暗殺聖闘士   作:挫梛道

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アジトの時間

「此処、か…」

死神に拉致されたイリーナを救出すべく、烏間の指導の下、律に送られたメールに記された場所に到着したE組一同の約半数。

本来ならば、殺せんせーも これに同行する予定だったのだが…

 

≫≫≫ 

「あ゙~? 行くだけ無駄っしょ?

死神さんに勝てる訳ないし~?」

「いえ…彼は もう、倒されて捕まってますから…」

「きゃははは! このタコ、ギャグのセンスあるぅ!

超~ウケるんですけどぉ? ぷーくすくす!!」

「………………………………。」

メールを開いたと同時にウイルス感染、ハッキングされた律の設定修復(ちりょう)に勤しんでいた。

 

「しかし、このハックド律さんの設定…

まさか…いや、そんな筈は…」

本体画面の液晶モニターには、汚部屋の中で背中を向けて横になり、菓子をポリポリと食べながら、ピコピコと携帯ゲーム機をプレイしている少女の姿が。

誰の設定(しゅみ)なのか、イリーナを僅かに超えた筈の胸元も、茅野以上に慎ましくなっており。

自分と対極な その趣味に、そして()()()()()()()()()()()を名乗った人物に1人心当たりを思い浮かべるが、直ぐに頭を横に振り、それを現実逃避するかの様に否定していた。

 

「ちょ…何を勝手に、女子の内側を開いて覗いてんのよ?

このセクハラタコ! 教育委に訴えるわよ!!?」

「……………………………。」

 

▼▼▼

殺せんせー暗殺手段の為だけに、廃工場を改装(リフォーム)したかの様な、死神のアジト。

死神の仲間の様な人物の気配は無いが、例えば…RPGではラスボスの魔王が斃されただけで雑魚モンスターが その世界から消える様に、主が捕らわれただけで その機能が喪われる…筈も無く、E組の進む道には悉く、ドアに仕掛けられた爆薬や、鉄骨にボウガン、落とし穴に金盥、その他諸々…死神の仕込んでいた(トラップ)が待ち構えていた。

尤も その全てを、一同の先頭を歩いている烏間が事前に察し、難無くクリアしていたのだが…

 

≫≫≫

『『『『『がるるるる…』』』』』 

E組の目の前に立ちはだかったのは、重火器を背負い、軍用訓練された、数匹のドーベルマン。

侵入者に向けて番犬の放つ、野生でなく訓練による凄まじい殺気。

 

「「「「「「う…うゎぁあ…」」」」」」

日頃からの訓練の賜物故に、それを敏感に感じた生徒達の殆どが、足を竦ませる。

 

「ふん…」

しかしながら、それに全く動じない男が1人、一歩前に踏み出した。

E組副担任、烏間惟臣。

 

 

…死神め、あのタコを殺す為に、生徒達を巻き込もうとしたばかりか、こんな動物迄暗殺用に仕込み、使おうとしていたのか?

許さん…! ますます以て、赦さんぞ…

 

 

明らかに不機嫌な顔となり、

「何が赦さんってな…俺は、動物が…」

生徒達には聞こえない程の小声で、ぶつぶつと この暗殺仕様犬に近づく烏間。

 

「特に(わんこ)が、大好きなんだ…!!」

 

にっこり…♡

 

出来る事なら傷付けたくない…

その思いからの満面な笑みで、自分には戦闘意欲が無いのを示す烏間に対し、

 

びっくぅっ!!(」°⁠o°)

 

その笑顔(オーガ·スマイル)を見たドーベルマン達は恐怖に慄き、降参の意を示すかの様に、その場で伏せてしまう。

                  

「凄ぇぜ烏間先生!

睨んだだけで あの犬共、完全に黙らせやがった!」

「………………………。」

烏間の背中しか見てなかった生徒達は、まさか微笑んでの掌握とは気付かず やんやの歓声を送り、

「一応、この銃は外しておくか…

堀部君、手伝ってくれるか?」

…かと言って、微笑み掛けたら それだけでビビられてしまったとは言える筈も無く。

内心かーなーり、凹みながらも この愛犬家は それを悟られぬ様、この軍用犬の武装解除に銃器の調整、整備を得意としているイトナにアシストを要請。

 

≫≫≫

『くぅ~ん、くん…』

「きゃははは♪ くすぐったいよ~?♡」

「はいはいはい~。

良~し良し良し、良い子ですねぇ~?♪」

「…………………………orz」

「「「「「か、烏間先生?!」」」」」

その後、背中の大型機関銃を外された犬達は、何故か倉橋に対して じゃれる様に抱き付いて顔を舐め回し。

そして響には、服従の意を示すかの様に仰向けとなり、所謂『腹撫で』のアピール。

その自分とは 打って変わる、自分が望んでいたリアクションに、「何故、俺には?」とばかりに跪き項垂れる烏間。

端から見れば、いきなり原因不明の凹みっ振りを見せる副担任に、生徒達が心配の声を掛けていた。

 

≫≫≫

「「「「「ビッチ先生!?」」」」」

そして進んで行った2階フロアの一室にて、天井から吊られたロープで手首を拘束されているイリーナを発見したE組一同。

 

「大丈夫…なのかよ?」

「ぅん…」

「ん! 気を失ってるだけ…息はあるよ!」

そう言いながら、矢田がロープを切り、

「ょっと…ったく、世話の灼ける…」

寺坂が彼女を背負う。

  

「寺坂~?どさまぎで お尻とか触ったりしちゃ、駄目だよ~?♪」

「するかっ!!?」

カルマの冷やかす様な台詞に、必死に否定する寺坂。

 

「…成る程。『背中越しの胸の感触だけで充分です!』…と。

寺坂ぁ、サぁイテぇ~www」

「それも違う!」

そして便乗する中村の言葉にも、更に真剣に否定。

 

≫≫≫

「ん~…んんっ?!」

「お? 起きたか?」

「「「ビッチ先生!」」」

死神アジトの改装された廃工場内、来た道を戻り、外に出る少し手前で、イリーナが漸く目を覚ました。

 

「ちょ…何で私、寺坂に負ぶされてる訳?

どーゆー事なのよ!?

とりあえず、早く降ろしなさい!」

目を覚ました途端、平常運転となるイリーナ。

そして未だ今一、状況が理解出来ていないイリーナに、何が有ったのか、事情を説明する生徒達。

        

「はあ?! あれから3日経ってるぅ?…って、死神ぃい?!」

そして自分が最強暗殺者・死神に攫われた事に、驚きを隠せないイリーナ。

         

「し、しかもヒビキが死神、倒したですってぇっ??!」

「吉良響は、死神殺しの魔王である!」

「不破ちゃん~、人をカンピ〇ーネみたいに言うの、止めてくれる?」

…響はカン〇オーネで無く、聖闘士(セイント)である。

                   

「それにしても、如何に相手が世界最強の殺し屋だからって、ビッチ先生が訳解らない儘に、捕まるなんて…」

「「「ん、確かに。」」」

「………………………………( ¬ з ¬)」

茅野の何気無い疑問(つぶやき)、それに同意する一同から、イリーナは気不味そうに目を逸らす。

 

「どうせ、カルマの『ぼっち先生』発言で凹み&半ギレしてた時に、烏間先生に変装してた死神に優しく声を掛けられ誘われて、チョロくも ほいほい着いてって攫われた…って処でしょ? この ぼっち。」

「わ、悪かったわね!?

えー、そーよ! 全く その通ーりよ!!

それから、ぼっちって言ーな!!」

 

グィ…

 

「うぅげ!? お、俺に当たるな!!」

この響の100%正解な推論に、半泣きで顔を赤くして逆ギレ、八つ当たりなのか、負ぶさっている寺坂に背後からチョークスリーパーを極めながらも、それを認めるイリーナ。

  

「と、兎に角、起きたんなら自分で歩きやがれ!」

「ふん!言われる迄も無いわよ! ガキ!!」

そう言って、寺坂の背中から降りるイリーナ。

 

「あっ、いっ痛ぅっ!??」

「「「「「び、ビッチ先生?!」」」」」

しかし その1秒後、一歩 歩いた直後にイリーナは、間抜け顔と共に足を押さえてしまう。

 

「ビッチ先生?」

「どうしたんだよ?」

「だ、大丈夫?」

それを見て、心配顔で駆け寄る生徒達。

 

「は…裸足で小石踏んだ…」

 

どんからがっしゃん!!

 

その台詞に、派手にコケる生徒達。

 

「ハァ…何なんだよ? このビッチは…」

溜め息と同時に、やれやれ顔な寺坂が腰を降ろし、

「…ほれよ。」

再び負ぶされとばかりに背中を向けるが

「チェンジ。」

「「「「「「はぁああ?!」」」」」」」

このBitchは寺坂の受け入れを拒否。

 

「何言ってんだ! このビッチ!!?」

「チェンジって何よ?!」

「仮にも教育者の台詞じゃないわよ!」

「…そんなだから『ぼっち』って言われる。」

「まあ、そりゃ寺坂 嫌だって、その気持ちは解るけどさ~♪」

「んだとぉ? ゴラ゙ァ?!」

『チェンジ』…その意味を知っている故に(情報源:イリーナ)、その台詞に生徒達からは非難轟々。

 

「う…うっさいわね!

兎に角、チェンジよ、チェ・ン・ジ!!

私にだって、選ぶ権利は有るわよ!

あとリンカ! ぼっち言ーな!!」

それ等を突っ込み込みで、イリーナは また逆ギレで返し、その場の とある人物に、俯き加減で視線を向ける。

 

「「「「「「「………!!」」」」」」」

その視線を、当人以外の全員が察知。

女子生徒が約1名、複雑な表情を浮かべる中、チームワーク抜群に()い笑顔で頷き合うと、

「烏間先生~?」

「御指名で~す♪」

「何?」

クラスを代表して、E組悪童コンビが烏間に話し掛けた。

  

「何故、俺が…って、もう自分で歩かせたら良いだろ!?」

「「「「「「「はぁ~…」」」」」」」

しかし この烏間(どんかんおとこ)の全く察せない、それを拒むかの発言に、生徒一同は『駄目だ、コイツ…真剣(マヂ)に何とかしないと…』とばかりな、溜め息の大合唱。

             

「良ーから! 今回の誘拐劇、烏間先生にも原因ってか責任が有るんだから!」

「「「「そーそー。」」」」

「そーだそーだ! 全部、カラスマとカルマが悪い!

だから、Harry up!」

「な…? 何なのだ…一体…?」

この後 結局、生徒達…そしてイリーナからの責め立てに、訳の解らぬ儘に屈した烏間は、腰を屈め、先日21の誕生日を迎えた同僚に背中を向けるのだった。

 

≫≫≫

「~~~~~~~~~~~♫」

「………………………………………。」 

帰り道、未だ今一理解納得出来ていない仏頂面の烏間に、背負われているイリーナ。

そして背後から その光景を見て、ニヤニヤしているのは、生徒達である

約3名の少年少女は、その様子をスマホで撮影。

彼等の頭や背中に、角や蝙蝠の様な羽が見えるのは、あくまでも幻覚(イメージ)である。

 

「うっぅう~~~~~~~~~~!!」

「「よしよし♪」」

そんな中に1名程、納得の往かない顔を浮かべている女生徒に、矢田と片岡が宥めあやす様に頭を撫でていた。

そして…

   

  

ふん…

カラスマ…まぁ、アンタからのプレゼント。

今年はコレで、勘弁してあげるわ!

その代わり…来年は こんな程度じゃ、済まされないからね!!

 

 

…そう、心の中で呟く金髪美女は、満面の笑みを浮かべていたとか。

 




  
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