暗殺聖闘士   作:挫梛道

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【前回ラスト時の女子達の反応】

・目を輝かせ、喜んでガン見…倉橋 櫻瀬 不破 イリーナ
・動揺しつつガン見…奥田 片岡 茅野
・無反応…狭間 速水
・マジ恥ずかしがって顔を背けてる…岡野 中村 原 
・恥ずかしがってるフリして実はガン見…神崎 矢田
 
 
参考までに、仮に律が この場にいたなら、【目を輝かせ、喜んでガン見】していたでしょう(笑)。

あくまでも、響の鍛え絞られた身体を見た時の反応であり、仮に これが渚やネイキッド某(笑)だと、また反応は違うと思われます。




才能の時間

「2人共 止めろ!!」

「烏間…」

「烏間先生…」

響と鷹岡…一触即発な空気の中、烏間が駆け付け、割って入った。

                  

「ふん…」

「ちっ…」

残念そうな顔でボクサー流の構えを解く鷹岡と、やはり不服そうに舌打ちし、投げ捨てた体操着を拾って、再び袖を通す響。

 

「「「「ちぃいっ…!」」」」

そして その様を見て、凄く残念そうに舌打ちする数名の女子。

 

「前原君、大丈夫か?」

「へ…平気っす…。」

鷹岡の膝蹴りを喰った前原を気遣い、

「吉良君、杉野君も、よくやったな。」

「いや…俺は…」

「前原ん時の御陰で、コイツの本性が判ったから。

だから、俺も杉野も予め動けたんですよ。」

神崎を助けに入った2人に、労いの言葉を掛けた。

 

「どういう心算だ、鷹岡?」

「勿論、手加減は、するさ。

俺の大事な家族だ、当然だろ。」

「答えになってない!」

そして烏間は暴力行為について問い質すが、少なくとも、その『暴力』は普通の事だと言わんばかりの鷹岡。

 

「いいえ。」

そんな鷹岡の肩に、()()触手が乗る。

 

「彼等はアナタの家族じゃない。この私の生徒です。」

「「「「「殺…せん…せー?」」」」」

黒は弩怒りの証し。

それを知っている生徒達は、信頼出来る担任の登場にも、安堵より、この後に訪れかねない惨状への不安が勝る。

 

「ふん…何が文句あるのか、化け物?」

黒い触手の事は、鷹岡自身も知っている筈。

しかし、それに動じる事も無く、地球をも破壊しうる超生物に平然と言い返す。

 

「体育は教科担当となった俺に一任されている筈だ。

そ・し・て、今の『罰』も、立派に教育の範疇だ。

短期間で、お前を殺せる暗殺者を育てるんだ…厳しくなるのは当然だろう?

それとも何か? 多少、教育観が違うだけで、貴様に危害も加えてないない人間を攻撃する気か?」

自分に間違いは無いと信じて疑わない鷹岡は、自信の表情で殺せんせーに言い寄る。

 

「攻撃はしませんよ。ただ、私も今は教育者です。

故に教育者として、あなたを否定するだけです。」

「何だと!?」

「あなたは先程、前原君や、未遂に終わりましたが、神崎さんへの暴力行為を『罰』と言いましたが、あれは罰ではない、只の暴力です。

最近、偶にニュースでも話題になりますが、近頃は子供、保護者、そして教師も、その区別が出来ていない。

自分の立場を勘違いして、生徒を肉体的、または精神的に安易に傷つける教師…

自分の、自分の子供のした事を棚に上げ、やれ暴力だと一方的に騒ぐ子供や保護者…

その何れもが、善悪、罰と暴力の区別が、その加減が付いていません。

我々教師は、子供達を教え育てる者、断じて壊す者ではない。

今、私が生徒達を守るという口実で、アナタの言う処の『化け物』の力を以てして、この場でアナタを始末するのは確かに簡単な事です。

しかし それでは、私はアナタと同類となり、それはアナタを認める事に繋がりますので、そんな真似はしません。

だから もう一度言います、鷹岡先生。

私は教育者として、あなたを認めない。」

「「「「「「殺せんせー…」」」」」」

いつの間にか、普段の黄色い身体に戻っていた担任教師の言葉を聴き入る生徒達。

そして、

「鷹岡…俺も今回だけは、あくまでも『教育者』としてコイツに同意だ。

お前の生徒を壊しかねない…こんな巫山戯た時間割の様な やり方を認める訳にはいかない。この教室の副担任としてな。

これ以上、生徒達に手荒くする心算なら…そんなに暴れたいなら、俺が相手をしてやる。」

「「「「「「烏間先生… 」」」」」」

自分達の盾になると公言した烏間の言葉に、彼の自分達に対する認識が、自分達が思っていた其れと違っていた事に気付く生徒達。

 

「ふ…ん…」

完全アウェイな雰囲気でも鷹岡は余裕の表情を崩さない。

寧ろ、この展開を予測し、待っていたかの様だった。

 

「烏間、これは教育だ。

だから、暴力で お前とやり合う気は無い。

やるなら、あくまでも教師としてだ。」

「どういう意味だ?」

「お前が、お前の今迄のやり方が正しいと証明すれば良いんだよ。」

そういうと鷹岡は、懐から対せんせーナイフを取り出す。

 

「そこで、こいつだ。」

「…ナイフ?」

「烏間、お前が育てた中から1人、一推しの生徒を選べ。」

「…!」

「そいつが俺と戦い、一太刀でもナイフを当てる事が出来たら…お前の教育が俺より優れていて、正しかったと認めてやる。

その時は お前に訓練を全て任せ、この学校から出てってやるよ!

男に二言は無い!」

 

 

ドン!

自らの胸板を力強く叩きながら、鷹岡は言い切った。

 

 

一度でも当てられたら…

 

 

この条件に、生徒達の顔が一気に明るくなる。

既に俺が出ると言わんばかり、杉野は手首をストレッチし始め、木村、三村はナイフを手に取り構える。

磯貝、前原も、その面構えから()()()が伺える。

そんな雰囲気の中、鷹岡は

「但し勿論、俺が勝てば、その後は一切口出し無用だ。そして武器は…」

用意していた鞄から

「コイツを使う。」

「「「「「ほ、本物?」」」」」

「相手が化け物でなくて人間(オレ)なんだ。

使う武器(エモノ)も、モノホンじゃないとなぁ?」

本物のコマンドナイフを取り出したのだった。

                  

「止せ! 彼等は人間《ヒト》を殺す訓練は、何もしていない!

本物を持った処で、体が竦んで動ける訳がない!」

烏間の言う通り、生徒達は先程までの、「一太刀なら…」の空気が一変、その顔は動揺し、身体は硬直しているのが一目瞭然だった。

 

「心配するな。寸止めでも当たりにしてやるよ。

俺は素手だし、これ以上無いハンデだろ?」

本物の凶器が放つに恐怖と殺気の前に、生徒達の()()()が完全に喪われたを判っていて、いや、解っているからこそ、初めから それが狙いな鷹岡は言葉を続ける。

 

「さぁ、1人選べよ烏間ぁ!

嫌なら無条件で俺に服従だ!

生徒を見捨てるか、それとも生贄として差し出すか…どっちみち酷い教師だよな、お前は!

ひゃっはー!!」

 

ザクッ…

 

今迄の上辺だけのフレンドリーな笑顔も既に消え失せ、本性であろう、狂った笑顔を表に出した鷹岡は、手にしたナイフを烏間の足元に投げた。

 

「…………………。」

無言で それを拾った烏間は、生徒達に目を向ける。

1人を除いては、とても戦える心理状態でないのが、直ぐに解る。

                  

 

駄目だ…()なら、確かにヤツにも刃が届くかも知れない。

しかし彼の場合、絶対に其れだけでは済まされないだろう。

彼の将来(みらい)を、ヤツ如きの命で汚す訳にはいかない…。

俺は迷っている。

地球を救う暗殺者を育てるには、奴の様な容赦無い教育の方が正しいのではないか?

そんな風に迷っている。

仮にも奴は、精鋭部隊に属していた男だ。

少し前まで普通だった中学生が、3ヶ月程度の訓練で刃が立つ相手ではない。

そんな中、彼の他に、もう1人だけ…その僅かな「可能性」がある生徒を危険に晒しても良いのかと迷っている…。

椚ヶ丘(ここ)に来て、迷いだらけだ…。

 

 

「………………。」

そう考えながら、烏間は生徒達の前に足を運び、自分の教え子達に語り掛けた。

 

「皆、先に聞いて欲しい。

俺は、君達に地球を救う暗殺任務を依頼した側として、君達とはプロ同士だと思っている。

そしてプロとして君達に払うべき最低限の報酬は、ごく当たり前な中学生としての生活を保証すべきだと思っている。

だから、これから渡す、このナイフを無理に受け取る必要は無い。

その時は、俺が鷹岡に頼んで…『報酬』を維持して貰う様に努力する。」

「「「「「「「烏間先生…」」」」」」」

「くっくく…土下座でもすりゃ、考えてやらん事もないぜ、烏間ぁ?

…で、結局、誰を指名するんだ?」

「…………………。」

鷹岡の台詞に対して烏間は、1人の生徒の前に立ち、ナイフを差し出した。

 

「選ばなくてはならないなら君だ、渚君。…やる気は、あるか?」

「…!?」

「「「なっ…」」」

「「「「「なんで…」」」」」

「「「「「「渚ぁ!?」」」」」」

「…はっ!」

「ヌルフフフフフ…」

指名された当人を含め、約2名を除いて その場の全員が、まさかの表情を浮かべる。

そして、渚は…

「…やります。」

迷う事無く、ナイフを受け取り、鷹岡の前に立つのだった。

 

≫≫≫

「お前の目も曇ったなぁ、烏間?

よりによって、そのチビを選ぶとはな!」

優れた教官は、集団の中の個々の実力を瞬時に見抜くと云う。

 

 

…このチビは男子の中では、間違い無く最弱クラス。

運動能力は ややスピードはあるが、所詮は平凡の域を出ていない。

体格と馬力は女子並み。

目を瞑っても勝てる相手…

 

 

それが、渚に対する、鷹岡の分析結果だった。

 

≫≫≫

「どういう事なの? 何で、渚なのよ!?

そりゃ、この場で押し付ける様な発言は間違ってるのは分かるよ!

でもね、実力的にカルマ君が居ない今、こういう時は吉良君じゃないの?」

「茅野ちゃん…」

泣きそうな顔で響に話し掛ける茅野。

 

「でも、烏間先生も本当に、どうして渚なんかを…」

「渚だから、さ…」

「「「「え?」」」」

岡野の疑問に響が応えると、周囲にいた生徒達が驚きの声を上げた。

 

「もし、烏間先生が俺と渚以外の、他の誰かを指名してたら、その時は俺が横槍を入れて名乗り出たさ。

…渚だったから、俺は何も言わなかった。

まっ、見てな。勝負は あっとゆー間だぜ?」

「吉良君…」

「吉良っち…」

「渚…」  

   

≫≫≫

響が茅野達と話している頃、渚は烏間から、この「戦い」のアドバイスを受けていた。

 

「いいか渚君。ナイフを当てるか、寸止めすれば君の勝ち。

君を素手で制圧すれば鷹岡の勝ち。

それが奴の決めたルールだ。」

「…はい。」

「しかし、この勝負、君と奴の最大の違いは武器の有無じゃない。」

「…?」

「鷹岡にとって、この勝負は『戦闘』だ。

見せしめが目的だからな。

二度と皆に逆らおうとする気を無くす為にも、奴は攻防共に、自分の強さを見せ付ける必要性がある。

奴は君に暫くの間、好きに攻撃させてくるだろう。

無論、本物のナイフを持って身体が竦み、まともに攻撃出来る筈がない…そう考えているだろうからな。

それを踏まえて、自分の戦闘技術を誇示した上で、じわじわと嬲りにくるだろう。」

「はい…」

 

≫≫≫

「…つまり、烏間先生が俺を指名しなかったのは きっと その辺さ。

俺なら躊躇無く、マジに殺りかねんとでも思ったんだろうよ。」

「「「「「何だか、凄く納得出来るんですけど…」」」」」

烏間の、渚へのアドバイスと同時進行していた響の解説に、少しだけ引く茅野達。

 

「あのデヴ、マジにチキンな狸だぜ。

ガチの凶器の重圧に負けて戦意喪失、戦えなくなった素人を潰すのが大好きなだけの、そーゆー奴にしか、マトモに相手が出来ない、ドSでメタボなチキンの卑怯者。」

何気に口が悪い響。

 

「話を戻すぜ。あのヤローが()()なのに対して、渚は()()

別に『俺TSUEEEEE!』をする必要は無く、ただ1回、当てれば良いのさ。」

「其処が、渚君の勝機?」

「いぐざくとりーだぜ、倉橋ちゃん。

好き勝手出来る、反撃の来ない序盤のターンがチャンスな訳さ。

もう1度言うぜ? 勝負は あっという間に終わる。

(アイツ)を信じて見てろよ。…きっと、面白いモンが見れるぜ?」

「吉良君…」

「きーちゃん…」

「吉良…」

「………………………………渚…」

 

≫≫≫

「おい、何時迄話し込んでるつもりだ?

何言っても どーせ無駄なんだ、さっさと始めようぜ?」

烏間の長いアドバイスに、業を煮やした鷹岡が勝負を急かす。

   

「ああ、今、伝えたい事は全て伝えた!」

そんな鷹岡の催促に烏間はアドバイスは終わったと言い、

「よし、勝ってこい、渚君!」

「はい!」

自分の信じた生徒を、戦地に送り出すのだった。

 

≫≫≫

「さぁ来い!」

もう隠す事無く、いや、隠す必要が無くなった下衆な含み笑いを全面に曝け出した鷹岡が構える。

それに呼応する様に、渚もナイフの先端を前に向け、構えを取った。

公開処刑…

渚の全ての攻撃を躱した上で、いたぶり尽くす。

そうする事で、生徒達に圧倒的な暴力(ちから)を見せ付ける事で、生徒全員が自分に恐怖し、自分の訓練(きょういく)に従う様になる。

それが、鷹岡の描いた構図。

対する渚は烏間から聞かされたアドバイスを思い浮かべる。

 

 

そうだ…

別に戦って勝たなくても良いいんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せば…殺れば、それで僕の勝ちなんだ

 

   

烏間のアドバイスの意味を完全に理解した渚は、鷹岡に にっこり微笑むと、殺意も殺気も無く、普通に…まるで通学路を歩くが如く、普通に近付いた。

余りの自然体、余りの殺意の無さからか、鷹岡は目の前に戦う相手が近付いているのに、まるで反応が出来ない。

 

ポス…

 

そうしている内に、構えていた拳が、渚の胸元に軽く触れた。

(ゼロ)距離。

その瞬間、今迄微笑んでいた渚の顔が、冷たく無表情に豹変。

それと同時に鷹岡の喉元目掛け、ナイフを勢い良く振り翳す。

その刃から突然放たれた殺気に触れ、ナイフが喉を切り裂く直前になり、鷹岡は初めて自分が殺されかけている事に気付く。

焦り、動揺、恐怖…

鷹岡はその殺意の一撃を後ろのめりに辛うじて躱すが、下卑た表情は体勢と一緒に崩れた。

その瞬間、渚は次の動きに入る。

後方に偏っていた身体の重心を、服を引っ張る事で地に転ばせ、更に確実に仕留めんと背後に回り込み…

 

ピタッ…

 

「捕まえた…♪」

ナイフの峰を、鷹岡の首筋に押し当てたのだった。

 

「あッ…が…?」

鷹岡は何が起きたのか解らず、半錯乱状態でマトモに声が出せない。

優れた教官は、集団の中の個々の実力を瞬時に見抜くと云う。

渚を単なる雑魚と見下していた鷹岡と、渚の可能性を見いだした烏間との、教官としての優劣が決まった瞬間でもあった。

 

「ヌルフフフ…」

この結果に対し、殺せんせーと響のドヤ顔な2人を除き、その場に居る者 全てが、余りの予想外過ぎる出来事に目を見開き、驚きの表情と共に、声が出せないでいた。

それは烏間も例外ではなかった。

 

 

何て事だ…

俺の予想を遥かに上回った!

普通の学校生活では、絶対に発掘される事の無い才能!

自爆テロの時の、殺気を隠して標的(ターゲット)に近付く才能…

あの全校集会が終わった後の時に見せた、殺気で相手を怯ませる才能…

そして、『本番』に物怖じしない才能!!

あの時、俺が訓練での違和感は、やはり気のせいではなかった?

あれが もしも訓練でなく、本物の暗殺だったら!?

戦闘でも、ましてや暴力の才能でもない…

あの彼の『暗殺』の才能!!!!

しかし これは…咲かせても良い才能なのか!?

 

 

烏間が新たな迷いを思い浮かべながらの長い沈黙状態の中、渚が不安気に口を開く。

 

「も、もしかして…峰打ちはノーカンでしたか?」

 




 
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