決戦の当日。
「ウフフ。逃げずに来た事だけは褒めてさしあげてよ」
先にコートで待っていた阿倍が不敵な笑みで俺たちオカ研一同を迎え入れてくれていた。フェンスの向こうには様々な魔物達が睨んでいる。かなりの数だな。あの魔物達の中から俺達とテニス勝負をするのか。
あの中にはマスコットキャラのデュラハン胴体――本田がこちらに手を振ってくれていた。敵側だと言うのに、お気遣いありがとな。
「おい兄貴、あのスイカを持ったデュラハンは何なんだ?」
「あれはな――」
テニス部のマスコットキャラで女子達に人気がある事を教えると――
「何だそりゃ!? 首ないくせになんで女子にモテるんだよ!? 首が無い方がテニス部にウケるのか!? じゃあ俺も俺の首をカッティングしたら……」
「落ち着けイッセー。そんな事したら死ぬぞ」
イッセーは本田に嫉妬の炎をメラメラと燃やしていた。だからって女子にモテたいが為に断頭するのは止めてくれよ。
「兵藤君、彼が噂の赤龍帝でよろしくて?」
「ああ、そうだ」
「ど、どうも、初めまして。弟の兵藤一誠です」
挨拶をするイッセーを見た阿倍はいやらしい笑みを浮かべる。
「ウフフ。リアスさん、今の内に彼とお別れの時間を作ってもよくてよ?」
「そんな必要はないわ。私たちが勝つもの」
バチバチッ!
おお、阿倍とリアスが火花を散らしてるよ。両者共にやる気全開だ。
「……部長と阿倍先輩との間に何があったんだ?」
「まぁ、ちょっとな」
二人のやり取りにイッセーは少し引くも、俺は言葉を濁すだけで留まらせた。
「試合形式はシングル二戦、ダブルス一戦の三試合。二戦勝った方の勝ちですわ。わたくしとリアスさんは選手として確定。残る選手はお互いくじ引きで決めましょう」
くじは阿倍が既に用意していた。随分と用意がいい事で。えっと、くじの先端の色が青でシングル、赤がダブルスか。
「シングルね」
「シングルだ」
リアスとゼノヴィアがシングルか。
「あ、ダブルスだ」
まさか俺がダブルスの一人になるとはな。
さて、残る一人の相棒は――
「俺のパートナーはイッセーか。ま、取り敢えず兄弟で頑張ろうか」
「何でよりにもよって俺なんだよ。いくら兄貴でも、男同士のペアなんか面白くもねぇよ」
苦笑する俺と嫌そうな顔をするイッセー。俺としても誰でも良かったんだが、弟のイッセーがパートナーなら好都合だ。
そんな訳で一戦目はリアスの試合。相手は――。
「よろしくお願いしま~す♪」
両腕が翼となってる女性型の魔物――ハーピーだった。
「うおおおっ! あんな可愛いハーピーちゃんがいるのかよ!」
美少女ハーピーを見たイッセーが興奮するように凝視している。特に胸の辺りを。
ハーピーは主に女性が多い
俺が過去の出来事を思い出してる中、試合はいつの間にか始まっていた。ハーピーは器用に羽の手でラケットを持ち、上手くテニスボールを打っている。
「部長がんばって!」
イッセーが声の限り声援を送っていた。けどコイツの事だから、心の中ではハーピーも応援してるだろうな。時折、彼女にさり気なく熱い視線を送ってるし。浮気性な弟だな。リアスに知られたら怒られるぞ?
「隙だらけよ、ハーピーさん」
「いや~ん、この悪魔のお姉さん、すごくつよ~い」
第一試合の結果は言うまでもなくリアスの
「さて、私の番だね」
「頑張れよ、ゼノヴィア」
「は、はい! 頑張ります!」
ラケットをクルクルと回していたゼノヴィアだったが、俺に声をかけられた事により落としてしまった。励ましのつもりが、逆に緊張を与えてしまったな。
「試合に勝てたら、今度の休日には俺が君の剣術の特訓相手になる事を約束するよ」
「しゅ、主が私の特訓相手に!? ……絶対に勝ってきます!!」
「ゼノヴィア、君の心意気は大変結構だが、その呼び方は止めてくれ」
剣術の特訓相手になるだけで、まさかあそこまで興奮するとは。却って失敗したかも。
「リューセー先輩、ゼノヴィアにだけそんな羨ましいご褒美を与えるなんて……」
「機会があったら、祐斗にもいずれ修行をつけるよ」
近くにいる祐斗が拗ねたように言ってくるので、確約ではないが修行の約束を与えた。
ってか、俺の修行相手=ご褒美なのかよ。ま、俺の修行に飢えてるゼノヴィアや祐斗からすれば、そんな公式となるんだろうが。
「お相手お願いします」
そのゼノヴィアが対戦する相手は下半身が蛇の女性――ラミアだった。アレも女性が多い種族の魔物だ。
「おおおっ! ラミアちゃんも良いっ!」
またしても興奮するイッセー。お前は魔物が美少女なら何でもOKなんだな。
それはそうと、試合の方は――
「むっ! やる!」
予想外にもゼノヴィアが苦戦していた。
「そこ!」
打ち返すラミア。しかも意外に強い。それもその筈。下半身が蛇の為、余り動く事無く身体を伸ばすだけでコート内を占有してるからな。しかも蛇だけに粘り強く、攻撃を堪えてしのぎ、逆転を待つタイプだ。
「主よ、申し訳ありません! 私の力量不足でした!」
「分かったから、そんな絶望したように言わないでくれ。あとさっきも言ったけど、いい加減に呼び方を直せ」
俺に頭を下げて謝ってくるゼノヴィア。長期戦の末、ゼノヴィアが負けてしまったから。
どうやら最終戦は俺とイッセーのダブルス戦のようだ。
「リューセー。分かってると思うけど、負けたら承知しないわよ」
「はいはい、ちゃんと勝ってくるって」
念押しをしてくるリアスに答える俺は、ダブルスパートナーのイッセーを連れてコート内に入る。
「なぁ、何で部長はあんな真剣な顔で言ってきたんだ? いくら報告書作成つっても、この試合はそんなに大事な事なのか?」
「……強いて言うなら、これは女の戦いでもあるって事だ」
「はぁ?」
訳が分からないと言う顔をするイッセー。
リアスがあそこまで真剣になってるのは、大好きなイッセーを阿倍に盗られたくないからな。と言えば、イッセーはどんな反応をするのやら。
「あらあら、テニス経験のない貴方たちとは。わたくしの勝ちは決まったも同然ですわね。因みにわたくしも最後のダブルスに当たりましたわ。パートナーは――雪女ですわね。おいでなさい、わたくしの可愛い雪女ちゃん!」
「何ぃ! 雪女だとぉ!?」
阿倍が妖怪の群れに向かって叫んだ途端、食いついたイッセーが即行で阿倍と同じ方を見る。
ハーピー、ラミアと来て今度は雪女か。その雪女もさぞかしイッセー好みの美少女なんだろうな。
「ホキョォォォォォオオオオオオオオオオオッッ!」
「「…………………は?」」
俺とイッセーの眼前に現れたのは巨躯の白いゴリラで咆哮をあげていた。
………………え? アレが雪女なのか?
ドンドンドンドンドンドンッ!
俺とイッセーが相手の予想外な姿に呆然としてる中、目の前のゴリラは太い両腕で分厚い胸板を叩き、ドラミングをし出した。俺たち兄弟の反応を他所に阿倍がゴリラを紹介しようとする。
「紹介しますわ。雪女こと――イエティ(メス)のクリスティよ」
「クリスティィイィィィイイイイッ!?」
「おいおい、マジかよ……」
予想を通り越した名前と報告にイッセーはギャグ漫画みたいに目玉が飛び出るほどに驚いていた。俺も驚いているがイッセーほどじゃない。
今回ばかりは俺もイッセーと同じ気持ちだよ。
しかもアレの頭部にはプリティなリボンを付けているし。自分がメスである為のアピールなんだろうか。
「ふざけんなぁ! 雪女さまがこんな毛むくじゃらでドラミングなんてする訳ねぇだろぉぉっ! どっから見てもゴリラじゃねぇか! これ、ゴリラだよ!」
(確かに……)
血涙を流して訴えるイッセーに俺が内心頷いてると、阿倍は怒りを露にする。
「ふざけないで! クリスティは立派な雪女ですわよ! この娘のお母さんは立派な雪女でお山を守る為、登山家チームを何度も追い払ったのよ!」
「そりゃ逃げるわ! こんなの来たら誰だって逃げるわ! アンタも山で白くてでっかいゴリラに会ってみろ! 逃げる以外の選択肢があるってーのかよ!? もし俺だったら全力のドラゴン波で消し飛ばしてるわ!」
確かにイッセーだったら登山中に目の前のゴリラが雪女と知った瞬間、記憶を削除する為にドラゴン波で消そうとするだろう。
「ウホウホ」
ウホウホって……鳴き声からしても完璧にゴリラだな。それでも雪女なんだろうが。
「リューセー! イッセー! 雪女の冷凍ブレスは強烈よ! 喰らえば忽ち氷の像だわ!」
「ちょっと待って下さい部長!? これ、マジで雪女なんですか!?」
控えにいるリアスが助言をしてきた。リアスがコレを本当に雪女と認識してるって事は、どうやら本物のようだな。
「みたいだな、イッセー。雪女の攻撃には気をつけようか」
「兄貴までコレを雪女と認めんの!?」
「事実は小説よりも奇なりって言うだろ? お前もいい加減に受け入れろ」
「嫌だぁぁぁぁぁぁっ! こんな奇なりはいらないよぉぉぉっ! 夢でもいい! 俺はエッチな雪女が好きなんだぁぁぁぁ! ゴリラが冷凍ブレス吐くなんて怪獣だろ! 冷凍ゴリラ怪獣ゴリスティだよぉぉ! 帰れよお前! 山に帰れよぉぉぉっ! そして神様ぁぁぁ! 俺に本当の雪女を見せてくれぇぇぇ!」
知るかよ。ってか俺を見ながら言うなっての。いくら
「クリスティ。彼は雪女に興味津々の様子ですわよ? 美しさは罪ですわね」
「やめてくれ! 俺はゴリラになんぞ興味ないから!」
でかい声を出して否定するイッセーに、ゴリラこと雪女はイッセーをジッと見つめた後――
「ウホホ(笑)」
嘲笑するかのような笑みを浮かべて一瞥していた。
ブチンッ! ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
雪女の嘲笑にイッセーはブチ切れて、全身から怒りの赤い
「兄貴ぃいいぃぃぃっっ!! このクリスティ! いや、ゴリスティを何が何でもぶっ倒すぞぉぉおおおぉぉぉ!!」
「分かった。分かったから、さっさとその物騒な
イッセーの行動が予想外だったのか、阿倍と雪女が驚愕してるし。
「な、なんてオーラなの!? これが赤龍帝の力!? クリスティ、決して油断しないように!」
「ウホッ!」
阿倍と雪女はイッセーの力を感じ取って気を引き締めたようだ。ま、そうしてくれた方がコッチとしては面白くないし。
「イッセー、阿倍と雪女は本気で――」
「兄貴! 頼むからゴリスティを雪女と呼ばないでくれ!」
「……突っ込む所はソコかよ」
この
「イッセーさん、応援します! クリスティちゃんに負けないで!」
「頑張ってね、イッセーくん。カッコイイところを期待してますわ」
アーシアと朱乃の応援でイッセーは更にやる気を見せている。
「兄貴、絶対に勝つぞ!!」
「当然。勝負をするからには勝たないとな」
でないと俺はリアスからお仕置きされてしまうし。
すると、気合の入った俺とイッセーの視界にあり得ない物体が飛び込んでくる。
ブゥゥゥゥン!
空気を震わす鈍い音がした。その発生源は雪女が素振りをしてる音だ。
「おいなんだよ、そのどデカいラケットは!?」
「ソレは明らかにルール違反じゃないのか?」
雪女が持ってる巨大ラケットにイッセーと俺は突っ込むが、阿倍は平然と答える。
「特製ラケットですわ」
「どう見ても鈍器じゃねぇか! つーか武器だよ、あれ! 巨大なモンスターでも殴り倒せる勢いの大きさじゃないですか!」
イッセーが再度突っ込むも安部は何も聞いてない様に試合を始めようとした。良い根性してるよ、アイツ。
コイントスで勝った俺はサーブの権利を選び、阿倍はコートの権利を得た。
(テニスをやるなんて中学の体育以来だなぁ)
持ってるボールを何度かコートに弾ませながら中学時代を思い出す俺。
試合形式でやった時、俺は某テニス漫画の主人公が使ってたサーブを真似したな。
「確かこんな感じだった、な!」
ボールを天高く放り投げて一気に打ち出す。それは相手コートにバウンドした瞬間――
ギュンッ!
「なっ!?」
阿倍の顔面を狙うように弾むと、阿倍は打ち返さずにボールを躱した。それにより先ずはコチラがポイント先取。
阿倍や雪女だけじゃなく、控えにいるリアス達も驚くように静まりかえっている。
「よしっ、成功!」
「おいおい、ありゃツイストサーブじゃねぇか。いつの間にそんなもん出来たんだよ」
先制点が取れた事に俺が拳を握り締めてガッツポーズをしてると、イッセーは呆れ顔で言ってきた。
「中学の頃に読んでた週間のテニス漫画を参考にしたら出来るようになったんだ」
「ああ、アレか。確か『テニスのキング様』の越後リューイチってキャラが使ってた……」
イッセーもその漫画を読んでた記憶があったのか、現在月刊で連載中の漫画を思い出していた。
あの漫画の初期は普通のテニスをやっていたんだが、連載が進むにつれて段々非常識極まりないテニスになってるから読む気が失せたんだよな。
因みにあのサーブは中学の授業でやった時、同じクラスにいたテニス部員から猛烈なスカウトをされていた。当然断ったけどな。
「やってくれたわね、兵藤くん。このわたくしにツイストサーブを打つだなんて、いい度胸してるわ……!」
「ハハハ。テニス部部長ともあろうお方が俺程度のツイストサーブにビビるとは、まだまだだな」
「っ! ……上等ですわ!」
思わず越後リューイチの口癖を言ってみると、阿倍はカチンときたのか顔が引き攣っていた。あの様子を見る限り、完全に本気となったようだな。
もう一度ツイストサーブで点を取ろうとするが、ボールがバウンドした瞬間に腰を落とした阿倍は即座に打ち返す。ここからはラリーが始まろうとする。
暫くは阿倍とのラリーが続いたので、埒があかないと思った俺は咄嗟に雪女の方へ向かって打つ。
「クリスティ! そちらに行きましたわ! 蹴散らしなさい!」
「イッセー、構えろ! 来るぞ!」
阿倍と俺が叫ぶ。さっきまで突っ立っていたイッセーが構えると、雪女は眼光鋭く身構える。
どうでもいいんだがアレ、やっぱり雪女には見えないんだけど。
「ウホッ!」
ドゴンッ!
ボールを打ち返すラケットとは思えない爆音がコート中に鳴り響いた。
刹那、イッセーの真横を超スピードのボールが通り過ぎて――
ドッガァァァァァアアアアンッ!
凄まじい炸裂音が後方から聞こえてきた。
「「……………………」」
言葉を失った俺とイッセーは恐る恐る後ろへ振り向くと、そこには巨大なクレーターが生み出されていた。
「おおおおおーいッ! コートが破壊されてる上に、ボールが弾け飛んだじゃないか!? これじゃ打てねぇだろ!」
イッセーの言うとおり、さっき雪女が打った一撃でボールが弾け飛んでいた。あの雪女は加減して打つ事は出来ないのか?
一先ず新しいボールで試合を再開させると、雪女も流石に今度は普通に打ち返してきた。
「ジャングルに帰れ! このゴリラめ!」
本格的なダブルスのラリーが続く。イッセーは打ち返しながらも雪女を罵倒しているが。
「違うわ! クリスティの故郷は日本アルプスですわよ!」
「日本産でクリスティ!? 日本アルプスは外国とでも言うのかよ!?」
阿倍とイッセーの会話を無視してラリーを続ける。コチラは漸くテニスに慣れ始めたので、ここからは兄弟のコンビプレーを見せる為のアイコンタクトを送ると、気付いたイッセーはコクリと頷いた。
いざ兵藤兄弟のコンビプレーを見せようとしていたら、雪女が突然口を大きく開けて――
ブフゥゥゥゥゥッッ!!
「うわっ!」
「イッセー!?」
雪女の口から吹雪が吹き出てきた。成程、コレが例の冷凍ブレスか。ってか、試合中にそんなの使うのは、普通に考えて反則なんだが。
俺が常識的に考えてると、イッセーのラケットを持つ手が凍りづけとなっていた。
動きの悪くなったイッセーに、阿倍はその隙を突くように点数を取り続ける。
「オホホホホ! 兵藤くん、これはわたくし達の勝ちですわね!」
口元に手を当てて高笑いする阿倍。
「おいイッセー、もう向こうは勝った気でいるぞ?」
「舐めんじゃねぇぇええええぇぇぇぇッ!!」
ゴォォオオオオォォォォッ!!!
イッセーが全身からオーラを放出すると、イッセーの手を覆ってる氷があっと言う間に融けていく。
「ウホッ!?」
「そんな!? クリスティの冷凍ブレスは極地の氷河に匹敵する氷点下の筈なのに!」
これには雪女と阿倍も完全に予想外のようで再び驚愕していた。
「今の俺の怒りはマグマみたく煮え滾ってんだ!! そんな氷河程度の冷凍ブレスなんざ一瞬で融かしてやらぁぁぁッ!」
うん。確かにイッセーから放出してるオーラが熱いよ。イッセーのオーラと夏場によって、イッセーの周囲が灼熱地獄みたいに物凄く暑くて敵わん。
本当なら
「そんじゃイッセー、ここからは俺たち兄弟のコンビプレーで決めるぞ」
「おう!」
俺とイッセーは息を吹き返したように、次々と決めて阿倍と雪女を翻弄させた。
☆
「わたくし達の負けですわ。仕方ないですわね、約束通りインタビューにお答えします」
と、阿倍はつまらなそうに呟いた。
阿倍の言うとおり、俺たちオカ研の勝利。イッセーの怒りの
リアスも俺達が勝利したのが分かった途端、安堵の息を漏らしていた。俺がいるから勝てるとは分かってても、かなり緊張していたようだ。
「よくやったわ、イッセー。今日のあなたは凄くカッコよかったわよ」
「イッセーさん、カッコよかったです!」
「今日はイッセーくんに何かご褒美をあげないといけませんね」
「わぷっ! ちょ、部長、アーシア、朱乃さんってば……!」
イッセーは美少女三人からの抱擁にデレデレ状態だった。ま、今回のMVPはアイツだからな。
あの光景を若しも駒王学園の一般生徒達に見せたら、嫉妬と殺意による負のオーラが学園全体に充満するだろうな。
すると、デュラハンの本田が俺に近づいて、前と同じく文字が書かれたパネルを俺に見せる。
『おめでとう。君達が勝ってくれて拙者も嬉しい!』
「いや、お前は向こう側なのに何で嬉しいんだ?」
『雪女がイエティのメスで拙者も君の弟くんと同じく憤慨してたから!』
「……あ、そう」
コイツもイッセーと同じくアレを雪女と認めたくなかったんだな。本田はイッセーと気が合う友人になれそうだよ。
俺と本田のやり取りを見ている阿倍はコチラへ近づいて来た。
「流石はあなたの弟くん――赤龍帝ですわね。まさかあんな方法でクリスティの冷凍ブレスを封じるなんて予想もしなかったわ」
「アイツは兄の俺でも予想外な行動を取るからな。ま、今回は雪女がいれば余裕で勝てると高を括ってたお前の慢心が敗因でもあったけど」
「……そうね。否定しないわ」
さっきまで高飛車だった様子とは打って変わるように、素直に事実を受け入れる阿倍。
「ウホ……」
「っ!!!」
近くにいた雪女がイッセーに熱い視線を送っていた。それに気付いたイッセーはビクッと身体を震わせながら雪女を見る。
「どうしたんだ、この雪女は?」
「クリスティったら、先程の試合で熱いオーラを放っていた兵藤君の弟にときめいてしまったのよ」
「あれま」
どうやらイッセーは雪女の冷凍ブレスだけじゃなく、雪女の冷たい心まで融かしてしまったようだ。罪な男だな。
「ちょ、ちょっと待て! 俺はゴリラに興味ねぇっての! ってかコッチ来んな!」
話を聞いていたイッセーはリアス達から離れて、雪女から距離を取ろうとする。
「ウホホ!」
「げっ!」
雪女が瞳をハートにさせて近づいた瞬間、イッセーは身の危険を感じたのか超スピードで逃げ出した。
だが、雪女も負けじとナックルウォーキングで驚異的なスピードを出してイッセーを追いかけていく。
「イヤだぁぁぁぁああああああああっ! 怪獣ゴリラに惚れられるなんてイヤだよぉぉぉぉぉっ!」
遠く離れているにも拘らず、イッセーの絶叫が聞こえた。
悪魔だけじゃなく、今度は雪女を惚れさせるとは……本当にイッセーは人外の種族から好かれるな。
雪女の行動を大して気にしないのか、阿倍は再度俺に話しかけようとする。
「それで兵藤君。インタビューするのでしたら、紅茶やお菓子を希望したいわ……だけど」
「だけど、何だ?」
「……出来れば、兵藤くんが作るお菓子が良いわ。久しぶりに食べたいと思って」
そう言えば去年、クラスメート達(主に女子)に手作りスイーツを披露した事があったな。その時に食べた女子達は残さず全部食べてくれて嬉しかったよ。
でも残り一個が欲しければジャンケンで決めろと聞いた瞬間、女子達は目の色を変えて真剣な顔でやってたな。当然、阿倍もその一人に入っていたのは言うまでもない。
「じゃあ去年作ったシュークリームとチョコチップマフィンでいいか?」
「ええ。楽しみにしてるわ」
「ちょっとリューセー、あなたがお菓子を作るなら私達にも用意して欲しいわ」
さっきまでイッセーが逃走した事に呆然としていたリアスだったが、こっちの会話を聞いていたのかそう言って来る。
やれやれ。女はお菓子の話題となると耳聡いねぇ。まぁ良いだろう。もし阿倍だけにお菓子を作ったら、リアス達に何か言われるのは分かってた事だしな。
さてと、試合も終わったことだし、これからお菓子の材料でも買いに行くか。あと料理が得意な祐斗を助手として連れて行こう。
次回はもう一つの番外編を更新します。