた感じな奴も居たぜ?

でも、担任のタコ教師の御陰で、今は色々と前を向けれる様になりつつあるんだ。

少なくとも、テメェ等みたく、他人様を自分の負け犬人生の巻き添えにする様な事はしない。

エリート校?バカ学校?関係無いね…。

大事なのは今…今 何をしてるかなんだよ!」

「吉良君…」

「まあ、お前みたいな奴は、口で言っても解らないよな?

1度、死んでみるか?

あ、それから…俺と神崎さんは、そーゆー関係じゃ、無い!!」

 

バギィッ!!

 

再度、響の左の拳がリュウキの顎を撃ち抜いた。

その場で まるで身(・)体(・)か(・)ら(・)魂(・)が(・)抜(・)け(・)た(・)かの様に、意識を失うリュウキ。

 

「吉良君…この人、生きてるよね?」

先程からのバイオレンスな場面に、ややドン引き気味な神崎。

 

「ん? 勿論。おら、起きろや!」

 

ドカッ

 

「うげっ?!」

響が倒れ込んでいる男の腹に蹴りを入れると、リュウキは目を覚ました。

そして…

「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!??」

これ以上ない位な、怯える表情を見せるリュウキ。

 

「(ボソ…)どうした? まるで黄泉比良坂の奈落の底に堕ちる、亡者共の葬列を見た様な顔だな?」

それに神崎に聞こえない様に、耳元で囁く響。

 

「ひいぇっ!?」

 

▼▼▼

 

ドサッ…

 

「吉良っち、おかえりー♪」

完全に戦意を喪失したリュウキを引きずりながら、カルマ達の元に戻った響。

直ぐにリュウキを、他のダウンしている不良学生の固まりの中に倒し入れた。

 

「吉良! 神崎さんはっ?」

響に杉野が問い掛け、

「既に茅野ちゃん達と合流させてるよ。」

「そ…そうか~! 良かった~!」

響の言葉を聞いて、自分の事の様に安心する杉野。

 

「「杉野、行って良いよ…」」

「え? あ…さ、サンキュ!」

それを見た2人の台詞に、遠慮する事なく、杉野は走って行った。

 

「さて…俺達も最後の後片付けを済ませて逃げようぜ?

…それじゃ、吉良っち、カメラマンよろしくね~♪」

「了〜解♪」

そう言うと、2人は『記念撮影』を開始したのだった。

 

「(ボソ…)本当は こんな撮影、必要ないんだけどね…」

「ん? 吉良っち、何か言った?」

「いや? 別に?」

カルマは知らなかった。                  

リュウキを含む この高校生達は、既に響の放った『幻夢拳』によって、この数時間の記憶が完全に消されている事を…

そして、更に数日後には、生(・)ま(・)れ(・)て(・)か(・)ら(・)今(・)ま(・)で(・)に(・)体(・)験(・)経(・)験(・)し(・)た(・)、あ(・)ら(・)ゆ(・)る(・)全(・)て(・)の(・)記(・)憶(・)が完全消去される様に仕込まれている事を…

                  

 

俺も甘くなったな…

少し前なら、迷わず殺ってる処だぜ…。

まあ、コイツ等は この儘生きていても、世の害にしか成り得ないからな…

もう一度、何の言葉も解らない赤ん坊から やり直せ?な?

 

                         

≫≫≫

「渚く~ん!神崎さ~ん!」

「杉野~、茅野ちゃ~ん、奥田さ~ん!」

「あ、カルマ君、吉良君!」

そして渚達と合流した響達。

 

「向こうは片付いた?」

「ああ、口止めバッチリだよ?」

角と羽と尻尾を生やし、邪悪な笑みを浮かべるカルマ。

 

「ははは…」

それに対し、疲れた様な顔をして笑う渚。

 

「渚、今回のコレ、一応は殺せんせーと烏間先生には、班長として報告しといたのが良いぜ?」

この響の言葉に、

「ん。もう、連絡したよ。後は殺せんせーが、上手くやってくれるってさ…」

意外と?仕事が早い渚。

 

「それからね…」

「「はぁいぃ?」」

今日、渚達が計画していた暗殺を、レッドアイがキャンセルを申し出たらしい。

何でも、失敗の連続で心が折れたとか。

 

「正直こっちも、殺る処じゃなくなったけどさ~、心を折るって…

殺せんせー、1、2、3班の暗殺、一体どんな風に あの人の狙撃を躱した訳?」

…八ッ橋で弾丸を防いだり、殺陣に参加して撹乱したり、あぶらとり紙で弾丸を止めたりである。

 




 
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