「なぁ~、俺って、どうやって降りたら良い訳?」
鷹岡を完全に下した響が、ヘリポートの上から、皆に呼び掛ける。
ヘリポート昇降の為の
「ぴょーんって、飛び降りたら~?♪」
「吉良君なら簡単でしょ?」
「出来るかっ!」
…勿論、実は響からすれば普通に出来る事だが、そんな常識外れな身体能力を披露する訳には行かない。
因みに ここで言う常識とは、E組の面々が今迄に目の当たりにした、烏間や その他の殺し屋の身体能力が、基準である。
結局は、ロープを使い、タラップを引き上げる事に。
「おら、引っ張るぞ。」
寺坂が中心となって、この梯子を引き上げてる時、
「さて、今の内に…」
響は大の字となった
「ぉぅらっ!」
ゲシィッ!
「ぐはわぁっ!?」
その脇腹に、思いきり蹴りを入れる。
すると、死体の筈の鷹岡が、呻き声と共に飛び起きた。
「よう、目覚めの気分は どーよ?」
「ひぃいいぃっ!!?」
ガグガクガグガクガグガクガグガク…
そして響の言葉に何かを思い出したかの様、鷹岡は身体全身から冷や汗を噴き出し、怯えた表情で身体を奮わせる。
それは まるで、
「どうした?
「ひぃいいいぃえゎっ??!」
正しく そんな顔。…事実、地獄へ向かう亡者の行進の列に、参加していたのだが。
そんな鷹岡に響は、
「いやだなあ? 人の顔を見て、そんなに怖がったりしないで下さいよぉ?…タ・カ・オ・カ・セ・ン・セ・イ♡」
優しく爽やかに微笑みかけるが、
「うわぁあ!? く、来るなぁっ?!」
ズサササ…
腰が抜けて立ち上がれないのか、鷹岡は仰向けから上体を起こしただけの形で、目の前の少年から逃げる様に後退り。
一応トドメ、刺しとくか…
そんな鷹岡を見て頭の中で呟いた響は、何時かの時の様に、本物の殺気を全開放しながら、ヘリポート隅迄追い詰める。
そして、完全に戦意を失っている男に顔を近づけると、先程迄の にこやかな表情を一瞬に修羅の如く一変させて睨み付け、
「仮に、此の場に立ったのが俺でなく渚だったとしても、お前じゃ勝てなかったよ…
それから…次は…リアルに…殺す!!」
「~~~~!!?」
この怒気、そして
≫≫≫
「吉良っち~、お疲れ~♪」
「やったな、吉良!」
「何だかんだで、圧勝だったね!」
「応よ!」
パシパシパシパシパシパシパシパシッ!
再び設置された階段を渡り、下に降りたと同時に、響は出迎えてくれたクラスメート達と連続のハイタッチ。
≫≫≫
「爆弾は取り除いたぞ。」
「「「おぉ、流石はイトナ!」」」
「…こんなの、誰でも出来る。…寺坂以外ならな。」
「あ゙ぁ!?」
「おい、止めろって!w」
ワクチンの入ったケースに取り付けられた爆弾はイトナが外し、それに対する皆の賞賛を照れ隠す様に毒舌を放ち、普段の やり取りを展開させていた。
「皆、お疲れだったな。」
そんな彼等に、労いの言葉を掛ける烏間。
「既にヘリを呼んであるから、君達は待機していてくれ。
ワクチンも無事に入力は出来たが、念の為だ。
あの毒使いの男も、連れて行く。」
「…ふん。薬なんざ、必要無ぇよ…」
「「「「「「「「!!?」」」」」」」」
続く烏間の言葉に何者かが、それを否定するかの発言をしてきた。
声の方向に一同が振り向くと、其処に居たのは、ガストロ、グリップ、スモッグ。
ホテル最上階を目指す際の、鷹岡の刺客として立ちはだかった、殺し屋達だった。
「ガキ共ォ…この儘、無事に生きて帰れるとでも、思っていたってか?」
「「「「………!!」」」」
ガストロの台詞に身構える生徒達。
「…お前達の雇い主は、既に倒れた。
俺達が戦う理由は、もう無い筈だ。」
そんな生徒達より、一歩前に出た烏間が、殺し屋達に語り掛ける。
「俺も充分、回復した。
この生徒達も、充分に強い。
互いに無駄な被害が出る様な事は、止めにしないか?」
「ん~、良~よぉ~?♪」
「…??!」
自身の提案に、あっさりと了承する殺し屋に、逆に警戒をする烏間だが、
「俺達の契約には『ボスの敵討ち』は含まれてないぬ…で候。」
「…そうか。」
グリップの言葉を聞き、一応は納得な顔をして肩の力を抜く。
「それと、お前達の お友達に盛った薬だがな…」
「「「「!!」」」」
≫≫≫
スモッグが言うには…
鷹岡は最初から取引に応じる事無く、生徒達の前でワクチンを爆破させる心算だった。
しかも、設定した交渉期限は60分。
ならば、わざわざ
…密かに自分達3人だけで話し合い、E組メンバーが沖縄入りした時には既に、この様な結論に達していた。
宿泊先で倒れている生徒達が侵されているウィルスは、実は鷹岡指定の殺人ウィルスではなく、改良した食中毒菌で、あと数時間は猛威を振るうが、その後は急速に活性を失い、無毒化する…と。
「くっくっ…お前達に薬は必要無いってな、そーゆー意味さ。
俺様は多種多様な毒を持っているからな。
今回も、お前達が命の危険を感じるにゃ、充分過ぎただろ?」
「うん…でも、それって…」
「あん?」
してやったりな、ドヤ顔のスモッグに、問い掛けたのは岡野。
「私達からすればラッキーな事だけど、
一応は お金、貰ってるのに、そんな事しても良いの?」
「…だな。その辺り、プロとして どーなんだよ?」
「プロが何でも、金で動くと思っていたら大間違いだ、あーほー。」
「ぁ…」
「ほぅ…?」
岡野と吉田の質問に対して、口を開いたのはガストロだった。
「当然、依頼人の意に沿うように最善は尽くす…が、今回は さっきも言った通り、ボスは最初っから お前達との約束を守る心算は無く、皆殺しな予定だった。」
「例え、素人の域を抜けているにしても、所詮はカタギなガキを大量殺害した実行犯となるか、それとも命令違反がバレる事で、プロとしての評価を落とすか…」
「どちらが俺等の今後にリスクが高いか、冷静に秤に掛けただけだぬで候。」
「「「「…………………。」」」」
この言葉に、少し思う所が有りながらも、生徒達は一応の納得をする。
「ま、そんな訳だ。残念ながら お前達、誰も死なねえよ。」
ポイッ…
そう言いながら、スモッグは、何やら錠剤の入ったガラスの小瓶を響に投げ渡す。
「これは…」
「俺様特性の栄養剤だよ。
あっちのホテルに戻ったら、寝込んでる連中に飲ませて、ゆっくり休ませてやりな。
明日の朝には、倒れる前より元気になる事、請け合いだぜ?」
「「「「「「「「何なの? その万全のアフターサービス?」」」」」」」」
「ククク…
「うぬ。俺も一応、整体師の国家資格を持っているぬで候。」
「嘘っ!?」
「いや、死ぬ程 痛そうだけど、腕は凄く良さそう?」
ババババババババ…
そう言っている内に、烏間の呼んだ大型ヘリが到着する。
「…悪いが、信用するかは生徒達が回復したのを確認してからだ。
事情も聞かねばならないし、暫くは拘束させて貰うぞ。」
「…ま、しゃーねーってか?
でも来週には、次の仕事が入ってるから、なるべく手短にな。」
▼▼▼
ヘリポートに着いた2台のヘリコプター。
その内の1台は、鷹岡や その直属な部下達、そして響と戦った殺し屋・
「あの鞭男は向こう側?」
「ああ。あの男は俺達みたいな、ロヴロ氏仲介で防衛省からの依頼をボスが横から かっ攫っていったのとは別ルートで、個別に呼ばれた殺し屋だからな。
防衛省御用達の暗殺者でないから、普通に犯罪者な扱いなんだろうよ。」
「それで あの時には、一緒じゃなかったんだ?」
「一応はな、上に登る際にガムテープぐるぐる巻きだったのを見て、助けてやろうと思ったんだけどなぁ…」
「うむ。余りにも偉そうな命令口調で、『早く解け!』とか言ってきたから、ムカついてスルーしてきたぬで候。」
そして もう1台には、E組関係者やガストロ達が乗り込み、飛び立って行った。
こうしてE組による大規模潜入ミッションは、ホテル関係者の誰1人気付く事無く、
≫≫≫
「あ~、疲れたわね~!」
「あはは…ビッチ先生も、お疲れ様。」
「あの最初の陽動が無かったら、本当に何も出来なかったわよね?」
因みにイリーナは、鷹岡から奪った専用ICキーを使って、普通にロビー迄エレベーターで降りてきた磯貝と片岡に連れられ、これまた普通にエレベーターで、最上階で皆と合流していた。
「しかし まさか、黒幕が あのタカオカだったとはね~?
それに、スモッグにグリップにガストロ?
アンタ達、あの連中相手に よく、全員生きていられたモンだわ?」
「やっぱり殺し屋の世界じゃ有名なの? あの3人?」
「そりゃあ、もう…って、その3人、さっきから何やってんの?
…ヒビキも何だか一緒みたいだけど?」
「あ~、あれは…」
イリーナ達が目を向けた先には…
「秘薬欲しいな~? 秘薬欲しいな~?
誰か恵んでくれたら、凄く嬉しいな~?」
「断る。」
「やなこった。」
「やらぬ…で候。」
「あ゙ーっ?! 殺られたーーーーーっ!!」
…どうやら、モン〇ンのプレイ中の様だ。
「ね~、おじさんぬ?」
「ぬ?」
その、モ〇ハンプレイ中のグリップ達に、カルマ、千葉、速水が話し掛ける。
「あの屋上の時、俺達は てっきり、リベンジを仕掛けてくるかと思ったけど…」
「…私達の事、殺したい程恨んでるんじゃないの?」
「「「くっくっく…」」」
「「「???」」」
速水達の問いに、3人の殺し屋は、揃って笑みを零した。
「殺したいのは やまやまだが、俺は生憎、私怨で人を殺した事は無いぬ…で候。」
「同じく…だな。」
「そーゆーのはな、3流が する事なんだぜ、お嬢ちゃん。」
「ぷぷぷ…お、お嬢ちゃん…www」
ジャキ…
「吉良…っち…?」
「すいません、何でも無いです…」
片や壺、片や禁忌だったか、銃口を向ける速水に、響はホールドアップ。
「ふっ…だから俺達は、誰かが お前達を殺る依頼が来る日を待っておくさ…」
「せいぜい、狙われる位の大物に なるぬで候。」
「ま、そーゆーこった、ガキ共。
本気で殺しに来て欲しいなら、本気で偉くなりな!
そん時ゃ…
「お代は、お前等の命…な♪」
「「「「……………………。」」」」
「…何なのよ?
この、勝ったのに全然 勝った気がしない感?」
「言い回し、ずる過ぎ…
まるで俺等が あやされてたみたいな感じで纏めてるし…」
「くっく…勉強になったろ?
これが、プロの年季…大人の強かさってヤツさ…。」
「「「「……………………。」」」」
≫≫≫
こんな会話の中、ヘリはホテル傍の浜辺に降り立ち、E組の面々は、倒れているクラスメートに、一連の出来事を話し、もう心配無い事を伝える。
ある者は安堵の溜め息を零し、ある者は歓喜の雄叫びを上げ、ある者は只、嬉し気に微笑み、そして ある者…約2名は その嬉しさの余り感極まり、傍に居た女生徒に抱きつこうとして、カウンターの蹴りや
▼▼▼
そして、次の日の朝。
「本当に大丈夫なのかよ?」
「応よ! 本当に あの薬が効いたのか、全く平気だぜ!」
「寧ろ、昨日の岡野の蹴りのが、まだダメージ残ってる位だぜ!!」
「もう、暗殺も終わってるし、今日は朝から晩まで…それこそ倒れる迄、遊んでやるんだい!」
「「水着の ちゃんねーが、俺達を呼んでいる!」」
「…ビーチな、殺せんせーにトドメ刺す設備の工事で、立ち入り禁止だぞ?」
「「「な、何だってーーーっ!?」」」
「あははは…」
朝食が済んだ後、早速 遊ぶ算段な響達。
しかし、自分達が宿泊しているビーチは、完全防御形態の殺せんせーを確実に始末するべくな、巨大なコンクリートの柩を建造中。
関係者以外、立ち入り禁止となっていた。
それを知り、此の世の終わりな如く、orzる前原と岡島…と茅野。
「ヌルフフフフ…何だか、先生のせいで、ゴメンナサイねぇ…。」
「「「「全くだよ!」」」」
渚が手に持っている殺ボールは、右半分は真剣に申し訳無さそうに、左半分は嬉しそうに謝罪…真顔と緑&黄の縞模様のハーフ&ハーフな顔になっていた。
「何だよ!? そのニヤけた顔わ!!」
「誠意が無い!」
ブーイング全開な生徒達。
「いや、どうせ先生は、もう直ぐ烏間先生に連れられて、コンクリートに埋められるから、遊べないしー?
それで、君達も遊べないのは『ざ〜ぁまあ〜!www』なんて、少ししか思ってないしー?」
「「「「「「はぁ゙!??」」」」」」
≫≫≫
「にゅやーーーーーーーーーー?!
ゴメンナサイ! すいませんでした!
先生、少しだけ調子に乗ってました!
先生が悪かったです! 少し、話し合いましょう!!
皆さーん、カァムバァーーーーーーーーック!!!!」
…この後 殺ボールは烏間が引き取りに来る迄、大量のウミウシを貼り付けられた状態で、放置されるのだった。