「今日もビッチ先生、来てないみたい。」
「やっぱしカルマのアレか?」
「…だね。」
「…原因はカルマ。」
「カルマ君が悪い」
「ちょ…マジ勘弁。」
カルマの『ぼっち先生』発言から3日。
イリーナは その次の日から、学校に顔を見せなくなっていた。
クラスの皆は、先日のカルマの発言が原因だと冗談混じりに言ってはいるが、それが原因で1日だけ無断欠勤する程度なら有り得なくもないと、そこ迄気にはしないだろうが、流石に3日となると、多少は何か遭ったのかと気に掛かる。
「烏間先生も、連絡が取れないって言ってるし。」
その烏間も、3日間連絡取れずとなると単なる任務放棄だけで無く、想定外のトラブル等、色んな意味での最悪を想定、彼女の後継候補の暗殺者との面接の為、防衛省に戻っていた。
≫≫≫
「碌でもない連中しか来なくなった…」
殺せんせーを殺る為の暗殺者の面接は、例外無く、学外で行われる。
学校敷地内で それをすると、その時に其の者の匂いを
この日も数人程 面接を執り行ったが、その質は以前に比べて格段に落ちており、正直な話、現状のE組の生徒達にも実力的に劣っている人材ばかり。
「……………。」
烏間は焦っていた。
既に地球救済猶予は半年を割っており、しかしながら、絶対的な超生物抹殺の手立ては掴めない。
最近の一番の収穫も、沖縄での『完全防御体制』という引き出しを1つ開けただけ。
更に言えば、政府に暗殺者を仲介してくれる筈のロヴロ・ブロフスキからも、2学期開始直前から連絡が取れず。
それが有能な暗殺者が政府に送られて来ないのも、焦っている理由の1つであった。
ヴィヴィヴィヴィヴィヴィ…
「…!」
そんな風に思っている中、烏間のポケットの中のスマホが震える。
取り出してみると、画面には その連絡不通だった人物の名前が表示されていた。
「…烏間だ。ロヴロさん アンタ、1ヶ月近く何も連絡もせず、一体 何をしてたんだ?」
『…死にかけていた。』
「っ!?」
ロヴロが言うには、8月末に某国にて世界最高と謂われる殺し屋·
更には その間にも、自身の子飼いや提携を結んでいる暗殺者を次々と同様に仕留められたとの事。
何れも皆、同業者故に思う処が有ったのか、或いは
『カラスマ、殺せんせー暗殺の件からは手を退け。…でないと次は、君達が危険だぞ。』
「…つまりは、ソイツがヤツを殺しに動き出した。我々は差し詰め、商売敵とでも云う訳か?」
『その通りだ。ヤツは千を軽く越す屍を作り上げた怪物。
必要と判断すれば、誰でも殺し、誰でも利用する。
例え それが、女でも中学生でもな!』
「…………!!」
▼▼▼
キーンコーンカーンコーン…
「それじゃあ先生は、入間市に ちょっと用事が有るので。
イリーナ先生について、何か分かれば連絡して下さい。」
キィィィィン…
1日の授業が終わると、そう言って わくわく顔で、教室から飛び出して行った殺せんせー。
「
「そう言えば結構前に、
「随分と自由奔放な国家機密だな!?」
空の彼方に消えて往く殺せんせーを見ながら、生徒達が呟く中、
ガラ…
「あ、烏間先生。」
「皆、席に着いてくれ。」
教室に入ってきたのは、慎重な顔をした烏間。
「…先に言えば、イリーナの所在がハッキリした。」
ガタガタッ…
「え?」
「まじ?」
「ビッチ先生の?」
この烏間の言葉に、驚き席から立ち上がる生徒達。
♪pikohn!
「はぃ?」
そして その次の瞬間、律の本体画面に、メール着信のアイコンが表示された。
「律、画像を表示してくれ。」
「……………はい。」
pi…
「はぁ?」
「びっ…」
「えっ!?」
「な…」
律が表示した画像に映し出されたのは、手足を拘束されて身体を畳まれ、体のサイズ ギリギリの箱に詰められた、黒のキャミソール姿のイリーナだった。
生徒達は それを見て、言葉を詰まらせる。
「烏間先生、これって…!」
矢田が烏間に問い掛けるが、
「ん?…烏間先生?」
その呼び掛けに、教壇に立っている烏間は一瞬、惚けた表情を浮かべると、
「そうか…まだ名乗ってなかったね。」
烏間らしからぬ、優しい笑顔を浮かべて名乗るのだった。
「…僕は、『死神』と呼ばれる殺し屋です。」
「「「「「「「!!?」」」」」」」
…その名乗りに教室内、過去最高と言って良い、静寂と緊張感が支配した。
死神。
それは以前、ロヴロが話していた、世界最高の暗殺者の通称。
「手短に言います。彼女を救いたいなら、先生方には何も言わず、君達全員で、メールに指定した場所に来て下さい。」
カッカッ
普段の烏間を知るE組一同からはイメージ出来ない、優しい笑顔と
「まあ、無理強いは しないよ?
その時は彼女の方を、君達に届けるから。
全員に平等に行き渡る様に、きちんと『小分け』にして…ね?」
「「「「………!!」」」」
書いた人型を区分けする様、等分に線を書き足しながら、死神は言う。
その場の全員が確信した。
目の前の この人物こそ、夏休みにロヴロが言っていた、『死神』だと言う事を。
ザッ…ガタガタッ…
「ちょっと待てや、固羅?!」
「調子こいて喋ってるけどよ…」
「世界最高だか何だか知らないが、このアウェイど真ん中、俺等にフルボッコされる展開は想定しなかったのか?」
そんな中、寺坂を始めとした数人の男子生徒が、死神を囲み込む。
「クス…」
しかし死神は臆する事無く、僅かに口元を緩めると、
「僕が殺し屋になるに辺り、一番最初に磨いたのは、格闘…即ち、正面戦闘の
シュッ…
「!?」
そう言いながら、自身の正面に立つ寺坂…の、隣に立っていた吉田の顔面目掛けて、拳を放った。
ガシッ…!
「…そりゃあ普通に考えりゃ、殺し屋には99パー必要無いスキルだろーが、
「「「「吉良!」」」」
「「吉良君!」」
この死神の問い掛けに答えたのは、2人の間に素早く割り込み、その拳を掌で受け止めた響。
「…正解だよ。君も覚えておくが良い。
世界一の殺し屋を志すなら最優先、必須の
…内心、自分の攻撃を受け止められた事に少しだけ驚くが、その素振りを見せない死神。
シュッ
続け様に前蹴りを繰り出すが、それも響はギリギリの間合いで躱す。
「せぃやぁっ!」
そして今度は響のターン。
クラスメートの肉眼で、ギリギリ捉えられるスピードの左の正拳を放ち、それを避けられると、
(…レベル修正!迸れ! 俺の
心の中で叫びながら、僅かに…本当に ほんの僅かだけ
「でぇいいぃやっ!」
バッキィヰッ!
「………ッ?!!」
死神の下顎目掛けて、痛烈な右のアッパーカットを炸裂させ、更には素早く背後に回り込むと羽交い締めに捕らえ、
「うっぉりゃああぁっ!!」
どんっ!!
強烈な投げ技…所謂プロレスで云う、ドラゴンスープレックスを放ったのだった。
「…ぅがっ!?」
ガタン…
最高の殺し屋·死神と云えども、生身の人間。
「……………………。」
顎に真下からの殆ど垂直に近い一撃、そして続けて後頭部を痛打、この響の
「おい! ガムテだ、ガムテ持って来い!!」
「簀巻きだ、簀巻き!!」
直ぐ様 男子生徒達に拘束される。
「凄ぇな、吉良は…」
「世界一の殺し屋に勝っちまったぞ、おい??!」
「いや、まぐれだよ。
偶々 良いヤツが、顎にマトモに入っただけだから…」
死神が寺坂達により、全身 布テープの木乃伊にされる中、他の生徒達は響に駆け寄り、その勝利を称えるも当人は謙遜。
まさか、
「よっし、吉良君!
君に【殺し屋殺し】の称号を与えよう!」
「ん。不破ちゃん、要らないからね。」
そして不破の言葉に、真剣に応える響。
≫≫≫
あの後、響達は担任と副担任に連絡。
それを受け、駆け付けて来た殺せんせーと烏間達により、死神は改めて専用具で拘束され、政府の収容施設に送られる事に。
「それにしても、噂をすれば…か…」
まさか数時間前、ロヴロから注意を呼び掛けられた その日に事が動き、そして事が済んでいた事に、烏間は苦笑。
「それじゃ、皆、行くぞ。」
「「「「「「はい!」」」」」」
そして烏間指揮の下、E組&殺せんせーは、死神がメールで指定していた、アジトと思われる場所に向かう事になった。
「さて…それじゃ捕らわれのビッチ姫(笑)を助けに行きます…かね?」