しかし蒸し暑い日が続くとやる気がガンガンそがれる......。
イッセーが堕天使である天野に殺されかけてから次の登校日、今日はお嬢から呼び出しがかかる日である。それまでは、いつも通りの日常を送るとしますか。
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とくに何もなく放課後を迎える。しいて言うなら、今日はお嬢が俺と距離を取ってたくらいか。たしかに、この間あんな感じで別れたし警戒すんのも不思議やないか。言うても向こうが一方的に警戒してるだけやねんけどな。
しかし、どこまで話したらええかなぁ......。黒歌のことはまだ話さん方がええか。いくらはぐれ悪魔やなくなったいうても、下の方までその旨が伝わってるとは限らんし......。ん?お嬢は下の方ではないんか?一応、魔王の妹で公爵家やもんな。その辺の悪魔事情はわからんし、伏せとくにこしたことはないか。
考えごとをしてると、お嬢から声をかけられる。
「ヤマト、ちょっと付き合ってくれるかしら?」
「お嬢、教室で公開告白やなんて...照れるやん......」
「ち、違うわよ!この間言ったでしょう!?何を言っているのよ!......それに告白は男性の方からして欲しいし......」
少しからかうと、お嬢は真っ赤になりながら否定してくる。......可愛えやん。それに告白は男性からして欲しいやなんて、なかなか乙女やねんな。
「冗談やんか。そない否定せんでも......」
拗ねたフリをしてみる。
「ご、ごめんなさい。別に貴方が嫌いとかそういう意味で言ったのではなくて、その......むしろ貴方のことは好ましく思っているというか、なんと言うか......」
「あ、そうなん?ほな話は早いな。行こか」
「え?...えぇ。なんだか貴方にはいつも振り回されている気がするわ......」
「あんまり気にしすぎるとハゲんで?」
「貴方のせいでしょ!もう、ついてきてちょうだい」
「あ〜い」
お嬢の後を大人しくついて行く。向かう先は旧校舎にあるオカルト研究部の部室やろ。
しばらく歩いてたら、部室に着いた。
「兵藤君は祐斗がつれて来てくれるから、少し待っていてちょうだい」
「了解」
この間も座ってたソファに座る。やっぱこのソファええよなぁ。どこで売ってんのやろ?でも、無駄遣いしたら黒歌に怒られるしな......。要相談やな。
遠慮なんか全くせんとくつろいでたら、朱乃がお茶をいれてくれた。
「ようこそ、大和さん。よかったら飲んでくださいな」
「あ、おおきに。朱乃のお茶は美味いからありがたいわ」
「あらあら、ありがとうございますわ」
うふふ、と片手を頬に当てながら色っぽく笑う朱乃。......ゴクリンコ
しかし、この子はなぜこんなにもエロいオーラが出ているのか......。私、気になります!
ふと、視線を別のソファに移すと、小柄な女子生徒が座って羊羹を食べていた。彼女は塔城小猫。オカルト研究部の部員であり、1年生である。あんまり話したことないから、どんな子かはよく知らん。
「...こんにちは。...あげませんよ?」
「お、おう...。取らんから、そない警戒して食わんでもええで?」
「......先輩はいい人です。モグモグ」
なんとも変わった子である。この子が黒歌の妹やとは思えんな......。
塔城が黙々と羊羹を食べている中、しばらく三人で雑談してると部室の扉がノックされる。
「部長、連れてきました」
外からキーボーの声がする。イッセーを連れてきたんやろう。入ってちょうだい、とお嬢が返事すると二人が入室してきた。
イッセーは入るなり、目を見開いて驚いてる。まぁ、床とか天井、壁一面に悪魔文字とか、魔法陣とかが描かれてたらビックリもするわな。
「こんにちは、兵藤君。急に呼び出してごめんなさいね?この間のことでお話があったの」
「こ、こんにちは」
イッセーもソファに座ると朱乃がイッセーの分もお茶をいれる。
「どうぞ、粗茶ですが」
「ひ、姫島先輩!?あ、ありがとうございます!」
「あらあら、うふふ。私、姫島朱乃と申します。以後、お見知りおきを」
「は、はい!兵藤一誠です!よろしくおねがいします!」
「あらあら、元気いっぱいですわね」
これまたうふふ、微笑む朱乃。だからエロいって。ほら、イッセーが前屈みになってるやん。......あれは、わかっててやってるよな。
するとお嬢が口を開く。
「これで全員揃ったわね。さて、ヤマトと...イッセーと呼んでもいいかしら?」
「は、はい、どうぞ」
「ありがとう。話を続けるわね?先日、ヤマトとイッセーが堕天使に襲われたことで今日は呼び出したの。あれはいったいどういうことだったの?」
「ちょっと待ってください!堕天使ってなんですか?」
「あら?ヤマト、説明してあげなかったの?私達のことも?」
「いや、今日お嬢がまとめて話してくれると思ったから何も説明はしてへんで?けっして面倒くさかったわけではない」
イッセーは、急に堕天使と言われついてこれていない。だって説明してくれると思ったんやもん。俺は悪くない!
お嬢はため息をつきながら、説明を始める。
「はぁ、わかったわ。じゃあ一から説明するからちゃんと聞いていてね?」
そう言うと、自分たちが悪魔であること、天野夕麻が堕天使であり、本当はレイナーレという名前であること、そして天使という存在もいることを説明するお嬢。くわえて、それぞれの勢力が三つ巴となって長い間争い続けていることをイッセーに説明した。
「ちょっと待ってください!じゃあなんでただの人間の俺が殺されかけないといけないんですか!?」
「それは、貴方に宿っている神器と呼ばれる物のせいよ」
「神器?な、なんですかそれ?」
「いい?神器っていうのは......」
神器のことも含め、一通り説明を受けなんとか理解したイッセーにお嬢が神器を発現させるように促す。
しかしイッセーは発現の仕方がわからないので、うんうん唸っているだけで何も起こらない。
「ど、どうやったらいいんですか?」
「そうね、手を上に翳してちょうだい」
言われるままに左腕を翳す。
「目を閉じて、貴方の中で一番強いと感じるモノを強く想像してみて」
「一番強い......ド、ドラグソ・ボールの空孫悟かな......」
「じゃあ、それを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるの」
イッセーはそう言われると、そのキャラの真似をしだす。
ちょっと待てや、アレをやんの?こんな状況で?先輩、後輩、同級生が揃ってるこの場でか?
「ドラゴン波!!」
ホンマにやりよった!勇者や!勇者がおる!
「ホ、ホンマにやりよった!あははははははははは!アホや!渾身のボケやんけ!」
「ヤマト、茶化さないでちょうだい」
そうは言うてもこれはオモロすぎるやろ。しばらく笑いが収まらんわ......。腹を抱えているとイッセーの腕に変化が起きた。
「な、急に腕が光り出したんですけど!?大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だから、そのままよ」
少しして光が収まると、イッセーの左腕には手の甲の部分に丸い宝玉がはめ込まれた赤い篭手が装着されていた。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
あれは...、
「それが貴方の神器よ。一度ちゃんと発現できれば、あとは貴方の意思で自由に発現できるわ」
叫ぶイッセーにお嬢はそう告げると、話を続ける。
「あなたはその神器を危険視されて、堕天使——天野夕麻に殺されかけたのよ。そこに...ヤマトが来て助けてもらったの」
そう言いながら、こっちを見てくるお嬢。あー、けっこう怪しんでるかんじやな。キーボー、塔城、朱乃もこっち見てるし......。
「で、ヤマト?いったい貴方は何者なの?私があの場から転移したときも、なんとも思ってなかったようだし......。こちらの世界に通じていると考えてもいいかしら?」
「それに、僕は一度も江夏先輩に模擬戦で勝ったことがないんですよね。最近は悪魔の力も使っていたのに」
おい、キーボー。それは反則ちゃうんか?俺は素の身体能力だけで勝負してたのに......。
う〜ん、まぁある程度しゃべってもええか!
「せやな、キーボーとの模擬戦は、ホンマに素の身体能力だけでやってたよ?まぁお嬢の言う通り裏のことも知ってるし、あと赤龍帝やし、天使以外の勢力には知り合いもいるよ」
さらっと、赤龍帝であることを言う。会話の流れの中に紛れ込ませることでその印象を薄くさせる手法や。
「...そうだったの。でも、祐斗に勝てるくらいなのだからかなり強いわよね?」
「ん〜、まぁそこそこ戦えるかな?」
おし、上手いこと流せたか?
「ちょ、ちょっと待ってください!部長、なんでスルーできるんですか!?」
「え?どうしたの祐斗?」
「今、江夏先輩がサラッと言いましたけど、赤龍帝って!」
「なんですって!?ヤマト!本当なの!?」
あら、失敗。
「うん、赤龍帝やで?」
............
「「「「えぇぇぇぇー!?」」」」
ええ反応や。これが見たかった。後悔も反省もしてへん!
というわけで、8話でした。
次回は勧誘されちゃいます!
イッセーは悪魔になるのかならないのか!
乞うご期待!!