聖女とホムンクルスの艦隊これくしょん   作:林屋まつり

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 土日はPCに触れないので連投です。


最終話

 目を、開けた。

「ん、…………すぅ」

 腕の中には寝息を立てるジャンヌ。穏かな寝顔。

 無防備、か。

 以前、時雨の寝顔を見たときに蒼龍が言っていたような気がする。まあ、確かにそうだな。

 片腕は、ジャンヌが枕代わりに使っているので使えない。だから、もう片方の手で丁寧に撫でる。

「ん、…………あ、」

「すまない。起こしてしまったか」

 うっすらと目を開けるジャンヌ。

「あ、……ジーク君、おはようございます」

「ああ、おはよう」

 応じる、と。ジャンヌは嬉しそうに微笑む。

「よく眠れたみたいだな」

「はい、とても、……ふふ、昨夜に比べて随分とゆっくり休めました」

「ああ、アストルフォか」

「はい、ライダーです」

 賑やかな夜だったのかもしれない。……ふと、

「ジーク君が、先に起きてしまいましたか」

「そうだな。と言っても、俺も起きたのはついさっきだ」

「……そういうのはいいんです。…………はあ、ジーク君の寝顔、見たかったです」

 唇を尖らせるジャンヌ。

「蒼龍も見たいといっていたが、そうだな。気持ちもわかるな」

「そうですか?」

 おっとりと首を傾げる。頷く。

「ああ、ジャンヌの寝顔はとても可愛らしかった」

「…………ぁうっ」

 かっ、とジャンヌの顔が赤くなり、そのまま、隠すように俺の胸に顔を押し付ける。

「あ、朝一番で、そんな事言わないでください。

 ジーク君の、……とーへんぼく」

「う、……すまない」

「はあ、私も、ジーク君の寝顔、見たかったのに」

「一度機会はあったと思うが? 前に酒を飲んだ時」

「あ、あの時は不意打ちだったんですっ! 一人で寝たつもりが、起きたら腕の中にジーク君がいたら、いろいろ余裕をなくしますっ!」

「ああ、それもそうか」

「はあ、…………では、次の機会に」

「……次か」

「当たり前ですっ。私とジーク君は恋人同士ですっ!

 だから、……また一緒に寝ても、いいじゃない、ですか」

「あ、……ああ、わかった」

 

 戸が叩かれる音がした。俺とジャンヌは慌てて起き上がる。

「はい?」

「おはようございます。ジャンヌさん、ジークさん」

「翔鶴か」

「はい、今朝は早いそうなので、早めに朝食を準備させていただきました」

「ああ、ありがとう」

「ふふ、どういたしまして、…………それで、……その、ジークさん、ジャンヌさん。お二人は、また旅に出るのですよね?」

 口ごもる翔鶴。俺とジャンヌは顔を見合わせて「はい、そのつもりです」

 ジャンヌは頷く。

「…………ええと、では、これを、どうぞ」

「リーフレット、ですか?」

 といっても、地図や住所、電話番号などが書かれた簡単なものだが。

「はい、この旅館のですが。……ええと、もしよろしければ、また遊びに来てください。

 歓迎しますし、……ええと、お代は、融通させていただきます」

「いいのですか?」

「はい、……私達もいろいろお話し、したかったですから」

「そうでしたか」

「あ、いえ、それで予定を変えて欲しいとか、そんな事は言いませんっ!

 ただ、……出来れば、もし近くに来たら、立ち寄ってもらうだけでも十分ですっ」

「解りました。…………ええと、ジーク君は、あの、……ええと、……………………あ、あれ? ……じ、ジーク、君。あの、念話が出来るの、なんて言いましたっけ?」

「ああ、スマートフォンか? そうだな。

 連絡先もわかるし、翔鶴。何かあれば連絡をしようか」

「はいっ、お願いしますっ」

 安堵の吐息をつくジャンヌ。……ふむ。

「それと、ジャンヌ、まずはスマートフォンの使い方を学ぼう」

「…………是非、よろしくお願いします」

 大いに視線が泳いでいる。前途が多難だが、仕方ないか。

「あ、あの、」

「ん?」

 おずおずと、翔鶴はメモ用紙を差し出し、

「も、もしよければ、連絡先を教えていただけませんか?」

「ああ、わかった」

 いくつかの操作をして電話番号を表示。それを見ながら番号を書いていく。

「あ、ありがとうございます」

 嬉しそうに微笑んで翔鶴は一礼。そのまま部屋を出た。

「喜んでもらえたか。…………ジャンヌ?」

 なぜか、難しそうな表情で翔鶴を見送るジャンヌ。…………ふむ。

「大丈夫だ。ジャンヌ。

 スマートフォンは爆発しない」

「そ、それじゃありませんっ! あれはもう忘れてくださいっ!

 ただ、ジーク君って、女の子に人気あって、……なんか、もやもやします」

「そうか?」

「そうですよ。泊地にいたみんなはもちろんですけど。

 本土に来てからも、雷からは職場に一緒にいて欲しいとか言われてましたし、鈴谷と熊野も、興味あったみたい、ですし」

「男性が珍しいのだろう」

 艦娘は皆女性だし。

「…………それなら、いいのですけど。……………………ライダーも同行しますし、これからも艦娘と会う事もあるかもしれませんし、……や、やはりもっと積極的に、……」

「何か言ったか?」

 もごもごと何かつぶやくジャンヌ。

「いえ、……いえ、何でもありません。

 私も気合を入れないといけないな、と思っただけです」

「そうか? ……いや、ジャンヌ。

 旅は永いのだし、最初からあまり気を張りすぎると疲れてしまう」

「…………それもそうですねー」

 どことなく呆れた雰囲気で頷くジャンヌ。……また、何か間違えた事を言ってしまったか?

 

 朝食を終え、翔鶴に見送られて集合場所の港へ。

 そこには、一台の車。健也と、

「時雨?」

 集合場所には、もう一人、時雨がいた。

「え? 僕?」

 きょとん、とする時雨。俺たちはそのまま二人のところへ。

「やあ、はじめまして、みんな」

 もう一人の時雨が微笑。

「もう一人、僕がいるみたいだね。……ふふ、やっぱり、同じ時雨と会うのはなんとなく不思議な感じがするよ」

「え? どうして、僕が、もう一人?」

 きょとんとする時雨に、彼女は微笑。

「簡単だよ。僕たち艦娘は、かつての艦船の英霊。

 そして、僕と君は白露型駆逐艦、二番艦、時雨。それを元として構築された分霊でもあるんだ。日本をよく探せばまだほかにも時雨はいるよ」

「そう、なんだ」

 不思議そうに応じる時雨。

「といっても、君たちにとっての時雨は彼女だね。……だから、」

 もう一人の時雨は微笑。

「僕の事は、大将代行と呼んでくれればいいよ」

「へ?」

「大将、代行?」

「雪風には会ってるね? 僕は佐世保鎮守府の大将代行。

 ふふ、これでも日本で五指に入る艦娘、という自負はあるよ」

「なんていうか、意外ね。……こんな事を言っては失礼と思うけど、駆逐艦がそこまで上にいけるというのもね」

 足柄には同感だ。

 俺も艦娘の資料には一通り目を通している。駆逐艦は、もっとも性能の低い艦種だったはずだ。

 大将代行は微笑。

「そうだね。まあ、努力と鍛錬の賜物だよ。

 君たちがさぼっていたとは言わないけど、僕もそれなりに長くいる。出撃や演習の経験も多いからね。

 だから、時雨、君も、頑張ればそれだけ強くなれるよ」

「…………う、うん。そうだね。雪風も、とても強かったし。

 駆逐艦だから仕方ない、なんて言えないよね」

 自分に言い聞かせるように頷く時雨。大将代行は頷く。

「皆もね。確かに、艦種に応じて初期の性能は変わるけど、修練を重ねれば駆逐艦だって戦艦を打倒する事が出来る。

 それが、軍艦と艦娘の違いでもあるかな。だから、思うままに強くなって、それが、僕たちの祈りを叶えるためでもあるのだからね。……ふふ、けど、戦艦を打倒する駆逐艦は凄いと思うけど、駆逐艦に打倒される戦艦は、…………うん、ちょっと見損なわれちゃうかもね」

「む、それは私達に向けての挑発ですか?」

「むー、……た、確かに、あの時の雪風には勝てる気がしませんケド、そう笑われるのは面白くないデスネ」

 くすくすと笑う大将代行に、大和と金剛は頬を膨らませる。

「ふむふむ、それもそうにゃ。

 軽いからって、重い、巡洋艦に負け、いたっ?」

「誰が重いよっ!」

 したり顔で頷く多摩を、足柄が叩いた。

「あははっ、……うん、いい艦隊だね。

 呉鎮守府所属がちょっと羨ましいかな。春原代将もその事を忘れないでね?」

「ああ、解っている。

 艦種に応じた役割があるが、だからと言って差別するつもりはない」

 健也の言葉に大将代行は満足そうに頷いた。

「それと、ジャンヌさんたちは九州に向かうんだよね。

 僕が管轄する佐世保鎮守府も、ちょうど九州にあるんだ。よければ送っていくよ」

「そうですか。ありがとうございます」

 時雨の提案に頷く。さて、こちらの移動手段も確保できた。だから、

「それじゃあ、僕は先に車で待ってるね。…………春原代将。時間は守るように」

「解りました」

 健也は頷き、時雨は微笑んで車の方へ。アストルフォと漣も時雨に続く。……さて、

 

「それでは、お別れですね」

 沈黙、になる前にジャンヌが口を開く。

 連絡を取り合う事も出来るし、会おうと思えば、会いに来れる。

 けど、それでも、ここでお別れ。

 ジャンヌの言葉に口を噤む彼女たちに、ジャンヌは微笑んで、

「そんな風に沈まないでください。また会えますよ」

「解ってます。……けど、」

 大和は微笑む。解ってる。また会う事も出来るし、連絡をとる事も出来る。

 けど、……それでも、大和は自分の胸に手を当てて、

「大変でした。けど、ジャンヌさんたちといた時間は、とても楽しかったです。

 だから、やっぱりお別れは、寂しいです」

 当たり前か。感じるのは、寂寞。

「そうだな。……こういう形での離別は、俺も初めての経験だが。

 ああ、寂しいな」

「あら? だめじゃないジーク。

 貴方には可愛い恋人がいるのだから、ね」

 足柄は、丁寧にやさしく俺の頭を撫でてくれた。……感じるのは心地よさ。思わず、彼女の言葉を肯定したくなったが。

「いや、……そんな事はない。……お別れは、寂しい」

 拳を強く握る。……………………これが、別れ、か。

「そ、……やっぱり、ダメねえ」

 足柄は困ったように微笑。

「その言葉が聞けて、よかった。……って思えてしまうわ」

「そういうものですよ。

 私も、お別れは寂しい。……けど、だからこそ、貴女たちと一緒にいた時間が大切なものだと強く実感できます」

「そうか」

 胸に手を当てる。感じるのは寂寞。……けど、

 それは、それだけともにいた時間が大切だった証か。

「多摩も寂しいにゃあー、ジークの膝枕がいってしまうと思うと、明日から何を癒しにしていいかわからないにゃー」

 ぺしぺしと俺を叩きながら唇を尖らせる多摩。

「癒しなら大和でいいのではないか?」

「私ですかっ?」

「だーめーにゃ、……まあ、仕方ないにゃ。

 今度ジークが遊びに来たときは膝枕を所望するにゃ、それまで我慢するにゃ」

「私もっ、私も膝枕してくださいっ!」

 真面目に頷く多摩に、蒼龍も手を上げる。微笑。

「ああ、わかった。その時は付き合おう。……ただ、一人しか無理だが」

 ぐぬぬ、と火花を散らす多摩と蒼龍。そして、

「Hey、ジークっ!」

 すぱんっ、と背中を叩かれた。

「金剛?」

 そういえば、金剛は、

「金剛も、寂しいか?」

 思わず零れた問いに、金剛は肩を落とした。

「どーしてそういう事を聞くんデス? だからお子ちゃまなんデスヨ。

 そりゃあ、寂しい、デスケド」

 けど、金剛は手を伸ばし、ジャンヌを抱き寄せる。

「きゃっ」

「次に会う時は、世界を旅して、もっともっと素敵になったジャンヌに会えるネっ!

 それを思うと今から楽しみデスっ! だから、ジークっ」

 びしっ、と。金剛は俺に拳を突きつけて、

「変なことしたら、全弾砲撃ぶちかましちゃいますネっ!」

「……ああ、わかった。これからの旅、多くの事があるだろう。

 けど、俺はジャンヌを支えていく」

 俺のような未熟な子供がこんな事を言うのも不相応だろうが。

 金剛の強い瞳はそんな弱音を認めない。だから俺は胸を張って応じる。金剛は目を細めて、

「だから、ジャンヌ。

 もーっともーっと魅力的な女性になってクダサイっ! そしたら、改めてワタシのLoveを受け取ってもらいマスっ!」

「もうっ、私の恋人はジーク君ですっ!

 けど、金剛」

 ジャンヌも金剛の手を取って、

「いいでしょう。旅を続けて、……ええ、金剛の期待に応えられるよう、努力しましょう」

「ふふ、嬉しい。今から楽しみデス」

 そして、ウィンク一つ。

「ワタシも、ジャンヌに負けないくらい魅力的な女性になって、今度こそジャンヌのハートをGetデスっ!

 ジークには負けないデスっ!」

「ああ、そうだな」

 頷く、金剛の瞳を真っ向から見て、

「ジャンヌは渡さない。彼女の恋人は俺だ」

「ふっふー、素敵な宣戦布告ネっ」

 半ば睨みあうような形になったが、その間に挟まれるジャンヌは微笑。

「ええ、そうですね。楽しみにしていますよ。二人とも」

「けど、ジャンヌさんも油断しちゃだめだよ」

 ひょい、と時雨が割って入る。彼女は俺の手を取って、

「僕も、ね。お兄さんの傍にいたいんだ。

 だから、お兄さん。ジャンヌさんに愛想つかしたら、いつでも来てね」

「むぐっ」

 頬を紅潮させて見上げる時雨に、ジャンヌは言葉に詰まる。……溜息。

「私も精進しましょう。……ええ、時雨。

 貴女たちに、ジーク君は渡しませんっ! 彼は、私の恋人、ですっ!」

 宣言するジャンヌに時雨は微笑み頷く。そして、

「そろそろか」

 健也が時計に視線を落として、呟いた。……ああ、そんな時間か。

「では、ささやかながら贈り物を、」

「そうだな。俺たちとの出会いの、記念にしてほしい」

 ジャンヌと、それぞれ選んだアクセサリーを渡す。……大和が微妙な表情。

「この、天使の意匠はいいのですが。……竜?」

「これはジークかにゃ? 女の子に竜かにゃ? 最後におとぼけかにゃ?」

 呆れられてしまった。……まあ、仕方ないか。

「ふふ、いいデザインでしょう? 皆の行く先に幸があるように、祈っていますよ」

 好評な天使のアクセサリーを選んだジャンヌが胸を張る。そして、こちらに視線を向ける。

 解ってたのでしょう? と。……まあ、確かに女の子に贈るのはどうかと思うが。

 それでも、

「皆には話したな? 俺は、かつて聖人の救済を否定した。

 人々への救済となる聖杯を奪うという邪悪を成した。それは、全人類から糾弾される事かもしれない」

 死に怯え、嘆き、悲しむ者。……彼らは、俺を許さないかもしれない。

 けど、

「それでも、後悔はない。

 捨てられて悲しんでも諦めなかった暁たちと、怯えて逃げ出して、それでも、また戻ってきた健也と出会えて、俺の成したことは邪悪であったとしても間違いではないと思えた。

 だから、」

 竜のアクセサリー、その意匠は、

「正しい事を突きつけられても、それが嫌なら、邪悪を成したと言われても抗って欲しい。

 抗う事を、忘れないでほしい」

 そんな、……邪竜としての、俺の願い。

 正義さえ踏破する意志を持ち、進んでいって欲しい。そんな俺の希望。

「竜はそういう意味ですか。

 正しい事でも、それが辛いなら、悪と呼ばれても否定できるように、……ううん、龍の名前を持つ私としてはちょっと微妙かなあ」

「…………すまない」

 そうだ、蒼龍はその名に龍の文字を持つ。意味は違うが邪悪の象徴と言われれば面白くないだろう。

 けど、蒼龍は微笑んで、

「いいですよ。……ううん、嬉しいです。頑張っていきますね。

 嫌な事を無理に飲み込んで、後悔しないためにも」

「そうして深海凄艦になった艦娘もいたのだしねえ」

 拳を握る蒼龍の傍ら、足柄が苦笑。それもそうだ、と皆が頷いた。

 それと、

「健也」

「む?」

 自分にあるとは思わなかったらしい。ジャンヌに声をかけられて健也は意外そうな声を上げる。

 そんな彼に、ジャンヌは押し付けるように、小さなナイフの柄を向ける。

「次に、あの時のような無様をさらすのなら、これで腹を切りなさい」

 ジャンヌの言葉に皆がぎょっとする。ジャンヌは厳しい視線で彼を見据える。

 ジャンヌにとってそれは忌避しなければいけない言葉。それでも、彼女は聖女でなくかつて軍を指揮した指揮官として、今の軍人に言葉を突きつけた。

 健也は、一度目を閉じた。そして、………………………………「受け取ろう」

 差し出された柄を受け取った。

「……提督」

 困ったように声をかける大和に、健也は苦笑。

「部下が命を懸けて戦っているんだ。

 上官として、安穏として、……いるしかないか、だから、これは戒めだ」

 鞘から抜く。刃を見て、

「皆に命を預ける。皆が死んだら、自害する。……だから、私を死なせないでくれ。

 私も全力で皆が生きるように采配しよう。まあ、それが、ともに戦うという事、だろう」

「ばかな提督にゃ。というか、切腹なんてされても迷惑にゃ。その覚悟だけ腹に突き刺しておくにゃ」

 多摩が肩を落としてため息をついた。

「ああ、そうだな。……ありがとう。ジャンヌ君。

 これは大切にしよう」

「ええ、彼女たちと共に国を護れる、よき軍人となる事を祈っています」

 ジャンヌの言葉に頷き、最後に「ジークっ」

 さようなら、と。その言葉の前に呼びかけられた。声の主、そちらに視線を向けると。

 

 頬に手が当てられる。

 そして、さらり、綺麗な黒髪が視界に翻る。

 

「あ、」

 暁が、飛びついて、そのまま唇を押し付けられた。

 柔らかな唇と、熱い吐息。煌く、菫色の瞳。

 それを感じた刹那、顔を真っ赤にした暁が離れて、びしっ、と指を突きつける。

「い、いいっ、ジークっ! 暁みたいなレディーのキスは、ほんとならジークみたいなお子様には全然早いんだからねっ!

 だからっ、」

 ぎゅっと、暁は俺の手を掴んで、

「だから、……絶対、絶対に、…………」

 顔を真っ赤にして潤んだ瞳で告げられる言葉。……ああ、そうだな。

 俺は腰を落として、暁と視線を合わせる。真っ直ぐに、彼女に言葉を届けるために、

「ああ、誓おう。

 暁、俺は、いつか必ず貴女のような素敵なレディーに相応しい男になる」

「う、…………うん、絶対、……絶対に、よ」

 頬を赤く染めて、けど、嬉しそうに微笑む。ぽん、と、暁は頭を撫でられた。

「あ、……ええと、ジャンヌ?」

「本当に、油断できませんね。……ええ、暁。

 私も、貴女に負けないようなレディーを目指します。じゃないと、大切な恋人を取られてしまいますからね」

「あ、……あの、その、」

 暁は言葉に詰まる。彼女は、ジャンヌと俺の仲を尊重してくれていたのだから。

 そんな暁にジャンヌは優しく微笑み。

「思わず、私も見惚れてしまいました。

 とても、素敵な笑顔でしたよ」

「あ、…………うー」

 再度赤くなる暁。…………まあ、キスに関しては、あとでジャンヌに言われるだろうな。

 それは、何とかするしかないか。

 暁は、にやーと笑う足柄に手を引かれ、時雨は頬を膨らませてる。蒼龍が拳を振り上げ歓声を上げ、大和は拍手。多摩が親指を立てて称賛し、金剛がジャンヌに同じことをできなかったからか、地団駄を踏んでいる。

 

 そして、彼女たちは提督の所へ。振り返り、謹直な表情で並ぶ。

「私達の手を引いて、支えてくれた英雄に。

 敬礼っ!」

 

 ――――では、よき旅を。

 




 これにて『聖女とホムンクルスの艦隊これくしょん』完結となりました。
 お付き合いいただけた読者の皆さま、ありがとうございました。

 英雄の歩む絢爛な旅路には程遠いささやかな一幕。
 けど、彼らと彼女たちが歩いていく永い旅路の一幕として確かに刻まれた。そんなお話になっていれば作者として幸いです。

 では、よき旅を。
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