「よしよし、たくさんあるある」
「お、おお……」
新たなる反動に襲われてるイッセーに俺は能力を使って服を着させてすぐ、料理がたくさん並べられている一階のオカマバーへと転移する。
一緒に転移させたイッセーは料理の匂いを感じた途端、反動を忘れてるかのようにジッと料理を見始めている。
「リューセー!? あなたいつからここに……ってイッセー!?」
厨房から料理を運んできているリアスが俺達に気付くと、すぐに駆け寄ってくる。勿論倒れてるイッセーの方へ。
「おおリアス、ちゃんと作っていたようだな。助かるよ」
「そんな事より、これはどういうこと!? イッセーの怪我を治したんじゃなかったの!?」
倒れてるイッセーを見たリアスが俺に抗議してくる。確かにこんな状況だと、俺がまだイッセーの治療をやってないと疑われるのは当然だろう。
「もう済んだよ。いまコイツは別の反動に襲われてるんだ」
「別の反動? それって――」
「め、め……」
「え? イッセー、大丈夫なの?」
ふらりと立ち上がるイッセーに心配そうに尋ねるリアスだったが――
「
ガツガツガツガツガツガツガツガツッッッッ!!!!
当の本人はリアスを気にせず料理が並べられているテーブル席に即行で座り、凄まじい勢いで料理を食べ始めた。
最初に食べ始めた一品目の大盛りのスパゲティなんか、たったの数十秒で完食したよ。その後すぐに別の料理を食べては、また数十秒で完食して別の料理を……という事を繰り返しやっている。
「はぐはぐはぐはぐはぐっ!!」
「………ね、ねぇリューセー。イッセーはどうしちゃったの?」
猛スピードで料理を食べているイッセーを見たリアスは呆然となりながらも質問してくる。
「後で説明してやるから、取りあえず今は料理を作ることに集中しろ。ここからは俺も手伝うから」
「ちょ、ちょっと!」
説明を要求してくるリアスに背中を押す俺は一緒に厨房へ向かった。その後は言うまでもなく、イッセーが食べるペースが落ち着くまで料理を作り続けていた。
因みに――
「……あ、あらあら、うふふ。凄い食べっぷりですわね……」
「い、イッセーくんに一体何が……!?」
「……まるで飢えた猛獣のように凄い勢いで食べていますね」
料理を運んできていた朱乃、祐斗、小猫もリアスと似たような反応をしていた。
「ちょっとイッセーちゃん、ちゃんと噛んでから飲み込みなさいよ」
「っ!」
聞く耳持たず状態でずっと料理を食べていたイッセーだったが、ローズさんからの指摘で少しペースが遅くなった。
☆
「ふぅ~~。食った食ったぁ~~」
イッセーが料理を食べて三十分後。
やっと満腹になったのか、イッセーは持っていた箸をテーブルの上に置き、安堵するような息を吐いていた。
「あ、あんなにたくさんあった私たちの料理が……」
「ぜ、全部完食しましたわね……」
「一人で四十人分以上の料理を完食なんて……」
「……祐斗先輩、イッセー先輩は五十人分以上食べてました」
イッセーの食べっぷりにリアス達は只管驚くばかりで、何を言えば良いのか分からない状態だった。
「ったく、随分と食ったもんだ。まぁそれ程の反動だった証拠なんだが」
「凄かったわねぇ~。お店の材料が全部無くなっちゃったわよ」
後ろにいたローズさんが感心するように言い、俺はすぐに振り向いて謝ろうとする。
「……すいません、ローズさん。勝手なお願いにも拘らずに引き受けてくれて。費用は俺の口座から引き出して下さい」
「だったら材料費だけ引いておくわ。本当なら町を救ってくれたお礼として
「気にしないで下さい。こっちも色々とあなたに助けられてますし」
これは両親に内緒にしているが、俺は密かに銀行口座を作っていた。
春・夏・冬休みでの長期休業を利用して各地を転々と旅する際、どうしても金が必要だった。いくら
その為、俺は各地(主に海外)で稼いだ金を協力者のローズさん経由で換金。更には彼の名義で作った銀行口座に預金もしてもらった。
未成年である人間の俺がどんなに上手くやっても、万が一にもバレたら家族に迷惑を掛けてしまう恐れがあるので、お金に関する事は全てローズさんに任せるしかない。彼は一切嫌な顔をせずに引き受けてくれるから、非常に大助かりだ。
因みに金を稼いだ方法は色々やった。例えば人跡未踏の秘境にある鉱山から宝石を少し採掘し、能力によってある程度加工した宝石を宝石店で売り捌いた。その時は日本円にして一千万以上で売れて驚いたよ。
とまあ、ローズさん名義で作った俺の口座にはそれなりの額がある。だから今回イッセーが食べた料理の代金を、俺の口座から引かれても大したことは無い。
「それじゃあワタシは片づけをしておくから、悪魔ちゃん達の相手はリューセーちゃんに任せるわ。それと後で領収書を渡すから」
「分かりました」
俺が頷くと、ローズさんは即行で料理が無くなった皿を全て厨房へと運んでいった。余りの素早い行動にリアス達が唖然としていたが。
「ね、ねぇリューセー。あの人って一体何者なの? 外見とは裏腹に、普通の人間とは思えない何かを感じるのだけど」
「そこは俺の知り合いだからって事で納得してくれ」
「……まぁ、そういうことにしておくわ」
暗に詮索はするなと言ってる俺の言葉にリアスはすぐに引き下がった。いくら協力者だからって、流石に全てを教えるほど俺はそこまでお人好しじゃない。
「それはそうとイッセー、調子はどうだ?」
「おう、すこぶる良いぜ。出来ればあとデザートを二皿頼みたいんだけど」
『ええっ!?』
あれだけ食ったにも拘らず、イッセーはまだ食べたい発言をする事で驚くリアス達だったが――
「お前まだ食えるのかよ……。残念だが、もう材料は無いから作れないぞ」
「あ、そうなの? う~ん……ま、いっか。腹八分目っていうし」
『あれで腹八分目!?』
「……私だってあれくらい……」
最早人間ではないじゃないかと思うイッセーの発言に若干引いていた。小猫は少しばかり対抗心を燃やしていたが。
その数秒後、リアスは何も聞かなかった事にしようと話題を変えようとする。
「リューセー、そろそろ教えてくれない? どうしてイッセーは傷が治った後に、あんな凄い勢いで料理を食べたの?」
「あれも龍帝拳の反動だ。傷が治ったと身体が判断したら、次はエネルギーを欲する為に極限なまでの空腹状態となる。あの技は能力上昇と引き換えにかなりの体力を奪われるから、無理して使い続ければ今回のイッセーみたく超空腹状態になる」
「……それであの時、私たちに料理を作れって言ったのね。イッセーにエネルギー補給をさせるために」
「そういうことだ」
もしすぐに料理を用意してなければ、イッセーは下手したら餓死していた。それだけイッセーはかなりの無茶をしていた証拠でもある。
「……悪い兄貴。俺、無我夢中で……」
リアス達に料理を作らせた理由が分かったイッセーは俺に謝ろうとしてくる。
「ま、ああでもしなければコカビエルに深手を負わせることが出来なかったからな。ってか俺に謝る前に、リアスやソーナに謝ったほうが良いと思うぞ。学園の新校舎殆どが崩壊してたし」
「うっ!」
俺が指摘した途端、イッセーは罰が悪そうな顔をした。そして恐る恐ると言った感じでリアスを見ようとする。
「え、えっと……すみません、部長。部長や会長の学園をわぷっ!」
「バカね。そんなこと気にしなくていいのよ」
謝ろうとしてるイッセーに突然リアスが抱擁した。リアスはイッセーの顔を自分の大きな胸に押し当てている。
「ぶ、部長!? あ、当たってますよ……!」
「寧ろ私が謝りたいのよ、イッセー。私たちを守る為に大事な腕を犠牲にしたのに、私はただ見ていただけなんだから。眷族候補のあなたに全部任せていた自分が恥ずかしいわ。だから、そのお詫びをさせて」
「い、いや、部長もちゃんと戦ってましたよ?」
「あなたがそう言っても、私の気が済まないのよ。だから今夜は――」
「はいはいリアス。そういうR指定な話は二人っきりの時にしてくれ。お前にはイッセーにお詫びをする前に、他にもやる事があるだろ? そこにいる祐斗の事とか」
「っ!」
リアスがこの場でイッセーとイチャ付こうとするのを阻止する俺は話題を変えた。すると俺に名指しをされた祐斗は急に罰の悪そうな顔をする。
するとイッセーも思い出したように、リアスから離れてすぐに祐斗に近づこうとする。
「良かったじゃねぇか、色男! あん時に見た聖魔剣、凄かったな。白いのと黒いのが入り混じっててキレイだったよ。出来たらもう一回見せてくれねぇか?」
祐斗がフリードの戦いの時に見せた聖魔剣に興味を抱いたのか、イッセーは出すように催促してくる。
「イッセーくん、僕は君に迷惑を――」
「別にもう気にしてない。細かいの言いっこなしだ。それに、いったん終了ってことでいいだろう、祐斗? 聖剣もさ、おまえの仲間の事もさ」
「うん、そうだね。ありがとう、イッセーくん」
イッセーにまた名前で呼ばれた事に嬉しく思ってるのか、凄く良い笑顔を見せる祐斗。同い年で同性のイッセーに名前で呼ばれて、さぞかし嬉しいんだろう。
「ってかイッセー、気付いてないようだから言っとくけど、お前いつのまにか呼び方が『木場』から『祐斗』になってるぞ?」
「え? …………~~~~!! な、何で俺は何の違和感も無く木場を名前で呼んでんだよ!?」
やっと気付いたのか、イッセーは急に鳥肌が立ったように身体を振るわせるだけじゃなく顔も真っ青になっていた。
「イッセーくん、僕としては名前で呼んでくれたほうが嬉しいな」
「却下! お前の呼び方は木場だ! 木場で良いんだ!」
こらこらイッセー、そこまで嫌そうな顔をしながら言うなよ。祐斗が地味にショックを受けてるじゃないか。
「良いじゃないか、イッセー。別に祐斗を名前で呼ぶくらい」
「んな事したら学園の女子達に変な噂を立てられるから嫌なんだよ!」
………ああ、そう言われれば。確かにウチの学園の女子達の一部には、おかしな思考してるのがいるんだったな。
ってか寧ろ、名前で呼び合うだけで変な方向に考える女子達の方がおかしいんだけど。
取りあえずイッセーには今後、祐斗を名前で呼ばせるよう説得させるとしよう。俺からも祐斗に言いたい事もある。
「祐斗、俺はイッセーと違ってお前に言いたい事がある」
「………はい」
今度は俺が言おうとすると、祐斗はイッセーと違って覚悟を見せた顔をする。俺の指示を無視して独断行動をした事で、処罰を受けられると思ってるんだろうな。
「もう憎しみに囚われるなよ? お前はリアスの『
最後の締めとしてリアスに振ると、俺に対して呆れ顔をしつつも祐斗の方を見る。
「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに
「……部長、僕は……部員の皆やリューセー先輩に……。何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました……。お詫びする言葉が見付かりません……!」
「でも、あなたは帰ってきてくれた。それだけで十分。みんなの思いを無駄にしてはダメよ」
「部長……。僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷族――『
「ありがとう、祐斗」
決意を聞いたリアスは、すぐに祐斗の頬を撫で、そのまま自身の胸へ抱き寄せた。
そして――
「さてリアス。決意も聞けたから、これから罰をやらないといけないな」
「そうね」
「………え?」
「おいおい、何そんな意外そうな顔をしてるんだ? 勝手な事をしておいて何の咎がないと思ったら大間違いだぞ」
「リューセーの言うとおりよ。祐斗、勝手な事をした罰として、お尻叩き千回ね」
「ええ!?」
祐斗に罰を与えようと、リアスの手が紅い魔力に包まれた。これからやろうとするリアスはやる気満々で、ニッコリと微笑んでいる。
「タハハ! こりゃいいや! 頑張って、耐えろ、よ………」
バタンッ!
『イッセー(くん・先輩)!?』
愉快そうに言ってるイッセーが、突然倒れた事に誰もが驚いた。
「安心しろ。急な眠気に襲われて眠り始めただけだ。イッセーが使った龍帝拳には色々な反動があって、エネルギー補給を終えた次は、自身の身体を休ませる為の休眠状態に移ったんだ。ってな訳で、俺はこれからイッセーを部屋に運ぶから」
理由を説明した事によって、リアス達は安堵した。
俺がイッセーをベッドに寝かせるよう部屋に運んでると、何かを叩く音と祐斗の悲鳴が聞こえた。
次でやっと三巻のエピローグです。