暗殺聖闘士   作:挫梛道

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作中の女子バスケの試合は、3ピリオド30分と設定します。
 




バスケの時間

「うがががががが…!」

「茅野っち、落ち着け!!」

本校舎エリアの体育館。

球技大会エキシビションマッチ、女子バスケットボール部vsE組女子の試合が始まろうとしていたが…

所謂、巨乳揃いのバスケ部スタメン(1名除く)に対し、E組スタメンの約1名が、まるで親の敵の如く尋常でない殺気を発散、チームメイトが必死に宥めていた。

 

「そんなに いきり立っても無駄よ?」

「「「「「!!?」」」」」

其処に公式戦用の緑色のユニフォームを着た、女子バスケ部主将の掛布ランディバーが前に出る。

 

「持つ者と持たざる者の違…あんた達にハッキリと教えてあげるわ。」

「「「「「あ゙っあ゙ぁ!?」」」」」

そして この、完璧に人を見下した一言に、E組女子が素直に反応。

 

「な、何よ? アナタだって大した事ないってゆーか、あたしより持ってないじゃないのよ!!」

「はぁあ゙!?」

更には、E組の約1名が違う方向に向けられたベクトルの怒りの発言に、その意味を察し、尚且つ自身にとって禁忌だったのか、過剰に反応する掛布。

 

バチィッ!

 

…この時、選手、見学の生徒や教師を問わず、体育館に居た者全てが、コートの中央、両者の頭上で虎と兔が火花迸る、一触即発な睨み合いを繰り広げるのを見た。

 

「か、茅野さん、落ち着いて!」

「ふがーっ!」

「ちょ…掛布、落ち着きなさい?!」

「黙れ、駄肉!!」

両者、各々のチームメイトに引き離されながら、

「「あんなのは飾りよ!

エロい人には解らないのよ!!」」

…ハモったのだった。

 

「「………………………………。」」

 

ツカツカツカツカ…

 

その後、各々が仲間に「もう大丈夫」と言って、抑えられた体を離してもらい、コート中央まで歩み寄り、再び相見えた両者は

 

ガシィ!

 

「残念ね…貴女とは…」

「友達でいられたかも知れないわね…」

互いが黒い笑みを浮かべながら、手をガッシリと握り合った。

 

≫≫≫

「やれやれ…」

E組サイドのベンチでイリーナが呆れながら呟く中、やはりベンチに座っている奥田愛美が手に持つスマホから、

「やっぱり むぬーに言われると、ひんぬーもキレるんですねぇ?」

…と、小さな声が流れたのだが、余りに小さな音声故に、誰一人、『彼女』の呟きに気付く者は居なかった。

                  

ピッピー!

 

そして試合開始。

鷹村守璃と片岡メグのジャンプボールは、

 

パシィッ!

 

やはり13㌢の身長差は大きく、この空中戦は鷹村が制した。

そのボールをキャッチした掛布の

「速攻!」

の掛け声と同時にE組エリアに攻め入る女子バスケ部。

ドリブルで中央突破を試みる掛布。

止めに入った矢田桃花を横の動きで躱そうとするが、

「なっ!?」

それに しっかりと、掛布が()()()()()を大きく ぷるるん と揺らしながら反応して喰らい付く、()()()()()矢田。

 

「ちぃいっ!!」

 

シュ…

 

二重の意味で舌打ちした掛布は、抜けないならばと熊耳朱緒にパス。

ボールを受けた熊耳は、そのままゴール前まで切り込み、レイアップを決める。

                  

「「「「「きゃあ~ぁ!♪」」」」」

試合開始早々、あっと言う間のバスケ部の先取点に沸き立つ館内。

そして早速、力を誇示出来たとドヤ顔なバスケ部だが、

「速攻!!」

いち早くボールを拾った茅野の掛け声と共に、片岡を筆頭に敵陣目指し、E組の面々は走る。

 

「今直ぐにボール奪って、連続で決めてやるよ!」

「この、どチビがっ!!」

茅野に獅子雄実琴と潘騨爛々が2人掛かりで襲い掛かる。

その画は さながら、兔に牙と爪を剥く、百獣の王と大熊猫の如し。

しかし そんな茅野は臆する事無く、低い身を更に低く屈め、独楽の様に身体を大きく回転(1歩)、そのまま低空のサイドスロー(2歩)で前線の岡野ひなたにボールを繋いだ。

 

「「「「「!!?」」」」」

低身長(どチビ)のパスなんか軽く弾き墜とせると多寡を括っていた2人は勿論、予想外の超低空パスに、バスケ部全員が一瞬動きが止まり、岡野の独走を許してしまう。

 

「この儘 私が決めても好いんだけどね…凜香!」

 

パシッ

 

「…ナイスパス。」

岡野から渡されたボールを、速水凜香がゴールを見定め、シュートを放つ。

その場所は、3ポイントラインの外側。

近い未来に【狙撃手(スナイパー)】の二つ名を得る彼女がロングレンジで放ったボールは、高い放物線を描き、敵ゴールを撃ち抜いた。

 

「ナイッシュ!凜香!」

「当然。」

 

パシィッ!

 

ハイタッチを交わす岡野と速水。

 

「「「「「「…………………?!」」」」」」

あっと言う間のE組の まさかの逆転に、体育館は静まり返る。

                  

「あんなのマグレよ!」

「そうだ、そうに決まってる! E組如きが!!」

「「「ぶっ潰す!」」」

簡単に得点、しかも逆転を許してしまい、怒り心頭な女子バスケ部。

 

「一応は練習の成果なんだけどな~?」

「…油断してくれるなら、有り難い。」

「そーそー♪」

「今の内、ガンガン点、獲ろ♪」

「まだまだ!皆、出し惜しみしないで、どんどん盛り『下』げて行くわよ!」

「「「「おぅっ!!」」」」

                  

≫≫≫

その後の試合は、互角と言って良い展開になる。

互いに同点、逆転を繰り返し、最大でも5点以上開く事がない。

大きな理由としては、バスケ部がベンチに座っている顧問を含め未だ、E組を只の素人集団と見くびっている事。

そして本来の椚ヶ丘中女子バスケ部は、ボールを手にしたら、時間を掛け、丁寧に確実に攻め入るという試合スタイルなのだが、見学している生徒達に自分達の実力を誇示せんが為、大量得点を狙い、慣れないラン&ガンで挑んで来た事。

逆にE組は、それを想定した練習を立場上、この場には姿を見せられないイモジャーを着た鬼コーチの下でしてきており、如何に ひよっこの域にすら達してないと云えど、鍛えられた暗殺者の卵達は何とか喰らい付いていていた。

忙しいのは見学している生徒達。

一喜一憂。

バスケ部の一方的な蹂躙展開に、自分達も歓声を上げ続けているだけのつもりが、 バスケ部が得点すると沸き、E組が得点すれば静かになるの繰り返し。

館内を『盛り()げる』を第一の目的としていた片岡メグは、心の中では【自称・新世界の神(笑)】が記憶を取り戻した時の様な顔をしているだろう。 

       

≫≫≫

「クソっ!この、猿が!」

「だ、誰がサルだっ!?」

元・体操部の岡野が、持ち前の運動神経を活かし、コートを縦横無尽に駆け、

「不破さんっ!」

「OK! ナイスパス!!」

自分に複数人マークが付くと、それによりノーマークになったチームメイトにパスを出し、

「庶民~シューッ!」

 

スパ…

 

パスを受け取った不破優月が難なくレイアップを決める。

 

「何なのよ!?E組の癖に!!」

この不破のシュートでバスケ部のリードを2点まで縮めた場面で、第2ピリオドが終了した。

 

≫≫≫

「お前等、E組相手に何をやっているか!!」

「「「「「すいません…」」」」」

インターバル、女子バスケ部顧問の女性教諭が掛布達に怒鳴り散らす。

しかし、此処まで来て誰一人として、E組に対する評価を改める者が居ないのが、そして其れを訴えかける者が居ないのが、彼女達にとって、最大の不幸だった。

本来なら顧問が、または主将の掛布が いち早く、決して奢った態度で勝てる相手ではないと見抜き、指示を与えなければならないのだが、『ENDのE組』に対して、その選択肢は欠片も無い。

 

 

E組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖にE組の癖に…

 

 

彼女達の頭の中には、もはや其れしか浮かばない。

顧問も、この試合で無様を晒せした時の、自身の評価が堕ちる事しか考えていない。

故に尚更、単に勝つではなく、圧倒的な力で螺旋伏せろという指示の発想から抜けられない。

結論から言えば、実は大量得点差狙いの慣れないラン&ガン等を指示せず、普段通りの じっくり確実に攻めるゲームメイクにしていれば、もっと違った展開になっていたかも知れない。

素人集団と侮り、基本のマンツーマンマークを無視した『兎に角、ボールを手にした奴を人数で、圧する』という、どちらが素人か判らない試合運び。

重ねて言うが、慣れないラン&ガンで、普段の試合以上に走り込んでいる故、当然、相応の体力の消耗消費。

身長差で、ジャンプボールやリバウンドを獲れても、そのアドバンテージが有っても、本格的に?バスケットボールの特訓をし始めたのは1週間前という素人集団に完全優位に試合運び出来ない。

女子バスケ部陣営は苛立ち、焦る。

しかし、「どうして こうなった?」の答えは、無駄に高すぎるプライドが邪魔して導き出せる筈が無かった。

 

≫≫≫

「何だか向こうさん、荒れてるねぇ~?」

スポーツドリンク片手に、タオルで汗を拭きながら中村莉桜が呟く。

 

「くくく…第2ピリオド終わって、あたし等相手に1ゴール差…

向こうからすれば、屈辱だろ~?」

中村の言葉に、狭間綺羅々が、やはりタオルで汗を拭きながら応える。

 

「よ~し皆、館内を盛り()げるのは ほぼ達成出来たし、此処まで来たら、もう勝つしかないよね?」

「「「「「「「おぉ~っ!!」」」」」」」

某・完璧超人な生徒会長の様な、『凜!!』とした顔の片岡の呼び掛けに、皆も腕を上げ、良い顔で応えた。

 

「皆さん、頑張って下さい!

この試合は最初から録画していますから、皆さんの勇姿、後で男子の皆さんも観られますよ!」

スマホの中で、テレビカメラを肩に抱えた律が皆に話し掛ける。

このカメラマン律の今の服装、何故か胸に『SH〇UH〇KU』のロゴが入った赤のバスケットボールのユニフォームを着用。

因みにゼッケンは14番。

 

「おぉ~ぅ…律、気配りありがとう…」

「はい、岡島さんと前原さんと吉良っちさんに、個別で頼まれました!」

「「「よし…奴等は後で埋めよう。」」」

 

 

そしてラスト、決着を着けるべく、後半戦が始まる。

 

≫≫≫

 

どんよりどよどよ…

 

ラストの第3ピリオド開始前、普通の試合で2点差というなら、どちらが勝つか分からない展開で沸きに沸き上がる観客席だが、地味な どよめきしか上がらない。

 

 

自分達はENDのE組がバスケ部に無残に蹂躙されるのを見に来た筈なのに…

それで気持ちをスカッとさせる筈なのに…

 

 

そんなスッキリしない気分で試合は行われていた。

バスケ部は また開始時のジャンプボールを制し、点差を4と広げるが、また茅野の超低空サイドスローから、倉橋陽菜乃が外からシュートを決めて1点差。

更に直後、櫻瀬園美が掛布からボールをスティール、チームリーダー片岡が内からのシュートを放ち逆転。

 

「良っし!」

「きゃー! イケメグ!」

審判の明らかにホームタウンディシジョン丸出しなジャッジの中、実は とうの昔に諦めさせて試合終了となる点差になっていても おかしくない試合運びでゲームは進んでいた。

当然、不公平なジャッジは想定内。

彼女達はキレる事無く、その不満をプラスに変えて試合を進める。

これは試合開始前に、一応は監督のポジションでベンチに着いたイリーナの『キレたら負け』の一言に、それこそ『おまゆう』とばかりにキレかけ、その直後にクールダウン出来たのが、試合中に かなり効果があった。

 

≫≫≫

「ぅぉりゃっ!!」

「「きゃっ?!」」

そして残り時間30秒を割った場面で同点の中、獅子雄がディフェンスの片岡と速水を突き飛ばし、豪快なダンクを放つ。

端から見れば、明らかにオフェンスファウルなのだが、審判は見て見ぬ振り。

 

「「「「「「きゃあぁあ!!♪」」」」」」

終わり良ければ全て善し、此処ぞとばかりに盛り上がる見学の生徒達。

女子バスケ部の2点リード。

しかし…

「まだ、これからよ!」

素早くボールを拾った茅野が、そしてE組の面々が走る。

 

「戻れ!これを防いだら、終わりだ!!」

掛布の声に、バスケ部も素早く戻り、ディフェンスを敷く。

E組はゴール下に片岡、神崎、原、そして外に速水が位置を取る。

 

「あのチビのパスは もう いいから!

獅子雄、潘騨、速水に着け!

残りは中の3人をマンツーマンだ!」

「「「「おうっ!!」」」」

E組得点の殆どの要となった、茅野の低空パスは棄て、それを受け取った者を潰す、最低でも足止めする戦略。

…しかし、

「くす…。…だ、そうですよ? 茅野さん?」

「茅野ちゃん、最後、美味しいね~♪」

試合終了5秒前、神崎有希子と原寿美鈴が呟く中、茅野カエデは明るく微笑むと、この試合、自身初めてとなるシュートを、2ポイントエリアの外側から放つのだった。

 




響・岡島・前原「え~と…そのスコップは何ですか?」
E組女子『自分の胸に聞け。』

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