「ぅ…」
「美味い…だと?!」
山の上、旧校舎に特設された飲食店で、此の時此の場でしか食せない、オリジナルの漬け麺を口に含んだ銀髪碧眼の少年と、頭に金細工の輪冠を嵌めた黒髪の青年が、その初めて口にする味わいに、驚きの顔を露わにした。
「ん~、捻りの無い、普通な表現ね。
如何にイメージと云えども、流石に男を挽ん剥く様な趣味は、作者は持ってないみたいね。
普段は…いや、最近は『コッチ』じゃ、影は潜めてるか?…意味も無く、上半身バサァッしてるけど。」
「…不破ちゃん? 何故、俺を見る?」
その絶賛されているリアクションにも拘わらず、それに少し不満気な感想を呟く女子が、約1名。
≫≫≫
椚ヶ丘学園祭。
E組が企画したのは、殺せんせー原案、村松考案の『どんぐり漬け麺』をメインとした飲食店。
三村が中心となり作成したホームページの効果も有ってか、この看板メニューだけでなく。
「このキノコのソテー、凄く美味しいですぅ!」
「はい。まさか、この様な場所で…は失言ですね?
マツタケやタマゴダケ…こんな高級食材が出てくるとは…」
「山女魚の燻製、美味しいにゃ~♪」
「山葡萄のジュース、美味。…おかわり所望。」
サイドメニューの、原が中心となって調理する、山の幸 川の幸をふんだんに使った料理も、来場した客には好評を得ていた。
そう、
「しかし…やっぱ客足、伸びないな。」
「いや、立地条件の悪い中、よくやってると思うよ?」
それでも やはり、山登りをしてくる者は、決して多いとは言えず。
山の麓に寺坂達体力自慢をリヤカー(自転車牽引)での送迎要員として配備していなかったら、更に苦戦していたのは明らかだった。
しかし…それでも、縁という物は確かに存在しており、
「「「「「お~ぃ、杉野~!」」」」」
「おお、進藤!…と野球部の皆!」
「ふっ…野球部総出で、来てやったぜ。」
「あんなページ見せられた日にゃ、食べてみたくなるぜ。」
「あぁ、サンキュな!」
本校舎生徒としては珍しく、E組に対して歪んだ感情を持たない、嘗てのチームメイトが、
「磯貝君~!」
「磯貝先輩~!」
「やぁ、よく来たね。」
「……………。」
日頃の行いの賜物か、そのイケメン男のイケメンっ振りに惹かれる本校舎の同級生下級生達が、
「前原君~、来たよ~。」
「やっほ~☆!」
「おぉ!来てくれたか! ありがとな。」
「………!!」
日頃の交友範囲の広さの賜物か、遊び慣れている感の半端無い男の、学校の外からの友人が、
「「「吉良先輩~!」」」
「「「来たっス!」」」
「ぉ…ぉぅ…」
そして やはり日頃の行いか。
本校舎にて基本的には危険人物と謂われながらも、先の体育祭での大立ち回りで、その人物をカリスマ視する様になった一部の1年2年の男子生徒達が、徐々に足を運んできた。
「いや、磯貝や前原と俺、訪ねてきた人間のベクトル、何だか違っくね? orz」
≫≫≫
「HAHHAー! HISASHIBURIDANA!Boys & Girls!」
「あ、レッドアイさん!」
「ふん…死神に浚われたと聞いたが…元気そうだな…」
「せ…
「久方振りで候ぬ。」
「あ、おじさんぬ~♪」
「しゅしゅしゅ…あのタコに、電話越しに泣いて頼まれたから、来てみたでしゅ。」
「「「「あ…はい…どうも…(…って、だ、誰?この人?!)」」」」
更には特殊な暗殺教室だからこそ、その特殊な縁で知り合えた者達が、次第に この旧校舎の店に足を運ぶ。
「き、客の半数が、殺し屋になった…」
…その光景を見た渚が、白目で突っ込み気味に呟くのも、決して悪くはない。
≫≫≫
「…で、何なのですか?これは?」
「ヌルフフフフフ…先生がマッハで作ってみました。」
「「手作りかよ?」」
「3人共、似合う似合う♪」
暗幕が張られた、部外者侵入禁止のE組
「…それじゃあ俺達は校庭側に回るから、校舎内は吉良に任せるぜ。」
「俺達は…ってか、お前以外は『校則』で、必要以上に本校舎側を自由に歩き回れないんだからさ…」
「ほら、更に こうすれば…」
「あ゙っー!? 何すんだ、このタコ!」
「ね? これで簡単に
「はい、笑顔の練習! こうやって…ニィ~♪」
「茅野ちゃん、楽しんでない?」
更には普段の髪型を無理矢理にオールバックに固められ、伊達眼鏡を装着させられた響が、親指と人差し指で口を左右に広げての笑顔作りのレクチャーを、茅野から受けていたり。
暗殺者の色合いが強くなってきた客層を払拭する為、そして更なる客足を延ばす為、本校舎側へ直接に客引きする刺客として、人徳の磯貝、社交性の前原、そして本校舎内を制限無しに動ける響が抜擢されたのだった。
▼▼▼
方その頃、浅野学秀率いる、A組は…
「♪嗚呼~♪俺達は この勇ましさ 儚さで何を護る?♪
♪もう、理性なんて無いなら…♪」
わーわーわーわーわー…
半分以上は浅野の生徒会長としての権限を利用して、大講義室をA組として丸々と借り受け。
その部屋を2分割してのイベントカフェ。
芸能事務所から派遣された若手アイドルと、お笑い芸人のミニライブを交互に開き、大いな盛り上がりを見せていた。
「どうだい? アイドルのライブが終わったと思えば、今度は反対側で お笑いショーの始まりだ。
各々30分から1時間のステージ、それを交互に繰り返す。
でも…入り口は別々だから、ね?」
「成る程…アイドル見た後、お笑い見たけりゃ、また別途 入場料払わないと…か。」
「それを繰り返してりゃ、そりゃあガンガン金が入るわな。」
ステージの脇でミニライブを見ながら、浅野のプロデュースに、改めて感心する5英傑達。
「そういう事。しかも僕達から彼女達へ払う
今 此の場で提供されている飲食物も全て、同様にスポンサーとなったチェーン店からのサービスだ。
云わば経費は0の利益100㌫。稼ぎは全て、A組の売り上げポイントとなるんだ。」
「キヒヒ…しかも飲み食いタダだと、
「コッチで お腹は一杯で、
「その通りだ。別に今回は、勝敗に絡む賭けの約束なんかは していないが、それでも周りが勝手に期待してる以上…
それ以前にA組として、もう何事に於いても、E組に負ける訳には往かないんだ。
吉良…今回は、僕達が勝つ!」
≫≫≫
「今日は どうも、有り難う御座いましたぁ~ってか?」
「あ、お疲れ様です。此方こそ、有り難う御座いました。」
先程ステージで熱唱していた…高校生か大学生か位な少女が、この日の仕事を終え、ステージ衣装から私服に着替えた後。
一応は今日の雇い主である浅野に、仕事場を去る前、やや軽い口調ながら、挨拶に やって来ていた。
「もう、学園を出るのですか?」
「いや~、久し振りに、
今日は もう仕事も無いし、折角の学園祭。
どうやら このアイドルは この後、一般客として この学園祭を楽しもうとしているらしい。
「それなら僕が、学園を案内しますよ…(パシッ!)あ痛っ?!」
それを聞いた榊原が、学園の案内役を買って出ようとするが、
「心配御無用。それから、気安く肩ポンしようとしてんなよ? 義務教育のガキ?
お前がイケメンなのは認めてやるが、それが何でもアリな免罪符と勘違いしていたら、何時か痛い目に遭うぜ?」
「「「「「………………。」」」」」
その際に肩に触れようとした手を弾かれ、更には とてもアイドルとは思えない?迫力と台詞遣いで、物理的にも言葉的にも、痛烈なカウンターで返された。
これには その場の皆が…浅野ですら、声を失い固まってしまう。
「…でも、アナタみたいな人が、しかも さっき迄ステージに立っていて、この学園に来ているのが知られている様な人が、1人で校内を歩こうなんて…」
そして榊原のフォロー…と云う訳では無いが、それでも世間から かなり認知されているタレントが1人で校内を歩くのは、幾らプライベートだからと言っても、色々と問題が有ると思い、浅野が注意を呼び掛けるが、
「大丈夫大丈夫♪」
このアイドルは上着のポケットから、顔の下半分をスッポリと隠してしまう様なマスクを取り出し それを被ると、
「こうすれば、以外と誰も、気付かないんですよぉ♪
それじゃあ皆さん、失礼しますねぇ♡」
「「「「「……………。」」」」」
先程の榊原への態度が豹変したかの様な…まるでキャラがチェンジしたかの様な口調で、その場を去って行った。
≫≫≫
「お~い!キ~ラヒ~ビキ~ぃ♪!!」
「さ…サキさん??!」
…このアイドルが校舎内を1人歩く中、