どうも、兵藤一誠です。
先生にミニ部長とミニアーシアを元に戻す為の材料集めをしようと、朱乃さんと一緒に同行する事になりました。
堕天使特性の超長距離移動式魔法陣にて、材料集めを開始したんだが――
「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
初っ端から咆哮をあげてる巨大な怪物と戦う事になった。
その怪物はミノタウロスって言う牛の頭をした人型の魔物。背丈は4、5メートル位で、ぶっとい両腕と分厚い胸板。更には頭部が草食系の牛とは思えないほどの牙がある。
もし俺が初見だったら間違いなく驚いて逃げてるだろう。けれどミノタウロスとは兄貴と旅をしてた時に遭遇して戦った事がある。
ぶぅぅぅぅんっ!
ミノタウロスが持ってる大きいバトルアックスを振り回してる事によって空気を震わす鈍い音を出す。あんなのに斬られたら一発で上半身と下半身がオサラバだ。
因みに最初の材料はミノタウロスの肝らしい。肝と聞いて思わず俺は嫌な顔をしたが、二人を戻す為なら仕方ないと意を決した。
向こうが俺を威嚇してる最中――
「隙だらけなんだよ!!」
バキィッ!!
超スピードで接近+右腕に
あ、やべ。この前のヴァーリでの戦いで得た経験なのか、兄貴の治療によるものかは分からないが、力が上がってたんだった。初めてミノタウロスと戦ったのは中学の頃でかなり梃子摺っていたんだけど、それが今や一撃でアレか。今更だけど、俺もちゃんと成長してるんだなぁって実感したよ。いつも兄貴との実戦修行で負け続けてるから、『本当に強くなったのか?』って疑問に思ってたし。
因みに剣と盾は使う気なんかなかったから、先生に返してる。兄貴との修行で使うならまだしも、ミニ部長とミニアーシアを戻す為に必要な材料採取だから、そこまで時間を掛けるつもりはない。
「へぇ、こりゃあ驚いたな。まさかミノタウロスを一撃とはなぁ」
後方から感心するように言う堕天使総督さまは鍋の準備をしている。
「ってか先生、何やってんですか?」
「見て分からないか? 鍋の準備をしてるんだ」
「いや、それは分かりますよ。何でそんな事するのかを訊いてるんです」
鍋の出汁をチェックする先生に再度尋ねる。
「肝をゲットするついでに、残りの部分を食おうと思ってな」
「食うって…………あのミノタウロスって食えるんですか?」
ミノタウロスは顔面や角を除く全身が硬いから、とても食えるとは思えないんだが。
「この地方のミノタウロスは絶品だぜ。食えば病み付きになる。俺は天然の松阪牛と思ってるぐらいだ」
「マジっすか!?」
天然の松阪牛なんて超高級肉じゃねぇか! 初めて知ったよ!
俺が驚いてると、先生はミニ部長に皿を用意していた。すると、具材らしき物を持ってる朱乃さんが戻ってくる。
「先生、具材を切ってきましたけれど」
「おお、朱乃、ご苦労。さて、さっさと肝を取り出して、残った肉で鍋パーティーと洒落込もうか」
先生がいつの間にか用意した大きな瓶と出刃包丁を持って、現在虫の息となって倒れてるミノタウロスへと近づいていく。
すると、遥か向こうから地響きが聞こえてきた。
視線を向ければ――ミノタウロスの群れらしきものが一挙に押し寄せてきた。
うわぁ、天然の松阪牛が取り放題だ。多分だけど俺が戦ってたミノタウロスの戦いに気付いて助けに来たんだろうな。
あんだけの群れとなれば、いくら俺でも
「あらあら、群れで来ましたわよ」
焦った様子を見せない困り顔の朱乃さんに、群れのミノタウロスを見て面倒くさそうな表情を浮かべている先生。
「チッ、一匹だけで充分なんだよ」
先生が指を群れへ向けると――
ピッ!
兄貴と似たような光線が指から出て――
ドオオオオオオオオオオオオオオオォォォオォォオオオオオオンッッ!
超巨大な爆発を起こして、ミノタウロスの群れと周囲の風景が消し飛んでしまった。
「うわぁ、兄貴と似た事してるし……」
余りの攻撃力に俺はある事を思い出した。
以前に旅をしながら俺の修行と称した魔物討伐中に、同族の危機を察知した仲間の大群が押し寄せて襲われた事がある。けれど兄貴が『今はお前等に用はない』と言った直後、指から放った光線による大爆発であっと言う間に終わらせた。ついさっきやったアザゼル先生みたいに。
「さて、邪魔者がいなくなったな。仕事を再開、っと」
何事も無かったかのように先生は、せっせとミノタウロスの解体を始めようとする。
「先生、ここのミノタウロスって天然の松阪牛なのに絶滅させていいんですか?」
「大丈夫だ。あの群れ以外にも、まだたくさんいるからな」
まだたくさんいるって……。天然の松阪牛なのに、希少価値があるのか無いのか分かんなくなってきたんだけど……。
その後、解体した肉を鍋で煮て食べると病み付きになるほどにマジで美味かった。先生の言うとおりだったよ。
あの肉で鍋以外の料理でも食ってみたいと思った俺は、偶然襲い掛かってきたもう一匹のミノタウロスを倒し、また先生に捌いてもらった。兄貴への贈り物として。
☆
次の材料をゲットする為に、俺は違う国に来ていた。
二つ目の材料はユニコーンの角。それを聞いた俺は無理なんじゃないかと思った。
ユニコーンって生き物は清楚で穢れの無い少女、または処女じゃなければ現れないと聞いた事がある。
最初は俺じゃ無理だと先生に言ったが――
「だから朱乃を連れてきたんだよ」
と、先生の台詞で納得した。確かにユニコーンの角を得るには朱乃さんが適任だと。
だけど悪魔の女性でも大丈夫なのかと訊くも、先生は悪魔の魔力を抑える為の薄い布の服を用意したようだ。
その服を着てる朱乃さんは凄くエロかった! 魅惑のボディが俺の色々なところを刺激してる! おっぱいは大きい! スリットから覗かせる白い太もも! そして脚線美も素晴らしい!
俺が朱乃さんの姿を脳内保存する為に凝視してる中、ミニ部長がぷんぷんと怒りながら俺のほっぺを引っ張ったけど。
そしてミニ部長に怒られてる最中、朱乃さんは近づいてくるユニコーンを手刀で気絶させた。首元に一撃貰ったユニコーンは一瞬虚をつかれたような顔をしていたけど。ありゃ完全に油断してたようだ。
もし俺がユニコーンだったら……多分だらしない顔をしながら朱乃さんに近づくだろうな。あのユニコーンと同じく手刀で気絶されるのも含めて。
ともあれ、物陰から事の成り行きを見守っていた俺達は角を採取する事に成功した。因みに角はまた生えるように、角の生え際に特製の薬を塗ると先生が言ってたので大丈夫だ。
にしても、牛の次が馬とはな。ここまできたら、次の獲物はもしかしたら豚のオークだったりして。
そう考えていた俺だったが――とんだ思い違いをしていた。
☆
最後の材料は……凄く面倒だった!
ゴバァアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!
俺の眼前で全長15メートル以上の怪獣が咆哮をあげる。両翼を大きく開いた赤い鱗のドラゴンが!
「先生、確かコレって俺の記憶が正しければ
「そうだ。こいつの背中にだけ生える特殊な鱗が最後の材料だぜ」
「……マジかよ」
冷静に説明をくれる先生に俺は凄く嫌そうな顔をする。
最後がよりにもよってドラゴンかよ。精神世界で戦ったドライグほどじゃないけど、他のドラゴンの成龍もデカいな。アーシアが使い魔にしてるクソ生意気なミニドラゴンがすっげぇ可愛く見えるよ。
「………まさかと思いますが先生、また俺一人でやれと?」
念の為に確認する俺に先生はハッキリと言う。
「大丈夫だ。こいつはおまえに宿ってるドラゴンなんかより遥かに弱い。修行だと思って戦ってみろ」
「いや、もう似たような経験をしてますから」
精神世界で巨龍となったドライグと戦ったり、冥界で元龍王タンニーンのおっさんとガチンコバトルやった事あるし。
『言っておくが相棒、あんな
はいはい分かってるよ、ドライグ。
どうせお前の事だから、もし万が一アイツに負けたら精神世界で俺を鍛え直そうって考えてんだろ?
『よく分かってるじゃないか。相棒がアレに負けたら
ったく。普段は俺が話しかけなきゃ我関せずとしてるくせに、こう言う時にはでしゃばるんだな。
ゴオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「あ」
すると、ドラゴンが大きな口からだい質量の火炎を吐き出してきた。
虚を突かれた俺はモロに喰らってしまうも――
「なんだよ、このケルベロスみたいな温い炎は?」
咄嗟に全身を
ギャオオオオオオオオオオオオッッッッ!!
俺がノーダメージであった事に、ドラゴンはプライドが傷付けられたのか激昂して雄叫びをあげる。
「ったく五月蝿ぇな。あのワン公みたく――」
俺はそう言いながら超スピードでドラゴンの頭上まで飛んで――
「ギャアギャア喚いてんじゃねぇよ!」
ドスッ!!!
「~~~~~~~~~~!!!!」
刺されたドラゴンは激痛による悲鳴をあげる。けれど数秒後には悲鳴が収まり、そのまま息絶えるように倒れてしまった。
「あれ? 野良ドラゴンってこんなに弱かったか?」
余りにも呆気なさ過ぎる展開に、俺はドラゴンの頭に刺さってるアスカロンを抜きながら戸惑っていた。
『相棒、その聖剣が
「あ……そういやそうだった」
ドライグに言われるまですっかり忘れてた。このアスカロンが対ドラゴン用の聖剣だった事を。
けど、それを抜きにしても一撃で終わるって、このドラゴン弱すぎじゃねぇか?
『並みの聖剣使いなら多少は梃子摺ってるだろうな。相棒が聖剣に纏わせた
それってつまり、これを装備してる俺はもしかしたらタンニーンのおっさんも殺す事が出来るのか?
『死にはしないが、それでも大ダメージは確実だ。尤も、あのタンニーンが野良ドラゴンと違って易々と相棒の攻撃を受けるとは思えんがな』
ですよね~。俺もイメージしてみたけど、タンニーンのおっさんが牽制する為に強力なブレスを放ってくるのが容易に想像出来るよ。
敗北する未来を考えてると、ミニ部長と朱乃さんがコッチに近づいて来た。
「凄いですわイッセーくん、あのドラゴンを一撃で倒すなんて」
「いっちぇー、かっこよかったー」
「え? そ、そうですか?」
二人に褒められてると、アザゼル先生は複雑そうな顔をしている。
「おいおい、アスカロンなんか使ったら修行になんねぇだろうが」
「あ、すいません。コレが龍殺しだったのをすっかり忘れてて」
「………まぁ良いか」
本来は材料集めが目的だった事に先生は頭を切り替えて、倒れてるドラゴンの鱗を採取しようとする。
「ちっ。本当だったらマオウガーでぶっ倒す予定だったんだが……」
先生が採取中に妙な事を呟いていたが、俺達は気にする事無く終わるのを見守っていた。
☆
眠っていたミニアーシアが目覚めて再度遊び相手をしてると、材料集めを終えたイッセー達が家に戻ってきた。
すぐに薬を作り始めたアザゼルがあっと言う間に完成し、ソレをミニリアスとミニアーシアに飲ませて解除に成功する。戻った事に俺は少し名残惜しかったが。
元に戻った二人に術を使った理由を尋ねると、どうやらイッセーを子供の姿にさせようと術を使ったらしい。その結果、術のリバウンドによって失敗した為に自分達が幼児化したんだと。これには俺とアザゼルが少しばかり呆れたが。
けれど残念な事に、二人は小さくなっていた間の記憶があるようだ。それにより――
「わ、私ってば、リューセーさんにまた大変失礼な事をしてしまいました! も、申し訳ありません!」
「イッセー、私達の為に魔物と戦ってたあなたは素敵だったわよ」
ずっと遊び相手になってたアーシアがずっと俺に謝り続け、リアスはイッセーが魔物と戦う勇姿を見ていたであろう内容を褒めていた。
「アーシア、俺は全然気にしてないから。俺としても小さいアーシアと一緒に遊ぶのは楽しかったし」
「お、俺は部長の眷族ですからこれ位……」
アーシアを宥める俺と照れてるイッセー。兄弟揃って違った行動をしていた。
夏休みが始まった直後に起きた幼児化事件は無事に解決し、明日から本格的な夏休みに入る俺達であったとさ。
その夜。
「なるほど、なるほど……。こういう理論になってるのか、ふむふむ……」
皆が寝静まってる中、俺は部屋で悪魔の術について学んでいた。その術は言うまでもなく『姿を変える術』についてだ。
理論は完全に熟知したから、リアスのように失敗はしない自信はある。ただ、やるにしても万が一のリスクも考えなければならない。
もし仮にアーシアにやろうとしたら、ミニアーシアを見たいと言う強い気持ちが出てリバウンドしてしまう恐れがある。だから失敗しない為にも一度は試さないとダメだ。
……………よし。明日はリアスと学校でソーナに会いにいく予定だから、その時には極秘で……フフフフフ。『魔女っ娘リーアたん』と『魔女っ娘ソーたん』……なんて作ったらあのシスコン二人はどうなるかな?
最後は隆誠が少々良からぬ事をやろうとしていますが、「ハイスクールD×D ~復活のG~」の連載は終了です。
今まで読んで頂き、誠にありがとうございました。