TASさんがキリトくんに憑依したようです。   作:ラビ@その他大勢

1 / 3
後悔はしている。反省はしていない。


SAO編:ドゥエるキリト

「ドゥエドゥエドゥエドゥエ」

 

キリトは走る。

人間にギリギリ実現可能の範囲の動きで、システムを超越する。

 

「ドゥエドゥエドゥエドゥエ」

 

キリトは走る。

フレーム単位でジャンプ+ジャンプキックを使って人知を越えた速度を出す。

 

その動き、まさに地に落ちたセミ。

 

時には人間にとって最強の移動手段“ケツ”を駆使し、まるでワープをしているかのごとくスピードでダンジョンを駆け抜ける。

 

「ん?」

 

だが、キリトは不意に立ち止まった。目の前には大きな扉。その階層のボス部屋と言うことを示しているこの扉には、外見にも様々な工夫がなされている――

 

がキリトにそんなことは関係ない。乱数調整によりボスからランダムドロップさせた剣、エリュシデータを3本ほど背中から抜き放つ。これで戦闘準備は万端だ。

 

本来なら街に戻って然るべき用意とレイドを組むべき敵だが、キリトはこのまま一人で倒すつもり満々だった。

 

「ここが……100層。……待ってろよヒースクリフ。お前を倒して、俺たちはこの世界を出る!」

 

そしてそう呟いた。

 

 

 

 

場所は変わって紅玉宮。100層ボス部屋。一人の男性がやつれた顔をして一人の男を待っていた。

恐るべきスピードと変態的機動力、そしてシステムの限界を余裕で叩き出す実力を持つ彼なら、狭いこの100層を余裕で踏破し、1日と経たずにここへやって来る。その確信があった。

 

「ドゥエドゥエドゥエドゥエ」

 

ほら、扉の向こうから気色の悪いあの声が。

 

男性――ヒースクリフは、泣きそうに歪めた顔を引きつらせ、深く溜め息をついた。ステータスはボス補正よりKoBの団長だった頃の10倍以上は高くなっている。だが、それでも彼一人相手に勝てる気が微塵もしなかった。

 

「私は……こんな世界を作りたかったのではない」

 

その呟きと共に、ゆっくりとボス部屋の扉が開いていく。予想通りその向こうに居るのは――全身を黒装備で整えた彼……キリトだった。

 

――誰かコイツ止めろ。

 

その言葉だけが頭をぐるぐる回るものの、一応は彼もボスに挑戦してきたチャレンジャーだ。ラスボスはラスボスらしく、精々足掻くしかあるまい。

そう考え、ヒースクリフはゆっくりと剣を抜き放った。

 

 

 

 

 

これは、全世界を震撼させたデスゲーム開始宣言から半年後の、とある午後の話だ。

とんでもない攻略スピードでSAOの全プレイヤーと開発者を震撼させた変態が、遂に100層へと辿り着いた。

彼は『黒の剣士』『変態』『動きがTAS』『もうあいつ一人で良いんじゃないかな』という異名を持っていた一人の男性。アバターネームをキリト、リアルネームを桐ヶ谷和人と言った。

 

そしてその彼が、今から7000人以上ものプレイヤーを助けるために、このゲームのラスボスであるヒースクリフに挑むのである。

文字面だけで言えば、実に分かりやすい勇者VS魔王のような構図だが――戦闘が始まると。

 

 

……何と言うことでしょう。

 

「ドゥエドゥエドゥエドゥエ ムッムッホァィ」

「…………」

 

変態(勇者)が泣きそうな顔をしたオッサン(魔王)を苛める酷い絵面へと変わってしまったではありませんか。

 

 

 

そして、その30分後。アインクラッド内に1つのアナウンスが鳴り響いた。

 

『ゲームはクリアされました――ゲームはクリアされました――』

 

 

 

これが、SAO事件の顛末である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。