「そおらっ!」
「ぐっ!」
ブンッ!
ラディガンの手首を掴んでる俺は上空目掛けて思いっきり放り投げた。俺に投げられた事でラディガンはそのまま上空にある結界にぶつかると思ったが、急ブレーキを掛けるように止まって体勢を立て直す。
そうする事は既に予測済みなので、すぐに追撃しようと超スピードで接近する。
「っ! ちぃっ!」
俺の追撃を回避しようと思ったのか、ラディガンは舌打ちをしながら転移して消えた。
転移は本来遠い場所へ瞬時に移動したり、撤退する為に使う為の術。けれど接近された相手から距離を取ろうとする時にも使える。
俺を殺そうとするラディガンが転移を使ったのは、当然距離を取る為だ。その証拠に奴は俺の前方から約五十メートル先に現れてる。
ラディガンはすぐに右手を前に突き出し、左手で突き出したほうの右手を支えると――
ズオッ!
強力な魔力波が放たれた。
並みの上級悪魔なら一瞬で消し飛ばせる威力を持つ魔力波が凄い速さで向かってくる。
普通なら躱すのが懸命だが、俺はそうせずに動かない。と言うか、こんな物は躱すまでもない。
「はあああっ!!」
バチッ!
前にイッセーがレーティングゲームでライザーの極大な炎の玉を弾き飛ばしたように、オーラを纏った左手で思いっきり振った。
俺の左手が魔力波にぶつかると、それは突然進行が止まるも、すぐに別の方向へと飛んでいった。
「ば、バカなッ!」
俺が魔力波を弾き飛ばした事が信じられなかったのか、ラディガンは驚愕を露にしている。
そして魔力波は体育館に激突した瞬間、凄まじい爆発音と爆風が吹き荒れた。
俺は後ろから来る爆風を大して気にせずラディガンに向かって、してやったりとほくそ笑む。
「っ! ………ちぃっ……! まさか、弾き飛ばすとは……!」
☆
ギャスパーを取り戻そうと俺――兵藤一誠と部長はサーゼクス様の転移によって旧校舎へ駆けつけるも、女魔術師達の一人がギャスパーを楯代わりにしてることで動くに動けなかった。
自分達が有利だと思ってる女魔術師達は冷笑を浮かべながら、動けない俺と部長に魔力弾を放っている。けど俺がさせまいと今は部長の楯となって一人で魔力弾を受け続けている。
「ぐぅっ!」
「イッセー、もうあなたが受け続ける必要は……!」
「フフフ、無様ね。それにしても貴方、私たちと同じ人間なのにそこの悪魔なんかを守るなんて、随分と落ちぶれてるわね」
「俺は部長の眷族だ! 魔術師のテメエ等に言われる筋合いなんかねぇよ!」
当たった魔力弾は大して効かないが、女魔術師の油断を誘う為に俺は態と効いてる演技をしていた。ソレによって向こうは俺がダメージを受けてると思っている。
「ぐっ、くそっ……!」
「イッセー先輩!」
因みに人質となってるギャスパーは、ついさっき部長が感動的な台詞を言われて嬉し涙を流していたが、俺がダメージを受けてると勘違いしていた。
すると――
グゴゴゴゴゴゴッ!!
「うおっ!」
「な、なに!?」
「な、なんですかこの地震はぁ!?」
突然大きな地震が俺達に襲い掛かってきた。ついでに外から凄まじい魔力も感じる。
「何なのよこれは!?」
この状況は予想外だったのか、部長やギャスパーだけじゃなく、女魔術師達の体勢が崩れた。
「今だ!」
これをチャンスと見た俺は超スピードで接近し――
「だぁっ!」
ドンッ!
『きゃあっ!』
両手を使った気合砲で女魔術師たちを吹っ飛ばして壁に激突させた。
「ギャスパー! あんな奴等にいつまでも言われ続けるな! 俺の血を飲んで男を見せてみろッ!」
「は、はいっ!」
女魔術師達を気にせずに俺はギャスパーに血を飲ませようと、アスカロンで自分の掌を斬る。
そこから先は俺も予想外で、血を飲んだギャスパーが覚醒したように吸血鬼の能力が発動して、女魔術師達を翻弄させていた。
☆
魔力波を弾き飛ばされた事が完全に予想外だったのか、ラディガンが未だに放心したままとなっていた。その隙に俺――兵藤隆誠は再び超スピードで接近して攻撃する。
「せいっ!」
「ごっ! こ、このっ……!」
俺の拳が奴の頬に見事に当たる。攻撃された事にラディガンはキッと睨みながら、反撃しようと俺に素早い連続蹴りを繰り出そうとする。
「どうしたどうした!? こんなもん俺には止まってるようにしか見えないぞ!」
だが俺にとってこの程度の蹴りは遅く見えるから、身体をずらすだけで充分に躱せる。いかにラディガンが凄まじい魔力を持とうとも、格闘戦となれば話は別だ。
コイツはエリーと違って格闘の切れがない。恐らくコイツは魔力戦メインで戦うタイプなんだろう。
「躱してるだけでいい気になるな!」
今度は魔力が篭った蹴りを食らわそうとするラディガンだが、俺はすぐに躱して身体を縦回転しながらラディガンの頭に蹴りを当てる。
「うがああっ……!」
攻撃を受けて落下していくラディガンに俺はすぐに追撃しようとする。
地面に激突する直前に、ラディガンはすぐに両手両足の着地で事なきを得て、すぐに俺を迎撃しようと上を見る。
だが――
「何処見てる!?」
「っ!」
ドゴッ!
俺はすぐに背後を取っていたので、すぐに回し蹴りを食らわす。
「うおあああっ!」
回し蹴りを背中に直撃したラディガンは吹っ飛び、そのまま倒れて地面に激突する。
「その程度の格闘戦で挑むなんて、俺も随分と舐められたもんだ」
「ぐっ………お、おのれ……!」
俺の台詞にラディガンが歯噛みして悔しがるような声を出していた。奴としてはここまで梃子摺るだなんて思いもしなかったんだろう。後姿で奴の悔しい顔が見えなくても充分に想像できる。
「はぁっ……はぁっ…………く、くふふふふふ」
「?」
突然笑い声を出すラディガンに俺は訝って眉を顰める。
「フフフフフフフフ………ハハハハハハハ」
「何がおかしい? 気でも触れたか?」
「いやいや、そうではありません。驚いたんですよ。まさか私が人間相手にここまで梃子摺るとは思ってなくて。ですが、そのせいで……貴方は私が長年眠らせていた真の力を目覚めさせてしまいました」
そう言いながらラディガンは立ち上がりながら俺の方を見る。しかも顔付きがガラリと変わったように、残忍な笑みを浮かべていた。
真の力、ねぇ。まさかコイツ、俺を殺すと言っておきながら、今まで本気を出してなかったのか?
どうでもいいが、ラディガンの台詞がドラグ・ソボールにいるキャラクターでフリーズの側近――ザボンと何となく似ている気がするんだが。
「アンタの長年眠らせていた真の力を俺が目覚めさせただと?」
「ええ、その通りです」
頬に流れる血を手で拭いながら頷くラディガン。
………あそこまでハッキリと答えるって事は冗談じゃなさそうだな。
「じゃあ何故俺と戦う前に真の力を見せなかったんだ? まさかソレをやるには変身するとかじゃないだろうな?」
「よく分かりましたね。そうです。真の力を見せるには変身――つまり真の姿にならなければいけないんですよ」
大当たりかよ! ってことは何か? コイツもしかしてザボンみたく醜い姿に変身するってか!?
「何故そうしなかったのか、貴方が死ぬ前に教えてあげましょう。私は真の姿になると無意識に魔力を垂れ流してしまう為、それを受けた弱い悪魔や人間がすぐに死んでしまいます。ですから魔力を完全に抑える対策として、私はこうして人間形態となっているんですよ。尤も、他の連中がどうなろうと私は気にしないんですが、あの姿になるとエリーが嫌がるので制御する事にしました」
「……あっそう」
魔力を抑えるため云々と長々説明しておきながら、結局はエリー絡みかよ。聞いて損した。エリーの言葉で動くって、コイツはどこまで変態シスコンなんだよ。
「んで、真の姿になったら今まで抑えていた魔力が圧倒的に上がるとか?」
「上がるのはそれだけではありません。
「そうかい。じゃあ見せてみろよ」
「言われなくても、今お見せしますよ」
そう言ったラディガンは全身に力を入れるように手を強く握り締める。
「ハッ!!」
ゴウッ!!
ラディガンが声を発した途端、奴の全身が黒い魔力で覆われる。
すると、ラディガンの纏っているローブだけでなく、衣類全てが徐々に黒ずんで消えていく。
「ガアアアアアッ!」
そんな中、ラディガンが獣のように叫びながら身体も変化していた。背中から漆黒とも呼べる一対の悪魔の翼、後腰部には黒い尻尾、頭には長い二本の白い角、四肢には鋭い爪、更には両腕と下半身には黒い体毛がそれぞれ生えてきた。
見るからに理想的な悪魔その物の姿だ。これが奴の真の姿か。
「はぁっ……はぁっ……フフフフフフ、お待たせしました」
久しぶりの変身だったのか、ラディガンは少し息が上がるも元に戻る。
「何て奴だ……まさかここまでとは……!」
単に悪魔の姿に戻っただけかと思われるだろうが、今までとは断然違う。さっきまで感じていた奴の魔力が桁違いに上がっている!
「クククククク、今更後悔しても遅いですよ。この姿を見た以上、貴方には……死んで頂きます!!」
「ぐっ!」
ラディガンが一瞬で近づき、そのまま俺の腹部に膝蹴りをしてくる。
あまりの早さに俺は反応出来ずモロに喰らって吹っ飛ばされるも、ラディガンは一瞬で背後に回りこみ――
「さっきのお返しですっ!」
ドゴッ!
「がぁっ!」
俺の背中に回し蹴りをしてきた。だが俺は地面に激突せず、すぐに上空へと飛んでラディガンから距離を取った。
「っ~~……今のはマジで効いた……!」
人間形態だったラディガンの蹴りが全然威力が違う。しかもかなりキレのある攻撃だ。
アイツ、真の姿になると格闘戦も半端ないようだ。くそっ! さっきまで格闘戦は大したこと無いと思ってた自分に腹が立つ!
ラディガンは俺の表情を見て、余裕そうな笑みを浮かべていた。
「あの野郎……!」
少しばかりカチンと来た俺は全身にオーラを纏わせながら、ラディガン目掛けて急降下していく。
「フッ」
対してラディガンは俺の突進に慌てることなく、魔力を纏わせながらすぐに飛んで迎撃しようとする。
「「はぁぁ~~~~!!!」」
ゴウッ!
俺とラディガンの拳がぶつかると、その周囲から爆風のような衝撃が生まれる。
だが俺達は気にせず、拳だけでなく脚も使った攻撃をしていた。それにより新たな衝撃が発生し、周囲にいる魔術師達は被害を受けていた。
ガガガガガガガガッ!!
互いに負けじと攻防を続けて数十秒後、俺達は一旦離れて距離を取った。
「はぁっ……はぁっ……ぐっ!」
まさか、ラディガンがここまでの実力者だったとは……!
奴の攻撃一発はかなり重く、さっきまでの攻防の時に受けた箇所の痛みが酷い。
「兵藤隆誠。恐らく貴方は私相手なら問題なく勝てると踏んでいたようですが、とんだ誤算でしたね。私の真の力がここまでとは思いもしなかったでしょう?」
「………そうだな。アンタの実力はエリー以上の強さだと改めて認識したよ」
「ふふふ、そうですか。では死に土産に良いことを教えておいてあげましょう」
良いことだと? 何を言うつもりだ?
「貴方はこれまで私の妹と何度も戦ってるみたいですが、真の姿を見た事がありますか?」
「アイツの真の姿だと?」
エリーが人間から
「エリーの
「なっ!!」
エリーの真の姿がラディガン以上だと!?
「くくく、その顔を見ると知らないようですね」
愉快と言わんばかりに笑みを浮かべるラディガンだが、今の俺はそんな事を気にしていられなかった。
おいおい、エリーの奴め。本当の力を持っていながらも、実力の全てを見せていなかったな。
………いや、それは違うな。エリーの事だ。恐らく真の姿になって暴走したところを俺に見せたくなかったんだろう。
加えてアイツは俺に熱烈な恋愛感情を抱いてるから、暴走によって俺を殺してしまうのも避ける為でもあると予想出来る。
全く。エリーの本当の力に全然気付けなかったとは……どうやら俺は奴の事を未だに分かってなかったようだ。本当は分かりたくないけど。
「残念でしたね、兵藤隆誠。私に勝てない貴方が、真の力を発揮したエリーにかなうわけがないんですよーーーーっ!!」
「!!」
ラディガンの片手から放たれた強力な魔力波を、俺はすぐに上空へと躱す。
だが俺が躱したと同時にラディガンも動いて、またもや俺の背後を取って羽交い絞めする。
「ぐっ! き、貴様!」
「ふふふふふ、貴方を楽には死なせませんよ!」
ギュンッ!
俺を羽交い絞めしてるラディガンは身体を半回転させて、そのまま地面へ猛スピードで急降下していく。
何とか逃れようとする俺だったが、ラディガンの力は凄まじく離れる事が出来なかった。
「ふはははは! このまま死ぬがいい~~~!!」
「あああああ~~~~!!!」
ラディガンは羽交い絞めしてる両腕を放すが、俺は抵抗出来ないまま――
ドズンッ!!!!!
そのまま地面へと激突してしまった。