《フェニックス領》
本当に冥界の全ての悪魔に幻術をかける事は可能なのか?
幻術を使って戦う者もいる事は知っている。でもこんなに大規模な幻術をかける事が出来るヤツなんて本当にいるのだろうか。
俺の耳に聞こえるのは自分の翼が風を切る音と、心臓の鼓動。
昔師匠から聞いたことがある。
幻術を使いこなせば誰でも意のままに操れると・・・・それ程の相手に俺は勝てるのか?
場合によっては、俺は全く関係のない悪魔と戦う事になるかもしれない。俺はその悪魔全てを一人で倒さなくちゃいけないってことだ。
最悪、テレサとも戦う事に・・・・
「ガルディール、お前は俺の事をずっと神器の中から見てたんだよな?」
〔それぐらいしかする事がなかったからな。〕
「じゃあテレサを刺したじじいは本当にあの時倒せたのか?」
さっき俺に念話を送ってきた、デュレイとかいうヤツから感じたのはあのじじいと似たような感じだった。もしかしたらあのじじいが・・・・
〔倒せたとは言いきれないが、アイツはもう戦うことは出来ないだろう。〕
ならあのじじいとは別のヤツってことか。
あの時の俺は意識が朦朧としていたからあんまり最後の事は細かく覚えていない。
ガルディールなら知っているかと思ったけど・・・・・
〔それより俺の力の使い方、ちゃんと覚えたか?〕
「分かってるよ。」
〔この力をある程度使えれば負けることは無いだろう。〕
ある程度・・・・
そう・・・・・ある程度使えれば。
〔今の小僧は俺の力の三割に耐えるのが限界だ。〕
そうだ、俺は幻術を使っているヤツを倒し、幻術にかけられたテレサや皆を・・・・
〔ーーー小僧、どうやら先客がいるようだ。城を見てみろ。〕
「一体誰が・・・・」
俺が見た光景、それは半壊したフェニックス家の城だ。
誰かがここで戦ってるのか?
敵か、味方か・・・・
「どっちだとしても、迷ってる時間はーーー」
「ーーー消えなさいっ!」
何かが俺に向かって飛んできた、俺は反射的に籠手で弾く。
そして弾かれた何かは爆発を起こし消滅した。こんなものを飛ばしてくるってことは・・・・
「敵か。」
「私はライザー・フェニックス様の女王ーーー」
ーーー俺は悪魔の弱点でもある聖なる力で出来た光の球を創り敵に向かって放つ。
球に当たった敵は地面に倒れ伏す。
敵が死なないギリギリの攻撃だったから当然だ。
〔容赦ないな。拳による打撃の方が力を温存出来たんじゃないか?〕
「あれをするんだったら力は残さない方がいいんじゃないか?」
〔それもそうか。〕
俺は球を当てた敵の前に降り立ち、神器で治療を施す。昔堕天使から奪った《聖母の微笑<トワイライト・ヒーリング》を使ってだ。
ちなみにアーシアにはこの神器を持っていることを言ってない。
「治療したけどしばらく動けないだろ。」
悪魔の弱点である聖なる力によるダメージは身体だけでなく精神にも伝わる。
「よし、行くか!」
俺は目の前にあるフェニックス家の城に向かって走り出した。
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《城内》
「来るなっ!来るなぁっ!」
俺は必死に後ろの男から逃げる。
男の攻撃は信じられない程強力だ、数回の攻撃で俺の精神力が尽きて再生能力が使えなくなった。
今度攻撃されたら・・・・・
「逃げてんじゃねえぞコラァ!」
ーーーベキィ
「がぁっ!」
俺は後ろの男に一瞬で追いつかれ、腹を殴られ城の壁に激突する。さっきの一撃で骨が折れーーー
「ーーーおい、寝てんじゃねえよ!」
顔面に男の蹴りが入る。
今度は激突した床が壊れ、城の一階に落とされる。
「・・もう・・・・やめ・・・て・・くれ。」
「聞こえねえよ、最低野郎の言葉なんてなぁ。」
男は俺にゆっくりと近づいてくる。
こ、殺される!
「ーーーライザー様から離れろぉ!」
男の後ろから俺の《騎手》シーリスが男に向かって斬りかかる。
よしっ、これでコイツをーーー
「ーーーどけ。」
シーリスは一瞬にして俺の前から姿を消す。
一体何が!
バァン
城の壁から粉塵が出ている。
「っ!」
まさかあの一瞬でシーリスを吹き飛ばしたのか!?
「さあて、止めだ。」
「いやだぁ、し、死にたくない!」
「うるせえヤツだなーーー」
「ーーー彼を殺すの、止めてくれないかなぁ。」
殺されそうだった俺の前に現れたのは、見覚えのない黒い衣を着た誰かだった。
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俺はフェニックス家の城の中に侵入し、ライザー・フェニックスとデュレイを探していた。
ん?
「誰だコイツは?」
城の廊下に、ボロボロになった金髪の悪魔が転がっていた。
どこかで見たような気が・・・・
あ!
「ライザー・フェニックスだ。」
あまりにもボロボロで分からなかったが間違いない。コイツはライザー・フェニックスだ。
「一体誰が・・・・」
ーーーゾクッ
「っ!?」
身体中に悪寒が走る。
ここに居てはいけないと本能が告げた。俺は咄嗟に壁から離れる。
「よく僕の攻撃を避けたね。」
「あんな攻撃、目を閉じてても避けられるさ。」
危なかった、あそこにいたら俺は串刺しになってたな。
俺がさっきまでいた壁の周辺は、黄金の剣や槍が数十本刺さっている。
「あの二人は・・・・」
穴の空いた壁からは二人の人物の戦いが見える。おそらく黄金の剣や槍を飛ばしたのはあの二人のどちらかだろう。
なんとなく分かる、黒い衣を着ているのは冥界の悪魔や皆に幻術をかけたデュレイってヤツだってことが。
でも今デュレイと戦ってる男は誰なんだ?
〔あの男は・・・・リーク、俺をこの神器の中に封印したヤツらの一人だ。〕
「リーク?」
聞いたことのない名前だ。
「ガルディールを封印したヤツが何でデュレイと戦ってるんだ?」
〔知らん。〕
それもそうか。
「まあとにかくデュレイを倒さないと、幻術が解除されないはずだ。」
〔デュレイを倒す、それは無理かもしれん。〕
「どうしてそう思うんだ?」
〔どうやらヤツの持っている能力は反射能力の様だ、リークを見てみろ、攻撃をしないでデュレイの攻撃を回避することしかしていないだろ?〕
言われてみればそうだ、リークって人はデュレイに攻撃していない。
〔小僧、お前の神器の能力は相手に攻撃しなければ意味がないんだ。デュレイに攻撃しても反射されるだけだぞ。〕
ならどうやって倒せば・・・・
「やっと来た様だねイッセー君。」
この声・・・・
やっぱり黒い衣を着ている方がデュレイだったか。
「折角来てくれたとこ悪いけど、君の力では僕に勝てないよ。」
皆は幻術にかけられてデュレイの存在を知らない。つまり今戦えるのは俺だけだ。
確かに俺の能力は相手に自分の攻撃を当てないと意味がない。デュレイの持つ能力との相性は最悪だ。
だけど・・・・・俺は!
「それでも俺は勝たなくちゃいけないんだよ!」
テレサの為にも!
「ガルディール!」
〔やるのか?〕
「五割・・・・お前の力を半分使わせろ。」
〔今のお前の身体が耐えられるのは俺の持つ力の三割までなんだぞ!?〕
「ならどうやってデュレイを倒すんだ!」
ガルディールの言っていたあの能力はガルディールの力が半分使えれば発動可能と言っていた。
「テレサの為だ、身体がどうなろうと知ったことか!」
もう、戦えるのは俺しかいないんだ。
〔俺が何を言っても聞かないか・・・・いいだろう使わせてやる。〕
ーーーその瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
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「よく僕の攻撃を避けたね。」
「あんな攻撃、目を閉じてても避けられるさ。」
この野郎、厄介な攻撃ばかりしてきやがって・・・・
余裕ぶってるが実際ヤバいな。
攻撃を反射されるとコイツにダメージを与えられない。どうやってダメージを与えるか・・・・
この世界に来るのでかなりの力を消耗してる、結構厳しいな。
「ならどうやってデュレイを倒すんだ!」
ん?
この声は今戦ってるヤツの声じゃないな。
どうやらあの壁の穴から声がしたようだ。
俺はそこを見る。
確かテレサといたガキか・・・・
「テレサの為だ、身体がどうなろうと知ったことか!」
コイツ・・・・
ーーー突如、ガキの身体から凄まじいプレッシャーが放たれる。
「っ!」
「この感じ・・・・ガルディールの!」
ガキの腕に付いている黄色の籠手の色がゆっくりと黒色に染まっていく。
まさか!
俺は急いで城から出て、ガキの近くから離れる。
あのガキがやろうとしてるのは・・・・・
「ガルディールの能力の一つ、自分以外の能力を無効化する空間の構築か!」
ガキを中心にその空間が広がっていく。
俺はその空間に入らない、ギリギリの所から空間の中を覗いた。
「何故だ!僕の能力が・・・・・」
あの野郎、相当焦ってるな・・・・
ガキの拳がアイツの顔に入る。
これはかなり効いたな。
殴られたアイツは勢いよく吹っ飛ばされて、壁に激突する。
そしてアイツが壁に激突したのと同時にガキは倒れた。
ガキの構築していた空間が消えていく。身体の限界か、当然といけば当然だな、ガルディールのあの力に耐えられるはずがない。
「さて、どうするか・・・・」
一瞬で戦いが終わっちまった。
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〔おい、おい小僧!〕
ん・・・・ガルディールの声・・・か?
〔今お前の持ってる神器でお前の身体を治療した。しばらくすれば動けるだろう。〕
「そう・・・・か。」
俺はガルディールの力を使ってから何があったか、いまいち覚えていない。
「結局どうなった?」
〔あの男・・・・デュレイに攻撃することは出来た。だが倒せたかは分からん。〕
「じゃあまだデュレイはーーー」
「ーーーおいガキ、大丈夫か?」
この声は・・・・
〔リーク・・・・〕
「久しぶりだなガルディール。」
〔貴様の進化能力があればヤツを倒せただろう。〕
「今の状態だと使いこなせねんだよ。」
「進化?」
〔言ってなかったな小僧、リークの能力は自身の身体を進化させる能力だ、敵の攻撃に耐えられるようになったり、自身の限界を超えた力を出したり出来る。〕
そんな能力が・・・・
「早いとこ、テレサを見つけないとな・・・」
テレサ?
何でこの人テレサの事を知ってるんだ?
「何でテレサの事を・・・・」
「それは・・・・俺が親だから。」
「っ!?」
コイツが・・・・テレサの。
俺は何とか身体を動かして立ち上がる。
〔小僧、無理して動くな!〕
「アンタが・・・テレサを!」
「っ!身体が・・・・これはシエラかっ」
俺は本気でテレサの親であるリークを殴った。
「俺が小さかった時、テレサは一人で泣いてたんだよ、アンタに会いたいってなぁ!」
「・・・・・・」
「何でテレサを一人にしたんだよ!」
「・・・・すまねえ。」
「謝るんなら・・・・テレサに言ってやれよ・・・」
「・・・・時間か。」
リークの身体が透明になっていく。
「ガキ・・・いやイッセー、テレサにはちゃんと謝る。」
「・・・・」
「だから・・・・しばらくの間でいい、テレサの事を・・・・頼んだ。」
そう言う、リークの顔からは悔しさが出ている。
そうだよな、この人も・・・・
「しばらくじゃなくて、ずっとでもいいさ・・・」
テレサのことが大切なんだな。
「ったく、調子に乗んな・・・・」
そう言うと、リークは満足そうに消えていった。
そして辺りは静寂に包まれる。
いや・・・・
〔小僧、まだ終わってないようだ。〕
「ああ・・・・」
「ーーーよくもっ、よくも僕を殴ってくれたね!」
やっぱりデュレイはまだ動けるようだ。
てことはまだ幻術は解除出来てない。
「テレサの為なら何回でも殴るさ。」
「フッ、もう君はまともに動けないだろう?」
そして、デュレイは高笑いを上げる。
甘いな・・・・
「ガルディール、俺のやりたいこと分かるか?」
〔小僧、とんでもないことをしたな。〕
テレサの父、リークの持つ能力は進化。
「今の俺の身体はどこまで耐えられる?」
俺はその進化の能力を・・・・
〔七割だ。〕
奪った。
「じゃあやるか・・・・そういえば七割で何が出来るんだ?」
〔触っただけで相手の能力を奪える。〕
「そうか・・・・なら・・・」
今の俺は身体の限界を超えた力に
〔ああ、存分に暴れてこい。〕
「テレサの為にも、リークの為にも・・・・デュレイ、お前を倒す!」
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俺が動けるようになった頃には、あの男は消えていた。
「クッ・・・・」
身体中が痛い、何もかもあのリークとかいう男のせいだ。
「テレサはアイツの娘だそうだな・・・」
身体は動かなかったがハッキリと聞こえた。俺にこんな怪我をさせた借りは返させてもらうぞ!
そして俺はテレサのいる部屋へと向かっていくのだった。
イッセーがリークから奪った進化は完璧ではない進化の方だったので一時的な進化しかできません。