暗殺聖闘士   作:挫梛道

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本気の時間

「勝負あり!」

何時の間にか渚の後ろに立っていた殺せんせーが、手に持ったナイフを奪い、

「…ですよね?烏間先生?」

ドヤ顔で確認を取り、

「あ、ああ…」

「全く…本物のナイフを生徒に持たせるなんて、正気の沙汰では ありませんよ。

怪我でもしたら、どうするんですか!」

 

ポリポリ…

 

奪ったナイフを美味しそうに食べながら話す。

 

「ふん…その時はマッハで乱入しようとしたタコが、よく言う…」

「ヌルフフフ…お見通しでしたか、敵いませんねえ…。」

 

「「「「「「「「渚!」」」」」」」」

そして渚の元には、生徒達が駆け付けてきた。

 

「やったな、渚!」

「ホッとしたよ、も~っ!」

「全くだ…茅野ちゃんなんてさぁ、泣きながら俺に(ガンッ)い、痛いっ!?」

「な、泣いてなんかいない!」

モデルMSZ-006専用ライフルを手にして、必死に否定する茅野。

その顔は赤く染まっている。

 

「あ痛たたた…大したヤツだぜ。

よくも まぁ、マジなナイフ、彼処まで派手に振れたよな。」

殴打された頭を押さえながら、響は言葉を繋げた。

 

「うん…烏間先生が渡してくれたナイフだから…かな?」

「渚…?」

「烏間先生の目ってさ…」

「ん?」

「あんなに真っ直ぐ目を見て話してくれる人は、家族にも居ないし…

立場上、僕等に隠し事も まだ沢山あるだろうし、結果、今回は僕が勝てたけど、何で僕を選んだのかも、まだ よく解らないし…

けど、烏間先生が渡すナイフなら、信頼出来る気がしたんだ…。」

「……………………。」

 

びしっ!

 

「痛いっ!?」

それに対し、感慨深そうに話す渚の頭の上に、手刀が落ちる。

 

「何するの、吉良君!?」

「いや、カッコ付け過ぎだから?」

「理不尽!」

「サンキュな、渚!」

 

ガシッ

 

其処に前原が、渚の肩に腕を回し、組み付いてきた。

 

「今の暗殺、スカッと したわ!」

「ナイスだぜ、渚!」

「グッジョブだ!」

そして皆が渚に、「よくやった」と話し掛けてくる。

 

「…に、しても、笑顔でナイフ突き付けといて『捕まえた♪』って…渚クンは意外とケモノなんだねぇ?」

「違…上手くいって安心しただけだよ!」

中村も渚の胸元を肘で突っつきながら、(ほめ)る。

 

「「ま、渚はクラスん中で、最も凶暴凶悪な(ドラゴン)の持ち主だからな!」」

「き、吉良君!岡島君! それ、今 言う事?」

 

ボンッ…!

 

「~~~~~~~~~っ!?」

その言葉の意味を理解し、脳内で何を妄想したのか、中村の顔が瞬時に真っ赤に。

ついでに渚も、顔を真っ赤にしていた。

 

「………………………。」

そんな様子を、少し離れた距離から眺めている烏間。

 

 

ああやって見ていると、やはり彼は、とてもじゃないが…いや、全く強く見えない。

それ故に、鷹岡は油断して反応が遅れた。

暗殺者にとって…()()()なのは寧ろ立派な武器だ。

天才的暗殺の才能の持ち主…

しかし…これは喜ぶべき事なのか!?

この御時世に、そんな才能を伸ばしても…

E組(ここ)では兎も角、彼の将来に、プラスになるのか?

 

 

「ヌルフフフフ…烏間先生、今回は随分と、迷ってばかりいますねぇ? 貴方らしくもない。」

「悪かったな!」

渚の才能と未来、この先の導き方を考えている最中、黄色いタコが肩に頭を乗せ、声を掛けてる。

 

「巫山戯るな!!」

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

 

ハァーハァー…

 

そんな完全勝利ムードの中、呆けていた鷹岡が息を荒げに立ち上がり、その怒号により その空気を掻き消した。

 

「このガキ…父親同然な俺に刃向かいやがって…そんなにマグレ勝ちが嬉しいか?」

その表情は、今迄の偽りの優しさを貼り付けた笑顔ではなく、完全に怒りを剥き出しにした それである。

 

「いや、渚にナイフ持たせて戦わせたのは、お前だろ ?」

「黙れ! もう1回だ!

もう、油断もマグレも無ぇ!

心も体も全部残らず へし折ってやる!!」

響の指摘(ツッコミ)は火にガソリン。

顔中に血管を浮き上がらせ、血走った目をした鷹岡が吠える。

 

「男に二言は無かったんじゃね?」

「あ゙ぁ?!」

「確かに、渚は もう勝てないだろうよ。

でも、一発勝負だった筈だぜ?

今のがガチだったら、油断だろうがマグレだろうが、今迄は首筋ぷしゅーっ!…で終わってた。

お前に次を謳う資格は無ーよ。

それでも、どーしても納得いかないってのなら、次…第2ラウンドは俺が相手してやるよ。」

 

ピクピクピクピク…

  

「糞餓鬼がぁ…」

更に顔に血管を浮かべ、まるで顔面が血管で覆われるが如しな更なる怒りの形相となる鷹岡。

 

「…と、岡島君が申しております。」

「ぅをぉぉぉゑゐ!!!?」

それに引いたのか、殺意の矛先を変えようとする響。

名を挙げられた生徒が思わず、声を裏返しにして突っ込んだ。

 

「何でぇ…折角今回は、『岡島の時間』にしてやろうと思ったのに…

ねえ? そうは思わないかい?」

「そんな優しさ、要らねー!

てか お前は、誰に向かって言っている?!」

 

ニョキ…バサッ…

 

「ま、冗談は さて置き、どーする?

俺的には、お情け&泣き(笑)の第2ラウンド、受けてやっても構わないぜ?

元々、俺と お前が戦る筈だったしな?」

頭からは角、背中からは蝙蝠の羽根を出すが如く、完全に舐めた顔で響は挑発を続け、先程、鷹岡がナイフを取り出した鞄の所まで歩みを進める。

 

ガサゴソ…

 

「ふん…御丁寧な事った…。

何が父ちゃんだ…。こんなのまで用意してるなんて、最初(ハナ)から暴力と恐怖で従わせる心算だったんだろ?」

響は鞄から、ナイフホルダーが附いたベルトを取り出し、ジャージの上から締め、左右のホルダーに、ナイフを収めた。

 

「待て、吉良君!」

此処で烏間が改めて止めに入ろうとするが、

  

ガシッ…

 

「待つのは貴方ですよ、烏間先生。」

「…!?」

黄色い触手が手出し無用とばかりに肩を掴む。

 

「ヌルフフフ…先程は吉良君も少しばかり、頭に血が登って危なかったですが、今は もう、大丈夫ですよ。」

不安感満載な烏間とは対照的な、安心顔の殺せんせー。

 

「こ、こ、こ、この餓鬼がぁ…

さっきから黙って聞いていれば、親に対して何て口の利き方だ!

お前は徹底的に教育する必要があるな!」

そして鷹岡。変わらぬ怒りの形相で、響に吠え、

「いや…だから、その親子とか家族とかの設定は、もーいーから…。

この前の兄弟設定(イトナ)といい、これは防衛省の趣味か何かか?」

「いや、それは断じて違うぞ!」

それに応えた響の発言に、烏間が割と真剣に口をんだ。

 

「もう良いだろうが、餓鬼!

さっさと始めるぞ!!」

「おいおい、其処は『そろそろ始めさせて戴けませんか?』の間違いだろ?」

殺る気全開な鷹岡に対して、煽り全開な響。

 

「…この糞餓鬼がぁっ!」

 

ぶん…!

 

「おわっと!?」

安い挑発に乗ってしまった鷹岡の、響目掛けて振り下ろされた大振りな拳(当然 響は余裕で躱した)がゴング代わりとなり、第2ラウンドが始まった。

 

「どうした? 早くナイフを構えろ!」

「別に、決着はナイフの攻撃限定なだけで、こっちの攻撃はナイフオンリーな訳じゃないと解釈したんだけどね?」

響はナイフをホルダーに収納した儘、空手の構えで鷹岡の拳や蹴りを悉く躱し、

 

ズガァッ!

 

「ごっ…?!」

「俺がナイフを抜く時、それは確実に当てられる隙が出来た時だ。」

鷹岡の次撃…またも顔面狙いの大振りな拳を避け、カウンター気味にリバーブローの左正拳を突き刺す。

 

 

コイツ、神崎さんを助けた際にパワーは兎も角、スピードは大した事はないと踏んでいたが…やはり この程度か?

とりあえず、烏間先生よりかは遥かに弱い!

いざという時は、本当にマジになる心算だったが…こりゃ小宇宙(コスモ)使うまでも無いな!

 

 

「拳の攻撃もアリだったら、今ので勝負着いてたよな?」

余裕の笑みを浮かべ、更なる挑発をする。

 

「き…貴様…!」

「マジナイフ持たせりゃ、『え?下手すりゃ死ぬやん?俺、刑務所行きやん!?』とか考え、畏縮するとでも思ったか?

残念だが俺は、そんなに甘くない。

ついでに言えば、そんな相手にしか喧嘩吹っ掛けられないチキンな卑怯者のメタボなんざ、俺の敵じゃねーよ。」

「な、な、な…」

見事な迄に図星を射抜かれ、そして ついでの煽り鷹岡は それを顔に出し、 

「この餓鬼ぃ! ぶっ殺してやる!!」

完全に頭に血が登った力任せの大振りな攻撃を、響に向けて繰り出すが、全て冷静に対処され、悉く反撃を受けてしまう。

 

「がああぁあっ!」

「ふんっ!」

 

ドゴッ

 

「が…キィ…!?」

鷹岡の攻撃を避け、響は隙だらけの脇腹に、再度リバーブローを見舞う。

 

 

残念だったな…俺の場合、仮に最初からナイフ持っていたとしても、臆する事無く、ぶっ刺していたぜ。

烏間先生…さっきの渚の指名は、そういう意味では正解だったよ。

何しろ俺は前世(むかし)女神(アテナ)が、教皇が、聖域が、そして俺自身が…

如何に邪悪認定したと者は云え、数多くの命を文字通り、あの世に送ってきた!

弱いヤツ相手に お遊びな半殺しの経験なだけの お前と、マジに命を…魂を狩ってきた俺とでは、戦いに対する殺る気の…本気の度合いが違うんだよ!

見せてやるから受けてみろよ…

さっきの渚以上の…本当に命を奪ってきた者の、本物の本気の殺気をな!!

 

 

「うがあぁっ!」

 

ガシッ!

 

完全に冷静さを欠いたか…またしてもフェイント無し、顔面狙いの大振りな拳を振り下ろしてきた腕を、響は両手で掴み、受け止め、

「どっせぃ!!」

その勢いの儘、即座に自分の身体を反転させ、背負い投げに転じた。

 

ズシィッン!

 

「??!」

鷹岡の巨体が大きく弧を描き、背中から地面に墜ちる。

 

「おぉ~、一本!!」

「凄い!」

「きーちゃん!」

「吉良ぁ!」

「リアル柔抑く剛を制す、キターーー(゚∀゚)ーーー!!」

響が初めて見せた大技に、湧き上がる生徒達。

 

ドサ…

 

間髪入れず、響は馬乗りの大勢に入り、遂に左脇のナイフを抜き、その次の瞬間、身体全体から迸る程の強力な殺気を、鷹岡に向けて全解放。

 

()ったぁ!!」

「ひえぇぃっ?!」

それを肌で感じ、恐怖に引き攣り歪んだ顔の眉間目掛けて、突き刺さんとばかりにナイフを迷い無く勢い良く、振り落とすのだった。

 

グニャ…

 

「何て、ね…♪」

しかし、そのナイフは鷹岡の眉間に突き刺さる事はなく、大きく撓る。

響が左脇のホルダーに仕込んでいたナイフは実は、特殊ゴム素材の対せんせーナイフだった。

  

「「「「「「ですよね~…」」」」」」

色々な意味合いで、安心する生徒達。

 

「ほいよっと…」

そして改めて、右脇のホルダーに収めていた、本物のナイフの峯を、先程からの殺意で、完全に身体が硬直している鷹岡の額の上に乗せる。

そして鷹岡の腹の上から降りると、

「ウィーーーーっ!!」

右腕を高々と上げ、ロングホーンサインを決めるのだった。

 

「「「「「ウィーーーーっ!!」」」」」

それに対し、やはりロングホーンで響に応えるE組の面々。 

…関係無い話だが、このアクションの元である、某プロレスラーの雄叫びは『youth(若い)!!』が、正しい発音らしい。

因みに鷹岡は、先程からの響の殺意に触れた恐怖からか、意識はあるが、身体は硬直した儘だった。

流石は黄金聖闘士(ゴールドセイント)の本気の殺気、恐るべしと云った処か。

 

むわ…

 

「ん…?」

渚の戦いに続き、再び訪れた完全勝利の空気の中、響の鼻が、異様な臭いを嗅ぎ取る。

 

「………まぢですか?」

臭いの元を辿ってみると、其処は鷹岡の下腹部。

ズボンから湯気を立ち上がらせ、派手な染みを作り、周辺の地面を濡らしていた。

 

「「「「「「うっわぁ…」」」」」」

「「「「「「無いわぁ…」」」」」」

そして それに気付いた生徒達も、次々とドン引いていく。

 

「うがあぁぁあっ!!」

「「「「「「!!?」」」」」」

此処で鷹岡が、またも憤怒の顔を浮かべて立ち上がる。

 

「巫山戯やがって、この餓鬼!

人を散々、挑発しといて冷静さを失わせないと勝てないのか!?」

少なくとも、その餓鬼の挑発に乗った、大人の言う台詞では無い。

そもそも、相手に本当に殺傷力の有る武器を持たせ、戦意萎縮させようとした男の放つ言葉では無い。

しかしながら、再び その場に緊張感を齎すには十分な迫力だ。

 

「黙れ、この失禁男。」

 

どどっ!!

 

…が、響の一言が大爆笑を喚び、それは打ち消される。

 

「納得いかないなら、も1回するか?

次は本気(マジ)小宇宙(ほんき)出すぜ?」

 

パキパキ…

 

そして殺る気は充分ばかりと、拳を鳴らしながら、響が鷹岡の前に出る。

 

「吉良君、待って…」

「渚…?」

そんな響を渚が止めて、響の…鷹岡の前に出た。

 

「もう、止めませんか?

ハッキリしたじゃないですか?

これから鷹岡先生が誰と戦い、いくら勝ち続けようと、もう誰も鷹岡先生を先生と認めはしません…。」

渚は鷹岡の目を見て、ハッキリ言い切る。

 

「僕等の『担任』は殺せんせーで、僕等の『教官』は烏間先生です。

これは もう、絶対に譲れません。

無理矢理に父親を押し付ける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が、僕は温かく感じます。」

更に言葉を続ける渚。

 

「ヌルフフフフフ…だ、そうですよ~?」

「…お前は、黙れ。」

渚の言葉を聞いていた、半分涙目な縞々模様のタコが、少しだけ照れくさそうな顔をしている烏間に話し掛ける。

 

「先生をしていて、一番嬉しい瞬間は…

迷いながら自分が与えた教えに、生徒がハッキリと答えを出してくれた時です。

そして烏間先生、生徒がハッキリ出した答えには、先生もハッキリ応えてやらないといけませんよねぇ?」

「ああ、そうだな…。」

 

≫≫≫

「…僕等を本気で鍛えようとしてくれたのは、感謝してます。

でも…ごめんなさい。

この教室から出て行って下さい。」

最後に一礼しながら、渚は伝えたい事を言い終えた。

 

ピクピクピク…

 

またもや顔中に血管を浮かび上がらせ、今にも渚に襲い掛かろうという表情の鷹岡。

 

ザザッ…

 

「「「「「「「……………」」」」」」」

「皆…?」

それに対し、渚を庇うかの様に、前に立つE組の面々。

 

ピクピクピクピクピクピク…

 

「黙っ…て聞いてりゃ…餓鬼の分際で…

親に向かって、何て口だ! 何て態度だ!?」

この完全アウェイな状況にキレて、鷹岡は目の前の生徒達に襲い掛かる。

 

「「「「「「!!!?」」」」」」

 

バキィッ!

 

しかし、この鷹岡の暴力が生徒に届くより先に、烏間が前に素早く立ちはだかり、強烈なアッパーカットを鷹岡の顎に炸裂させた。

烏間はダメージが深く、立ち上がれない鷹岡を後目に生徒達に顔を向け、

「皆…今回は俺の身内が、迷惑を掛け、すまなかった。

後の事は心配しなくていい。

俺1人で君達の教官を務められる様、上と交渉する。 

いざとなれば銃でも何でも使って、許可を貰ってみせるさ。」

「「「「「「「烏間先生!!」」」」」」」

烏間の期待の言葉に、生徒達の顔は明るくなる。

 

「…そんな交渉の必要は、ありませんよ?」

「理事長…!?」

そんな中、水を注すような声。

声の主は、椚ヶ丘学園理事長、浅野學峯。

 

「い、何時の間に…?!」

「鷹岡先生が、鞄から本物のナイフを取り出す前くらいですかね?」

…結構 前から、様子を伺っていた様だ。

 

「…御用件は?」

殺せんせーの質問に対し、浅野は未だ立ち上がれない鷹岡に にっこり微笑みかけ、言う。

 

「経営者として…様子を見に来ました。

新任先生の手腕に興味があったのでね。」

「「…!?」」

この言葉に、烏間と殺せんせーの頭に不安が過ぎる。

この理事長の教育理念からすれば、E組の消耗は大歓迎な筈。

ならば、鷹岡の続投起用も十分、有り得るからだ。

 

「鷹岡先生…」

そして理事長が、鷹岡に話し掛ける。

 

「結論から言えば、あなたの授業は非常に つまらない。」

「!?」

「確かに時には、教育に恐怖も必要かも知れません。

事実、一流の教育者は恐怖を巧みに使いこなします。」

「…………………」

烏間の顔が険しくなる。

 

「…が、暴力でしか恐怖を与える事が出来ないなら、その教師は三流以下です。

ましてや生徒に その暴力で屈し、更には生徒の恐怖の前に失禁までしてしまうとなると…解りますか、鷹岡先生…?

あなたの恐怖(じゅぎょう)は、既に説得力を完全に失っているんですよ?

そして、その様な無能な教師は、椚ヶ丘(ウチ)には不要です。」

そう言うと浅野は、スーツのポケットから紙とペンを取り出し、何やらサラサラと書き込んでいく。

 

「??!」

そして その紙を四つ折りにすると、未だ倒れている鷹岡の口に突っ込む。

解雇通知…それは白紙に即興で書き込んで作った物でなく、正式な書類だった。

理事長の認印も、きちんと押されている。

常日頃から 今回の様な状況を想定して持ち歩いているのか、それとも既に鷹岡の力量と この展開を見越した上で、予め用意していたのか…

いずれにせよ、鷹岡のクビが、この場で決定した。

 

「…さ·て、」

そして理事長は烏間に顔向け、

椚ヶ丘(ここ)の教師の任命権は防衛省(あなたがた)には無い。

全ては私の支配下だという事を、お忘れない様に…」

そう言い残し、下山して行った。

 

≫≫≫

その様を、屈辱で歪めた顔で睨みつける鷹岡。

 

 

くそ!クソ!糞!くそ!クソ!糞~!!!!

 

 

そして漸くダメージが抜けて立ち上がり、

「烏間あぁ~っ!」

再び烏間に殴り掛かるが、

 

バキィッ!

 

やはり先程のリプレイの如く、アッパーカットを喰らって返り討ち。

先程は単に暴走を止めるだけの、僅かながらに手心を添えた拳だったが、今度は迎撃…本気の一撃。

 

「うっわ~…」

「ざまあ…(笑)」

これが見事に決まり、鷹岡は完全に失神KOとなった。

 

≫≫≫

「………………………。」

その後、完全に拘束され、烏間の部下である鵜飼と園川に何処かに連行され、改めて鷹岡のクビを実感した生徒達が沸き立つ中、園川が鷹岡の下半身から漂う悪臭に、凄く嫌っそぉ~~~~…な顔をしていたのは、また別な話である。

そして、そんな鷹岡の様子を見て、

「「マンモス哀れなヤツ。…!?」」

響と不破が感想をハモらせ、

「「いえーい!」」

 

パンッ…

 

ハイタッチをかわしたのも、また別の話。

 

▼▼▼

放課後。

 

「へ~、そんな事があったんだ~?

俺もサボらずに授業、出てりゃ良かったかな~?♪」

「カルマ君、面倒そうな授業は、すぐサボるから…」

「だってさ~、あのデブ、何となく嫌だったし~♪」

「そこ! 無駄口叩かない!!」

「「す、すいませーん!」」

放課後訓練の最中、渚とカルマが話してると、烏間から注意が飛んできた。

 

「やれやれだな…」

「ヌルフフフフフ…まあまあ、今日は、あれだけの事があったのですから…」

「ふん…」

やや呆れな烏間と、それをフォローする殺せんせー。

 

「おい、タコ…」

「ヌル?」

「お前は渚君の持つ才能には、気付いているのか?」

「ヌルフ…殺し屋の才能…ですか?」

「…仮に彼が、『自分には暗殺の才能が有るから、将来は殺し屋になりたい』とか言てきったら、お前なら どうする?

迷わずに育てるのか?」

「ヌルフ…

これはまた、答えに困る質問を…

そうですねぇ、迷う処ですが、私なら…

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

「よし、今日は終了だ!」

「「「ありがとうございましたー。」」」

「「「「「お疲れ様でしたー。」」」」」」

この日の放課後の暗殺特訓も終了。

 

「「「「「烏間先〜生〜?」」」」」

「ん?」

此処で中村を筆頭に、数人の女子生徒が烏間に話し掛ける。

 

「今回はさ、生徒の努力で無事に体育教師に返り咲けた訳だし~」

「何か臨時報酬くらい、あっても良いんじゃないかな~?…って。」

「そーそー♪

鷹岡先生、そーゆーのだけは、充実してたよね~?そーゆーのだけは。」

集るハイエナ女子。

だが、実際に努力したと言って良いのは、渚と響だけである。

 

しかし、

「…フン」

『やはり そう来たか…』…この展開を予想していた烏間は そんな不敵な笑みを浮かべ、

「残念だが、俺はスィーツとかは知らん。

財布は出すから、街で好きな物を食え。」

そう言って財布を出す。

 

「「「「「いやっほぉーい!!」」」」」

歓喜の声を上げる生徒達。

…その後、何処の店に入るか少し揉めたのだが、今日の実質MVPの渚と響のリクエストにより、マ〇ドに決まった。

 

「いや…だから俺、甘い物嫌いだし。」

 

≫≫≫

「ヌルフフフ…それじゃ皆さん、行きましょうか!」

「「「え? 殺せんせーも来るの?」」」

「ヌル?」

「ヌル?…じゃねーよ。今回 せんせー、何もやってねーじゃんよ?」

「大体、国家機密が無闇に外に出ようとするなよ。」

「にゅや!?」

「全くね、何もしてないのに、厚かましいわよ、このタコ!

さぁ、こんなの放っといて、皆、行きましょ!」

此処でイリーナが音頭を取るが、

「「「「「「「「いやいや、ビッチ先生、アンタも何もしてない!

てゆーか、今回あの場に居なかったじゃない!?」」」」」」」」

生徒達から総突っ込みされる。

 

「ムキーっ! カラスマと一緒に駆け付けたわよ!!」

「ふむふむ、『前回の前書き』から察すれば、確かに吉良君が脱ぎ脱ぎ♡してた時点で、居たみたいだけど…」

「不破さん?」

「でも結局は、何もしてないよね?

殺せんせー同様に。」

「いやいや、先生は烏間先生に、教師という仕事の やり甲斐を知って貰おうと思い、静観をですね…」

「い…以下同文!」

必死なタコ&ビッチ。

 

「烏間先生、あんなの放っといて行こ♪」

「ああ、机の上を片付けしてくるから、少し待っていてくれ。」

「「「「「「は~い。」」」」」」

生徒達の返事を背に、教員室に向かう烏間。

 

▼▼▼

「やり甲斐…か…」

机の上の書類等を整理しながら烏間は、先程の殺せんせーの言葉を思い出していた。

 

 

これはまた、答えに困る質問を…

そうですねぇ、迷う処ですが、私なら…すいません、私、本当に今、迷っています。

…ですが、教師とは本来、迷う物です。

自分は今、本当にベストな答えを教えているのか?

心の内では散々と悩みながら、生徒の前では毅然として教えなくてはいけません。

決して迷いを悟られぬ様に堂々と。

だからこそ、カッコいいのですよ、先生っていう職業はね…

 

 

「俺も…この暗殺教室で夢中(ハマ)っているのかも知れないな…

迷いながら、人を育てる面白さに…」

そう呟きながら、机の上を片付けると、外で待つ生徒達の元に足を進めるのだった。

 

≫≫≫

そして…

「うわ…2人共、土下座しながら着いて来てるよ!?」

「プライド無いのかよ?」

「「「「「マンモス惨めなヤツ!!」」」」」  

 




 
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