ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

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久しぶりに長く書きました。

それではどうぞ!


第二十二話

 ちきしょう、まだ大して時間が経ってないってのに身体が……。これは早く決めねぇとやばそうだ!

 

「こ、こんな……こんなことがあってたまるか……! 俺はアザゼルやシェムハザのような腑抜けと違う堕天使だ! あんな人間の小僧にやられるわけがない!」

 

 俺の攻撃を受けて酷いショックを受けてるのか、コカビエルはワナワナと震えながら否定するように怒鳴り散らしている。

 

「俺が、俺こそが最強の堕天使なんだ!!!」

 

 

 ズキズキッ!

 

 

 ぐっ! か、身体中が痛ぇ!!

 

 ドライグのお蔭で使えるようになったとは言え、やっぱり今の俺じゃ四倍の龍帝拳は無理があるな。このままチンタラやってたら、俺が先に参っちまいそうだ……!

 

「お、おのれ小僧! おまえはっ……グフッ!」

 

 コカビエルが俺に何か言おうとしてたが、いきなり(むせ)て手を口元に当てる。多分、俺が受けた攻撃の所為で咽たんだろうな。

 

「ゴフッ! ゴホッ! ゴホッ! ……………………なんだと」

 

 咽るのが終わったのか、コカビエルは口元に当てていた手を放す。けれど自分の掌を見て数秒後には信じられないように驚いた顔をしていた。

 

「こ、この俺が……あんなガキを相手に、血を吐くだと……! ゆ、ゆるさん……! 絶対に……許さんぞぉぉぉ!!!」

 

 どうやらコカビエルの奴、キレちまったようだ。人間の俺相手に血を吐かれた事で堕天使のプライドが傷付けられたってか?

 

 だがこっちとしちゃ好都合かもな。アイツがキレたら――

 

 

 ドンッ!!

 

 

「もうお遊びはここまでだ!! この町もろとも木っ端微塵にしてやる!!」

 

「っ! 何だと!?」

 

 執拗に俺を狙おうとはせずに駒王町その物を消そうとしてやがった! あの野郎、俺にコテンパンにされたからってそこまでするか!? 完全に予想外だぞ、おい!

 

 コカビエルは全身からオーラを出して、翼を展開すると凄まじい勢いで上空へと向かう。そして一定の位置で止まると今度は……両手を空に向けて巨大な光の槍を出そうとしていた!

 

「避けれるものなら避けてみろ!! おまえは助かっても駒王町は粉々だーーーー!!」

 

「あの野郎! その為に上空に飛んだのかよ!」

 

 考えやがったな、畜生がぁ!!

 

「ちょっとコカビエル!! 何考えてるの! ここで勝手に段取りを変えないで!」

 

「喧しい! この町を崩壊させたらすぐにお前と戦ってやる! 今の内に覚悟しておけ、エリガン!」

 

 エリーが何か叫んでいるが、当のコカビエルは止める気配を見せようとしなかった。それどころか、巨大な光の槍を更に大きくさせようとしている。

 

「っ……。どうやら貴方との同盟は決裂のようね」

 

「待てエリー! 貴様どこへ……くそっ、逃げたか!」

 

 コカビエルの返答を聞いたエリーは転移魔術を使って姿を消そうとする。兄貴が叫ぶも、一足遅くエリーは完全に駒王町から逃げ去ってしまった。

 

「イッセー! お前は下がれ! 後は俺がやる!」

 

 そう言いながら兄貴は俺に接近してくるが――

 

「兄貴は部長やアーシア達を守っててくれ! コカビエルは俺がやる!!」

 

「なっ!?」

 

 すぐに待ったをかけて足を止めさせた。

 

「バカを言うな!! 今のお前じゃコカビエルを止められる訳ないだろうが! それにお前、四倍の龍帝拳まで使って――」

 

「ここで俺が止めなきゃ意味がねぇんだ!! 後で(・・)罰でも説教でも何でも受けてやるから、偶には弟の俺にカッコつけさせろ!!」

 

「っ! …………ああもう勝手にしろ! 負けたら承知しないからな!」

 

「サンキュー兄貴!!」

 

 俺の押しに負けたのか、兄貴はすぐに部長たちを一箇所に集めて防御結界を展開する。部長たちが兄貴に何か言ってるが、取りあえず部長たちは今のところ大丈夫だ。

 

 それさえ分かれば俺はコレに賭ける!!

 

「はあああああああ!! 四倍龍帝拳の~~! ドラゴン波だぁぁぁ~~~!!!」

 

 

 ゴウッ!!

 

 

 闘気(オーラ)を最大限に高めようとする俺は、同時にドラゴン波を撃つ構えを取る。

 

「ド…ラ…ゴ…ン……!」

 

「バカめ! 俺が放つ最大の光の槍は、おまえ如きじゃ絶対食い止められんぞ!!」

 

 

 グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 

 

 

 

 

「ぐっ! とんでもないオーラの量だな……!」

 

 リアス達を一箇所に集めた俺は防御結界を張った直後、イッセーから凄まじい闘気(オーラ)が放出されていた。

 

 コカビエルのオーラとイッセーの闘気(オーラ)が激突するように、学園全体が地響きのように揺れ、校舎も罅が入り始めている。加えて二人のオーラによって爆風も凄まじい。

 

「ちょっとリューセー! イッセーを援護しないと!」

 

 リアスが抗議してるが、俺は気にせず防御結界を張り続けている。

 

「今のイッセーに何を言っても無駄だ! それにアイツは大好きなお前と一緒にいたいが為に頑張ってるんだから、ここは大人しく見守ってろ!」

 

「っ! こ、こんな時に何を言ってるのよ!?」

 

 顔を真っ赤にして怒鳴るリアスに、俺は不謹慎ながらも完全にイッセーに惚れたなと思った。

 

 まあ確かにイッセーがコカビエルと戦ってる時に真顔で『部長のことが好き』だなんて言ったから、そうなるのは無理もなかった。多分イッセーの事だからLikeの方を言ったと思うが、リアスからしたらLoveに聞こえたんだと思う。

 

「それよりもリアスと朱乃! 魔力が尽きかけてるところを悪いが、お前達も防御結界を張ってくれ! 流石に俺一人じゃ全ては防ぎきれない!」

 

「「っ!」」

 

 俺の発言に二人はすぐに結界を張った。せめてあと数分は保っててくれ。それまでに二人の戦いは終わる筈だ。

 

「兵藤隆誠、本当に兵藤一誠に任せて大丈夫なのか!? コカビエルが放とうとしてるあの光の槍は尋常ではないぞ!?」

 

「今は黙ってみていろ、ゼノヴィア! アイツは俺の弟で赤龍帝だ! コカビエル如きに負けはしない!」

 

 イッセーは(いず)れコカビエル以上の強敵――白龍皇と戦うんだ。あの程度の堕天使に負けられない事をイッセーは分かっている。

 

 だからこそ俺はイッセーに託す事にした。それはかなりの大博打だが。

 

「小僧! これで終わりにしてやる! 駒王町もろとも木っ端微塵に消え去るがいい!!」

 

 

 ブオンッ!!

 

 

 その台詞とともに、コカビエルは最大限に溜めた超巨大な光の槍をイッセーがいる地上に向けて投擲した。

 

「………こんなことなら、隣町のスイーツ店でいっぱいスイーツを食べておくべきでした」

 

 小猫、こんな状況で弥白(やじろ)兵衛(べえ)みたいな台詞を言わないでくれよ。気持ちは分からなくもないが。

 

「波ぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!」

 

 

 ドオオオォォォォォンッッッッッ!!

 

 

 するとイッセーも四倍龍帝拳での巨大ドラゴン波を撃った。

 

 イッセーのドラゴン波とコカビエルの巨大な光の槍。二つの力が激突した瞬間――

 

 

 カッ!! バチバチィッッッ!!!!

 

 

「ぐっ、これは……!!」

 

「きゃあ!」

 

 途轍もないオーラの余波と爆風が学園全体に吹き荒れた。俺とリアスと朱乃が防御結界で防ぐも、爆風だけは完全に防ぎきれずにアーシアが飛ばされそうになる。

 

「アーシアさん!」

 

「……私と祐斗先輩に捕まっててください」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 飛ばされそうになるアーシアを祐斗と小猫がフォローに回った。ナイスだ二人とも。

 

「な、なにぃっ!? お、俺の光の槍と互角だと!?」

 

「ぐぎぎぎぎぎっ!!!!」

 

 二人の力は全くの互角で、どっちが勝つかなんて俺には全く分からない状況だ。

 

「ぐぬぬぬぬっっ!!」

 

 コカビエルが投擲した光の槍にオーラを与えようとしてるのか、ドラゴン波を押し出しており――

 

「ぐっぐぐぐぐぐっ!」

 

 イッセーも負けじと言わんばかりに光の槍を押し出そうとしていた。

 

 二人の競り合いにより学園の校舎は崩壊寸前。だが今の俺達にはもうそんな事を気にしてる場合じゃない。今はもうイッセーが勝つ事を願う事だけだった。

 

「ぐおおおおおっ!! いい加減にくたばれ小僧~~!!!」

 

「ぎぎぎぎっ!! そういう訳には、いかないんだよ~~!!」

 

 そしてイッセーは何かを決意したのか、ある単語を言おうとする。

 

 

「りゅ、龍帝拳……五倍だぁぁ~~!!!」

 

Dragonicfighter(ドラゴニックファイター) LevelⅤ(レベル5)! 』

 

 

「っ! バカ!! それ以上出力をあげたら――」

 

 龍帝拳を四倍から五倍にまで引き上げたイッセーに俺が周囲を気にせず怒鳴るが――

 

 

 ドォォォオオオオオンッッッ!!

 

 

 イッセーの闘気(オーラ)が更に上がり、撃っているドラゴン波も更に巨大となった。

 

 闘気(オーラ)を更に上げた巨大ドラゴン波が、コカビエルの光の槍を飲み込むように押し出していく。

 

「っ! バカな!! お、押され……!」

 

 負けじとオーラを送るコカビエルだったが、一足遅く巨大な光の槍はドラゴン波によって完全に飲み込まれ――

 

「う、うあああああああ!!! バカなぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!!!!!!!!!!」

 

 今度はコカビエルも飲み込むように命中した。巨大ドラゴン波はそのまま上空へと向かい結界に激突するも、それはすぐに破れて突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

「……ふ、ふふふふふ。アレが俺の宿敵(ライバル)の力か。素晴らしい。実に素晴らしい力だ……!」

 

『しかし、あの力は少々気になる。奴が使っていたあの力を私は今まで見たことがない。禁手(バランスブレイク)や覇龍も使っていないというのに、何故あそこまでの力を上昇させることが出来る……?』

 

「今はそんな事どうでもいいじゃないか。コカビエル如きとはいえ、奴を圧倒した宿敵(ライバル)に賛辞を贈ろうじゃないか」

 

『……随分と嬉しそうだな』

 

「当然だ。今まで素性が不明だった俺の宿敵(ライバル)が、あれほどまでの実力者なんだ。これを喜ばずにはいられない」

 

『そう思うのはお前の自由だが、目的を見失うなよ? 俺達はアザゼルからの指示でコカビエルの回収に来たのだからな』

 

「分かっている、アルビオン。俺とて今の彼と戦う気はない」

 

 

 

 

 

 

「はあっ! はあっ! はあっ! あ……あぐぐ……」

 

 ドラゴン波を撃ち終えたイッセーは同時に龍帝拳を解除した途端、片膝を地に着けながら苦しそうな声を出していた。

 

「……ふうっ。一先ずはイッセーが競り勝ったようだな」

 

「イッセー!」

 

 俺が安堵するように防御結界を解いた途端、リアスだけじゃなく、朱乃達もすぐにイッセーに駆け寄ろうとしていた。

 

「へへ……部長。俺、何とか守りましたよ」

 

「っ! イッセー! あなた、その腕……!」

 

 痛みを堪えつつも笑顔を見せるイッセーに、リアスはイッセーの左腕が龍の腕になってる事に気付く。

 

「ああ、これですか? コカビエルをぶっ倒す為、ドライグに腕を差し出したんですよ。俺の腕一本だけで部長たちを守れるなら安いもんで――」

 

「バカ! 何考えてるのよ!?」

 

「ぶ、部長?」

 

 突然リアスからの罵倒にイッセーは戸惑う。だがリアスの両目から涙が流れてたから何も言い返せない様子だ。

 

「私たちの為に自分の腕を犠牲にするなんて……本当にバカよ、あなたは……!」

 

「イッセーさん、私、私……!」

 

「え!? 何で部長だけじゃなくアーシアまで泣いてんの!? 俺、なんか泣かせるようなことしましたか!?」

 

 全く。イッセーは自分が何をしたのか理解してないようだ。

 

 愛しい男が自分を守る為に腕を犠牲にしたなんて分かったら、そりゃ泣くさ。イッセーの事が大好きなリアスやアーシアなら尚更な。

 

「当たり前でしょ! あなたが無茶したんだから!」

 

「イッセーさぁん!」

 

「ちょ、ま、待って二人ぐあああっ!!」

 

「「っ!?」」

 

 リアスとアーシアが抱きついた直後、イッセーは痛ましい悲鳴をあげた。

 

 あまりの悲鳴に二人は離れ、朱乃達も何事かと思って凝視する。

 

「おいおい二人とも、抱擁したい気持ちは分からなくもないが、今は勘弁してやれ。イッセーの身体は重傷なんだからさ」

 

「そ、それはどう言うことですか?」

 

 俺の台詞に祐斗が訪ねてくる。

 

「イッセーが使った龍帝拳は通常の上昇(ブースト)と違って、自分の力を限界以上まで引き出す能力なんだ。その代償として身体の負担もかなり大きい。それを五倍まで引き上げたんだから、イッセーの身体は重傷だ。恐らく頭部以外の全身の骨も罅だらけだろうな」

 

『っ!!』

 

「さ、流石は兄貴、よくお分かりで。ってか骨以外も色々と不味い状態で……」

 

 驚くリアス達を余所にイッセーは骨以外の部分も重傷だと告げる。

 

「だろうな。ま、取りあえず今はアーシアに治療してもらえ。その間に俺はコカビエルを始末する」

 

「あ、ああ……。後は頼むぜ、兄貴」

 

「え? リューセーくん、それってつまり……」

 

 俺とイッセーの会話に朱乃が尋ねてきたので、すぐに答えようとする。

 

「コカビエルがアレぐらいの攻撃で死にはしない。その証拠に地面を見てみろ。まだ大地崩壊の魔法陣は生きている」

 

 言われたとおりに下を見るリアス達はすぐに驚愕する。多分、イッセーのドラゴン波によってコカビエルは倒され、魔法陣は解除されたと思っていたんだろう。

 

「ぐっ、お、おのれ……!」

 

『っ!』

 

 すると、上空から人影らしき物が降り立とうとしていた。俺達を上を見ると、それは言うまでもなく満身創痍のコカビエルだ。加えてご自慢の翼もボロボロだった。

 

 それを確認した俺はすぐに飛んで、コカビエルと同じ位置で止まる。

 

「俺の弟を甘く見すぎていたな、コカビエル。初めから油断しなければ負けなかったのに」

 

「ふ、ふざけるな! 俺はまだ負けてはいない!」

 

「いいや。お前の敗北は確定だ。手を組んでいたエリーと決裂した時点でな」

 

 そう言いながら俺は即座に自分とコカビエルを包み込む結界を作り出す。

 

 因みにコレは外にいるリアス達の視覚や声を遮断してるから、向こうからは一切何も見えないし聞こえない。

 

「なっ! こ、これは!?」

 

光牢(こうろう)結界(けっかい)だ。これに包まれたら、もうお前は逃げる事は出来ん」

 

「こんなもの!」

 

 俺の忠告を無視するコカビエルは即座に光の槍を出して光牢結界を貫こうとする。しかし、光の槍は結界に飲み込まれるように消えた。

 

「俺の光の槍が吸収されてるだと!?」

 

「無駄だ。これは天使や堕天使の力を吸収することが出来る特殊な結界。謂わばお前達の天敵だ」

 

「バカな! こんな力、人間が作り出せるものではない! 兵藤隆誠、おまえは一体何者だ!?」

 

「それをお前が知る必要など……無い!」

 

 

 パチンッ! ジャララララララッ!!

 

 

「っ! 何だ!?」

 

 俺が指を鳴らした直後、結界から光状の鎖が無数に現れた。それはすぐにコカビエルの両手足を拘束する。

 

「ぐああああ~~!! お、俺の力が、奪われていく!! 何なんだコレは!?」

 

「言っただろう? この結界は天使や堕天使(おまえたち)の力を吸収するって。その結界から作り出した光の鎖に巻き付かれたら最後、力を根こそぎ吸収される」

 

 吸収するのはあくまでオーラだけであって、ドラグ・ソボールの第一形態デルのように身体ごと吸収しない。と言うか、そんな悍ましい事は絶対にやりたくない。

 

 そしてコカビエルから全てのオーラを吸収し終えたのか、結界全体がバチバチと火花を散らしていた。

 

「あ、が……!」

 

「コカビエル、今回お前が仕出かした事は非常に目に余る。身勝手極まりない理由で戦争を起こそうと町を消滅させるなど、聖書の神(わたし)は決して許さない。たとえ聖書の神(わたし)の愛する息子と言えどもな」

 

「き、きさま、何を言って……?」

 

「ついでに嘗ての戦争でも言った筈だ。お前が堕天使になって決別しなければ、聖書の神(わたし)はお前を熾天使(セラフ)に任命していた、とな」

 

「何故おまえがそれを知って……っ! まさか、おまえは!」

 

 おっといかん。久しぶりに息子(コカビエル)と話してる所為で口が滑ってしまったな。

 

 すると、さっきまで死ぬ寸前の顔をしていたコカビエルが急に笑い始めた。

 

「は、ははは、ハハハハハハ! 確かに考えてみれば、こんな馬鹿げた力を使うことが出来るのは奴だけしかいない!」

 

 あ、やっぱり気付いたか。

 

「そうだろう、兵藤隆誠! いや、聖書の神!!」

 

「……今頃気付いたところでもう遅い。お前のこれまでの記憶は全て消させてもらうからな」

 

「ハハハハハ! 何てことだ! アザゼルにシェムハザ! 俺達は騙されていたぞ! いま俺の目の前に死んだ筈の聖書の神が生きて――」

 

「お喋りはもうここまでにしよう。そしてさらばだ、コカビエル。我が愛しき息子よ」

 

 これ以上は喋らせまいと、俺は即座に再度指を鳴らした。その瞬間、火花を散らしてる結界が大爆発を起こす。

 

 

 

 

 

 

「さて、漸く大地崩壊の魔法陣が無くなったな」

 

 光牢結界が爆発した事により、コカビエルの意識は完全に失い、そのまま地上へと落下して激突する。

 

 それを見た俺はすぐに地上に降り立つと、少し離れた位置にいるリアス達が驚愕したまま固まっていた。アイツ等には後で言い訳を考えておかないとな。

 

「お、おい兄貴、コカビエルは?」

 

「見ての通りだ」

 

 意識を失っているコカビエルを指すと、イッセー達はすぐに視線を移す。

 

「もうアイツに戦う力なんてない。俺達の勝ちだ」

 

 俺の発言によって安堵の息を漏らすが――

 

「だがまだ戦いは終わってない。予定外の客が此処に来ている」

 

 

「ほう。俺の存在に気付いていたのか」

 

 

『っ!』

 

 知らない男の声がした事により、イッセー達はすぐに声がした方へと視線を移した。

 

 そこには白き全身鎧(プレートアーマー)を纏っている何かがいた。しかも体の各所に宝玉らしきものが埋め込まれ、顔まで鎧に包まれていて、表情は窺えない。

 

 加えて背中から生える八枚の光の翼は神々しいまでの輝きを発している。

 

「あ、兄貴……まさかアイツは……!」

 

 イッセーが震えるように言ってくる。その反応は当然とも言えるだろう。

 

「ああ、お前の予想通りの奴だ。奴は赤龍帝(おまえ)の対となる白龍皇――『白い龍(バニシング・ドラゴン)』だ」

 

 俺の台詞にイッセーだけでなくリアス達も目を見開く。

 

 誰もが警戒している中、白龍皇はそのまま地上に降り立とうと、コカビエルの近くで着地する。

 

「ちきしょう……! こんな土壇場で出てくるなんてないだろうが……!」

 

「止せ。今のお前じゃアイツには勝てない」

 

 自分の宿敵が出現したと分かったイッセーが前に出ようとするも、俺がすぐに阻止する。重傷のイッセーが万全の白龍皇に勝つことなんか到底不可能だ。

 

「だけどよ。向こうが仕掛けでもしたら――」

 

「そう慌てるな。俺は負傷してる君と戦う気などないよ、宿敵くん」

 

 すると、白龍皇から突然の戦わないと言う宣言に誰もが驚く。

 

「一体何しに此処へきたんだ、白龍皇? まさか白龍皇のお前が、コカビエルを回収しに来ただけなんて言うんじゃないだろうな?」

 

「その通りだ。俺はアザゼルから、コカビエルを連れて帰るよう言われているんでね」

 

 大当たりかよ。

 

 ったく。どうしてどうでも良いことだけは見事に的中するんだか。

 

「そうかい。てっきり傷だらけの宿敵と戦う為に来たと思ったんだが……」

 

「そんな詰まらない真似なんかしない。俺は万全の状態で宿敵くんと戦いたいんでね」

 

 コイツ……理知的そうな声とは裏腹に、かなりの戦闘狂(バトルマニア)だな。エリーといい勝負だ。

 

「まぁ宿敵くんの他に、君とも戦ってみたいんだが……」

 

「ほう? じゃあやるか? こう見えて俺はまだまだ力を残しているぞ」

 

 あの鎧が禁手(バランスブレイク)の姿だったら充分に対処できる。尤も、対処するにしても俺自身かなりのオーラを使う事になるが。

 

「かなり魅力的な誘いだが、それは止めておこう。もしこのまま君と戦ってしまえば、俺は目的を忘れてしまうからな」

 

 忘れるほどに俺との戦いを興じるか。本当に戦闘狂(バトルマニア)のようだ。

 

「それとコカビエルの回収ついでに、あそこでボロ雑巾のようになってるフリードも回収させてもらう。聞き出さないといけないこともあるんでね」

 

「どうぞご自由に」

 

 そういやフリードの事なんかすっかり忘れてた。今の姿は白龍皇の言うとおり、ボロボロの姿となっている。イッセーとコカビエルの激突によってかなり巻き添えを喰らったんだろう。同情なんか一切しない。

 

 俺の返答を聞いた白龍皇はコカビエルを肩に担いだ後、すぐにフリードの下にも足を運んで腕に抱えた。

 

「それでは宿敵くん、いずれまた会おう」

 

 二人を回収した白龍皇はそう言って光の翼を展開し、空へ飛び立とうとした。

 

『俺を無視か、白いの』

 

 突然のドライグの声に、白龍皇は飛ぶのを止めた。

 

『やはり起きていたか、赤いの』

 

 ドライグの声に反応するように、白龍皇の鎧の宝玉――アルビオンがそう言った。

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

 

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある。それより赤いの、あの力は一体なんだ?』

 

『あの力とは?』

 

『惚けるな。龍帝拳などという能力は聞いたこともないぞ。アレはお前が使えるものじゃないはずだ』

 

『企業秘密とだけ言っておこう。第一、俺が宿敵のお前に答えると思っているのか?』

 

『……それもそうだな。ではまた会おう、ドライグ』

 

『ああ。じゃあな、アルビオン』

 

 久しぶりに聞いたな。二天龍の会話を。

 

 別れを告げる両者に今度はイッセーがまた前へ出ようとする。

 

「おい白龍皇! テメエに言っておく事がある!」

 

「何かな?」

 

「俺はテメエと戦うことになっても逃げも隠れもしねぇ。だが、もし下らない理由で部長たちや家族に手を掛けようとしたら……俺はお前をぶち殺す!」

 

「…………ふっ。肝に銘じておこう」

 

 イッセーの忠告を本気で受け取ったのかどうか分からないが、白龍皇は白き閃光と化して飛び立っていく。

 

 予想外な白龍皇の登場だが、取りあえずこれで本当に戦いは終わった。

 

 すると、イッセーが白龍皇がいなくなった途端にジッと俺を見る。

 

「兄貴、今の俺じゃまだ白龍皇には勝てねぇ。だから――」

 

「修行の難易度を今まで以上に上げてくれ、だろう? 元からそのつもりだ。まぁそれより、そろそろお前に本格的な治療をしないとな」

 

「え? 本格的な治療って……」

 

 

 ビキビキビキィッッッ!!!

 

 

「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 突如、イッセーの身体から何かが崩壊する音がした。イッセーは激痛が走ったのかどでかい悲鳴をあげながら倒れる。

 

「あ、がが………」

 

「イッセーさん!?」

 

「イッセー!? どうしたの!?」

 

「どうしたんですのイッセーくん!?」

 

「イッセーくん、大丈夫かい!?」

 

「……イッセー先輩、しっかりしてください!」

 

 アーシアやリアス達が揃って心配そうにイッセーに駆け寄る。そりゃ、あんな痛ましい悲鳴をあげたら誰だって心配する。

 

「ちょ、ちょっとリューセー! これはどういうことなの!?」

 

「龍帝拳の反動だ。イッセーの身体が限界を超えて崩壊したんだ」

 

「で、でもさっきまでイッセーさんは私の治癒で……」

 

「それでもまだ完全に治癒しきれてない証拠って事だよ、アーシア。言っとくけど別にアーシアが悪い訳じゃない。後先考えずに限界以上の力を使ったこの愚弟(バカ)が一番悪い」

 

「そ、そりゃないぜ、兄貴……あががが」

 

 必死に痛みを堪えながらも訴えてくるイッセー。まぁ何であれ、一先ず治療させないとな。

 

 そう思いながら俺は懐から携帯を取り出して、ある番号へと電話する。

 

「もしもしローズさん? 急で悪いんですが、またお店をお借りしていいですか? ……ええ、ちょっとウチの弟を治療するのに必要でして。それじゃあすぐに来ますので」

 

『?』

 

 俺がローズさんに電話してる事でリアス達は不可解な表情をしていた。多分イッセーの治療に何の関係があるのだと疑問を抱いているんだろう。

 

 そして電話を終えた俺は携帯を懐に仕舞って、リアス達にこう言う。

 

「お疲れのところを大変申し訳ないが、イッセーの治療を手伝ってくれないか? 無理なら断っても構わないけど」

 

「そんなの訊くまでもないわよ!」

 

「イッセーくんを治療するためなら何だってしますわ!」

 

「僕らはイッセーくんによって救われたんです! 何をすれば良いんですか!?」

 

「わ、私も手伝います!」

 

「……私に出来ることなら」

 

 ………これは訊くだけ野暮な質問だったな。

 

 リアス達の返事を聞いた俺は内心反省して、本題に入ろうとする。

 

「了解。それじゃあ今から俺と一緒にある店に行って、お前達がやる事は……料理をたくさん作る事だ」

 

『……………はい?』

 

「あ、兄貴……何故に部長たちが料理を、作るんだ……?」

 

 

 

 

 

 

「あの、リューセーさん。私は部長さんたちと一緒に料理を作らないといけないんじゃ……?」

 

「アーシアにはリアス達とは別にやってもらう事がある。イッセーの傷の治療をね」

 

 重傷のイッセーと一緒にリアス達もローズさんの店に連れてきた俺は、それぞれに指示を出した。

 

 リアス、朱乃、祐斗は厨房で料理を。小猫は大量に作られた料理の持ち運びを。そしてアーシアは俺と一緒に重傷のイッセーをベッドで寝かせている部屋にいる。

 

 因みに学園前にいたソーナ達は崩壊した学園の修理を任せている。特にソーナは崩壊状態の駒王学園を見た途端にショックで倒れそうになっていたが。まぁ被害は学園だけで済んだから、そこは勘弁してもらいたい。

 

「治療、ですか? でも、私の『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』ではイッセーさんの治療は……」

 

「そう落ち込むな。今のアーシアの力で完全に治癒出来なければ、俺が出来るように力を引き出せばいいだけの話だ」

 

「っ! ちょ、ちょっと待て兄貴! それってまさか……アーシアの神器(セイクリッド・ギア)の力を強制的に引き出す気か!?」

 

 俺がやろうとしてる事に気付いたイッセーは、ベッドで横たわりながらもコッチを見ながら言ってくる。

 

「んな事したらアーシアの身体が……!」

 

「それは充分承知している。だがお前を手っ取り早く治す方法はこれしかないんだ」

 

「兄貴が俺を治療すれば……」

 

「俺がやっても構わんが、龍帝拳の反動でボロボロになってるお前の身体を完全回復させるにはかなりの時間を要する。それを省く為にはアーシアの協力が必要なんだよ」

 

「でもだからってアーシアに危険な事は……!」

 

「勿論これは了承した前提の話だ。俺とてアーシアに強制はさせない」

 

 と言うか、俺の大事な妹分であるアーシアに無理矢理治療させようだなんて事は決してやらん。

 

 もしアーシアがNoだと言えば、俺はすぐに諦めてイッセーの治療に専念するつもりだ。アーシアを責めるつもりは一切ない。

 

「アーシア、俺が考えてる治療方法はハッキリ言って君の身体にかなりの負担を強いる事になる。決して絶対にやってくれとは言わない。敢えて嫌な言い方をするが、後は君の返答次第だ。どうする?」

 

「わ、私は……」

 

「アーシア! 無理にやらなくていい! 俺はアーシアを危険な目に遭わせてまで治そうとは思ってない! ここは断ってくれ!」

 

 止めようとするイッセーの言い分は正しいから、俺は敢えて何も言わない。結局の所、全てはアーシアが決める事になるからな。

 

 こればっかりは重大な事なので、アーシアには少し考える時間を与えようと――

 

「やります! イッセーさんの怪我を治せるのでしたら!」

 

 ――していたが即行で決断したのであった。

 

「おいアーシア! 本気か!?」

 

「はい! イッセーさんの為に、私やります!」

 

「………良いのか? 今ならまだ引き返せるよ?」

 

 念の為に再度問うと、アーシアは何かを決意するように言おうとする。

 

「私は、部長さんたちと違って何のお役にも立てませんでした。ですから、せめてこれくらいはやらせて下さい! 私だけ何もせずに見ているだけなんてもう嫌なんです! お願いします、リューセーさん! イッセーさんを治せるんでしたら私、何だってします!」

 

「「………………」」

 

 涙を流しながら言ってくるアーシアの切実な思いに、俺やイッセーは何も言い返すことが出来なかった。

 

 この子は自分が戦えず、イッセーの傍にいて何の役にも立てなかったことが相当辛かったんだろうな。恐らくソレは今回のコカビエル戦だけじゃなく、以前のライザー戦も含めて。

 

 人には得手不得手があると言いたいが、それは相手の傷口に塩を塗る行為だ。だから俺は敢えて何も言わない。

 

「……分かった。アーシアにそこまでの覚悟があるなら、やるとしよう」

 

「ちょ! 待てよ兄貴!」

 

「察しろ、イッセー。アーシアの覚悟を聞いておいて、今更止めろだなんてもう言えない。お前もいい加減に腹を括れ」

 

「ぐっ……!」

 

 俺の言い分にイッセーはもう言い返そうとしなかった。

 

 イッセーが腹を括ったと分かった俺は、アーシアに再度確認しようとする。

 

「アーシア。さっきも言ったが、今回の治療は君の身体にかなりの負担を強いる事になる。覚悟は良いな?」

 

「はい!」

 

「なら結構」

 

 力強く頷くアーシアを見た俺は治療の準備を始めようとする。

 

「ではアーシア。イッセーの治療をやる前にやって欲しい事がある」

 

「何をすれば良いんですか?」

 

 決意を固めてるアーシアに俺は――

 

「今すぐに服を脱いでくれ」

 

「はい! すぐに服を………へ?」

 

「…………は?」

 

 服を脱ぐ指示を出すと、アーシアだけでなくイッセーも急に固まってしまった。




 リューセーの最後の台詞で『コイツ何言ってるんだ!?』って吹いた人は手を挙げてください。
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