暗殺聖闘士   作:挫梛道

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制裁の時間

「何してんのよ!?」

「この卑怯者!!」

「中学生1人に高校生が2人掛かりで…更に女を人質に?

本当に情けないわね…?」

「る、るっせーっ! おい、構わねーから そのガキ、殺っちまえ!!」

「お、おう!」

「……………………………。」

香純を盾にする事で その友人達、そして当人からの蔑みを受けても、その暴挙を止める様子を見せない2人。 

年下のガキに、舐められた儘では終われない。

兎に角このガキを〆ないと、気が収まらない。

先程の僅かな乱闘で、その実力差の理解分析は十分に出来ていた筈。

しかし完全に頭に血が上り、結果にだけ執着する余り、その手段工程に迄 思考が及ばなくなっていた。

年上云々という小さなプライドに拘っているが為、外聞等の冷静な判断が…その行為が、恥の上塗りになる等の判断が、出来なくなっていた故の行動だった。

  

「そんな訳だ、動くなよぉ、ガキぃ!」

 

ぶん…

 

「「きゃああああっ!?」」

響の目の前に立った男が、右の拳を大きく振り翳し、それから成るであろう理不尽な暴力に対し、悲鳴を上げる2人の少女。

 

どん!

 

「ぎゃあああぁっ!!?」

 

そしてホームに響く断末魔。

 

「「…って、えぇ??」」

「な!?」

「…くす♪」

「痛ててててたたた! テメー、何しやがる!??」

しかし その次の瞬間には、その振り下ろされた腕はガッチリと捉えられ、響の脇固めが きっちりと極まっていた。

その様に、ある者は想定外の展開に驚きの声を上げ、ある者は想定通り過ぎる展開に苦笑。

そして また ある者は、訳の解らない儘に腕に走る激痛…その原因である少年に、文句を飛ばす。

 

「痛ーんだよ! 放せよコラ!?」

「…おい お前、今直ぐ香純さん離せ。

でないとコイツの腕、破壊するぞ。」

腕を極められ、痛がる男の声を完全スルー、香純を捕らえている男を睨み、自分の要求だけを突き付ける響。

しかし、

「はっ! やれるもんなら やってみろよ?」

そんな言葉はハッタリとしか思っていない この男、挑発じみた下卑な笑みを浮かべると、

 

むにゅ…

 

「きゃああああぁっ!!?」

「おほっ? 結構あるじゃねーか?♡」

香純の胸に手を回し、これまた挑発するかの様な、鷲掴みからの揉み解し。

乙女の悲鳴がホームに響き渡った。

 

バキイィッ!!

 

うっぎゃあ嗚呼々々々々々々々々々々々ぁ~っ!!?

そして直後、其れを掻き消す程の大音量の断末魔が、ホームに木霊する。

                  

「う、腕がぁ?! 腕がぁあ!!?」

有言実行。

抑え付けていた男の右腕を、肘から肩から完全破壊した響。

そして直ぐ様、折られた腕を押さえて のたうち回る男には目もくれず、香純を捉えている、もう1人の男の下迄ダッシュすると、

「ひぇっ…?」

その憤怒の形相に、たじろいでいる男の顔面目掛けて、

「せぇいやぁああぁっ!!!!」

 

ドゴォッ!!

 

「ぶぷももぶふひぴぃっ!?」

めり込まさん、或いは その儘、貫かんとばかりな勢いで、強烈過ぎる左の正拳を撃ち抜いた。 

                               

「おい固羅テメー、何を巫山戯た事、してくれちゃってんの?

御蔭様で死亡フラグ、立っちゃったじゃねーかよ?

どーしてくれる訳なの?これ?」

憤怒、恐怖、悲哀、絶望…

目に涙を溜めながら、有りと凡ゆる()の感情を混ぜ込ぜにした様な凄まじい表情で、香純を捉えていた…今はダウンしている高校生を睨み付ける響。

 

「すす…すまなかっt」

 

ベキッ!

 

「ぎゃん?!」

余りの迫力に男は蹲った儘 謝ろうとするも、その謝罪の言葉を言い終わる前、今度は顎に、容赦の無い爪先蹴りが炸裂。

 

「あがが…」

「巫っ山戯んなよ このタコ!『すまなかった』で済む程、ウチの()は優しくねーんだよ!」

「ぁぇ??!」

「「へ?」」

何故に此処で兄が…?

数人が『???』な表情を浮かべる中、泣きそうな、何やら訴えかける様な顔で、香純に目をやる響。

 

「ん~、ゴメンね、響君。

やっぱりコイツ、例え この場で半殺しにしたとしても、やっぱり赦せないよ。」

「つ・ま・り…?」

「ん。悪いけど、煌介に言って、彼にも きっちりと制裁して貰うわ。

この私を二度もブス呼ばわりしただけでも万死に値するのに、胸まで触るなんて、どー考えても死刑よ!

100回は殺さないと!」

「でっすよね~~!?」

 

ガン! 

 

「ぐはぁっ!?」 

「ほぉれ見ろぉ! 兄貴に知られる…イコール、香純さん守りきれなかったからって俺も兄貴にシバかれるの、決定じゃないかよおおおぉっ!!」

香純の無慈悲な宣言に絶望。

とばっちりで自身にも制裁確定した響の嘆きの拳が、刺客の男に炸裂。

 

「死亡フラグって、そっちなの??!」

「…って、香純の彼氏、やっぱしヤ〇ザじゃない!?」

 

≫≫≫

「…成る程ね。黒幕は()()()か…」

「か…勘弁してくれ…」

香純を捉えていた男から、身元を確認する意味で学生証を取り上げてみると、それは知っている名字。

改めて顔をよく見てみれば、兄なのか或いは従兄なのか…知っている人物に何処と無く似ていた。

 

「おい、黒幕君に伝えておけ。

お前、死亡フラグが立ったってな。」

 

ビリ…

 

学生証の、住所等が記載されているページを引き千切り、ポケットに入れた時に、丁度ホームの彼方から、乗車する予定の電車がやって来た。

最初に絡まれた時点で、ホーム全体に張っていた、小宇宙(コスモ)を使った『人払いの結界』を解除した後、

「…………………………。」

「「………!?」」

未だホームで蹲っている高校生2人に一言二言交わすと、響達は電車に乗り込んだ。

 

▼▼▼

「えと…吉良君?」

「はい?」

「最後、アイツ等に、何を言ってたの?」

香純の友人Aが、響に質問してきた。

 

「大した事じゃあ無いですよ。

あの乱闘について軽く、口止めしてた、だけですよぉ♪

高校生2人が中学生1人相手に一方的にケンカ売って、女を人質に捕っても勝てませんでした…こんな醜態、ケーサツ沙汰にしたけりゃ、勝手にしろってね。

コッチは正当防衛だし、()()()にも、被害が及ぶよぉ?…ってね。」

「響君、その時は あたしも証人になってあげるよ。

ついでに、猥褻罪の併せ業を突き付けてやるわ!」

「「………………………………………。」」

響の辞書には、『過剰防衛』という単語は載ってなかった。 

                            

▼▼▼

 

カチャ…

 

「ただいま~」

「おぅ、待っていたぞ、響…」

「あ゙ぅ…」

響が帰宅。玄関の扉を開けた時に最初に彼の目に写ったのは、顳に浮かべた図太い血管を躍動感良ろしくピクつかせながら、それでも無理矢理に頬を緩めて笑顔を作り、腕組みの仁王立ちをしている、響の2つ上の兄…吉良煌介だった。

 

「まぁ、早く入れや。

大まかな話は、既に香純から聞いてる。」

「…イヤァ オニィタマ、コンヤハ、イツニモマシテ イケメンスネ。

アァ オレ、チョット キュウヨウヲ ()()()()()()ノデ、マタ デテクルワ。

ソレジャ、ソーユーコトデ…」

 

パタン…

 

それを見た響は家に入らず、一歩退いた後、扉を閉めて逃走を謀るが、

「(怒)逃(り)げ(怒)ん(怒)な、(怒)固(怒)羅(怒)!!」

 

ゴン!

 

「ひべすっ!」

結局は、捕まってしまい。

 

≫≫≫

「さ・て・と…一応は、言い訳を聞いてやろう。

何か言い残しておきたい言葉は あるか?」

「じ…迅速且つ、一思いな処理を、所望します…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響君がシバかれています。 

暫く 其の儘、お待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≫≫≫

「痛ひ… (T_T) 」

あの後 煌介から、香純を守れなかった罰として、アイアンクロー→ヘッドバットの必殺コースを喰らっていた響。

一応は、香純の胸を揉んだ男をある程度は痛めつけ、尚且つ その身元を割り出していたからこそ、

「今回は これ位で勘弁しといてやる。」

…で済んだ訳だが。

この響への制裁後、煌介は例の学生証のページを響から奪うと、黒い笑みを零し、背中にドス黒い()()を纏わり憑かせ、

クソが…香純の乳は、俺のモンだろうが…殺す!…とりあえず殺す 絶対に殺す 死ぬまで殺す 死んでも殺す…!!

何やらブツブツとボヤきながら、自室へ戻っていった。

 

「死亡フラグが立ちました!(©七尾さん)」

 

▼▼▼

「吉良君…大丈…夫…?」

「うぅ…大丈夫ない… (T_T) 」

次の日の朝。駅から学校へ向かう途中、渚、杉野と合流した響。

痛々しく貼られた額の絆創膏を見て、渚が具合を聞くと、響は涙声で返答。

  

「ちょっと前、千葉達から話は聞いていたが、マジに怖いんだな、お前んトコの兄ちゃん…」 

そんな会話をしながら学校に着くと、校門の前にはE組生徒に朝の挨拶をすべく、A組の生徒が整列していた。

    

「「「「「「「…………。」」」」」」」

…普段より十割増しな、緊張した面持ちで。      

    

ガバッ…x40

 

「「「「「「「「「「吉良さん…本当に、すいませんでした!!」」」」」」」」」」

そして普段なら『おはよう御座います』の挨拶な処が、いきなりA組全員が…浅野を筆頭とする5英傑を含む、A組の男女全員が、その場で土下座して、響に謝罪。

 

「「ぅっゎぁあ…」」

「…………………。」

その光景に、思わずドン引いてしまう、渚と杉野。

そして無言、何か哀れな物を見る様な、冷めた目の響。

 

「渚、杉野。悪いけど先に山、登っててくれ。

俺はコイツ等と、OHANASHIが有る。」

「ぉ…応…」

「ぅ…うん…」

何が有ったかは分からないが、少なくとも絶対に何か有った…

いきなりのDOGEZAに、それだけは察した渚と杉野。

怒りの感情が欠片も見えない、その響の穏やかな表情に、2人は逆に更に顔を引き攣らせ、拘わってはいけないと直感。

響を残し、先に山の上の旧校舎を目指して行くのだった。

 

≫≫≫

正門の前、響1人に、A組全員が土下座している光景。

それを見た、他の一般生徒達も、関わりを持ちたく無いのか、足早に この場を通り過ぎて行く。

 

「おっ早よ~♪吉良っち~。

何を面白い事してるの~?♪」

「カルマ…?」

其処に現れたのは、赤羽カルマ。

 

「………。」

 

ニョキ…パサパサ…

 

目に写った面白場面を見て、悪魔モードになるカルマ。

とりあえず撮影しようと、ズボンからスマホを取り出した時に、

「カルマ。今回は そんなバカッターみたいな真似は止めとけ。」

「ちょ…マジ?ってか、ガチ!?」

普段から連んでは悪巧みしてる顔でなく、その響の、遊びが一切無い顔で撮影を止められたカルマも、目の前の其れが余程の事だと察知し、

「じゃあ…俺、先に行ってるし♪」

 

シュ…

 

角と羽を素直に引っ込め、早々に、その場を後にする。

 

「あぁ、後でな。」

 

≫≫≫

カルマが見えなくなるまで見届けた後、響は未だに土下座した儘のA組一同に、再び目を向けると、

「おい、お前等…何時迄そーやってる訳?

いい加減に頭、上げたら?

なぁ? あぁ~らぁ~きぃ~ぃい?」

「ひぃい!!?」

1人を名指しして、土下座を解く様に、呼び掛けた。

 

≫≫≫

 

バキィッ!

 

「かはぁっ!?」

響の放った右の裏拳が、浅野の顔面を捉え、吹き飛ばし、

「「「「きゃあああっ!!!?」」」」

それを見たA組女子が、悲鳴をあげる。

 

「か…勘弁してくれ…」

 

ドガッ

 

「がっ…!」

「はぁ?『どうか勘弁して下さい』…だろ?」

そんな悲鳴を無視、更には その口振りが気に召さなかったのか、倒れている相手の顔面に、サッカーボールキックを飛ばす響。

 

「昨日の夜な、其処のバカの御陰様で、俺は兄鬼にシバかれてるんだぜ?

そんな一言二言で、済ませる心算か?」

響は既に襤褸襤褸になり、校門脇の壁に凭れ倒れている、()()()()()()()()を指差しながら話を続けた。

…そう、昨日に絡んできた高校生の学生証には『荒木鋼壱』という名前が。

痩せた頬や、やや尖った顎…骨格を除けば、目鼻口のパーツは、荒木と同じと言って良い造り。

昨日の黒幕が誰かは、明らかだった。

 

「勝手に土下座して、それで何でも許されると思ってるか?

それとも さっきのカルマみたく、バカッター拡散誘導して、其れを出汁に、優位性を持とうとしたか?」

「いぇ…そんな心算じゃ…」

「念の為に聞くが、実は お前の指示でしたって事は、無いだろうな?」

「い、いや! それは、断じて違う!!」

流石に心外な問い掛けに、声を荒げて浅野は答える。

 

「ふん…どっちにしてもな、ペットが外で問題起こしたらな、それ等は全て、飼い主の責任に なるんだぜ?

お前も御主人様なら その辺り、きっちり鎖で繋いで しっかり躾とけ!!」

 

どん!

 

話し終わると同時に放たれた、響の強烈なボディブローが、浅野に突き刺さった。

 

「かはっ…ケホケホ…くゎっはぁあ…っ!!?」

「うっゎあ…汚えなぁ…

こりゃ暫くの間、もんじゃも お好み焼きも食えねぇじゃねぇかよ…」

  

≫≫≫

「…それから、其処で死んだフリしてる奴に言っとけ。

お前等兄弟、それと他1人揃って、既にウチの()()()()()にマークされてるって…な。」

実行犯の黒幕と その責任者である()()()に、一通り制裁を終わらせると、響は更なる追い討ちとも云える発言を残した後、自身の教室が在る、裏山を登って行くのだった。

 

≫≫≫

「あ、浅野君!」

「大丈夫?」

響が去った後、数人の女子がハンカチを持ち、浅野に駆け寄った。

 

「あ、ありがとう…でも、大丈夫、平気だから…」

しかし浅野は その施しを拒み、自らの懐から取り出したハンカチで口元を拭う。

 

「その…浅野、済まなかっt

「黙れ。」

「………………!?」

そして、今回の元凶として、謝罪しようとした荒木の言葉を遮ると、

「僕はテストの後に、言ったよね?

僕が指示を出す迄、大人しく『お座り』して『待て』…と。

それを1人で無視して、勝手に暴走した挙げ句、コレの様だ。

そもそも吉良本人も言っていたけど、高校生たった2人程度で、アイツを力で屈伏出来るとか思っていたのか?」

「うぅ…」

父親・浅野學峯理事長には及ばない物の、それと同じ属性の、支配する者が持ち得る、冷たい視線を荒木に向ける浅野学秀。

 

「荒木だけじゃない、君達にも言っておく。

良いか…次に僕が指示を出す迄は、勝手な真似は するな。

心配しなくても、僕は既に夏休みが始まる前から、E組を…吉良を潰す準備を進めているんだ。」

「「「「「浅野…」」」」」

「「「「「「浅野君…」」」」」」

そして、次の策は既に有る事を、自分の"駒"達に告げる浅野。

 

「だから、その時が来るまで、僕が『良し』と言う迄、大人しく待っていろ。」

そう言うと、浅野は制服に附いた汚れを払い除け、

「ひぇっ!?」

「浅野…君…?」

「あ、浅野…?」

…その見た者が脅える程の、屈辱を噛み締め、報復に燃える その怒りに歪めた表情を隠す事無い儘、自身の教室へと歩を進めて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吉良…来週の体育祭…

その時に お前だけは、確実に…潰す!!」                  

 




 
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