ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――ついに来た』   作:鍵のすけ

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初めまして、今回この企画の2番打者を務めさせていただく凛キチと申します。

明確な締め切りが設定された執筆は今回が初めてでとても緊張しましたが、なんとか間に合うと思いきやめちゃくちゃ遅れました。企画者様ごめんなさい。

他の作家様方に比べればまだまだ拙い文章ですが、最後まで読んで頂けたら幸いです。

それでは、本編スタート♪

テーマソング
『太陽に焦がれて』 歌:晴晴゛


千歌ちゃんの日記帳

はじめまして!わたしの名前は高海 千歌(たかみ ちか)!この春から晴れて浦の星女学院の二年生!今は授業を終えて、家に帰るところ。実はね、今私たちの学校が大変な事になってるの…!!

 

廃 校 決 定

 

そう。今日の全校集会でこの浦の星女学院の廃校が決定したという知らせを受けた。もともと沼津の内浦に建つ小さな女子校で、生徒数は100人にも満たないくらいなんだ。周りは一面みかん畑で、天気のいい日は富士山だって見える。いいところだと思うんだけどなぁ〜

 

でも決まったものはしょうがない。大人しく残りの高校生活を楽しんで…いられないよ!

 

「じゃあ、貴方に何ができるの?」

 

ふふ…よくぞ聞いてくれました!私、高海千歌の考えた廃校撤回の切り札!名付けて…

 

「スクールアイドル大作戦です!…ってうぇぇぇぇ!?嘘、声でてた!?」

 

驚きながら振り向くと、マイクケースを肩にかけたお姉さんが立っていた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

話を聞いたところによると、お姉さんは普段はシンガーソングライターとして活動していて、なんと元スクールアイドルなんだって!なんでそんな人が内浦に来たのかいうと…

 

「浦の星最後の文化祭。そのゲストとして出てくれないかって、校長先生に言われてね」

 

耳を疑った。さ、さ……

 

「最後!?嘘でしょ、私まだ二年生だよ?」

 

「あ、ごめん。正確には「浦の星単独で行う最後の文化祭」かな。来年からは人数が足りなくて、その辺の男子校と合同でやるんだってさ」

 

「あぁ、そういうことか。ビックリしたぁー…」

 

「…ねぇ。スクールアイドル、始めるつもり?」

 

不意にお姉さんが聞いてきた。

 

「…はい!私がスクールアイドルとして有名になれば、廃校を撤回できるかも……なんて、調子よすぎだよね」

 

自分で言っててバカじゃないかと思えてきた。A-RISEに始まり、μ'sの影響で爆発的に流行しているスクールアイドル。今やほとんどの高校にアイドル部が存在し、しのぎを削りあっている。まさに「アイドル戦国時代」だ。数年前とは勝手が違いすぎる。

 

そんな状況で今さらアイドルを初めて、人気が出て…なんてことはありえない。穂乃果ちゃんにできたことが、私にもできる保証なんてどこにもない。

 

そもそもμ'sは、人を惹きつける不思議な「なにか」を持った人達が集まってできた奇跡のグループなんだ。なんの取り柄もない私みたいな人がそれを真似たところで、なにかを成し遂げられるとは到底思えない。やっぱり…

 

「『やっぱり辞めた方がいいよね』とか考えてる?」

 

「…っ!……はい」

 

私の考えなんてお見通しみたい。お姉さんも私がアイドルなんて無理だって思ってるよね、きっと。

 

「やりなよ。スクールアイドル」

 

お姉さんはハッキリと告げた。

 

「え、うぇぇ!?で、でも、私歌も踊りもヘタだし、μ'sみたいになりたいなーって軽い気持ちだし、そもそもそんな風になれないのわかってるし…その……廃校、決まっちゃってるし…私なんかが今さら頑張っても…無理だよ」

 

「だから、何もしないでだまって見てる。それで本当にいいの?」

 

「…よくない」

 

そう答えるのが精一杯だった。

 

「………あなたは、わた…μ'sや穂乃果ちゃんみたいになりたいって言ったよね。でも心のどこかで、絶対なれるわけないって思ってる」

 

「でもね、届かないから目指しちゃダメなんて決まりもないんだよ」

 

お姉さんは淡々と、しかし私の体の奥底に響くような口調で話つづける。

 

「どんなに無謀でも、とにかくやってみる。怖がって立ち止まっていても、何も変わらない。喜びも後悔も、希望も絶望も、後から経験すれはいいだけの話なんだから」

 

「まずは手を伸ばすこと!!悩むのはそれからでも十分だって」

 

 

手を伸ばせ、それから悩め、か…

 

「お姉さん…私、やってみるよ。私なんかがどこまでできるのかわかんないけど」

 

「…そっか」

 

お姉さんは優しく微笑んで、踵を返す。

 

「私、一カ月くらい内浦に住むことになってるんだ。打ち合わせを念入りにしたいらしくてね。一応先輩だからさ、何かあれば力を貸すよ。…頑張ってね」

 

「はい!ありがとうございました!!」

 

お姉さんを見送り、私は帰り道を急いだ。

 

「よ〜し!やるぞ〜!!」

 

その時の私のこころは、世界中の誰よりも輝いていた。

 

 

 

 

 

【千歌のスクールアイドル日記】

4月18日(月)晴れ

今日は元スクールアイドルのお姉さんに会いました。文化祭のゲストに迎えられたらしい…まぁ何はともあれ、私のスクールアイドル活動が始まりました。でも、まだ何の準備もしてないんだよね…まずは学校の許可を得て、部活として認めてもらおう。さっそく直談判だ!

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

次の日。スクールアイドルを始めるにあたって、私はまず学校の許可を貰うために生徒会室へと赴いた。黒澤ダイヤ会長に直談判して、なんとしても認めてもらう!それがスタートラインなんだから。

 

で、その結果は…

 

「ダメです!認めません」

 

「えー!?なんで!!…です、ございまするか生徒会長!」

 

「何故って…当たり前でしょう!いきなりずけずけと生徒会室に入ってきたと思ったら、「アイドル部作ります!」だなんて…!そんなもの認める訳がないじゃありませんか!!」

 

ダメでした。でもこんなところで躓いてられないの!なんとかしなきゃ…!!

 

「じ、じゃあいきなりじゃなきゃいいの…です、ますか?」

 

「…」

 

少しの沈黙のあとに、生徒会長が説明してくれた。

 

「………まず、我が校で新たな部活動を設立するには条件があります。1つは部員数の確保。最低でも3人は必要です。そしてもう1つが、その活動における指導者を最低1人はつけること。廃校が決定している以上、お遊びの部活は必要ありませんので」

 

部員数と指導者か…とりあえず昨日のお姉さんに頼んでみよう。部員は…まぁ…その…集める!よし、そうと決まったらさっそく行動!

 

 

 

「生徒会長!!」

 

「!?」

 

「今日はありがとう!…ございました!今度はちゃんと人数揃えてきますので、…じゃあね!…じゃなくて、失礼しま、しまし、ました!!」

 

生徒会長さんにお礼を言って、私は生徒会室を飛び出した。

 

「ちょっ、高海さん!廊下は走ってはいけません!あと敬語はちゃんと使いなさーい!!」

 

 

 

 

 

4月19日(火)くもり

スクールアイドルへの道のりはまだまだ遠い。部員を集めるにはどうしたらいいんだろう?全てが手探り状態、不安がないといえば嘘になる。でも、今思いつくもの、できることを精一杯やるしかない。まずはひたすら声をかけてみることにした。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

次の日。

 

 

「春から始まるスクールアイドル部でーす!」

 

もう何回この台詞を発しただろう?10回?20回?いや30回は軽く超えていると思う。昨日徹夜で作ったチラシを門の前で配り続けること30分、全然減らない。一年生は小走りで逃げていくし、二年生は見て見ぬ振り。三年生に至っては陰でコソコソ笑ってるみたい。そんなこんなでもう始業時間。ほとんどのチラシが余ってしまった。

 

「…まぁ、最初はこんなもんだよね。世の中そんなに甘くない!ってね」

 

不恰好な手描きのチラシを鞄に押し込み、私は自分の教室へと向かった。

 

 

 

 

 

4月20日(水)くもりのち雨

チラシ配りをしてみたけど、あんまり意味がなかった気がする。放課後の渡り廊下にチラシが落ちていたのを見て、ちょっぴり心にグサッときた。近くで見ると、何人もの人に踏まれた跡があった。…結構、こたえた。でもこれぐらい当然だとも思ってる。しばらくは部員集めを頑張ってみようと思った。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「梨子ちゃーん!梨子ちゃん梨子ちゃん梨子ちゃーん!!!」

 

教室に入るやいなや、私は転校生の桜内 梨子ちゃんに勢いよく抱きついた。

 

「ひゃわあ!?た、高海さん!?」

 

クラスで私のことを名字で呼ぶのは梨子ちゃんくらい。名前で呼んでほしいな…

 

「ねぇ梨子ちゃん!スクールアイドルやってみない?」

 

 

 

 

 

4月21日(木)雨

昨日と同じようにチラシ配りをした後に、転校生の梨子ちゃんに声をかけてみたけど…ダメでした。アイドル好きみたいだから、イケると思ったんだけどなぁ…未だに部員は集まらない。根気よくやるしかないのかな。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「わたしも手伝うよ。千歌ちゃん1人じゃ、危なくて見てられないからさ」

 

 

 

「ようちぇああああああ〜ん!!!」

 

 

 

 

 

4月22日(金) くもりのち晴れ

曜ちゃんが仲間になった!ようやく希望が見えてきたみたい。あと1人、頑張って集めるぞー!

 

…そろそろ、歌と踊りの練習したいな。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「「あーあーあーあーあー」」

 

「はいもう一回!」

 

「「あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜」」

 

 

 

 

 

4月25日(月)くもり

放課後、お姉さんに発声の基本を教えてもらいました。流石シンガーソングライター!めちゃくちゃ上手だった。私は全然ダメだったけど…人前で歌うって、こんなに大変なのかな?わたしも曜ちゃんもヘトヘトだよぅ…私が無意識のうちにスクールアイドルを軽く見ていたことを思い知らされた。もっともっと頑張ろうと思った。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 

「千歌ちゃーん!大丈夫ー?」

 

「な、なんとかね…」

 

 

 

 

 

4月26日(火) 晴れ

踊るための基礎体力作りのために、ひたすら走り込んだ。私はすぐにバテちゃったけど、曜ちゃんは割と平気そうだった。私、自分では結構体力あると思ってたんだけどなぁ…やってみて改めて思う。スクールアイドルってすごい!あんな簡単そうにやってるのに、どんだけ難しいかってことを実感できた。

 

3人目ほしいな…明日は1年生に積極的に声をかけようと思う。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「そういえば二人とも、衣装はどうするつもり?」

 

「「…へ?」」

 

 

 

4月27日(水)晴れのちくもり

今日もひたすら走り込んだ。昨日よりはマシになってると思う。ただの勘だけどね。それより大変なの!衣装の存在を完全に忘れてた!どうしよう…それにまだ部員も揃ってないし……少しずつ、焦りが出てきました。

 

とりあえずポスターは作った!意味があるかわかんないけど、掲示板に貼っておこうと思う。誰か来ないかな…ってそれより衣装〜!

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「あ、あの!掲示板…見て、来ました…く、黒澤ルビィっていいます!」

 

 

4月28日(木)くもりのち快晴!

ついに…ついに!部員が3人揃ったー!申請も無事に済ませたし、スクールアイドルとして本格的に活動できるんだ!明日が楽しみ…♪

 

生徒会長さん、すっごい怖い顔してたな…なんでだろ?

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

5月11日(水)晴れ

ダンスの練習が本格化してきました。何度も転んで、膝が痛いよ…こんな絆創膏だらけの足、女の子らしくないな。これからもっとキツくなるんだから、気合いを入れ直そう。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

5月19日(木) くもり

練習の帰りに、みんなでご飯を食べに行きました。疲れたときの白いごはんって、あんなに美味しいんだなぁって思った。衣装もできたし…そろそろ、デビューできるかな?

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

6月22日(水)晴れ

昨日はホームページに載せる動画を撮りました。何度も何度もNGが出て大変だったけど、なんとか形になった。帰りはいつもの店でごはんを食べて帰った。お姉さんがおかわりしたときに、大和撫子のような綺麗な女の人が入ってきました。その人を見た途端、お姉さんがむせ返ってました。理由を聞くと、地獄のダイエットを思い出したらしい。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「えーっと…これをクリックして、送信…っと」

 

 

 

【新規投稿】

 

グループ名:浦の星女学院アイドル部

 

ひとこと:μ'sに憧れてスクールアイドルを始めました!応援よろしくお願いします!

 

「これでよし…うわっ、雨強くなってる!?早く帰ろっ…」

 

 

 

 

 

6月23日(木) どしゃ降り

ついに私たち3人が、スクールアイドルデビュー!!どんな評価を貰うんだろう…楽しみでもあり、不安でもある。あぁ、見たい!でもダメ!明日の放課後、お姉さんを含めた4人全員で見るって決めたんだから…私たちの精一杯は、みんなの目にどう映るんだろう?

 

雨…早く止まないかな。

 

お姉さんは明後日には東京に帰っちゃうらしい。寂しいなぁ…

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

6月24日、放課後。

 

 

 

 

 

 

 

世の中そんなに甘くない。ほんの少し努力しただけの素人が、べた褒めされるはずがない。きっとキツイ事をバンバン言われると思ってた。

 

 

そんなこと…わかってたはずなのに。

 

 

 

 

 

〈名無し〉【ざっこwwwwwwwwww】

 

〈名無し〉【μ'sバカにすんな死ね】

 

〈名無し〉【下手すぎだろ。スクールアイドル舐めてんの?】

 

〈名無し〉【てか周り海しかなくね?】

 

〈名無し〉【どんだけ田舎なんだよwww】

 

〈名無し〉【イナカモノズは帰って、どうぞ】

 

 

 

 

実際にそれをやられると、もう訳が分からなくなる。私たちがやってきた事は、一体なんだったんだろう…って。

 

 

 

「…」

 

「…」

 

曜ちゃんもルビィちゃんも口を開こうとしない。

 

 

 

…何が足りなかったと言われれば、全部足りないのかもしれない。歌も、ダンスも、練習量でいえば他のスクールアイドルの何十分の一だろう。でも…なんで……

 

 

 

…内浦の何がダメなの?実際に見てみないとわからない、素晴らしいものがたくさんあるのに。なんで?田舎だから?田舎だと全部ダメなの?もう…訳わかんないよ。

 

 

 

「もうやだ…」

 

言いたくないのに、勝手に口が動く。これだけは言っちゃいけない。私たちを、内浦を否定する事になるから。でも…もう………-

 

 

「こんなところで何かやったってしょうがないよ。こんな…何もないところ……」

 

 

 

 

 

「千歌ちゃん、これ見て」

 

 

 

お姉さんがコメント欄をスクロールする。あぁ、まだあるんだ。私たちの罵詈雑言が……ん?

 

 

 

 

 

 

 

〈ハニーバニー〉【確かに歌も踊りも見るに堪えないものですわ。でもおかしいですわね。彼女たちの踊っている()()に文句をつけている人がいるようですが。ここは()()()()を評価する場所でしょう?ここの住民の方は頭が悪いのかしら】

 

〈美人ダイバー〉【内浦ねぇ…確かに田舎だけど、結構いいところだと思うよ?海もきれいだし、アイドルのステージにはぴったりだと思うけど】

 

〈マリー〉【何か惹かれるものを感じるわ!exciting!】

 

〈ヨハネ〉【女神の聖域を汚すものは地獄の業火に焼かれるがいいわ!!…それはともかく、3人ともやるじゃない。このヨハネの心を震わせるとはね】

 

〈フラワーサークル〉【一生懸命やってるのが伝わってくる感じ…自分を表現できる皆さんがとってもキラキラして見えました】

 

 

「あと、これも見て」

 

お姉さんがコメントを指差す。

 

「…あれ?これって」

 

 

 

 

 

〈リコピン〉【皆さんの言う通り、歌も踊りもスクールアイドルとしてはまだまだだと思います。そのことに関して文句があるのなら構いません。でも彼女たちの故郷を、大切な場所をバカにしないでください】

 

【私はついこの間内浦に来たばかりの高校生です。正直最初はちょっと嫌でした。前に住んでいた秋葉原が懐かしいと感じる時もありました】

 

 

これってまさか…

 

「梨子…ちゃん……?」

 

【でも、だからといって秋葉原が優れているわけでも、内浦が劣っているわけでもない。それぞれに素晴らしいところがある。そしてここ内浦の「素晴らしいところ」を全力で見せてくれた3人を、私は誇りに思います】

 

()()()()()()()()()()()。頑張って!】

 

 

 

 

 

「…やめるなら止めはしないよ。ただこれだけは覚えておいて。少なくともここには、あなた達を待っている人がいるって事を」

 

 

お姉さんは静かにそう言って、部室を出た。

 

 

 

 

 

6月24日(金) どしゃ降り

私たちのデビューは、こんな結果で終わってしまった。世の中そんなに甘くない。わかってるけど、やっぱり結構きつい…かな。

 

知らない誰かにけなされるって、想像以上に辛いんだね。

 

でも、私たちを見てくれる人がいる。楽しみにしてくれている人がいる。

 

知らない人に応援されるって、想像以上に嬉しいことだった。

 

だからさ、私決めたんだ。

 

私たちを待っている人がいるうちは、絶対に折れない!絶対に立ち止まらない!!

 

きっとこれから先、すっごく辛い思いをしたり、めちゃくちゃ苦しい目にあったりすると思う。

 

本当のことをいえば、もうこんな事やめてしまいたい。

 

全部捨てて、ごく普通の高校生に戻れたらどんなにいいか。

 

でも、私たちはスクールアイドルだから。

 

一度負けたからって、背負っちゃったもの降ろせない。

 

私は、μ'sみたいに輝きたい。

 

その想いだけは、絶対に変えなくないんだ。

 

たとえ…届かない星だとしても。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

6月25日(土)雨のち晴れ

 

お姉さんを駅まで送って行きました。次に会うときに私たちの成長した姿を絶対に見せる!そう決めたんだ。もうへこんでなんかいられない!そんな私を後押しするかのように、雨は止みました。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

7月15日(金) くもり

善子ちゃん、花丸ちゃん、果南ちゃんが加わって6人になったアイドル部。メンバーが増えたことで今まで以上に表現力の高いパフォーマンスができそう。練習が増えると共に絆創膏の数も増えていく。腕、脚、肩…家族全員、特に2人のお姉ちゃんには変な誤解をされてるみたい。

 

 

 

 

 

8月21日(日) 晴れ

梨子ちゃん 鞠莉ちゃん、 ダイヤちゃんが加入!あの生徒会長が!?ってゆうかルビィちゃんのお姉ちゃん!?みたいな感じで最初はびっくりしたし、ちょっと怖かったけどね…話してみると、すっごく真面目で優しい子なんだ。

 

9人でカラオケに行って、みんなとんでもないテンションで歌ってたなぁ…ふふっ。

 

一緒に、苦しいときを乗り越えて。

 

一緒に、険しい壁を飛び越えて。

 

そんな仲間と過ごす日々が、ものすごく楽しい。

 

 

 

 

 

9月23日(金) くもり

明日は文化祭本番。9人でここまで全力でやってきました。その全てをぶつけてやろうと思う。これを成功させれば、μ'sに少しでも近づける気がするから。曜ちゃん、ルビィちゃん、私の3人でいつもの店へ行き、白いごはんをお腹いっぱい食べて帰りました。足の絆創膏の数は私がトップ。嬉しいような、悲しいような…

 

追伸

 

グループ名決定!私たちは『Aqours』だ!

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

9月24日、文化祭当日。ついにこの日がやってきたよ…うぅ、緊張するぅ〜他の8人ももうガチガチだよぅ….

 

 

『さぁいよいよスタートです!浦の星女学院スクールアイドル部、「Aqours」のファーストライブ!!果たしてどんなパフォーマンスを見せて、いや魅せてくれるのか〜!?司会は私、○○○がお送りいたしまーす!』

 

テンション高い司会が、余計に緊張感を煽ってくる。

 

「千歌、大丈夫?」

 

「私たちに出来ることがあれば、なんでも言ってね?」

 

裏方スタッフが声をかけてくれたおかげで、ほんのちょっとだけ緊張が解けた。

 

「ありがとう、2人とも…よし、そろそろ時間だね!みんな、行こう!」

 

私たち9人は、舞台袖からステージに出るために歩き出した。

 

…もしも、誰もいなかったら。

 

私、もう立ち上がれないかも。

 

誰か見に来てくれないかな。

 

せめて5人くらいは———

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

ワァァァァァァ…!!!!!

 

溢れんばかりの歓声が、鼓膜の内側まで響く。

 

一瞬、自分の目を、耳を全てを疑った。え?この人たちみんな、私たちを見にきたの?

 

 

『さぁさぁ皆さまお待ちかねーAqoursの皆さんです!、それじゃあリーダーの高海千歌さん、何か一言!』

 

「えぇ!?は、はい…」

 

司会にマイクを渡される。何言えばいいの〜緊張するぅ…と、とにかく挨拶だね、挨拶!

 

 

「み…」

 

 

 

 

 

 

「み、皆さんはじめました!!!」

 

 

 

………

 

 

「あっ………あー!間違えた!、はじめまして!」

 

しょっぱなから間違えちゃった…恥ずかしい〜

 

「私たちは、浦の星女学院を代表するスクールアイドル、『Aqours』です!今日は楽しんでいってくださいね!」

 

 

 

 

 

『はーい、千歌ちゃんありがとー!それじゃあ早速歌ってもらおうか!まずはこの曲「Step! ZERO to ONE!」』

 

 

 

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

 

 

9月24日(土)快晴!

文化祭大成功!お客さんも喜んでくれたみたい。Aqoursとしてのデビューは、最高の形で迎えることが出来た。あと、初期メンバー3人で作ったユニット『CYaRon!』としても歌わせてもらいました。私たちの取り柄といえば、元気しかないからさ…思いっきり歌って、全力で踊った。お客さんからの拍手が、心にしみた。

 

お客さんの前では、最後の最後まで笑顔でいることができた。

 

舞台袖に戻ってからはもう、なんかこう…いろんなものがこみ上げてきて…3人でめちゃくちゃ泣きました。

 

そういえば、お姉さんのライブの盛り上がりは凄かったなぁ…流石プロって感じ。終わった後にみんなが握手とかサインを求めていって、お姉さんテンパってたよ。

 

お姉さんの声って、結構可愛いんだ。

 

()()()()()()()()()()()()()」…って。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

○月×日 (水) めっちゃいい天気

アキバドームでのライブ、大成功!!μ'sが立っていた場所に、たどり着いた。それだけでもう嬉しすぎて泣いちゃいそう…でもね、私たちはもっともっと高いところへ行ってみたい。そう思ってるんだ。

 

μ'sでもない、

 

A-RISEでもない、

 

他のスクールアイドルの誰でもない、

 

私たちだけの…「Aqours」だけの輝きを、世界中のみんなに届けたい。

 

その夢を叶えるために…

 

高海千歌、ファイトだよっ!

 

 

 

 

 

おしまい




最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

この企画もまだまだ序盤…
これから先も個性豊かなラ!作家陣が繰り広げるサンシャインの世界にどっぷりと浸かっていってください!

この度は本当にありがとうございました!
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