ハイスクールD×D ~復活のG~   作:さすらいの旅人

56 / 60
久々の更新です。

以前から言ったとおり、今回は番外編です。

あと今回はフライング投稿です。


番外編Ⅱ 前編

 駒王協定が結ばれて数日後。

 

 俺――兵藤隆誠が嘗て天界の長として君臨していた聖書の神である事が判明した現在、(イッセーとリアスを除く)オカ研の一同から複雑そうに接されながらも日常的な生活を送っていた。

 

 因みに今は部室でイッセーとチェスをやっている。リアスが生徒会室へ行ってる為、戻ってくるまではチェスで時間を潰しているからだ。

 

「はい、チェックメイト。俺の勝ち、っと」

 

「だぁ~! また負けたぁ~!」

 

 俺のクイーンでチェックメイトとなった瞬間、イッセーは頭を手で掻きながら悔しそうな声を上げる。

 

「前から言ってるだろう、イッセー。目先の駒を取るだけじゃなく、常に二手三手を考えながら相手を誘導させろって」

 

「やっても兄貴が嘲笑うように俺の駒を取るからどうしようもねぇじゃねぇか!」

 

 指摘をしても反論するように言い返してくるイッセー。

 

「流石は聖書の神……ではなくて、リューセー先輩ですね」

 

「……これでイッセー先輩の三連敗です」

 

 俺とイッセーの勝負を見守っているのは祐斗と小猫。特に祐斗は俺の打ち方を観察するようにずっと注視していた。

 

 ってか祐斗、いつまで俺を聖書の神って呼んでるんだよ。俺としては早く今までどおりの先輩として見て欲しいんだが。

 

「ゼノヴィア、今度は君がやってみるか?」

 

「い、いえいえ! 私なんかでは主の相手は務まりませんので!」

 

 さり気なくゼノヴィアを誘ってみるも、俺の正体を知って以降からずっとこんな感じだ。ゼノヴィアは悪魔になっても信仰心は今も健在だからな。

 

「だったら、アーシアはどうだ?」

 

「えっと……私はやったことありませんので」

 

 アーシアはゼノヴィアと違って俺をリューセーとして見るも、聖書の神(わたし)に対して失礼な態度を取らないようにしてる感じだった。

 

「リューセーくん、イッセーくん、お茶のお代わりはいかがですか?」

 

 新しいお茶を入れてくれる朱乃はイッセーに対して普通だが、俺の時は少し緊張した感じで淹れていた。

 

「ギャスパー、いつまでも段ボール箱に入ってないで出てきたらどうだ? お前も久しぶりにチェスでも――」

 

「ぼ、僕も遠慮しておきますぅぅ!」

 

 部屋の片隅にある置かれてる大き目の段ボール箱にはいってるギャスパーに声を掛けるも、すぐに断られてしまった。

 

 聖書の神(わたし)の正体がバレてからと言うものの、皆は未だに俺に対してぎこちない様子だ。こうなるのを分かっていたから敢えて正体を隠していたんだが……今更どうこう言っても遅いか。どの道、聖書の神(わたし)の正体がバレるのは時間の問題だったし。

 

 ま、時間が経てば今まで通り接してくれると思うから、それまでの間は我慢するしかない。兄として接してくれるイッセー、対等に話してくれるリアスの二人が何よりの救いだし。

 

「ただいま。いま帰ったわ」

 

 リアスが入室してきた事により部員が勢揃いしたので、恒例のオカ研会議が漸く始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「悪魔の活動報告書を提出、ねぇ。提出期限を失念してたなんて、お前らしくないミスだな」

 

「仕方ないじゃない。最近色々と事件が起きていたのだから」

 

「確かに」

 

「……他人事のように言ってるけれど、リューセーも事件の一人に含まれてるのよ」

 

 生徒会長のソーナに部の活動報告書を提出しに行ったリアスだったが、肝心な事を忘れていたようだ。

 

 ソーナに提出したのは表向きの活動報告書で、もう一つの悪魔としての活動報告書がメイン。特に後者の方はリアスにとっては死活問題。

 

 以前冥界について調べて知ったんだが、純血種のリアスは冥界にある上級悪魔が通う学校に行かなければならないようだ。向こうで取得しなければいけない悪魔学校の単位をリアスは駒王学園で取っている。その取得方法が悪魔の活動報告書による提出で、それを怠ってしまえば冥界に強制帰国させられてしまう。

 

「因みに活動報告書の内容は?」

 

「人間界の日本における魔物、妖怪の類を研究する事よ」

 

 あ、なるほど。だからリアスはオカルト研究部を立ち上げたって訳か。

 

「そう言う訳で、今から冥界に提出する活動報告書を作成するわ。今回はこの町に住む魔物と妖怪の近況を知りたいから、いつも通り、先ずは町外れの沼に棲む物知り河童に話を訊きに行きましょうか」

 

 河童? ……ああ、そう言えばいたな。変なラッパーの河童が。

 

 俺が河童のことを思い出してると、祐斗が挙手してリアスに告げた。

 

「部長、あの河童は故郷に戻りましたよ。実家のキュウリ栽培を継ぐと言ってました」

 

「……そう、実家に戻ったのね。確かにここでラッパーを目指すより堅実だわ」

 

「な、なぁ、そのラッパーな河童って何なんだ? 俺、初めて聞くんだけど」

 

 うんうんと頷いてるリアスに、イッセーが祐斗に尋ねようとする。

 

「キュウリ農家を継ぐのが嫌で家を飛び出した河童が、この町に住み着いていたんだよ。ラップを嗜んでいたんだ。『尻子玉ラプソディー』が有名だよ」

 

 その曲は確か俺が河童を偶然見つけた時に――

 

「……皿が乾くような都会の光、伝えきれない俺の怒り、お前の尻子玉抜いてみたり」

 

 そうそう、小猫が言ってる内容のラップを……っておい。小猫が急に歌いだしてるし。

 

「小猫ちゃんは彼のファンだったんだ」

 

「「………………………」」

 

 祐斗の台詞に、イッセーと俺は小猫がラップ好きだった事に驚いた。意外過ぎて言葉が出ない。

 

「河童が無理なら、四丁目の古ぼけたお屋敷に住み着いていた噂好きのデュラハンね」

 

 デュラハン? ……ああ、いましたね。頚椎ヘルニアになってると言う摩訶不思議なデュラハンが。

 

「残念ですがあのデュラハンは先日、重度の頚椎ヘルニアになって、専門の病院に入院してますわ」

 

「そう、デュラハンも大変ね。首は大事にしなければいけないわ」

 

 朱乃の報告に息をつくリアス。

 

 不思議だな~。首無しの筈なのに頚椎ヘルニアになるデュラハンって普通は考えられないんだが。

 

(なぁ兄貴。神様として訊きたいんだが、デュラハンって首無しの筈なのに何で頚椎ヘルニアになるんだ?)

 

(いくら元神の俺でも知らん。ソッチ関連は専門外だ)

 

 目で語るように見てくるイッセーに俺は首を横に振る。俺たち兄弟は言葉に出さなくても目だけで通じる事が出来るからな。

 

「ねぇリューセー、貴方に知り合いの妖怪や魔物とかいないかしら?」

 

「何故俺に訊く?」

 

「貴方がこの前、人間に転生してイッセーを連れて修行の旅をしてたと言ってたから、もしかしたら知り合いがいるんじゃないかと思ったのよ」

 

「成程。まぁ確かにいるにはいるが……生憎、この町にいる妖怪達の事は知ってても交流は無いよ」

 

 交流があったのは、去年の修学旅行で京都へ行った時に出会った妖怪達ぐらいだ。

 

 そう言えば向こうで会った九尾の()(さか)さんと()(のう)ちゃんは元気にしてるかなぁ。ま、会ったら会ったで面倒な事になるのは確実だが。

 

「けど、ソッチ関連に精通してる人間の知り合いならいるぞ。多分リアスも知ってると思う」

 

「……まさかこの学園にいる彼女の事かしら?」

 

「ああ。俺のクラスメートの阿倍(あべ)(きよ)()だ」

 

 

 

 

 

 

「まさか貴方が彼女と接点があったなんて。まぁ、同じ教室にいるのだから知ってるのは当然ね」

 

「普段はあまり喋る事はないが、アイツとは三年連続同じクラスだから、それなりの付き合いはあるぞ」

 

 テニスコートから聞こえてくるボールをラケットで返す音がする中、俺はリアスと一緒にテニス場へ向かっていた。

 

 フェンスの向こうではテニスウェアを着て練習している女子達がいた。もしイッセーがいたら確実に興奮してガン見してるだろうな。

 

「あっ! 兵藤先輩がリアス先輩と一緒に歩いてる!」

 

「羨ましい~!」

 

「野獣の兵藤弟より断然良いけど、それでもリアス様の隣で歩くなんて妬ましいわ!」

 

 向こうの女子達がコッチを見て騒がしくなってるが、取り敢えず無視するとしよう。

 

「それでリアス、阿倍はお前の事を悪魔だと知ってるのか?」

 

「一応ね。この学校は悪魔と親交のある特殊な環境の人間も受け入れているの。その際、この学校を根城にしている悪魔について一通り話しているのよ。尤も、極普通の一般人と偽って入学してる生徒もいたけれど」

 

「……そう言えばいましたねぇ」

 

 リアスの最後の台詞に耳が痛い俺は明後日の方向を見ながら呟いた。

 

 しょうがないだろ。俺とイッセーが家の近くで通える学園が此処しかなかったんだからさ。

 

「でもまぁ、そんな生徒の一人に完全ベタ惚れしたどこかの悪魔さんも、咎めないどころか逆にアッサリと受け入れてるじゃないか」

 

「……そんな悪魔がいたわね」

 

 俺のささやかな反撃の台詞にリアスは言い返さずにそっぽを向いて呟いた。多分頬を赤らめてると思う。

 

 因みに俺とリアスは現在、テニス場の近くにあるベンチに腰を下ろして話している。

 

「ってかリアス、いつまでも遠回しなアプローチばかりしてないで、そろそろイッセーに本気の告白をしたらどうなんだ?」

 

「ほ、ほっといて頂戴! 色々と準備って言うものがあるのよ!」

 

「……あ、そう」

 

 その準備に手間取ってアーシアだけじゃなく、朱乃に先を越されたら元も子もないけどな。何てツッコミたいが、止めておくとしよう。

 

 恋愛はあくまで当人達がやるものだから、俺がああだこうだと口出しする事じゃないし。

 

「ね、ねぇ、リアス先輩の顔が赤いんだけど……」

 

「…まさかあの二人、じ、実は付き合ってたりとか……?」

 

 コラコラ、こっちの一部会話を盗み聞いてるテニス部の女子達。俺とリアスは付き合ってないぞ。

 

 リアスは俺じゃなくて弟のイッセーに絶賛ベタ惚れなんだぞ。と言った瞬間、女子達からは信じられないような絶叫と同時に慟哭するのは確実だろうな。

 

 すると、コートからパカラパカラと馬の蹄の音が耳に入り込んでくる。

 

「オッホッホッホッホ! ごきげんよう、リアスさんに兵藤君! あなた達がここへ来るなんて珍しいわね! 歓迎するわよ!」

 

 巨躯の馬に騎乗した女性が高笑いしながら現れたのは、栗毛を上品そうなロールにしてる三年のテニス部部長――阿倍清芽だ。

 

 けれど俺としては阿倍よりも、その後方にいるデュラハンと騎乗してる馬が一番気になるんだが。

 

 

 ドゥヒヒヒヒヒィィィン!

 

 

 おおう、馬のけたたましい(いなな)きだ。よく見ると黒い肌の馬で、目がギラギラとしていて鋭い眼光を放ってるし、鼻息も荒い。まるで世紀末覇者が乗りそうな馬だぞ。

 

 阿倍は馬から降りると、「どーどー」と馬を宥める。同時にデュラハンも降りてきた。

 

「ウフフ、良い馬でしょ? 先日、この町に住むデュラハンのスミス氏のお首が入院したので、その間預かる事になりましたの」

 

 首が入院? そのデュラハンはもしかして、さっき部室で朱乃が言ってた重度の頚椎ヘルニアになったデュラハンの事か?

 

「こちらはスミス氏の胴体君ですわ」

 

 首のないデュラハンが頭を下げるように挨拶をしてくる。見てるだけでツッコミ所が満載なデュラハンだな。

 

 と言うか、腕にスイカを抱えてるのは何故? 何か抱えてないと落ち着かないのか?

 

「あら、魔物を学校に連れ込むのは校則違反よ」

 

 と、リアスが阿倍に言う。いやいや、校則違反以前の問題だと思うんだが……。

 

「お首が入院中、胴体君は単独行動出来ないでしょう? だから、私のところで馬と共に預かっているの。けれど、タダ飯はいけないと思いましたもので、お仕事を与えたの」

 

 阿倍が言う仕事とは、テニス部のマスコットキャラクターとして働かせてるようだ。しかも名前は『ノーヘッド本田』だと。

 

「あのさぁ阿倍、事情は分かったが魔物をマスコットにするのはどうかと……」

 

 俺がツッコムも、リアスは納得したように頷いている。

 

「マスコットキャラなら仕方ないわ」

 

「ちょっと待てリアス!? それで良いのか!? 首がないんだぞ!?」

 

「首は問題じゃないわ」

 

 いやいや、如何考えても問題だろ! 首無しのデュラハンをマスコットキャラにしてる時点で大問題だっての!

 

「会長も同じ事を仰って、応じてくださいましたわ」

 

 おいソーナ! お前も何考えてんだよ!? デュラハンを学校に置いといたら生徒が騒ぎ出して――

 

「キャー! 本田くーん! 西洋的な甲冑が今日も光ってるぅぅ!」

 

「首がないなんて斬新なマスコットだよね! かわいいー!」

 

 ……フェンス向こうのテニス女子部員が騒いではいるが、恐怖的な騒ぎじゃないようだ。ってか凄い人気あるんだな、このデュラハン。女子達の声に応じるように手をあげてるし。

 

 何と言うか……悪魔のリアスやソーナ達だけじゃなく、今時の女子高生の思考が全く分からん。何かツッコんでる俺がバカみたいに見えるんだが。

 

「えっと……デュラハン、じゃなくて本田。マスコットの扱いに不満はないのか? お前は本来、人間の恐怖を糧にする筈の存在なんだが……」

 

 俺の質問に本田はパネルらしきものを取り出し、そこへマジックペンを走らせる。

 

『拙者は女の子からの黄色い声援が一番の糧となってるので問題なし! 寧ろコッチが一番良い!』

 

「………あ、そう」

 

 書かれたパネルを読んだ後の俺は、もう言い返す気力が無くなってしまった。

 

 どうやら一部の魔物に対する認識を改める必要がありそうだ。聖書の神(わたし)もまだまだ勉強不足、なのだろうか?

 

 色々な意味で疲れてる俺を他所に、阿倍は改めてリアスに問う。

 

「それでリアスさん。兵藤君を連れて何のご用かしら?」

 

「テニス部部長の阿倍清芽さん、悪いのだけれど、魔物使いとしてインタビューしても良いかしら? 出来れば使役している魔物と妖怪についていくつか教えてくれると嬉しいわ。リュ……兵藤君とは部活仲間で、私が悪魔だと言う事も知ってるから安心して。貴女と同じクラスにいる彼なら円滑に話を進めると思って連れてきたの」

 

 リアスがそう頼み込むが――

 

「嫌ですわよ」

 

 阿倍は即行で断りを入れてくる。

 

「どうしてわたくしの事を悪魔である貴女に話さなければいけないのかしら? 特殊な環境で育ったわたくしをこの学校に入れてくれたのは感謝しているけれど、それとこれは別でしょ? リアスさんは色んな業界にパイプを持っていそうだし、わたくしに拘る必要も無いのではなくて? それに兵藤君が同じクラスにいるからって、わたくしはそう簡単に承諾しないので」

 

 恩はあっても義理はないってところか。だがリアスは至って冷静に交渉を続ける。

 

「私とパイプを持つ、という選択肢はダメなのかしら?」

 

 阿倍は口元に手をやりながら高笑いをする。

 

「オホホホホホ! 随分と自意識過剰ね! 貴女と関係を持ったら、後が怖そうなんだもの! 同様に悪魔の会長さんとも一定の距離を取って付き合いたいわ。悪魔との取引なんて、慎重にやらないと人間の兵藤君みたいに魂を抜かれた下僕になってしまうもの!」

 

「「………………」」

 

 阿倍の反応にリアスだけじゃなく俺も呆れ顔で嘆息する。

 

 まぁ確かに考えてみれば、これが悪魔関連に関わってない者の認識とも言えるだろう。

 

 悪魔以外の者にとってみれば、悪魔は魔の象徴だ。悪魔との契約は即ち、相応の代価を支払う事になる。

 

「あのなぁ、阿倍。言っておくが俺はリアスの下僕になんかなってないぞ」

 

「では何故悪魔のリアスさんと一緒にいるの?」

 

「今はちょっとした協力関係になってるんだ。どっちが上とか下とか全くない対等な関係だよ。それとお前は悪魔について少し誤認識してるようだから教えておくが、今時の悪魔がインタビュー程度の取引なんかで魂を抜いたりしないぞ」

 

「兵藤君の言うとおりよ。普通にお茶のお誘いやお食事でお礼をするわ。それでもダメかしら?」

 

 俺が悪魔についてのフォローをすると、リアスはそれに乗るように言ってくる。すると、阿倍は何かを思いついたのか、いやらしい笑みを浮かべていた。

 

「いいことを思いつきましたわ。タダでやっても面白くなくてよ。こう言うのはどうかしら? わたくしと使役してる魔物、それにリアスさんと兵藤君を含めたオカ研のメンバーでテニス勝負をするの。勝った方が言う事をタダで何でも聞くというのは?」

 

 いきなりテニス勝負か。しかも自分の得意なスポーツでやろうとするとは随分と意地の悪い。

 

「あら、それは面白そうね。私もテニスなら出来るわ。私たちが勝ったら、活動報告書作成の為、貴女にはインタビューに協力してもらう事でいいかしら? それで清芽さんが勝ったら何を望むの?」

 

 リアスはアッサリと承諾する。相変わらず勝負事が好きだな。

 

 阿倍の視線がふいに俺の方へと向き、何か思い出したかのように尋ねようとする。

 

「……そういえば兵藤君の弟って、確かいま業界で噂の『赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)』こと赤龍帝だったわよね?」

 

「そうだが? ってか、お前の耳にも入っていたのか」

 

「当然よ。因みに彼はリアスさんの眷族なの?」

 

「いいや。事情があって今はまだ人間のままだが?」

 

 俺の返答を聞いた阿倍は何かを考える仕草をしてると、閃いたように俺に言おうとする。

 

「決めましたわ。兵藤君、わたくしが勝ったら、兵藤君の弟を貸してくださる? レアなドラゴンなんて最高ですわ! 悪魔の眷族でないなら、彼を私の――」

 

「ダメよ」

 

 リアスが笑顔で即行で拒否する。その笑顔はニッコリしていながらも怖い雰囲気を醸し出していた。

 

 イッセーにベタ惚れであるリアスが、阿倍の条件を受け入れるなんて事は絶対しないのは予想済みだ。

 

「悪いけど、イッセーは私の大事な眷族候補なの。そういう願いならば、触れる事も許さないわ」

 

「あら? 自分の眷属でもないと言うのに、人間の彼を束縛するのは如何なものかと思うわよ?」

 

「とにかくダメなものはダメよ」

 

 もしここにイッセーがいたら、間違いなく自分のだとアピールするように引き寄せて抱き付くんだろうな。

 

 コイツは自分の眷族悪魔と眷族候補(イッセーとアーシア)(+俺)に対しては温厚だが、その手の話には厳しい。益してや、自分の愛しい男を盗られたくないから尚更だ。

 

 リアスの反応を見て、阿倍は諦めるように嘆息する。

 

「なら、このお話は無かった事に――」

 

「いいだろう。了解した」

 

 俺がすぐに了解の返事をした事にリアスが驚いた顔をする。

 

「俺達が勝ったら、阿倍には報告作成書を手伝って貰って、阿倍が勝てばイッセーを一時貸し出そう。それでいいんだな?」

 

「ちょっとリュ……じゃなくて兵藤君! イッセーがいないのに、何勝手な事を言ってるのよ!?」

 

 リアスが俺に異を唱えようとする。

 

「大丈夫だって。勝てば問題無いんだから。それともリアスはテニスだと阿倍に勝てないのか?」

 

「っ……。わかったわ、やればいいんでしょう」

 

 勝てないと言われてカチンとくるリアスだったが、渋々頷いて承認を得たのを見た阿倍が高笑いする。

 

「オホホホホホホ! 商談成立ですわね! 正直言って、テニス部の主将たるわたくしと対決するなんて無謀ですわ! 精々練習をなさい! わたくしの使役する可愛い魔物達はテニスも完璧にこなしますわよ!」

 

「上級悪魔のテニスをお見せするわ。貴女なんかに私のかわいいイッセーを絶対に渡すものですか!」

 

「それは楽しみですわ! ウフフ、そうね、兵藤君の弟くんを手に入れたら、貴女とは違う方法で可愛がって差し上げますわ」

 

 顔を近づけ、互いに笑うリアスと阿倍。顔は笑ってるが、両者共に凄い殺意を感じるよ。どっちも本気だ。弟よ、賭けの対象にさせてすまない。いずれ何か詫びるから。

 

「リューセー。もし負けたらどうなるか分かってるわよね?」

 

「勿論だ。言い出したのは俺だから、ちゃんと責任は取るよ」

 

 話を終えてテニス場から出る途中、怖い笑みで脅してくるリアスに俺は涼しい顔で答えた。

 

 そして部室に戻った俺達はオカ研一同に説明すると――

 

「おい待て兄貴! 勝手に俺を賭けの対象にしてんじゃねぇよ!」

 

「お前を所望する相手は、三年のテニス部部長の阿倍清芽だが?」

 

「……え? あの美少女先輩が俺を……。いや、まぁ、その、なんだ……。そういう理由なら仕方ないな」

 

 すぐにイッセーが抗議するも、阿倍の事を教えた途端にコロッと態度が変わった。

 

「「イッセー(さん)!」」

 

「いででででっ! ふ、二人とも痛いです!」

 

 美少女の阿倍に対して鼻の下を伸ばし始めたイッセーに、リアスとアーシアが同時にそれぞれイッセーの片耳を強く引っ張り始めた。

 

 全く。リアスとアーシアのダブル美少女に好かれてるってのに、当の本人が未だに全然気付いていないとは。以前『ハーレム王になりたい!』とか言ってたけど、それ以前に先ずは女心を理解して欲しいもんだ。




次回は皆さんもご存知だと思いますが、イッセーの幻想を壊すアレが登場します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。