秋の球技大会、リアルファイナルと銘された、A組とE組の試合は両者無得点で終わり、PK対決で勝負を委ねる事となった。
「よし、最初は俺が行くよ。」
「吉良…?」
先攻のE組。
その一番手を名乗り出たのは、ゴールキーパーを務めていた響。
「良いじゃんかよぉお!
PK位、蹴らせてくれよぉおお!
俺だって本当はFWかMF、やりたかったんだからよぉおおおっ!!」
「わ…分かった…分かったから!!」
「泣くな、泣くな!!」
半泣きでの本音の訴えに、やや引き…呆れながら、今回の球技大会、一応はクラス内のキャプテンを務めている前原が、チーム内…もしかしたら、大会MVPと言っても良いかもしれない、クラスメートの背中を押した。
ピッ…
合図の笛の音に習い、僅かな助走から、
「行くぜ! ドライヴゥ~…シューーッ!!」
バシィッ!
「「「「おおぉっ!!?」」」」
大見得を切った台詞と共に、豪快なシュートを放つ響。
そのボールはゴールより遥か上空へ打ち上げられ、特大ホームランになる…と誰もが思ったが、最高点迄達すると、突如として生じた高速回転と共に、ゴールネット目掛けて急降下…
…等、する訳が無く。
響が蹴ったのは、唯単にゴール下左角に狙いを定めた、ストレートの高速低空弾。
「………!!」
それにドイツ人留学生のキーパー、ユングも、シュートの際の台詞に惑わされる事無く反応(…と言うか、何を言ってたのか分からない)、体を横っ飛びさせてのセービングを試みるが…
バスゥッ!
「u……??!」
「良ぉお~~~~~っし!!」
それでもシュート速度の方が やや速かったのか、響の蹴ったボールは、ゴールネットに突き刺さった。
両腕を天に突き上げ、思わず会心のガッツポーズを見せる響。
「「「「この、卑怯者ーー!!」」」」
「何がドライヴシュートだ?
でっちかってーと、タイ〇ーショットぢゃねーか!?」
「謝って! 今直ぐキーパーの人に、謝って!!」
ぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶー!!
「何で?!( ゚Д゚ ;)」
しかしシュートが決まったにも拘わらず、そのハッタリとは真逆の弩ストレートな弾道に、男女問わずに非難囂々罵詈雑言を浴びせるE組の皆さん。
「う、うっせー!
大体 普通な素人中学生が、んなマンガみたいなシュート、打てる訳が無いだろ!?」
どん!
「…Verdammt!!」
そしてグランドを両手で叩き付け、悔しがるユング。
「驚いたな…」
「あぁ。あのユングからゴールを奪える者が、こんな島国に居たなんてな…」
ティグレとアギラも、その結果には驚愕する。
「くっ…」
そんな中、A組は男女問わずに、面白くない顔を隠す事無く、表に出す。
特に浅野は、大量の苦虫を口一杯に頬張り、噛み砕いた様な表情。
「大丈夫だ、アサノ。
コッチの一番は、俺が出る。」
そんな浅野を気遣う様に、キッカーとして名乗り出たのは
「…あぁ。頼んだぞ、レイザー。」
イングランドからの留学生、レイザー・ファスト。
「吉良、アイツは!」
「大丈夫だ、イトナ。」
ゴール前で構える響に、ボールの前に立ったレイザーを見て、イトナが声を張り上げる。
ヤツの蹴る球は、曲がる…!
試合中、そのボールに何度も翻弄されたイトナが注意を呼び掛けるが、響は心配無用のゼスチャー。
ピッ…
「Dassha!」
バスィッ!
そしてシュートを放つレイザー。
その球は、ゴール中央で構える響の真正面に進み、
クィ…
…と見せかけて その途中、蹴る際に付加された特殊な回転によって左に曲がり、ゴール左角へと吸い込まれて行く。
ガシィッ!
「WHAT!!?」
しかし そのボールは、その軌道を見切っていたかの様な、響の飛び付きから、両手でキャッチされてしまう。
「試合中、幾らパスとは云え、
初めから曲がると分かってさえいれば、軸足や蹴り足の角度から そのコースを読む事等、いとも容易い!」
「SHIIIIIIIII~~T!!」
響の台詞、何を言っているのか理解出来ている訳では無いが、何となく…何を言っているのか察する事は出来たレイザーが、大声で悔しがる。
尚、念の為…響は
「まぁ、あの
「…不破さん?」
ガシィッ…
「くっ…!」
続くE組2番手、磯貝の蹴ったボールは、あっさりとユングに止められ、A組の2番手として、ペナルティーエリアに立ったのは、
「さっきのリベンジ…ってか?」
「………。」
A組キーパー、ユングである。
「…ょっとぉ!」
パシィッ…
「ga…?!」
だが、このユングのシュートも、ジャンプしてのパンチングで響は捌く。
そして続くE組A組の3番手、4番手のキッカーも、それぞれ響とユングの鉄壁の守備の前に、得点出来ずに終わってしまう。
「…じゃ、決めてくるわ。」
「「「「よし行け!【女っ垂らし糞チャラ男】!」」」」
「だから その呼び名は止めろおっ!」
E組のラストキッカーは前原。
クラスメート達の暖かい(笑)エールを受けて、ゴール前に立つ。
仮に これで前原がゴールを決めた場合、それで後攻めのA組がキックを打つ前に、E組の勝利となる。
ピッ…
「そらぁっ!」
ビシィッ!
シュートを促す笛の音に応える様に、前原がシュートを放つが、それも難無く、ユングの右掌に吸い寄せられる様に止められる。
そしてA組のラストキッカー、浅野が定位置に立った。
「…クソ、ティグレやアギラさえ、試合を降りなければ…!」
「「………………………………。」」
恨めしそうに、スペインとアルゼンチンからの留学生を睨み付ける浅野。
自分達と浅野の、勝負に挑む心構えの食い違いからの衝突により、後半には試合に出場していなかった2人は、このPKにも参加する権利も無く。
今から浅野の蹴ったボールを、響が止めたらE組の勝利で試合終了。
もしも浅野がゴールを決めたら、サドンデスでPKを続ける事となる。
ピッ…
「でぇいやぁああっ!」
バシィッ!
そして、気合の雄叫びと共、浅野渾身のシュートが、響の守るゴールに向けて、放たれた。
▼▼▼
「彼等は『クラス対抗は関係無い。1人のフットボールプレイヤーとして、アナタと勝負したい。』…と言っています。」
それは、PK勝負の終わった…E組とA組の決着の着いた後。
ゴール前、ドヤ顔でサッカーボールを人差し指で回転させている響の前に現れたのは、ティグレとアギラ。
そして、紺色のレディーススーツを着た、長い髪を後ろ側でアップに纏めている、推定20半ば~後半の女性。
ティグレとアギラの来日に伴い、スペイン語通訳として派遣されたスタッフだ。
「◇¢◎☆〒→∀∬≪∂≒§∴£∵∝ΗΔ¶∇Φ@⇔▼※Å!!」
スペイン語は全く解らないが、何となく『俺と勝負しろ!』的な言葉を言っているのだけは理解出来た響は、持っていたボールをティグレに向けて転がし渡すと、
バシィッ!
「『何処からでも掛かって来いや!』…って、言って下さい。」
左の拳を右の掌に打ち付け、ボールを受け止める構えを取り、通訳担当に その旨を伝える様に話すのだった。
≫≫≫
「HAAAAAAAAAーーーーUu!!
Ladra! Bestia de Trueno!!」
ズガシャアァッ!!
そしてティグレが、またしてもボール手前の地面を削りながらのシュートを、雷鳴か野獣の咆哮かな如き雄叫びと共に、響の構えるゴール向けて撃ち放った。
▼▼▼
「無様だね? あ・さ・の・
「…っ!」
放課後。
理事長室では、浅野父子…否、学園理事長と、理事長に呼び出しを受けた生徒会長が、この日の球技大会について話していた。
「学園祭の時にも少し話したが、
聞けば、サッカー部との試合の直後、疲労困憊なE組に対し、休憩も挟まずに直ぐに勝負を持ち掛けたそうじゃないか?
仮に…それで仮に勝てたとして、君自身は兎も角、他の皆は、それでE組を弱者と見ると思うかい?
それでA組を強者と認めると思っているのかな?」
「ぅ…」
「結果、負けてるしね?」
「…………!!」
「1年生2年生が言ってたよ。
『E組まぢパ無ぇ!』…ってね。」
「………………………………………!!」
「しかも、今回の為に急遽…
ティグレ君とアギラ君。
後半から試合に出なかった2人…一体、何が有ったのかな?
彼等は『ノーコメントだ!』って、何も話してくれなかったけど。」
「………………………………………。」
「…まぁ、通訳さんに、全部 聴いているけどね。」
「……!?」
「そりゃあプライド有るアスリートに
自分達の力を信用していない…そう言ってるのと同じだからね。
それさえ無ければ、もっと違った結果になっていた可能性は凄く高い。
それは、その後の番外戦とやらの結果を鑑みれば、君にも理解出来る筈だ。」
「くっ…!」
「ねぇ、浅野
どうして君は、せっかく私が最強な戦力を用意してあげても、それを悉く誤った使用・し・か、しないんだい?
そんなに彼等を
「な…こ、こr ?!」
「あっははははははははははははははは!
何を本気で驚いているんだい?
冗談だよ。流石の私でも、そんな知り合い…其処迄な人脈は、持っていないさ。」
…って、言うか、彼等が その、殺し屋の卵なんだけどね。
「まぁ、今の君1人では彼等をどうにか出来ない事だけは、よ~く解った。
少し、発破を掛ける事にするよ。」
「発破?…って、ちょっと待って下さい!」
「駄目だね。もう私の中で、決定事項となった事だ。
大丈夫。私が直接、彼等に どうこうする訳じゃあ無い。
君達の やる気を促す手伝いを、ほんの少しだけするだけさ。
詳しくは、明日の全校集会で話すから。
お疲れさん。今日は もう、帰って良いよ。」
【今回の復習(…&未収録場面)】
①浅野君のシュートは、普通にワンハンドキャッチで止めた響君。→Ε組勝利
②でも、その後の番外PK勝負…ティグレ君とアギラ君には、見事にシュートを決められていたり。
響君、大凹み。
③それを見たE組の皆さん、拍手喝采。
「テメー等、どっちの味方だぁっ!!?」
④試合開始早々の、岡島〇獣シュート顔面直撃は、ワザとでなく、マジに事故です。
ティグレ君、試合後に通訳・鈴木さんを通じて岡島に きちんと謝っています。
ティグレ君、いい人。
⑤A組との対戦時は、黒の上下のユニフォーム(10)で、袖を肩口まで捲った格好で応援していた律。