暗殺聖闘士   作:挫梛道

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署名の時間

9月末日。

 

「…吉良君? 怒ったりしないから、何をしたのか、正~直に話してみなさい?」

「ちょ…本当に知らないし!…ってか、そのパターンで怒らない人って、見たことないしぃっ?!」

「おぃ吉良…本当に心当たり、何も無いのか?

お前1人だけでなくて、俺達 学級委員も一緒に呼び出されるって、本当に唯事じゃないだろ?」

「磯貝~っ!?」

この日の放課後、響とE組のクラス委員である、磯貝悠馬と片岡メグは、浅野理事長からの呼び出しを受け、本校舎に向かうべく下山していた。 

響は考える。

理事長自らの呼び出し…

一体 自分が何をしたのか?…を。 

 

 

心当たりは全く無い…訳は無く、寧ろ心当たり有り過ぎて、一体どれの事やら… 

体育祭の乱闘は既に、正当防衛が認められている筈。

今更、何か言われるとかな可能性は低い。

ならば、2学期早々に、荒木が差し向けたヒットマン(荒木兄)云々の件で、荒木と浅野を校門前で〆た事か?

それも今更だ。 

まさか煌兄が後日、荒木兄弟(+1名)を殺り過ぎて、そっちの方向から駅での乱闘劇に足が着いたか?

いやいや、俺以上に残忍で狡猾で鬼畜で(…中略…)キレ者な あの男が、後々に尾を引く様な、そんな中途半端な真似をする筈が無い。

大体あのヴァイオレンス男、誰の兄だと思っている?

この俺の鬼ぃたまだぞ?! 

そもそも そっち側の理由なら、浅野は兎も角、荒木兄弟だって、只では済まないだろう。

俺を学内で処分する前に、アイツ等揃ってケーサツ逝きだろ?

何しろ、椚ヶ丘の外の人間…香純さん巻き込んでるんだぞ?

荒木兄の連れが、香純さんの乳(推定D)、揉んでるんだぞ?

普通に痴漢行為な、ケーサツ沙汰だぞ?

尤も あの連れ、あの後 鬼ぃちゃんに こっ酷く惨殺されたらしいけど…南無南無。 

因みに俺も、あいつ等の攻撃、1番最初だけは避ける躱すでなく、敢えてブロックする事で、「ヒビキは腕に、物理的1Pのダメージを受けた!」で、傷害罪と正当防衛成立させての事だったからね。 

…え? 過剰防衛? 何それ? 初めて聞く単語だよ。 

あの理事長先生が その辺り、学校の体面を気にして、内々で片付けるのか、それとも そういうのはE組とか関係無く、キチっと処理処分するのか?

その辺り、あの人なら両方共に有り得るから、余計に分からないな…。 

大体、磯貝と片岡さん…クラス委員との同行の意味、意図が不明だし。

  

 

…響が頭の中で問答している内に、3人は本校舎へと辿り着いた。

 

≫≫≫

 

ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ…

 

「「「……………………。」」」

理事長室へ向かうべく、廊下を進む3人を見て、何やら小さく呟き話す、本校舎の生徒達。 

 

「ちぃ…イケメン、爆死しろ!」

恐らくは先日の体育祭の影響であろう…磯貝を見て、まるでアイドルを遠目にする様、憧れな眼差しを向ける女生徒。

 

「吉良君、どんまい!w」

「凄く嬉しそうな顔、してるね…?」                  

そして やはり体育祭での立ち振る舞いの賜か、男女問わずに響を見て、まるで凶悪犯罪者を見るかの様、目を逸らす生徒達。

 

「片岡さん、どんまい!www」

「うっさい!」

そしてそして、勇気を出して近寄り、直接に話し掛けてきた下級生の女生徒数人から、『あの…お姉様って呼んで、良いですか?』と 半ば告白に近い申し出を受けたイケメグ。

其れを丁重に断ったりしながら、3人は校舎内を進み、

 

コンコン…

 

「どうぞ?」

 

カチャ…

 

「「「失礼します…。」」」

「……………。」

理事長室へと入って行った。

そこに待っていたのは、浅野親子…否、椚ヶ丘学園理事長・浅野學峯と、3年A組のリーダー、そして生徒会長である浅野学秀。

 

≫≫≫

「…それで理事長先生、OHANASHIと云うのは?」

「ん? 何だか発音に違和を感じるけど…まぁ、良いか。実はね…」

 

パサ…

 

「これは…」

磯貝の質問に、浅野(學)は数枚の用紙を手渡す。

 

「B~D組の生徒達による、現在のE組のA組に対する対応を改める様、訴え掛ける署名だ。」

磯貝の疑問に答えたのは浅野(学)。

その紙には、確かに1学期の期末テストの賭けにより施行されて今に於ける、A組とE組の関係の改善撤廃を求め訴えている内容が記されている署名用紙だった。

全員ではないが、B~D組、殆どの生徒が名前を書き込んだいる。

 

「お前が各教室の奴等に頼み込んで、無理矢理に名前、書かせたのか?」

「違うっ!彼等が自主的に、行った物だ! ほ、本当だぞ!」

響の問い掛けに、顔を真っ赤にして、ムキになって否定する浅野(学)だが、

 

(頼んだな…)

(頼んだのかよ…)

(頼んだのね…)

その必死さに真相はどうであれ、口には出さずも3人は、心の中で同一の結論を出す。

           

「…成る程、それで、これだけの現状に対しての不満者が居るから、パパに頼んで あの賭け、無効にして貰うから…そう言いたいんだな? 浅野は。」

「…なっ?!」

「吉良君。それは少しだけ、違うな。」

「理事長先生?」

何やら身に覚えの有る悪さがバレて、それで呼び出しを受けたとばかり思って内心、少しだけガクブルだった響(…と、磯貝&片岡)。

しかし どうやら そうではなかったと、少しだけ安心した顔でパラパラと、その紙に連ねられている名前を見ながら、本当に面倒臭そうな呆れ口調、そして本当に もう救い様の無い、まるで駄目な男を見るかの目で浅野(息子)に話すが、そこに理事長が口を挟んだ。

 

「…仮に、私が その心算なら、わざわざ君達を此処に呼ぶ事無く、明日の全校集会の時にでも理事長の権限を乱用して、問答無用に無効を言い渡してるさ。

今回は こういう事があったと…その報告だよ。

そして、それに ついて君達が どう思うか…を、直接聴こうと思ってね。」

「…………!?」

(((そーゆーの、権限乱用って自覚は有るんだ!!)))

…3人は心を1つにしながら、

「…どうって言われても…ねぇ?」

「理事長先生が介入しないのなら、無視で良いっしょ?」

「う~ん…」

「……………。」

理事長の対応が、何か想定外な様な…それでいて、何か求め訴えている様な目をしている浅野(息子)を無視して、その場で現状維持の方向で話す、E組クラス委員2人とE組最凶問題児。

                  

「…そもそも この件は、E組(おれたち)A組(こいつら)との、期末試験での結果による物だ。

俺的には、余所のクラスが関係無いのに口出しするなって感じなんですけどね。」

「「う…う~ん…」」

響の台詞に、未だ あの賭けの内容に対し、僅かばかりの遠慮の様な感情を持っている優等生な2人が返事を濁す。

 

「それでも どうしてもって言うなら、単に要求するでなくて、今度の中間テストで勝負して…位は…ねえ?」

「よ、よし、それなら、今の待遇無効を掛けて、次の中間テストで また、僕達と勝負しろ!」

そして この一言に、浅野(息子)が反応、喰って懸かるが、

「はぁあ?! お前、何ーんか勘違いしとりゃせんか?」

「な…何がだよ?!」

響が それを、バッサリと斬り棄てる。

 

「そんな決定権が、お前みたいな負け犬に有るのか?」

「な…?」

「俺は あくまでも、この自分の名前書いた奴等に対して言っているのであり、別にお前等に言ってた訳じゃない。

ついでに俺は今、磯貝と片岡さんと話してたんだ、勝手に会話に参加してんなよ?」

「……!!」

 

ギリ…

 

奥歯を噛み締め、本当に親の仇でも見るかの様に、浅野(息子)が響を睨み付ける。

…尤も、この男が、実際に理事長(おや)を討ったと云う人物と対峙した時に今の様な目をするかどうかは、疑問符が附いたりするのだが。

            

「それに…だ、仮に中間で勝負するとして、次に お前等が負けた場合、何を払う?

()()ってのはな、片側が勝った場合のコインを一方的に要求した処で、成立したりはしないぜ?」

「な…?」

「『な?』…ぢゃ、無ーよ。当たり前な話じゃねーか。」

当然とばかり、冷たく言い放つ響。

この言葉に対して、浅野(坊)は退く事を知らず、

「分かった…。だったら吉良、お前は勝てば、何を望む心算dっ…!?」

言い返そうとするが その台詞を言い終わる前に、慌てて口を押さえる。

しかし それは、少し遅く、

「おいテメー、…何 呼び捨てしてんだ?…ついでに お前って、何だ??!」

 

ガバッ

 

「す、すいませんスイマセンすいませんスイマセンすいませんスイマセンすいませんスイマセンすいませんスイマセン!!」

「………………………………。」

この いきなりのDOGEZAに、響は無言でズボンのポケットからスマホを取り出すが、

「「止めなさい!」」

透かさず磯貝と片岡が、バカッター阻止。

 

「ちっ…」

これに心底 残念そうな顔をした響は、目の前の土下座男に話し掛ける。

                  

「おい浅野、其処迄言うなら、勝負受けてやらんでもないが、その代わり、勝敗の条件や、俺等が勝った場合の新たな命令事は、コッチで決めさせて貰うぜ?

…それで良いかな? 磯貝と片岡さん?」

「はぁ~…」

「お前は…また勝手に…」

期末テストの時と同様、1人で勝手に話を進める問題児に、2人のクラス委員は呆れるも どうせ無駄だろうと、それ以上、止める素振りは見せず、

「…で、良いですか?理事長先生?」

「…はい。私は、生徒達の自主性を尊重しますから。」

E組…いや、響主体で話が進む事となる。

      

≫≫≫

「ふ、巫山戯るな! 彼等は関係無いじゃないか! 巻き込んだりするな!」

「はぁ? 何を言ってるのだ お前は?

こんな署名、持ってきたんだから、無関係も何も無いだろ?

…てゆーか、お前が持ってきた この署名書が、今回の始まりなんだ。

寧ろ お前等以上、立派に当事者だろ?」

響の勝利者としての要求は、要約すると、1学期期末テストにて、A組に課せられたペナルティーの一部を、とりあえずは本校舎3年生全てに課す…という内容だった。

そして それは、

「吉良君、この学食使用禁止についてだがね…」

響が突き付けた命令の一部は、理事長が きちんとした理由付けで不認とし、響も その理由に納得。

更に もう1つ、()()()()をE組が…正確に言えば、響が得るという事が、理事長との間で決定となる。

2学期中間テストに於ける、E組vs本校舎3年の『賭け』が、学校自体としては非公式だが、理事長公認の下、行われる運びとなった。

 

「しかし、他のクラスの皆にも、何も話さないで勝手に…」

「前の時も、あの場に居た奴等だけで、他の皆には了解も取らず、勝手に決めてたぜ?」

「…だがっ!!」

響と理事長との話し合いの中、蚊帳の外になっていた浅野(笑)が それでも異議申し立てるが、

「浅野…()?」

「!?」

その口を、理事長が止める。

 

「そもそも今回の発端は、7月の期末試験が原因なのだから、君達からすれば…さっきも吉良君が言っていたが、また試験で決着を着けるべきではないのかい?

しかも、吉良君が出してきた勝敗条件…

本人達の目の前で言うのも気が引けるが、エリートで在る筈の本校舎生徒が、ENDの象徴たるE組を相手にするには簡単過ぎる条件だと、私は思うがね?」

(((全っ然、気が引けて無い!!)))

「それに、だ。署名を募った彼等も この椚ヶ丘で、只で要望が通るなんて、最初から思っては いないだろう。

この試験で勝負という流れも、それで負けた場合、自分達にペナルティーが生じるのも込みで、想定済みだと思うがね?

…尤も これが、『A組の誰かに頼まれ、仕方無く名前を書いた(笑)』とかなら話は別だが、あくまでも現状を見かねての、それ故な自主的行動らしいからね。」

「……………………………っ!!」

 

≫≫≫

最終的に、本校舎側でペナルティー対象となるのは3年全体でなく、今回 署名した者だけに絞られる事になった。

 

「…それでは浅野()、この件は君が責任を持って、名前を書いた皆に伝えなさい。

これは私が墨を付けた、正式決定事項としてね。

それじゃ、君は出て行って良いよ。」

「…はい…失礼します…。」

 

ペコ…

 

小さく一礼すると、浅野(息子)は理事長室を後にする。

 

「…さて、と。」

残った3人に、浅野理事長は話し掛ける。

 

「吉良君。これは君からすれば、計画通り…なのかな?」

「えぇ…理事長先生が、あっさりと勝負を認めてくれたのが、逆に少し不気味ですけどね。

特にE組(オレ)の主張を、殆ど無条件に受け入れてくれる辺りが。」

「勘違いしては困るね。

今回 偶々 君の示した勝負の条件が、私の理念に都合が良かった…それだけの事だよ。」

「「「???」」」

理事長・浅野學峯は こう考える。

E組の生徒達は、常に敗者でなければならない。

しかし それと同時に、本校舎側の生徒達は、常に強者でなければならない、…と。

 

「…私はね、今回の事は、生徒達に緊張感と奮起を促す、良い きっかけだと捉えているんだ。」

「「「……………。」」」

「これで中間試験、浅野()が明日からにでもE組(きみたち)に負けじと、A組だけでなく、B~D組、3年生全員の底上げに着手して行くだろう。

結果的に それで全体の学力レベルアップが図れるなら、それは学校経営者としては願ったりなんだよ。

…まあ、私が君達に言いたいのは、それだけだよ。

これ以上、君達だけに本音を言うのもフェアじゃないしね。

それじゃ、君達も下がって良いよ。

今日は ご苦労さんだったね。」

途中から、ずっと無言で話を聞いているだけとなっていた響達に、退室を指示する浅野理事長。

 

「「「はい…それでは失礼します。」」」

 

カチャ…

 

そう言って、3人が部屋を出ようと、ドアノブに手を掛けた時、

「あ~、そうだ、吉良君?」

「はい?」

理事長が響を呼び止めた。

 

「…その時は偶々、当事者しか その場に居なかったらしいから良かったけど、駅のホームの様な目立つ場所での派手な立ち振る舞い。

こういうのは余り芳しくないので、程々にしておきなさい。」

「げぼほゎぁあッ!!!?」

「吉良あ?!」

「き、吉良君〜!?」 

駅での乱闘劇、きっちりバレテーラ…

この理事長の にこやかな表情から放たれる、絶対零度を帯びた視線と台詞に響は、精神的に9998のダメージを受けるのだった。

 




 
 
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