暗殺聖闘士   作:挫梛道

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終業の時間

「しまった…穴だった…」

「抜けてるよねぇ…」

終業式の為、山の上の旧校舎から、本校舎に向かっているE組の面々。

全校生徒が集まる学校の集会行事では、E組生徒は事前に、真っ先に その場に集合して整列、待機する事が義務づけられている。

期末テストの賭けにより、A組の生徒達は、そのE組よりも先に、整列待機しなければいけなくなったのだが…

「おう。『E組より先に』で無く、『E組の代わりに』って、しておくべきだったぜ。」

それで、E組の事前集合待機の義務が無くなる訳では無かった。

単に、A組がE組より早く集まる事になっただけである。

 

「失敗だったね〜?」

A組に対する嫌がらせしか頭に無く、自分達が楽をするという発想が無かった事を悔いる響、カルマ、中村。

 

「しかし珍しいな。カルマが きちんと集会、出るとはな?」

「仕方無いじゃん? 今回はフケると、何だか逃げてるみたいだからね。」

「逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ …」

磯貝の話し掛けに、ややふてくされた感じに応えるカルマ。

そして、それに繫ぐ不破。

そんな会話をしながら、彼等は山を下りていく。

 

▼▼▼

「くす…それにしても、今回は本当に、生徒(ガキ)共に してやられたわね?

特に、あの問題児共に。」

「…ええ。」

旧校舎の教室で話してるのはイリーナと殺せんせーである。

A組との5教科勝負…いや、殺せんせーの触手破壊権利を賭けた5教科勝負の一角に、寺坂達が まさかの家庭科を持ち出し主張した事。

そして、結果として見事に触手6本破壊権利獲得という結果を出した事。

実質、寺坂達の主張は詭弁すれすれだったと言っても過言では無いし、担任としては やはり、本来の5教科に力を注いで欲しかったのが本音だろう。

 

「しかし…それは それで、私は嬉しい。」

それでも、殺せんせーの顔は暗くはない。

家庭科の…5教科以外のテストは受験に関係が無い分、重要度が低い。

それに従い、出される問題も、教科担当教師の好みで自由に出題される傾向がある。

…と、なると、殺せんせーの授業しか受けてないE組生徒からすれば、本来の5教科よりも、高得点や学年トップ獲得は難しい部分があったのも事実である。 

 

「…だからこそ、相当研究したのでしょう。

私に一杯食わせる為に、ありとあらゆる出題傾向を…

盲点を突く自由な発想に、一刺しの為の集中力…

この暗殺教室に相応しい生徒達です。」

「……クス♡」

嬉しそうに語る殺せんせーに、イリーナも その顔に笑みを浮かべる。

イリーナにしても、彼等は自分の生徒に変わりなく、その彼等の成長は素直に嬉しいのだろう。

 

「ところで…」

「にゅ?」

「何で私等、終業式、旧校(ここ)で留守番なのかしら?」

「だって、烏間先生が ()()()で、来るなって脅すからですね。」

「タコが いるからだわ。」

「違いますぅー、ビッチが いるからですぅー!」

「むきー! 何ですってーっ?!」

 

▼▼▼

「あっ、皆さん、この前ぶりですぅ。」

「あ、どうも、律(偽)さん…。」

山を下りたE組の面々を麓で迎えたのは、期末テストの際に律の代わりとして試験を受けた、『替え玉』律だった。

 

「律(偽)も、終業式に参加するの?」

「本当の学校も、今日で1学期、終わりじゃないの?」

「はい♪」

「はいって…」

「律が機械とバレない為の必要な工作だ、皆、自然体で いてくれ。」

「烏間先生…?」

驚く生徒達に、烏間が説明する。

 

「彼女は、俺の直属の上司の娘さんだ。

口は堅いし、余計な詮索もしない。

何より、律(本物)の授業で、本来の学校の試験も好成績を出せたから、本人は勿論、上司も御機嫌だ。」

「はぁ…それは何より…。」

そう言ってきたのはやや沈んだ表情な菅谷。

 

「俺、テストん時ずっと彼女の隣で、殆ど集中出来なかったからさ、クラスで最下位になっちまったよ。」

そう言う菅谷だが、それでも総合の成績で、192人中91番と、半分より上位の成績を治めていた。

すなわち、本校舎3年の半数以上が、ENDの象徴であるE組生徒より成績が下位という事になる。

 

≫≫≫

「あっ、マジに並んでるし~♪」

「言ってやるな!www」

「「「「「「……!!」」」」」

E組生徒達が終業式が行われる体育館に顔を出すと、浅野を筆頭とするA組生徒が既に整列して待機していた。

最初は弄りに出たカルマを睨むA組の面々だが、響の

「あ゙っぁん!?」

「「「「「「「「!!????」」」」」」」」

睨み返しに、怯えた顔を隠す様に、下を向いてしまう。

 

((((((やっぱりコイツは悪魔だ!!))))))

その様を見たクラスメートは そう思った。

 

▼▼▼

「…えー、ですから、夏休みと言っても、決して怠けず、E組の様にならない様…」

終業式は恙無く進み、校長が何時もの如く、E組を弄る発言をしても、ウケは良くはない。

普通なら大爆笑が起きる体育館も、水を打った様な静けさに包まれる。

何しろ成績至上主義の椚ヶ丘で、3年の半分以上がE組よりも学力的に劣ると云う結果に加え、何よりも夏休み前に、E組(エンド)A組(エース)に対し、下克上を成立させた様な物だから。

更には言えば、超々危険人物・響の存在が3年だけでなく、試験前の図書館での騒ぎで、全校生徒の間で完璧に認知されているのだ。

此の場で笑うイコール、『死亡フラグが立ちました!』になってしまうと、当事者が どう思っているかとは別に勝手に思い込み、黙りを決め込んでいる。

そんな中、普段は自信無さ気に俯いていたE組生徒達も、今日は堂々と前を向いて立っていた。

因みにだが…この日は舞台の照明が、いきなり落下する等のアクシデントは起きなかった。

  

▼▼▼

「…いい加減にしろっ!」

 

バシィッ

 

「「ありがとうございましたーっ!」」

「「「「「「………………」」」」」」

 

ぷっ…

くすくす…

くっくっくっく…

どわぁーはっはっはっはっはっはっは!!!!

 

 

…終業式が終わった後、旧校舎のある山の麓で、E組生徒が教室に戻る前、例の協定書の項目の1つである、週1回の芸の披露…

その記念すべき弟1回は、浅野学秀と榊原蓮による漫才が披露され、結果として浅野達は大爆笑を得た。

 

「くそっ! 不覚にも笑ってしまった!」

「さてはネタ考えたの、榊原だな?

流石は5英傑の国語担当!お笑いの文才もパねぇぜ!w」

「いや、笑った笑った!www

今日は もう良いぜ。

次の芸の御披露目は、2学期の始業式の後、また この場所な。

キャストやネタは、其方に任せるわ。

夏休みの間、じっくりとネタ、煮詰めてくれや。じゃあな。」

「「くっ…」」

屈辱に顔を歪める浅野達を背に、響達は山を登っていく。

仮に自分達が、まだ響と同レベルな人外な命令でなく、良心的人道的な要求を示していた上で、E組の要求にクレームをつけていたら…或いは浅野が理事長(ちちおや)に泣きついていたら…まだ この結末は回避出来たかも知れなかったが、既に浅野に その発想は無く、次の復讐、逆襲の場面を頭の中に構築しながら、旧校舎を目指すE組を、響を睨みつけていた。 

        

「…次に何か仕掛けるとしたら、中間テストか、その前の体育祭辺りかな~?」

…既に響に、それすら読まれてるのも知らずに。

 

≫≫≫

「ま…あんなシケた国内旅行なんざ、E組に くれてやるよ。」

「ああ、どーせウチは、ヨーロッパ行くしな。」

「僕の家も、フランスさ。」

「俺ん家なんk

「巫山戯てんなよ…」

「「「「はひ…?」」」」

「皆が皆、海外に行けるなんて思ってんなよ、ゴラ゙ァ!!?」

「あ、いや…」

「肝心な時に勝負に勝てなくて、何が5英傑よ! (笑)(カッコ オワライ)だわ!」

「き、君達、少し、落ち着かないか?」

椚ヶ丘中学校の特別夏期講習、沖縄離島リゾート2泊3日。

…と言っても、講習とは名ばかり、勉学のスケジュールは組まれておらず、完全な観光旅行である。

本来ならば成績最優秀クラスであるA組に、夏休みに与えられる特典だったが、その権利をE組に賭けによって強奪された形になったA組の教室は荒れていた。

 

「だいたい、荒木、お前が吉良や赤羽の存在忘れて調子こいて、勝負とか言い出したらしいじゃねーか!?」

「いや…それは…」

「だいたい、E組の花壇の手入れとかも やらされるってのに、テメー等だけ海外かよ?!」

「ローテーションは5英傑とか関係無く、平等に組んでるからね!」

「いや、俺等が若干、多いだろ?」

5英傑(おまえら)を最初に名前入れてるから、当たり前だろうが!」

「だいたい瀬尾!一番の元凶は お前じゃねーか!」

「は? 何で、俺g

「お前が2年の時、吉良に手ぇ上げたのが、そもそもの始まりだろーが?!!」

「う…」

吉良(アイツ)A組(コッチ)に居たら、普通に圧勝してたんじゃねーのか?」

全方位からの非難轟々に、たじたじの瀬尾達。

 

「…皆、少し黙っていてくれないかな?」

そんな中、浅野が静止を呼び掛ける。

 

「お前が あんな無茶ぶりな命令突き付けたから、向こうの要求も呑まざる得なくなったんだろうが!」

「大義名分与えてんじゃねーよ!」

「普段から偉っそうにしてんだから、きちっと仕事すべき時は仕事しろ!!」

「だいたい お前なら、理事長先生に お願いして、勝負を無かった事に出来t

「黙っていろと、言っている!」

「「「「「「ひっ…!?」」」」」」

それは火に油…となりかけたが、1人の禁忌となる発言からの、更なる静止により、漸く静かになるA組教室。

 

「負け犬に口無しだ。

次に僕がリードを引くまで、お座りして待ってろ。」

「「「「「(お前だって、負け犬だろうが…)」」」」」

そう思いながらも、先に出した迫力の前に、完全に黙り込むA組の生徒達。

その浅野の、どす黒い()()を撒き散らす雰囲気と、凄まじい復讐心を帯びた眼の前に。

 

 

E組、吉良…この借りは必ず返す。

次の… ………………で、確実に潰す!!

 

 

▼▼▼

「さて、これより夏休みに入る訳ですが、皆さんには、メインイベントがありますねぇ。」

1学期最後のホームルームが始まった。

 

「君達の希望だと、触手破壊の権利は この教室で使わず、沖縄の合宿中に行使するという事でしたね。」

そう、触手破壊の権利を、十分に活用する為にE組の起てた暗殺計画…

それはA組より奪取した沖縄夏期講習時に、組み込む作戦だった。

 

「触手11本の大サービスでも決して満足せず、四方を先生の弱点である水で囲まれた この島も使い、万全に貪欲に命を狙おうとする…」

担任教師は頭を掻きながら、

「素直に認めましょう。

君達は侮れない生徒になった。」

照れ臭そうに笑いながら言う。

自分達を認めてくれた発言に、生徒達も笑みが零れる。

 

「では皆さん、夏休みも!

1学期で培った基礎を存分に生かし…

沢山遊び沢山学び…そして沢山殺しましょう!」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

こうして、暗殺教室の1学期は終了するのだった。

  




 
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