学園の外で三大勢力のトップ達が護衛として連れて来てる天使、堕天使、悪魔の兵達がそれぞれ睨みあってる中、会議室で行ってるトップ会談は何の問題もなく順調に進んでいた。
「――以上が、私、リアス・グレモリーと眷族、そして人間の兵藤隆誠たちと関与した事件の顛末です」
「私、ソーナ・シトリーも、彼女の報告に偽りがないことを証言いたします」
俺たち兄弟との出会いからコカビエル襲撃事件までの経緯を全て言い終えたリアスと、証言をするソーナにサーゼクスが「ご苦労、下がってくれ」と言う。お疲れさん、リアス。
因みに俺に関する報告を聞いてたミカエルやアザゼルは何らかの疑問を抱いていたのか、時々チラリと視線を向けていた。後で色々と訊くんだろうと思うが、内心言いたい事があるなら言えよと何度も突っ込んだよ。
「ありがとう、リアスちゃん、ソーナちゃん☆」
セラフォルーが二人にウインクを送ると、妹であるソーナが少し照れくさそうな表情をしながらリアスと一緒に下がっていた。何だかんだ言いながらも、ソーナは姉に褒められて嬉しいようだ。
「さて、本当ならこの場にいる誰もが、彼――兵藤隆誠くんについて質問したいことがあるだろう。だが、まずは先日の事件から優先させていただく。さて、アザゼル。リアスの報告を受けて、堕天使総督の意見を伺いたい」
漸く俺の話になるかと思いきや、サーゼクスはコカビエルの件を先に片付けたいのか、アザゼルに問い質そうとする。
アザゼルは真っ先に俺に質問しようと思ってたのか、サーゼクスの発言で肩透かしをくらったような顔をしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「意見も何も、コカビエルが単独で起こしたことだからな」
「与り知らぬことだと、そう言いたいのですか?」
ミカエルが少し声を低くしながら問うも、アザゼルは大して気にしてない様子で話を続ける。
「目的が分かるまで泳がせておいたのさ。まさか俺自身が町に潜入してたとは、コカビエルの奴も思わなかったようだが。ここは中々住み心地がいい町だぞ」
そう言えばイッセーが話してたな。アザゼルは悪魔家業をしてるイッセーを何度も指名しては、日常的な依頼ばかりしてたと。
アザゼルもサーゼクスと同様に、駒王町に潜入してるとは裏腹に随分と楽しんでいたようだな。娯楽好きなアザゼルが人間界の遊びを楽しまない訳がない。
「話を逸らさないでもらたいな」
話題が変わったように言ってくるアザゼルに、サーゼクスは顔を顰めて咎めた。
彼の台詞に苦笑しながらもアザゼルは淡々と答えようとする。
「本当なら白龍皇に頼んで処理させるつもりだったんだが、兵藤兄弟がコカビエルを倒したから、ただ連行するだけになったがな。その後は『
『っ!』
アザゼルの奴、さり気なく俺がコカビエルの力を失わせた事を言ってるし。その所為でサーゼクス達がずっと黙っていた俺を注視してるよ。
「コカビエルが力を失ったとは、どう言うことですか?」
「そのままの意味だ。奴はこの先、もう堕天使としての力を振るうことは出来ねぇよ。どうやったかなんて、寧ろこっちが知りたい位だ。なぁ、兵藤隆誠?」
ミカエルの質問に答えるアザゼルは、またもや話題を変えるように俺に振ってくる。
「………俺の事については後でお答えしますよ。それよりも今はコカビエルが先日の事件を起こした件についてです。コカビエルは堕天使総督の貴方に相当不満を抱いていたようですね。戦ってる途中、奴が貴方に対して罵詈雑言を浴びせてましたよ」
「だろうな。戦争が中途半端に終わっちまったことが、相当不満だったんだろう。俺は戦争なんぞ、今更興味もねぇしな」
「それを分かっていながらコカビエルを放置していた貴方にも問題があるかと思いますが? 貴方が不満分子と言えるコカビエルを監視しておけば、あんな事にはならなかったんですから」
俺の抗議にリアス達どころか、トップの魔王サーゼクス達やミカエルも少し驚いたような顔をしていた。
人間である俺が堕天使総督に抗議してるのを他の堕天使達が見たら、間違いなく『人間風情がアザゼル様に対して無礼な!』と言ってるだろう。だが当の本人は怒らないどころか、痛いところを突かれた様に嘆息する。
「おまえさんに言われたら耳が痛いな。だが不満分子に関しては
「アザゼル、今回の件とは関係のない話を隆誠くんに持ち込まないでくれ」
「そのような発言は、却って身を滅ぼすことになりますよ?」
会談に関係のない事を言い始める事にサーゼクスとミカエルが待ったをかけるように割って入った。俺を勧誘するのに、これ以上自分達に対しての印象を悪くしない為と言ったところかな?
「今回の会談の目的は――」
「もうこれ以上めんどくせぇ話はいい。とっとと和平を結んじまおうぜ。もともとそういう腹だったんだろう? 天使も悪魔もよ?」
アザゼルの発言によって各陣営は驚きに包まれた。
思わず悪魔側を見てみると、リアスやソーナが驚愕の顔をなっている。アザゼルの発言は相当驚いたものだったんだろう。まさか、奴から和平の提示をするとは――みたいな感じで。
ま、アザゼルが和平を結ぼうとするのに
「それはつまり、貴方は初めから和平を結ぶつもりでいたと言う事ですか?」
「まぁな。今の三竦みの関係は、この世界の害になるだけだ。それは兵藤隆誠もよく分かってる筈だ。人間側のおまえさんから見ても決して悪くない話だろ?」
「………そうですね。確かに俺たち人間側は、三大勢力の厄介事に色々と巻き込まれてる身です。しかしそちらが今後の事を考えて和平を結ぶのでしたら、こちらとしては一切反対しません」
「だそうだ。兵藤隆誠は和平に反対しないと言ってるが、そっちはどうなんだ?」
俺の発言を聞いたアザゼルはすぐサーゼクスとミカエルに問い掛ける。
「それはこちらとしても願ってもない話だ」
「ええ。私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でしたので、反対する理由などありません。それに戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」
………驚いた。まさかあのミカエルがそんな発言をするとは。
これにはアザゼルも虚を突かれたのか、ミカエルの言葉に噴出して笑う。
「ハッ! あの堅物なミカエルさまが言うようになったな。あれほど神至上主義だったミカエルさまが」
「……失ったものは大きい。ですが、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。人間たちを導くのが――」
ミカエルがまだ言ってるが、俺は途中から聞かず感動していた。今まで
話を聞く為に意識してると、突然アザゼルは腕を広げながらこう言った。
「――神がいなくても世界は回るのさ」
アザゼルの発言に俺はさっきまで何の話をしていたのか分からずとも、同感だと内心頷く。
戦争で死んだ
何しろ今まで自分が世界の中心として動いていたと自負してたからな。あの時は本当に人生の勉強になった。天界を君臨していた
その後、会談は今後の戦力に戦力についての話に移り、そこからは俺が殆ど発言する事は無かった。
和平を結ぶと分かったのか、緊張感が弱まった感じだ。どの勢力も戦争再開を望んでいない事を分かったからだろう。尤も、それは勢力の中にいる不満分子は別だが。
「――こんなところだろうか?」
重要な話に漸く一段落付いたようにサーゼクスが問うと、ミカエルとアザゼルは大きく息を吐いていた。
「さてと、必要事項は話し終えたからもう一つの本題に移らせてもらうぞ。次は人間側の兵藤隆誠たちについてだ」
待ってたと言わんばかりにアザゼルが話題を変えると、また緊張感が戻った感じとなった。人間側を除く全員が真剣な顔をしてコッチを見ている。
後ろに控えてるイッセーとアーシアはいきなり注視されて緊張してるのか、少しばかりオーラに乱れが生じていた。
「それはつまり、俺達の今後についてですか?」
「ああ、そうだ。おまえさんや弟の赤龍帝、そしてアーシア・アルジェントは人間側として参加しているが、どうしても確認しておかなきゃならねぇことがある。今のところ訳あって悪魔側に協力してるみたいだが、和平を結ぶ以上は何処に属するのかを正式に決めてもらう。おまえさん達の力はそれだけ無視出来ない存在になっちまってるからな。もし
アザゼルの側近ねぇ。堕天使の誰もが憧れる地位だよ。しかもシェムハザと同じ地位とは随分と思いきったな。
もし死んだレイナーレが知ったら、怨嗟と嫉妬に狂う余り俺を殺しに来るだろうな。アイツはアザゼルとシェムハザを神聖視していたし。
「こちらからは兵藤隆誠くんたちを私直属の部下と言う立場をご用意します。更にアーシア・アルジェントも教会に戻るのでしたら、天使の長である私より異端認定を取り消しすることを宣言します」
俺とイッセーとアーシアをミカエル直属の部下か。しかもアーシアを嘗ての聖女に戻そうとするとは。
アーシアに魔女の烙印を押した教会連中が、どんな顔をするか見てみたいよ。
「隆誠くんたちが今後も我々悪魔側に協力してくれるなら、君達や家族の安全は保障する。元七十二柱のグレモリー家当主からも生活の支援を約束するとの事だ。こちらの事情によって隆誠くんには地位は与えられないが、魔王である私が後ろ盾となろう。それとイッセーくんとアーシアは現在リアスの眷族候補となってるが、もしも我々魔王の眷族になりたいのであれば駒を用意する。当然セラフォルーや、他の魔王たちも了承済みだ」
「イッセーくんやアーシアちゃんなら私は大歓迎だよ☆」
兵藤家の安全や支援を約束するだけじゃなく、魔王サーゼクスが俺の後ろ盾で、イッセーとアーシアは魔王の眷族になれるか。
魔王と契約しようと躍起になってる魔法使いや、魔王の眷族になるのを憧れてる人間や悪魔が知ったら卒倒確実だな。
どの勢力も俺達に対してかなりの高待遇だ。そこまでして俺達を勧誘したいと言う証拠なんだろうが。
「どれも魅力的な立場を用意してくれますね。普通に考えて、人間である俺達にそこまでしたら何か裏があるんじゃないかって思いますよ?」
「そうするのは、おまえさん達がそれほど重要な存在という意味でもある。最高の待遇で持て成すのは当然だ。特に兵藤隆誠、おまえさんに関してはな」
だろうな。トップたち全員が揃って自分の勢力に来て欲しいって顔に書いてるよ。
さて、ここからは俺の一存じゃなく、念の為にイッセーとアーシアにも確認を取らないと。
「イッセー、アーシア、お前たちはどこの勢力に付きたい?」
「そういう話は兄貴に任せる。俺は兄貴を信じてるからな」
「わ、私もイッセーさんと同じです」
「………そうか」
二人は俺がやろうとしてる事に何の反対は無いようだ。それならば俺は思ったままの返答をさせてもらおう。