「我、勧誘に来た。
「もうお決まりの台詞になってるな」
オーフィスが来た理由を聞いて、俺――兵藤隆誠は呆れるように嘆息する。何度も断ってるのに相も変わらず懲りない竜神様だ。
「あのさぁ、オーフィス。俺はそんな組織に入らないって、何度も言ってる筈だぞ。勿論理由も含めて、だ」
「………………」
断固拒否の姿勢を見せるが、それでもオーフィスは諦めようとする感じがしなかった。
「と言うか、何故そこまで
「……我にはどうしても、聖書の神が必要。次元の狭間に静寂を得たい」
「答えになってないんだが……」
藁にも縋る感じで弱い
ま、それをコイツにそう言ったところで諦めようとしないんだよな。それだけコイツはグレートレッドを倒し、次元の狭間に戻って静寂を得たいと純粋に願ってるからな。
けれど、前にも言ったように、今のコイツに次元の狭間を任せてしまったら大変な事になるだろう。
俗世に長く居続けてる今のオーフィスは、何事にも無関心だった嘗てのオーフィスとは違う。下手したら次元の狭間のバランスを崩してしまう恐れがある。
「……まあいいか。取り敢えず再度言うが、
「………なら、どうすれば来てくれる? 望むものあれば、我、最大限に叶える」
「だからぁ……」
そろそろいい加減にして欲しい。オーフィスは一体、何度同じ事をすれば気が済むんだろうか。いくら純粋な願いだからって、
もうこれ以上の勧誘は嫌だから、いつものように帰ってもら………あ、そうだ。
「なぁ、オーフィス。これからご飯作るが、良かったら一緒に食べないか?」
「……何故?」
「折角家に来たんだ。この際だから、お前に食事の楽しみってやつを教えてやるよ」
オーフィスは俗世に居続けても、次元の狭間で生まれ育ったから、食事を取る必要はない。益してや無限を司る神だから、腹が減るなんて事も断じて無い。
「我、人間になった聖書の神と違って食事など不要。我が必要なのは――」
「そう言うなって。食事ってのは存外バカに出来ないぞ。『
「――だから、我には」
断るオーフィスだが、俺は気にせず彼女の手を掴んでリビングへと連れていく。俺に手を繋がれて案内されるオーフィスは抵抗をせず、小動物のようにトコトコと歩いている。
そしてリビングに着いた俺はオーフィスを椅子に座らせ、すぐに台所へ移動して料理を作ろうとする。
台所にある材料を取り出したのは、パスタ、ピーマン、玉葱、ウインナー、ケチャップ、その他の調味料等々。これらの材料で作る料理はスパゲティナポリタンだ。
コレを作るのに少しばかり時間を要するが、無理矢理連れてきたオーフィスを待たせる訳にはいかないので、今回は能力を使って仕込みの時間を省く事にした。乾麺状態のパスタを一瞬で茹で、ピーマンと玉葱とウインナーを切った状態にさせようと、パチンと指を鳴らしただけで一瞬で終わる。次に用意したフライパンを使って材料を炒め、ケチャップや調味料をかけて、あっと言う間に完成させた。
「さぁオーフィス、召し上がれ。そのフォークを使って食べるんだ。こんな風にな」
「………………」
皿に乗ってるスパゲティナポリタンを運んで、オーフィスの眼前にあるテーブルの上に置いてすぐ食べるよう促す。向かいに座ってる俺は食べ方を教えようと、自分用に用意したスパゲティナポリタンをフォークで食べる。
いきなり出された料理にオーフィスは無言になりながらも、俺に言われたままフォークを持って真似するように食べようとする。
「(モグモグモグ)……やはり我に食事など不要。食べても意味がない」
「そう言ってる割にはフォークを口に運ぶペースが早くなってるじゃないか」
オーフィスは無表情でありながらも、スパゲティナポリタンを食べ続けている。しかも気に入ったのか、ずっとソレを注視しながら食べていた。
そして更にある料理がなくなると、途端に寂しそうな顔をした。まだ食べたりないんだろうか、今度は俺が食べてるスパゲティナポリタンをジッと見始める。
「……………………」
「コラコラ、人の皿にフォークを突っ込もうとするな。おかわりならあるよ。ってか、ちょっとは口を拭けって」
「ん……」
おかわりを用意する為に空となった皿を運ぼうとする前に、オーフィスの口の周りがケチャップによって赤かった。その為、俺はティッシュで彼女の口を拭く。
気のせいか? 何か今の俺、子供の世話をしてるような感じなんだが。
☆
昼食が終わり、用件が済んだオーフィスは帰ろうとしていた。
「我、帰る」
「そうか。で、食事の感想は?」
「…………興味深い。我、食事覚えた。聖書の神、我、いずれまた食事に来る」
「それは構わないけど、出来れば居候の
家にオーフィスが来たなんてリアスが知ったら、真っ先に俺に抗議するだけじゃなく、冥界にいるサーゼクスにも報告して大騒ぎになるだろう。そんな面倒な事は出来るだけ避けたい。
「………………」
「どうした?」
俺の発言に何か思い当たるところがあったのか、オーフィスはまたもや無言でジッと俺を見る。
「……我、不可解。聖書の神、何ゆえに滅さず、悪魔と共棲してる? 我が知る限り、悪魔と敵対していたはず」
「今の
「……やはり不可解。聖書の神、以前、神の力が制限されてると言ってた。それ故に悪魔と共棲? 制限されてるなら、我が力を与える」
そう言いながら足元の影から蛇を出そうとするオーフィスに、俺はすぐ待ったをかけようとする。
「いやいや、そんな理由じゃないよ。だから蛇は戻せ」
オーフィスが出した蛇は足に絡み付こうとするも、俺は直ぐに離れようとする。
「何故逃げる?」
「前も言ったが、俺はそんなのいらないよ。制限されてると言っても、俺は今のままで充分満足してる。それに人間の身である今の俺に、それを取り込める程の余裕な
「……暴走?」
「ああ。お前も知っての通り、
「………成程」
理由を言う俺にオーフィスはコクコクと納得するように頷いている。
やっと分かってくれたかと俺が安堵してると――
ギュウッ!
「……オーフィス、何のつもりだ?」
何を考えたのか、オーフィスがいきなり宙に浮いてそのまま正面から俺に抱きついてくる。突然の事に俺は思わず固まってしまうも、すぐに問い質そうとした。
「
「いや、そんな礼はいらな――がっ!」
ドクンドクンドクンッ!
すると、抱きついてるオーフィスが俺の身体にオーラを流し込んできた。それは通常の物とは違い、神の力そのものだった。
対象者の力を上昇させるオーフィスの蛇とは違い、これは『
「た、頼むオーフィス……! これ以上は……!」
オーフィスを引き剥がそうとするが、力を送り込まれてる事によって俺は思うように動く事が出来ない。
それどころか
「もう少し我慢。そうすれば、本来の力と姿を取り戻せる」
「止めてくれ……! 俺は……
嘗て天界を君臨していた
「がああぁぁぁあああああ~~~~~~!!!」
オーフィスの力を限界以上に流れ込まれた俺は、もう耐え切れなくなったかのように家の中で大きく叫んでしまった。その直後、リビングは俺から発した眩い光で埋め尽くされていく。
☆
「ん?」
「どうかしましたか、イッセーさん?」
「あ、いや……急に兄貴がバカでかいオーラを出した気がしてな」
「リューセーさんが、ですか?」
「ま、兄貴のことだから、一人で何かしらの実験する為に力を放出してるんだろうよ。それより次はアーシアの番だぞ。あのワンピン落とせばスペアだ」
「は、はい! 頑張りますぅ……」
「…………(にしてもさっき感じた兄貴のオーラ、今までとは全く別物だったな。何か遭ったのか?)」
☆
「はぁっ……はぁっ……!」
オーフィスが離れ、俺――兵藤隆誠は両膝と片手を床に付き、もう片方の手は心臓がある左胸を押さえていた。激しく鼓動していた心臓は落ち着いても、俺は未だに息が上がったままだ。
「聖書の神、本来の姿に戻った」
「……お、オーフィス、お前なぁ……っ!」
オーフィスの台詞に俺は思わず怒鳴ろうとするが、近くにあった鏡を見た途端に驚愕した。
鏡に映ってる俺の顔は人間の兵藤隆誠じゃない。嘗て天界を君臨していた
「はぁっ、はぁっ……。まさか、
「どうしてくれる、オーフィス? 食事の礼とは言え、これはいくらなんでもやり過ぎだ」
「だけど、これで聖書の神の
「そりゃそうだが……」
確かに元の姿に戻った途端、完全とは言えないが
「聖書の神、食事の礼をした。我、また来る」
「おい! この状況で……ってもう帰ったし!」
用件が済んだオーフィスは俺に背を向け、そのまま転移術を使って姿を消した。
オーフィスとしては純粋に礼のつもりでやったんだろうが、こっちとしちゃ有り難迷惑だぞ! こんな姿を家族に見られたら大問題だよ!
ったく。こんな事になるなら食事をさせるんじゃなかった! …………けどまぁ、オーフィスのやってくれた事は正直言って助かった。
ここ最近、
今後もアイツ等のような強敵と戦い、
けれど、その心配はもう無くなった。オーフィスによって神の力を与えられ、
「……その前に、元の
いつまでもこんな姿でいる訳にはいかない。もし天使達が
試しに
てっきり難しい方法じゃなければ戻らないと思っていたが、実はそうでもないようだ。恐らくオーフィスは俺が今後の日常生活に支障をきたさないよう、神の力だけでなく人間の姿に戻れる手順も組み込んでおいたんだろう。
取り敢えず、
っと、確認する前に先ずは食器を片付けるか。ついでにオーフィスと食事をしてた痕跡も消さないと。
かなり無理矢理な展開だと思われるでしょうが、どうかご容赦下さい。