梅雨が明けた。
「アウトドアの季節だな~!
どっか野外で遊ばね?」
旧校舎の山を下り、校門に向かう響、渚、カルマ、杉野。
「ん、何しよっか?」
杉野の言葉に渚が乗じる。
「じゃ、釣りは?」
「お、いいな。今頃って何が釣れる?」
カルマの案に、竿を振るポーズをしながら響が聞くと、
「吉良っち。夏ばYankee゙が旬なんだ。
渚君を餌にカツアゲを釣って、逆に金を巻き上げよう♪」
くいっと竿を引くポーズを取りながら、カルマが答えた。
これを聞いた渚が、ヤンキーに旬とかあるのかと突っ込む前に
「よ~っし、渚!」
「はい?」
響は渚の肩に腕を回し、
「早速、バカ共が屯ってる、駅前のコンビニに行こーぜ!
欲しいアルバムがあるんだ♪」
「やっぱし…」
≫≫≫
「ん?お~い! 杉野じゃないか!」
「進藤…」
校内の野球グランドの脇を通ってると、練習していた野球部員の1人に呼び止められた杉野。
声を掛けられたからには、無視というのもアレなので、響達と一緒にフェンスに近寄っていく。
「久しぶりだな~。」
「偶には顔出せよ~!」
「はは…バツ悪いし、縁起悪いだろ?」
「何言ってんだよ、オメーは!」
E組の杉野に対し、フレンドリーに話し掛ける野球部員達。
どうやら彼等は、少なくとも元同僚の杉野に対しては、差別意識は持ってないみたいだった。
その様子を何気に緩んだ、そして少し驚いた顔で見る響達。
「今度の球技大会、お前が投げるの?」
「お?まあ、ウチのクラス、経験者が俺だけだからな~。そうなるんじゃね?」
「よし、予告ホームランだ。」
「今からかよ! 進藤、早ぇーよ!」
「ははは…楽しみにしてるぜ。」
久しい面々と会話が弾む杉野。
そんな中…
「お前等、そんな奴等と駄弁ってないで、さっさと練習しろ!
進藤、お前もキャプテンなら、その辺の自覚を持てよ!」
「「楫木…」」
1人の野球部員が口を挟む。
「杉野、お前も少し声を掛けられたからって、E組如きが調子に乗って俺達と会話してんなよ。
てゆーか直ぐに消えてくれないか?
俺達はお前等と違って、毎日遊んでられる訳じゃないんだからな!」
「………!」
「「ほほぅ…!?」」
響とカルマの目の色が変わる。
「お、おい、楫木、止めろって!」
それを察してか、他の部員が楫木という部員を止めに入るが、
「何を止めろと? 教えているだけだろ?
俺達は勉強部活、こいつ等とは違って、両方に真剣に取り組まなきゃいけないから、毎日ヘトヘトなんだってな!」
この楫木の言っている事は正論かも知れないが、文句を言っている その顔は、練習の邪魔をされたという憤りの表情ではなく、一般の本校舎生徒と同じく、ENDのE組を見下している それであり、それ故の発言であるのは明らかだった。
「止せって!」
モブな野球部員が止めに入るが、この楫木の杉野を始めとする、E組に対する口撃は止まらない。
「ふん、進学校での部活との両立…
する必要のない、選ばれられなかった人間には分からんだろうがな!!」
「「ほほ〜う…?!」」
「ちょ…カルマ、吉良、抑えろ!」
ヤバい空気を感じた杉野と渚が、慌てて抑えに入るが、
「へーぇ、凄いねぇ?」
「まるで、『俺達、選ばれた人間ですぅ♪』って感じだな?」
今まで黙っていた、E組最凶な2人が ついに口を開いた。
「あぁ、そうだが?」
しかし、臆する事なく言葉を続ける楫木。
「気に入らないか?
だったら来週、このグランドで教えてやるよ。
人の上に立つ選ばれた人間と そうでない人間、この歳で開いてしまったら大きな差ってヤツをn
「もう いい!練習に戻るぞ!」
余りに見かねた進藤が、楫木をマウンドに引っ張って行く。
「離せ進藤!まだ全部、言い終わってないんだぞ!」
「「「「「「「「……………。」」」」」」」」
どうやら楫木は、やはり単に、E組相手にイヤミを言いたいだけな様であった。
「すまんな、杉野…」
「いや、アイツは昔から、あんなだし…」
「…じゃ、俺等も練習に戻るわ。」
「おぅ、じゃあな。」
杉野達と野球部員、グランドと校門に、それぞれ向かって行った。
「杉野!」
「?」
ここで、1人の部員が杉野を呼び止める。
「球技大会、
「おぅ、当然だ!」
野球部の言葉に、杉野は拳を前に突き出して応えた。
▼▼▼
次の日の、帰りのホームルーム。
「ヌルフフフフフ…
クラス対抗球技大会ですか…?
いやいや、健康な心身をスポーツで養う、大いに結構!」
球技大会の知らせのプリントを見て、感心する殺せんせー。
「…しかしトーナメント表に、E組が無いのは どうしてですか?」
「E組は本戦にはエントリーされないんだよ、殺せんせー。」
「1チーム余るって素敵な理由でね~。」
殺せんせーの疑問に、三村と中村が答える。
「その代わり…大会の〆のエキシビションに出なきゃなんない。」
「エキシビション?」
「要は見せ物だよ。」
クラス委員の片岡メグが、イマイチ把握出来ていない担任に説明する。
「全校生徒が見てる前で、男子は野球部、女子はバスケ部の選抜メンバーと戦らされんの。」
「ふむふむ…」
「一般生徒の為の大会だから、部の連中は本戦には出られないからね。
だから、皆に力を示す場を設けたって訳。
トーナメントで負けたクラスも、E組がボコボコにされるのを見て、スッキリ終われるし、『E組に落ちたら、こんな恥掻きますよ~♪(笑)』って警告にもなるって感じ?」
「なるほど…い・つ・も・の…ヤツですか…」
「そ。何時ものヤツ♪」
やや引き顔の担任と、その様な試合に引っ張り出される割には、楽しそうな顔をしているクラス委員。
「でも心配ないよ、殺せんせー。
暗殺で基礎体力ついてるし。
良い試合して、全校生徒を盛り
「「「「「「「お~ぅ!!」」」」」」」
そんな女子達の士気が上がる中、
「悪いが俺等、晒し者とか勘弁だぜ。」
場の空気を読まない発言をする者が。
「お前等だけで、テキトーやってくれ。」
「じゃ、そーゆー事で。」
寺坂、吉田、村松は教室を出て行った。
「…ったく、アイツ等!」
「放っておけよ磯貝、始める前から諦めて試合終了してる奴等なんか、最初から居ない方がマシだぜ?」
「吉良ぁ…」
寺坂達と同じ位、もしかしたら それ以上に響の
「まあまあ、…でだ、野球となりゃ、頼れるのは杉野だけど、何か勝てる秘策って ねーの?」
前原が杉野に話を振る
「………。」
神妙な顔になる杉野。
「…正直、厳しいさ。
最低でも2年間、野球してるアイツ等と、殆ど素人同然な
もう勝ち負け以前の問題だよ。」
「おいおい、杉野ぉ~…」
「それにさ、かなり強いんだぜ? ウチの野球部ってさ…
キャプテンの進藤は超中学級のスラッガー。
そしてピッチャーの楫木は
「あ、昨日の嫌~っな奴ね?」
「…そうそう。アイツって俺からエースの座を奪ったヤツなんだけどさ。
アイツも豪速球で、それぞれが色んな高校からも注目されているんだ。」
「マジか…」
「人間って不公平だよな、勉強もスポーツも一流とかってさ…
だけどさ、皆…」
「杉野?」
「だけど勝ちたいんだ。善戦でなくて勝ちたい!
好きな野球で負けたくない。
野球部追い出されて
…
「杉野…」
「杉野君…」
「…まぁでも、そんなの無理だよな、殺せんせぃいい?!」
其処には、杉野の言葉に生徒達が注目している隙に、マッハで野球のユニフォームを着て、わくわく顔なタコがいた。
「おっ…ぉう…殺せんせーも野球したいのは、よく伝わった。」
「ヌルフフフフフ…先生、一度で良いから、スポ根な熱血コーチをやってみたかったんです。
殴ったりは出来ないので、卓袱台返しで代用しようと思ってます。」
「「「「「用意良過ぎだろ!!」」」」」
その手には、きっちりと「卓袱台返しセット」を持っている殺せんせー。
「今の杉野君みたいに、最近の君達は目的意識を はっきり口にする様になりました。
殺りたい…勝ちたい…
どの様な困難な目標に対しても、揺らぐ事無く…退かず、媚びず、省みずに!!」
「いや、無理に使わなくて良いから…」
「言いたかっただけだよね?」
「…おっほん!その心意気に応えて!
この殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!!」
≫≫≫
「そういう訳で烏間先生、この1週間は、放課後は野球とバスケの練習をしたいのですが…」
烏間に、球技大会までは放課後の暗殺特訓を休みたいと申し出る生徒達。
「いや、君達の殺る気と やる気は理解しているつもりだ。
それにだ、あのタコも俺に相談に来たよ。
野球、バスケと暗殺を両立させる様なトレーニングメニューは無いかってね。」
「殺せんせー…」
「だから、男子の野球の練習に関しては、俺も少し、口を出させて貰う。」
「女子は?」
「園川に頼んだ。」
「よろしくね。」
烏間の部下の1人で唯一の女性である園川雀(25:独身)が1歩前に出る。
「え、園川さん?」
「雀さんが?」
「彼女は中学高校での部活経験者だ。
力になってくれるだろう。」
「「「「「「「おぉ~!♪」」」」」」」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ…
経験者と聞き、女子から拍手で歓迎される園川。
「…じゃあ園川、女子の方は頼んだぞ。
それでは男子は早速、グランドに集合!
強豪と云われている この学校の野球部が どれだけ厳しいかは知らんが、俺の方が もっと厳しい自信はあるぞ!」
「「「「「「「うっわぁ…凄く嬉しいけど ちっとも嬉しくねー!!」」」」」」」」
この時の烏間の顔は、凄く活き活きとした
「片岡さん、本当に私、試合に出なくて良いんですか?
このシュート成功率100㌫アームがあれば、スリーもガンガン決められて、絶対に勝てますよ?」
「あ…いや…律、少しは あっちにも、ハンデあげないとね…」