2学期中間試験、初日が終了した。
「「「「「………………。」」」」」
満身創痍なのは響達だけで無く、他組の生徒達も同様。
数学に続く、社会、国語も、1学期期末試験とは、明らかにレベルが違い過ぎる
社会では
そして国語では見た目は自分達と同じか少し年上…と云う感じの、セーラー服を着た長い黒髪の少女から、認識する気も失せる程の、夥しい数の
「ドヤ顔で『テストに出るからな』って、全然、話が違うじゃないか…」
「あの暗記は一体、何だったのよ…?」
自分自身の、試験対策の勉強の進め方を棚に上げ、テストの不出来に嘆く。
「今日の…今回のテスト問題の難易度、とてもじゃないが、それぞれの教科担当の教師が作ったとは思えない。
…と、すると誰が…?
……………………!! ま、まさかっ!!!?」
そんな中、今回の黒幕とも言える存在の可能性に気付いた者が1人。
「あ、
≫≫≫
一方、D組の隣…E組の皆が試験会場として集まっていた教室では、
「「ちーん…」」
「こら、効果音を口で出すな。」
響とカルマが がっくしと、机に項垂れていた。
「ヤッベ…いや、ガチにヤっベー…
今回、トップ穫れないかも…」
「あのラスト問題とかも、マジに鬼畜だったよね~…」
「カルマ君は解けたの? あれ?」
「ん~、実は俺も、時間が足りなかった。
解き方は解ってたんだけど、ね~…ハァ…」
憔悴感 丸出しな、響とカルマ。
「い、いや、大丈夫よ!
きーちゃんやカルマ君が無理なのなら、きっと浅野君達だって出来てないから!…かも?」
「そうですわ!今頃 向こう側も、お通夜みたいになっていますわ、…きっと!」
「orzるって、カルマさんや吉良っちさんのキャラじゃないですよ~?」
「「…………………。」」
「ダメだ こりゃ。」
「…重傷ね。」
すっかり消沈モードな最凶コンビに、倉橋や律(本物&偽物)がフォローをするが、それで簡単に立ち直れる程、この男達はチョロくは無く、
「「「「「はあぁぁ~~~~…」」」」」
E組2凶…もとい、2強の見事な凹みっぷりは、次第にクラス全体に染って逝き、何時しか溜め息のハーモニーが、教室全体に響き渡るのだった。
「いや、本当にアイツ等も同じ感じなら、凄く有り難いんだけど…」
「…でっすよね~…」
▼▼▼
2日目:1時限目【理科】
「ハァ、ハァ…いや、これ、マジにキツいっしょ…」
巨大な蛙の群、活き良く空を飛び交う野菜の集団、黒い甲冑の騎士、そして蜘蛛を模した様な、巨大機械兵器を苦戦しながらも攻略していったカルマ。
「吉良っちと奥田さん…それと、竹林以外は皆、あのクモに殺られてるかも…」
そんなカルマの前に、次の…新手の問題が現れる。
「フハハハハハハ!
吾が輩こそが、ラスト問題であーる!!」
「…!!?」
それは理科のラスト問題…白黒ハーフ&ハーフの仮面を被った、タキシード姿の長身の男。
「何なの?さっきのクモのが、手強そうじゃない?
…いや、それって、見た目だけだよね?
悪いけど俺は、そーゆーのに騙されたりはしないよ?」
チャリ…
それを見たカルマは、油断無い顔で、脇に携えていた小太刀を抜く。
「…ふむ? 1学期期末試験、自信満々だった筈の結果が、自身の予想外に散々で担任教師に己の慢心を弄られ、思いっきり涙目になって凹んでいた小僧よ。
あの状態から自力で立ち直っただけの事はあるな。
油断の類は見受けられないか…」
「な…?!」
カァア…
何処情報だよ?!…ほんの約3ヵ月前の、自身が一生封印していたかった過去を遠慮無しに語られ、思い出したかの様に顔を真っ赤にするカルマ。
「フハハハハハハハハ!
良いぞ好いぞ! 汝の その羞恥の悪感情、非常に美味であーる!」
「…殺す。」
恐らくは仮面の裏で、殴りたくなる様な満面の笑みを浮かべているのであろう、このラスト問題を名乗る男に、カルマは怒りの表情を隠す事無く斬り掛かり、
「
「なぬっ??!」
…と、見せかけて、懐に忍ばせていたロープで、その身を拘束するのに成功させる。
「ぅぬぬっ…解けん…だと?!」
ニョキ…パタパタ…
「こうなったら もう、俺の勝確だよね~?♪」
「な…?! その角と羽…
何時も目つきの悪い男と、そしてノリが軽そうな少女と一緒になって弄っている、水色髪の少年より
「…(怒)さ(怒)て(怒)ね(怒)?」
悪戯な笑みを浮かべた赤髪の少年が、身動きの取れない、仮面の悪魔を象ったラスト問題を
≫≫≫
「ふぅ~…思ってた以上は、楽勝だったかな~?♪」
白と黒の仮面だけを残し、身体も着ていたタキシードも全て、土塊と化したラスト問題を見ながら、呟くカルマ。
「…ってゆーかぁ、俺 、渚君に大きさで負けてるのに、別に悔しくなんて思ってないし…ブツブツ…
大体アレは、小動物の分際で…ブツブツ…」
仮面の男に言われた事が実は余程 気にしていた事柄だったのか、何やらブツブツとボヤいている。
「…昨日の3教科はイマイチだったけど、この理科は手応えパッチリだったね。」
改めて、
「…と安心した処で、スカーーーーっ!!」
シュンッ!
「ぇ?」
カパッ…
「ぅぐ…?!」
その、白と黒の仮面が宙に浮いたかと思えば急襲、カルマの顔を覆い隠す様に直撃、その儘 張り憑いてしまう。
「と、取れない?!」
「フハハハハハハハハハハ!!
その焦り、動揺からの悪感情、非常に美味であーる!」
「な? 口が、勝手に…!?」
この後、カルマは意識を失い、その儘倒れてしまうのだった。
≫≫≫
2時限目【英語】
ヴォン…
刃の無い、柄だけの剣。
その柄の先端から白い光が湧き出で、刀身の形を創り出す。
「こっの…!」
斬!
白を基調とした全身装甲を着込み、重火器を携えた兵士達を この光剣で薙ぎ倒しているのは、A組・浅野学秀。
兵士単体の戦闘力自体は、其れ程の脅威でもないのだが、その数の多さに、顔に疲労の色を見せていた。
『コー…ホー…』
「…!!」
そんな浅野の前に、不気味な呼吸音と共に、黒い仮面に黒いヘルメット、黒い装甲の上に黒いマントと 云う、全身黒尽くめな出で立ちの男が姿を見せる。
ヴォン…
『コー…ホー…』
やはり、刃の無い黒い柄から、紅い光の刀身を放出させ、人工的な呼吸音だけを鳴り響かせて、無言で構える黒い男。
「本当に一体…
一体、何がしたいんですか? アナタは?!」
この目の前の黒い男の姿に この問題…今回のテスト全ての問題を作ったのであろう、理事長…つまりは自分の父親の姿を重ねた浅野が叫びながら斬り挑むが、
斬!!
この光の太刀筋を躱した黒い男は次の瞬間、反撃とばかりに浅野の両脚、そして左腕を紅い光刃で瞬く間に斬り落とした。
「うがぁあああぁあっ…!!?」
叫びながら、残った右手に持っていた光剣も手放し、地に うつ伏せの向きで倒れる浅野。
『………コー…ホー…』
ザッ…
その様を見た黒い男は剣を納めると、既に浅野には興味を失せた様に背中を向けて立ち去って行く。
「ま、待て…!?」
両脚と片腕を失い、残った右腕だけで這う様に追おいながら呼び止めるも、その声はこの最終問題に届く事は無かった。
≫≫≫
こうして2日間に渡り、2学期中間試験の5教科、全ての工程が終了した。
▼▼▼
コンコン…
「…? はい、どうぞ?」
ガチャッ
「失礼します!」
「ん?…浅野
試験終了後、浅野学秀は理事長室をアポ無しで訪ねる。
不意な来訪に、やや面食らう理事長だが、直ぐに落ち着きを取り戻し、役員御用達の高級デスクの上に山済みされている用紙にペンを走らせながら、
「何の用だい?」
訪ねてきた生徒会長に声を掛けた。
「…その前に、何ですか、それは?」
「ん?君達3年の、答案用紙だけど?」
机の上の用紙の山…
それは、3年生の中間試験の答案用紙。
理事長は、それ等を全て、自ら採点している真っ最中だった。
「いや、
万が一にも、採点に不正が在っては駄目だと思ってね。」
それは逆に言えば、本校舎教師陣は間違い無く採点に不正すると確信しての行動。
事実、数人の教諭は、この理事長が、自身が採点すると聞き、凄く嫌な顔を…声に出さずも『余計な真似を…』と一瞬とは云え、明らかに顔に出していた。
「…………………………………。
今回のテスト、問題を作ったのは、理事長先生ですね?」
そして本題、自分が理事長を訪ねた目的…その問い質しをする浅野(息子)。
「よく分かったね?
先生方には、秘密にしておいて貰っていたのだが…」
「…理由を聞いても?」
「あぁ、今の採点と同じだよ。
授業中、各教科の先生がテストの答えや問題を教えたりする可能性が有る…と思ったからね。
やはり、勝負事はフェアでないとね。
勿論、『それは考え過ぎです』って反論は受け入れるよ。」
「…………………………………。」
「…このタイミングでの沈黙は、実際に そういうのが有った…そう受け止めても良いのかな?」
「いえ、そんな訳では…」
「…そうか。しかしね、そんな事は どうでも良いのだよ、浅野
ピタ…
此処迄 喋ると、今迄 口と一緒に動かしていたペンを止め、浅野(息子)の顔を正面から真っ直ぐ見て、
「重要なのは、君達がE組に勝てるかどうかと云う話だよ。
まだ全教科、採点し終わった訳じゃないから断言出来ないが、明らかにE組の生徒達の方が、高い点数を出している。
今回の勝負、明らかにE組の勝ちになるだろう。
まあ、君達A組は負けた処で現状維持、新たなペナルティーを背負う事は無い訳だし、余り真剣になる必要性は無かったかな?
他のクラスの皆も、
雉も鳴かずば…ってヤツだ。
結果としては、不本意だけどね。」
「っ…!?」
明らかに真相を知っていながら、且つ、「とっくにバレていますよ?」と、暗に示しながら話を進める理事長。
「そんな事より浅野
期末試験で負け、体育祭で負け、中間試験でも負けた…
何時になったらE組を、E組たる位置へと堕とす事が出来るのかな?
それとも、今が君の限界なのかい?」
「っ…!!?」
この後 理事長の、まるで身体の上を百足が這う如くなOHANASHIは暫くの間、続いていった。
▼▼▼
そして数日後、中間試験の結果が発表されたが…
「……………………………。」
「………………………。」
戻ってきた答案用紙と、各教科、そして総合順位が記された紙を見ながら、複雑な表情を浮かべているのは、E組問題児の2トップ。
【2学期中間試験ランキング】
1位 吉良響(E組) 総合381点
2位 浅野学秀(A組) 総合378点
3位 赤羽業(E組) 総合375点
4位 小山夏彦(A組) 総合361点
:
7位赤目恵(A組) 総合350点
8位 竹林考太郎(E組) 総合348点
:
20位 潮田渚(E組) 総合335点
:
55位 瀬尾智也(A組) 総合303点
:
78位 寺坂竜馬(E組) 総合269点
:
▼▼▼
「危なっ!ま・ぢ・に・危なかった!」
「ん~、俺も、順位その物は前の期末の時と比べたら…なんだけどなぁ~…」
「でも、点数その物は、全体的に見ても、かなり落ち込んでるよね。」
「各教科、100点は勿論、90点台穫った奴、1人も居ないからな…」
結果から云えば、5教科の"問"スター、その予想外の
浅野ですら、同様に平等に返り討ちに遭っており、全体のランキング変動…特に上位陣はカルマが大きくアップした以外は、僅かな物だった。
本校舎勢との勝負も、響が総合トップを穫った時点でE組の完全勝利。
クラス内最下位の寺坂ですら、半分より上に位置していた。
そして そんな中、
「すがやんも、期末と比べたら、大きく順位上げてるよね~?」
「ああ、あの時は偽律が気になって、集中出来なかったからな。」
「でも今回も彼女、隣だったよね?」
「もう慣れたから…な。逆に、モチベーション上がったぜ。」
「「「「「「「よし、やっぱしコイツは後で〆よう!」」」」」」」
「何でだよ?!」
期末試験の時は、予告無しでの偽律の登場に動揺、不調だった菅谷。
今回も同じく偽律が隣の席に着くも、もう慣れたらしく、きょぬー美少女が隣の席と云う、現金な理由で大きくランクアップ。
更には…
「瀬尾は また、圏外かwww」
一応はA組に名を連ねているが、2年生時の乱闘沙汰が原因で、実質待遇はE組扱いの瀬尾は、またしても その復帰条件である、50位以内に入る事が出来ず。
響達は知らない。
前の体育祭に際して、浅野がE組男子を潰すべく喚んだ留学生のリーヴ・メイプルとティッキー・パープル。
この2人が体育祭の後、E組を訪れて親睦を深めた翌日、それが原因で諍いとなり執り行われた、A組男子の殆どと、リーヴとの間で変則ハンディキャップな腕相撲。
その際に、瀬尾は利き手を痛め、それは試験当日にも完治成らず。
不慣れな左手での文字書きを強いられ、必然的に筆記速度もダウン、満足に解答出来なかったというのが、この順位の理由の1つだったと云う事を。
E組の生徒を五体満足な体で試験に臨ませない為に喚んだ留学生に、逆に自分のクラスメートを潰されたのだから、何とも皮肉な話である。
▼▼▼
「ん?」
「何だ?アイツ等?」
「誰?」
そして この日、放課後の訓練を終えて下山したE組一同を待っていたのは、B~D組の一部の生徒。
ひょっとして…なくとも、件の署名書に、自分の名前を書いた者達だろう。
普通なら授業を終え、部活動の者以外は…それも殆どは中学での部活は引退している筈であり、既に帰宅していても不思議でない時間帯に、である。
「あ、あの…吉良…君…」
「あ゙ぁ?!」
「ひぅっ!!?」
代表して声を掛けてきた男子生徒に、まるでヤク〇の様な威圧的な返事で応える響。
「吉良~…流石に今のは無いぞ~?」
「やっぱりチンピラだわ…」
「ん、吉良っち、引くわ~♪」
「そんなだから、危険人物扱いされる。」
「え? え゙ぇっ!!?」
そして その受け答えに、クラスメートからも非難轟々大顰蹙、完全アウェイな展開に戸惑ってしまう響。
「あ~、分かった、悪かった!…で、何か用か?」
空気を読んでか、ビビらせた生徒に一言謝り、用件を聞いてみると、やはりと云うか それは、今回のテストに於ける勝負…それによる賭けの内容の取り消しの申し出だった。
「こ、今後は、E組に対して、差別的な対応はしないと誓うから、今回だけは勘弁して貰えないだろうか…」
「ふぅん…誓う…ね?」
「ああ、だから…」
「だが断る。」
「「「「「「な…?!」」」」」」
その申し出を、迷わずバッサリと蹴る響。
「(ヒソヒソ)吉良君…絶対に単にアレ、言いたかっただけだよね?」
「(ヒソヒソ)ん、私も そう思う…」
「(ヒソヒソ)お、同じくですぅ。」
「(ヒソヒソ)でも使い処は、間違っていないわ!」
「「「(ヒソヒソ)えぇっ!?」」」
以前 京都で、同じ台詞を聞いた事がある女子3人+1人が小声で話す中、響は話を続ける。
「テメー等から んな巫山戯た名前集めた紙、持って来といて、…で、勝負に負けた途端に勘弁してくれだ?
巫山戯てるのか? それとも この曰わく、超々・危険人物様を舐めてるのか?
どっちにしろ、あんな行動に出た時点で、余所は知らんが、この学力至上の椚ヶ丘で、この流れになるのが読めなかったか?」
「そ、それは、浅野君が、どうしてもって言うから!」
響の台詞に、女子の1人が溜まらずに口を出すが、
「嘘憑くなよ? あの お坊ちゃまは、お前等が自主的に署名を集めたのを渡されたって言ってたぜ?」
本当は真実を知っているのだが、それを敢えて黙り、知らない振りをしている男は話し続ける。
「…其処迄言うなら、あの お坊ちゃんが、
≫≫≫
翌日の朝、校門前にて、浅野を筆頭に またもやA組一同が響に向けて、集団DOGEZAをする光景が見られたと云う。
「う~ん、今回に限っては、謝るのは浅野1人で良かったんだけどな…
結局は、クラス全部の共謀だった?」
そして この日の放課後、響は前回と同様に、クラス委員2人を引き連れ理事長室に(事前にアポは取っていた)。
今回の試験の賭けの内容にあった、E組と一部の本校舎生徒の応対に関しては白紙に、同時に得ていた