聖女とホムンクルスの艦隊これくしょん   作:林屋まつり

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三十三話

 賑やかな夕食が終われば、次は入浴だが。

「いろいろあるのだな」

「そうだね」

 日本は火山が多い。必然、その熱を利用した温泉も多くなる。

 温泉の文化は古く、神代から温泉があったと聞く。それは当然現代にも受け継がれ、様々な入浴方法が生まれた。

「露天風呂、……このあたり、アストルフォが喜びそうだな」

「あ、そうかもしれないね」

 アストルフォが暴れなければいいのだが。

「それでは、入浴しようか」

「あ、……そういえば、ジークさん」

「ん?」

 ふと、蒼龍の声。

「ジークさんって、お酒飲めますか?」

「…………いや、解らない」

 飲んだことは、ないな。

「お酒って、あるのかい?」

 時雨の問いに蒼龍は頷く。

「日本酒の小瓶ですけど、一応あるみたいです」

「というか、二人は飲めるのか?」

 蒼龍はともかく、外見だけなら時雨はまだ成人前に見える。

「あ、飲めますよ。……ええと、個人差はあるらしですけど、平均的に艦娘は普通の人よりお酒に対する耐性が強いらしいんです。

 噂ですけど、暁の妹に響っていう駆逐艦の艦娘がいて、その娘がワインをぶどうジュースって言って何本も空けたそうです」

「……そ、そうなのか」

 意外な現実だ。

「だから、お風呂から上がったら、軽く飲みませんか?」

「あ、いいね。……うん、僕からもお願いしたいな」

 酒か。

「いや、遠慮しようと思う」

 俺の言葉に時雨と蒼龍は寂しそうに肩を落とす。楽しみにしてもらっていたか。

 確かに、誘ってもらったのだ。何も言わず断るというのはよくないな。

「俺は酒を飲んだことがない。

 どのくらい飲めるかわからないし、それでどうなるかも、だ。……その、」

 不意に、思い出すのは数日前のジャンヌで、

「女性にとって、迷惑な酔い方をしてしまうかもしれない。だから、やめた方がいいと思う」

「ええと、それは僕たちの事を気遣って、かな?

 それなら気にしないよ」

「むしろ、ジークさんなら大歓迎ですっ」

「そうなのか? 女性は、そういうのを忌避すると思っていたが」

「んー、相手よりけりです。忌避もあれば大歓迎もあります。

 ねっ、時雨ちゃんっ」

「へ? え? う、うんっ、そうだよっ!

 ええと、じ、ジーク君なら、…………いい、よ」

 顔を赤くして小さな声でぽつぽつと応じる時雨。……なにを想像しているのだろうか?

 ただ、

「まあ、そういう事なら、解った。

 だが、……その、変な事をしそうになったら遠慮せず放り出してく欲しい。みんなに迷惑をかけるのは、俺も、……心苦しい」

「はいっ、了解しましたっ、お任せくださいっ」

 なぜ、蒼龍はそこまで楽しそうなんだ。ともかく、入浴の準備。

「ジーク君はどこに入ります?」

「ん、……ああ」

 いろいろ試したみたいが。

「そうだな、露天風呂というのには興味がある」

 外を見ればすでに夜。夜空を見上げながらの入浴は心地いい、と思う。楽しみだ。

「そうですか」

「それはいいかもしれないね。それじゃあ、お風呂に行こうか」

 

 夕食の時に、食後は入浴だね、と話はしていた。その場にいた翔鶴も浴場の準備は出来ていると言っていた。

 だからだろうか、ちょうど、他の皆も廊下に顔を出した。

「んー、やっぱりというか、ジークはあんまり浴衣、似合わないわねえ」

 しんみりと告げる足柄。まあ、そうだろうな。

「もともと、日本人向けの格好だからな」

 銀色の髪を軽く引っ張って言ってみる。けど、逆に、

「足柄は似合うな」

「あら、ありがと。バスローブとかあれば、ジークはそっちが似合いそうだけどねえ」

「さすがにここにはないな」

 純和風の旅館だ。手入れが行き届いているので居心地はいいが。こじんまりとしていて規模は大きくない。わざわざバスローブを用意してあるようには見えない。

「ふふっ、浴衣ですね。日本の民族衣装。

 こういうのも悪くないですね」

 楽しそうな、少し、はしゃいだような声。

 珍しい服装にジャンヌは上機嫌だ。対して、

「あまり、こういうのは好みじゃないか?」

 どこか面白くなさそうなアストルフォに聞いてみた。彼は頬を膨らませて「地味すぎー」

「派手な浴衣も、探せばあるかもしれないけどねえ」

 くつくつと足柄は笑う。

「あ、そうそう、アストルフォ。

 温泉にはマナーがあるのよ。ジャンヌとジークは大丈夫だと思うけど」

「いえ、教えてください」

 俺も頷く。暴れたりするつもりはないが、知らずにマナー違反をするかもしれない。それは避けたい。

 誰もいないとは聞いているが、だからと言って蔑ろにしていいものではない。

「真面目ね」

 くすくすと楽しそうに足柄は笑う。

「えー、めんどいなあ」

「ライダー」

 文句を言うアストルフォをジャンヌが軽く睨む。「はーい」とアストルフォ。

「ま、といっても面倒な事はないわよ。

 入る前に体を洗って、あと、泳いだりはしゃいだりしないってだけ。あ、タオルを湯船につけてはだめよ?」

「そうですか?」

「ええ、お湯はみんなで使うものでしょ? 出来るだけ綺麗に使わないと」

「……なるほど、周りに迷惑をかけないようにですね」

「アストルフォ、そういう事だ。

 泳いではだめだ」

「なん、……だって」

 愕然とするアストルフォ、泳ぎたかったのか。

「じゃ、じゃあっ、ヒポグリフは洗っていいっ?」

「だめだ」

 何をやるつもりだったのだ彼は?

 

「おーっ!」

 服を脱いだらアストルフォは走り出して滑って転んだ。

 そのまま滑り続けて壁に激突。それを見送って辺りを見渡す。

「浴場、サウナ、水風呂、露天風呂、…………いろいろなのがあるのだな」

 もともと宿自体がそう大きくないからか、水風呂は大人が三人も入れば窮屈になりそうな、小さなものだ。露天風呂は外か。

 確か、この国の信仰として何よりもまず身を清める、というのがあるらしい。潔斎、……といったか。

 火山が多い風土と清浄を是とする信仰が合わさり、多くの入浴文化を生んだ。と、いう事か。

「む」

 露天風呂、と思ったがどうも混浴らしい。ならやめておこう。彼女たちがいるかもしれない。

「むむ、この小部屋は何か? ……って、熱っ! あっつぅうっ? 何この部屋っ?」

 ところで、サウナに突貫してひっくり返ったアストルフォはどうすればいいのだろうか?

 

//.旅館

 

「これは、……す、素晴らしい。素敵です」

「きらきらしてるわねえ」

 浴場へと続く戸を開けた途端、感嘆の声を漏らすジャンヌ。

「さて、では、まずは体を洗いましょう」

「はいっ」

「ジャンヌっ、背中洗ってあげるデースっ!

 前も洗ってあげるデースっ! おっぱい洗ってあげるデースっ!」

「断固拒否します」

 最初の一つならともかく、好き好んで女性からセクハラされるつもりはない。

「じゃ、じゃあっ、私が背中洗ってあげますっ!

 ちょっとわきの下とか突いちゃうかもしれませんけど、大丈夫ですよねっ! 可愛い声とか聞かせてくれると嬉しいですっ!」

「断固拒否します」

「にゃあ、頭洗うのとか面倒だにゃ」

 なぜか積極的にセクハラを敢行する女性を振り払っていると、肩を落として多摩が通り過ぎた。

「面倒ですか?」

「んー、濡れるのはあまり好きじゃないにゃ」

 猫、と思ったが。

「だめです。ちゃんと洗いなさい。

 …………いいでしょう、頭は私が洗ってあげます」

「にゃっ?」

 妙に楽しそうな笑顔に危機感を覚えて、多摩は逃げ出そうとするが。

「逃がしませんっ」

 ひょい、とジャンヌは多摩を抱え上げた。

「にゃーっ、な、なんか不吉にゃっ! おっぱい触られるにゃっ」

「触りませんっ! けど、髪は洗いますよ?」

 整えられているとはいいがたい、癖のある短い髪。

「にゃーっ?」

「こらっ、暴れないでくださいっ」

 じたばた暴れる多摩をジャンヌは楽しそうに巧く抑え込んでいる。シャワーで髪を濡らして洗っていく。

「いいなあ」

 不意に、体を洗っている暁から声が漏れた。小さな呟きだが、

「では、次は暁の髪を洗ってあげましょうか?」

「え? い、いいの?」

「もちろんです」

 わしゃわしゃと多摩の頭を洗い、シャワーで流す。

「はい、終わりました。

 あとは体もちゃんと洗うのですよ」

「にゃー」

 ぐったりした呟きを肯定と受け取り、ジャンヌは暁のところへ。

「え、えーと、お願いね」

「ええ、もちろん、…………シャンプーハット?」

「あっ?」

「ふふ、暁はシャンプーが苦手なんだよ。

 眼に泡が入ったら大変だもんね」

「あうっ、……あ、ええとお」

 小さくなる暁。なんとなく抱きしめたくなったがジャンヌは自重。

「いいですよ。その方が楽なのでしょう」

「う、うん」

 恥ずかしそうに頷く暁。ともかく、苦手なら気をつけなければならない。

 シャワーで静かに髪を濡らし、丁寧に洗っていく。……「黒髪」

「ん?」

「いえ、黒色の髪は珍しいので、……少し、羨ましいなと。

 艶やかで、とても綺麗です」

「そ、そう? えへへ」

 暁にとって憧れのレディーであるジャンヌに綺麗と言われて、嬉しそうに笑う。

「ええと、ジャンヌさんは西洋の人だよね。

 日本の人は、あまり会わない、のかな?」

 黒髪が珍しい、と言われて時雨は問いかけた。日本人。

「いえ、…………ただ、彼は白髪で、肌も褐色だったので」

「あ、そうなんだ」

「はい、それに男性でしたから。

 ふふ、……けど、いいですね。こういうのも」

 丁寧に暁の髪を梳くジャンヌは楽しそうで、暁も心地よさそうに目を細めている。

「では、暁。泡を流しますよ」

「あ、うんっ、お願いね」

 ぎゅっと、必要以上に強く目を瞑る。そんな仕草にジャンヌは微笑。静かに、ゆっくりと泡を流していく。

 最後に、丁寧に髪を撫でて軽くお湯を切って、

「はい、終わりました」

「ありがとっ、ジャンヌっ!

 あ、そうだっ。お礼にジャンヌの背中、洗ってあげるわっ」

「いいのですか?」

「もちろんっ、ちゃんとお返ししなくちゃレディーとしてだめなんだからっ」

「では、お願いします」

「ええ、任せてっ」

 応じて暁はジャンヌの背中を洗っていく。くすくすとジャンヌは微笑み。

「ふふ、本当に、暁のような妹がいると、楽しいでしょうね」

「そう? ……そう、かもね。妹って、いいわよね」

「暁?」

「ん、暁も電がいて、すっごく楽しかったわっ!

 最期は、……うん、今でもつらいけど、けど、電と一緒にいた事、忘れたくないわ」

「ええ、そうです。決して、忘れてはいけませんよ」

 残念ですね、と。不意にジャンヌは思った。その、電に会ってみたい、と。

 戦場で命の奪い合いをしながら、それでもなお、綺麗事を叫び続けた少女。そんな彼女に会って話をしてみたい。

 それが簡単な事とは思えない。最悪は裏切り者として処罰され、そうでなくても多くの者から反感を買うだろう。

 けど、それでも、

 それでも、理想を叫び続けなければ、そこに近づくことは出来ない。

 自分を聖女と思っていない。…………けど、

 そうありたい、と、言えるようにならなければいけない。

 手についた血を拭い落とすことは出来ない。背負った罪は消せない。……それでも、尊いと思った夢に手を伸ばす事を、諦めてはいけないから。

 だから、ジャンヌは暁を撫でて、

「戦争には勝ちたいけど、命は助けたい。…………私も、貴女と貴女の大切な妹の言葉、覚えておきますね」

 

 そして入浴。並んで湯に浸かり、揃って息を漏らす。

「は、……あ、これは、素敵です」

 じわりと、疲労が抜けていく感覚。少し熱さを感じる湯に浸かり、ジャンヌは陶然と言葉を洩らした。それは皆も同様。

 疲労が抜けていく。……特に深海凄艦の長門と相対した者たちはそれが顕著で、深く、息をつく。

「皆さん今日は頑張りましたからねー

 大将代行殿から聞いていますヨ。深海凄艦相手に大見え切って説得しちゃったとか。暁ちゃんかっくいー」

 ぱちぱちと拍手する漣。で、

「ちょ、な、なによっ? なんでみんなで拍手するのよお」

 暁を囲うように布陣したみんなで拍手喝采。中央にいる暁は逃げる事も出来ず顔を赤くしておろおろし始める。

「ワタシ、暁のような僚艦を持てて幸せデス。

 大本営が解体命令を出したら、一緒にジャンヌのところへ愛のトーヒコーネっ」

「それはいいですね。

 大本営が私たちを解体するとか言い出したら、逃げ出して、旅を続けているジャンヌさんたちを探しましょうか?」

 無茶苦茶な提案に、大和は楽しそうに応じる。時雨は微笑。

「そうだね。……うん、そうなると僕たちも旅をすることになるのかな。

 ふふ、ジーク君やジャンヌさんにも負けないような。楽しい旅路にしようね」

「捜索はお任せくださいっ! 艦載機の出番ですっ」

 むんっ、と蒼龍は拳を握る。けど、

「それは難しいにゃ。

 提督が狭い家を紹介してくれるって言ってたから、そこに身を潜めてジークに連絡にゃ。ジークがくればジャンヌも来てくれるにゃ」

「……いえ、それで釣られても、…………まあ、間違いなく多摩の思惑通りに進むでしょうが。

 というか、便利屋扱いされても困りますよ?」

 本気で助けを求めるのなら手を差し伸べるのは構わない。が、なにからなにまで助けるつもりはない。

「解ってるにゃあ。……うむ、金剛、足柄、ちょっと来るにゃ」

「なんデース?」「なにかしら?」

「狭い家に押し込まれて困っている多摩たち。ここで、ジークたちに必死に連絡。……………………これで、……それで、ああして、」

「Oh、幸せ家族計画デスネ。

 むふふふ、ジャンヌと狭い一軒家、一つ屋根の下、……楽しみ、デス」

「あらあら、……ふ、ふふ、いいわね、いいわねっ! まさにチャンス到来ねっ!」

「総員、砲撃よーい」

 淡々とした声。そして、

「砲撃開始っ」

 ジャンヌの号令とともに、桶から放たれた湯が不埒な事を考える女性陣に叩き込まれた。 

 

//.旅館

 

「まっさーじちぇあー?」

「ん? ああ、これか?」

 浴衣を着て脱衣所から出る。脱衣所を出たところにある広間に大きな黒い椅子があった。

 マッサージチェアー、というらしい。

「へー、マッサージか。

 よし、やってみよっ」

 早速、アストルフォが椅子に座り、何かのスイッチを押した。

「う、お、お、お、おおおおおお?」

 アストルフォががくがくし始めた。

「うわははははっ、なにこれなにこれ、おもしろーっ! きゃっははははははっ!」

 楽しいのだろうか?

「って、いたっ? ぐっ? な、あだだだっ?」

「…………なにしているんだ?」

「し、知るかーっ? ひゅあっぁあああっ? ひゃははははっ」

 アストルフォが面白い事になっている。

「あ、ジーク君、お待たせ、……なんか、ライダーが凄い事になってませんか?」

「あばばばばばっ」

 勢い良くぶれているアストルフォを見てジャンヌが引いた。

「ああ、マッサージチェアーというらしい」

「……なんか、ライダーが悶絶していますが?」

「そういうマッサージなのだろう」

 苦悶の声をばらまくアストルフォ。

「あらあら?」

「ん?」

 不意に、足柄が俺を覗き込んできた。

「何かついてるか?」

「ううん、可愛いわよ。ジーク」

「う、ん?」

 可愛い、と表現されるのは、まあいい、何度かあった。

 けど、改めて言われる事か?

「何か違うか?」

 とりあえず髪の毛を引っ張ってみる。特に何が変わっているとも思わないが。

「んー、ほら、ジークさんって色白じゃないですか。けど、お風呂上りでちょっと紅潮した感じになっていて、雰囲気も、なんかいつもより幼い感じです」

「そうか?」

 蒼龍に教えてもらったが、よくわからない。

「そんなものか?」

「あ、……そう、そうですよね。ライダーの奇行に目を取られていましたけど。…………ふふ、ええ、可愛いですよ。ジーク君」

 くすくすと笑うジャンヌ。……けど、そんなものか。

 それなら、

「それはジャンヌにも言えると思う。

 いつもより雰囲気が柔らかい感じがする。リラックス出来たみたいだな」

「そ、そうですか」

 嬉しそうに応じるジャンヌ。足柄は頷いて、

「湯上り美女ねっ」

「そういうのもあるのか? …………いや、そうだな。

 皆もいつもより、幼く見えるな」

「むー、幼いって言わないでよっ」

 俺の言葉に大和たちは微笑したが暁には不服だったらしい。「すまないな」と、暁を撫でる。

「温泉は楽しかったか?」

「うんっ、ジャンヌに髪を洗ってもらったのっ! すっごく優しくて心地よかったわっ!」

 きらきらと笑顔で楽しかった思い出を語る暁。

「お姉さんみたいだったか?」

「うんっ、……えへへ、ジャンヌがお姉さんって、すっごくよさそうっ」

「あ、じゃあ、ジーク君は暁のお兄さんになるね」

 不意に時雨が手を叩く。けど、

「俺が、兄?」

「む、暁はジークのお姉さんよっ」

「けど、ジャンヌさんの妹なんだよね? じゃあ、ジャンヌさんの恋人のジーク君も、お兄さんになるよ」

「あ、……あ、あれ? え、えーと。

 ジークは暁より子供で、暁がジークのお姉さんで、……けど、ジャンヌは大人のレディーで、ジャンヌは暁のお姉さんで、ジャンヌとジークは恋人同士で、…………あ、あれ?」

 暁が混乱した。時雨は楽しそうに笑う。

「も、もーっ、笑わないでよっ! ぷんすかっ!」

「あはは、ごめんごめん」

「まあ、そうかもしれないが」

 俺は時雨に迫る暁を撫でて、

「暁は見習いたいところも多くあるし、確かに妹というよりは姉という感じだな」

「え? そ、そうよねっ!

 暁は大人のレディーだもんっ、ジークのお姉さんよっ」

 むんっ、と暁は胸を張った。ジャンヌは小さな声で、

「私、あんまりジーク君からお姉さんって扱いされてないのですが? あれ? 私、暁よりお姉さんっぽくないのでしょうか?」

「ジャンヌはたまにぽんこつになるから、にゃあ」

「……………………はい、そうですね。私も暁みたいに大人のレディーを目指します。

 というか、まずはぽんこつを返上します」

 強く決意を固めるジャンヌ。やはり大切なのはそちらか。

 と、視界の隅、大和と足柄と金剛と蒼龍が固まっていた。ぽつぽつと声が聞こえる。

「ねえねえ、大和。時雨のいう事をまとめると、ジークってジャンヌと結婚してるわよね? ケッコンカッコカリとか、そういうレベルじゃないわよね?」

「そうですね。ジーク君も、頷きましたし。すでに夫婦ですね」

「ジャンヌ、……旦那さんがいても、ワタシの事は忘れないで、たくさん構ってほしい、デス」

「ジークさんとジャンヌちゃんの夫婦かあ。……いいなあ、憧れるなあ」

 ジャンヌにも聞こえたらしい、「ふあ」と、声が漏れて、

「じ、ジーク君と、ふ、夫婦。……ジーク君の、お、お嫁さん。

 それは、……え、ええと、……け、けど、ジーク君の事は、好き、ですし、歓迎ですけど、…………わ、私は、ど、どうすれば?」

「ここは冷静に受け答えして、さらりとジークを誘えないからジャンヌはお姉さんじゃないにゃあ」

 呆れたように多摩が呟いた。

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