妖精さん、こんにちは   作:内臓脂肪が多いガリノッポ

5 / 6
大変お久しぶりです。正直サボっていました。待っていた方がいたのなら大変申し訳ありません。これからは安定して投稿できると思いますので、どうぞよろしくお願いします。


反省しよう、妖精さん

時は春真っ只中。この山に残っていた地面の雪は散った桜の花びらになり、冷たく鋭い風は体を包む暖かなマフラーとなっていた。

 

山の中にある我が家すら暖かいということは、今年の春は例年に比べ幾分気温が高いみたいだ。

 

「むー、なんか暑い。ツナミー、冷たいジュースちょーだい…」

 

すっかりこの家の生活に慣れたこの妖精さんは春の暑さ、もとい暖かさにやられて少しアウェーな気分になっていた。

 

「春の気温で暑いって言ってたら夏はどうなっちゃうのさ。これからしばらく気温は上がりっぱなしだよ?」

 

「じゃーあたいずっと家の中にいるー…」

 

このままだと今時日本では珍しくもなくなった夏の引きこもりが、また一人生まれてしまう。

 

「気を強く持とうね。はい、冷たいオレンジジュースだよ。」

 

机にジュースを置くとチルノは目にも止まらぬ速さでコップを手に持ち、そのスピードのまま首の角度を90度傾ける。その角度に比例するように中の液体はものすごいスピードで減っていく。

 

「んく、ぷっはぁー!!」

 

そこに残ったのは気持ちの良いチルノの声と、さっきまで怠そうにしていたとは思えないほど大きな笑顔だった。まあ、要するに僕が言いたいのは、

 

「ツナミ!!きょーは家のまわりの森の中 でたんけん するわよ!!」

 

雪だ桜だ、と季節による変化もあるけれど、彼女の笑顔は変わってはいないってことだ。

 

「それをするにしても、何にしても、まずはお昼を食べてからにしようか。もう正午だしね。」

 

「あたい まつざかぎゅー のステーキが食べたい!!」

 

「いや、だから我が家ではそんな物買う余裕がないんだってば。」

 

うーん、変わらなさ過ぎるのも問題だなぁ。割と切実にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の状況をありのままに説明しよう。

 

「ドロボーは帰れー!!悪さをしようとしても、このチルノ様がゆるさないわー!!」

 

「いや、その私たちは断じてその様な者ではないのだが……ってちょっと!?もう少し落ち着いて話を聞いてください!?突然人めがけて氷を飛ばしてくるのは止めて!!お姉様、貴女も後ろで微笑んでないで助けて下さい!!というか、何でこんな所に弾幕飛ばせる人がいるんですか!?この娘何者!?あれ、羽があるってことは妖精!?!?何でこんな所に!?もう流石に突然過ぎて私着いていけませんよ!!そしてそこの妖精!!私達を盗人と言い攻撃していますが、それによりこの玄関が今にも跡形もなくなりそうですよ!!それは目的と手段が一致していないのではありませんか?!?!」

 

目の前ではチルノが誰かに氷の弾を放っている光景がある。玄関で放てばそれは当たり前だがそこはグチャグチャになるわけで。

下駄箱は砕け散り木片が宙に浮いている。半開きしている扉にはいくつも鋭い氷が突き刺さっていて、ガラスは存在していた形跡さえ消え去り、初めから風通しの良い扉であったかの様な有様だ。あー、あの靴意外とお気に入りだったんだけどなぁ。見事なまでに靴底に穴があいてるよーハハハ。

 

あまりの突然の光景にこの時の僕の思考はまったく追いついていなかったように思う。

 

「うるさーい!!ドロボーやふしんしゃ のはなしを聞いちゃダメって てれび でいってたわ!!だからあたいあんたのはなしなんてきいてやんない!!」

 

「その考え方は間違ってはいませんし正しいと私も思いますが、前提として私たちがそのような輩であるという認識が間違っています!!って津波!!そこにいるのなら早くこの娘を止めてください!!早くしないと貴方の家の玄関は誰でもウェルカムしてしまうとても物理的にオープンなものとなってしまいますよ!!そして何よりもこの狭い玄関でこの娘の攻撃をサイドステップで避け続ける私を早く解放して下さいー!!」

 

必死な僕への呼びかけにより、ようやく僕の思考は、現状に追いついた。そして玄関で目にも止まらぬスピードでチルノの攻撃を避け続けている人が自分の知り合いであることに気がついた。

 

「ああ、なんだ、依姫さんだったんですね。いきなりの訪問で驚いちゃいましたよ。来たなら来たと言ってくれれば良かったのに。豊姫さんもお久しぶりです。今日は如何されたんですか?」

 

暴れている二人の向こうには、これまた僕の知り合いの方が楽しそうに見物していた。

 

「ふふ、こんにちは津波。突然で迷惑かもしれないけど、あんまりにも暇だったから文字通りお邪魔にきたわ。」

 

「いえ、お二人ならいつ来ても問題ありませんよ。僕が此処にいられるのも豊姫さんと依姫さんのおかげですから。」

 

「津波!!あいさつをするのは構いませんが、自分の頭が状況を把握できないから思考を停止させるのはどうかと思いますよ!!そして再三言いますがお姉さま!!貴女の場合はただ楽しんでいるだけでしょう!?いい加減にして下さい!!」

 

うん?僕が思考を停止しているだって?いやぁ、だって依姫さんはチルノに氷を飛ばされているだけで、確かに僕のお気に入りの靴はおしゃかになっちゃったけど、あとはそろそろ玄関がチルノが放った氷で穴が開き始めて日の光が入りやすく、そして風通しが良くなっているくらいでとくに問題は......ん?

「_________問題ありありだーー!!やばい、このままだと僕の家は穴あきあきの誰でもウエルカムしてしまうとても物理的にオープンな家になってしまう!!」

 

「ようやく気付きましたか!!それならば早く!!早く私をこのサイドステップ限定の弾幕ごっことやらから解放して下さい!!そしてその台詞はとっくの前に私が言いましたからね!!」

 

ようやく事の重大さに気がついた僕は、急いでチルノを落ち着かせに縮地のごとく重心を下げ、猛スピードで玄関を守りに死地へ飛び込んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ホントもう、その〜、す、すいませんでした!!」

 

我が人生最速のお辞儀が、二人へ繰り出された。その角度九十ちょっきし。首は下に曲がらず、腰は横に直線に、お尻は後ろに出っ張らない。確実に人生で最速で精巧で最高な謝罪であろうそれは、昼間の太陽の下で行われていた。

 

つまりは、アレだ。玄関を……マモレナカッタ………。

 

「いえ、確かに突然襲われたことに驚きは隠せませんでしたが、結果的に被害を受けたのは津波、貴方の方でしょうに。」

 

「そうよー、ここは貴方の家なんだからそれが少し壊れたからって私たちに謝る必要はないわよ?それに私的は面白いものが観られたからむしろやってくれて嬉しかったわ。」

 

「お姉様!貴女は寧ろ止めなければならないところだったしょう!?」

 

「え〜、だって困ってる依姫ちゃんって、可愛いじゃない?」

 

あーだ、こーだ、うんだー、かんだー。今度は姉妹喧嘩が始まりました。いや、喧嘩というか、じゃ、じゃれ合い?

 

「ねーツナミ、この人たちだれ?」

 

チルノがそう聞いてきた。

「おっと、そうだった。チルノにはまだ紹介してなかったね。このお二人は綿月依姫さんと、綿月豊姫さん。二人は姉妹で、僕にこの家を紹介してくれた方だよ。」

 

そう、この御二方は途方に暮れていた僕を助けてくれたんだ。当時それがどれだけ助けになったことか、本当にこの御二方には頭が上がらない。

 

「紹介に預かりました、綿月依姫です。趣味で武道を営んでいます。チルノ…さん、と呼ばせてもらいますね。宜しくお願いします。」

 

依姫さんはちょっと堅い方で、どうも誰に対してこんな話し方になってしまう。けど、言葉遣いからも分かる通り真面目でしっかりとした方だから、とっても頼りになるんだ。……腰にある刀は気にしないようにしている。

 

「綿月豊姫よ。チルノちゃん、宜しくね。あ、好きな食べ物は桃よ〜。」

 

依姫さんの姉の豊姫さんは、依姫さんとは対照的でとてもフレンドリーに接してくれる方だ。けどちょっと悪戯が多い方でもあるから僕は偶に、妹である依姫さんは毎回困らされている。それでも優しい人だからきっと何処でも好かれてる方なんだと思う。……腰に差している扇子で扇ぐと、虫どころか鳥すらも消え去るのは気のせいだと思いたい。

 

対照的な姉妹ではあるけど、だからこそ互いに短所を補い合えているのかもしれない。まあ、結局のところ二人共とても良い人なんだけど。

 

「あたいは、さいきょーのチルノ!!好きなものは はんばーく と かれー と おむらいす と えーと、うーんと。……とにかくいっぱいあるわ!!」

 

チルノはさっきの出来事に何の後ろめたさも無いようで、盛大に胸を張り自己紹介をした。いやいや、少しは反省しようよ。

 

「チルノ、自己紹介も良いけど、故意ではなかったとして突然驚かせたんだし、依姫さんに謝らなきゃ。」

 

「あたい悪くないもん!」

 

まあ確かに突然見知らぬ人が来たら驚くもんだけど、それと人を襲って良いかは別だ。

 

「うん。きっとチルノは悪くないんだろうけどさ、けど考えてもみてよ。もし、チルノが突然ハンバーグを食べてるのを邪魔されたらどうする?」

 

「じゃましたヤツをぶっとばすわ!!」

 

いや、うん、想像通りの回答なんだけど、こうはっきりと言われるとなんだか微妙な気分になるね。

 

「うん。けどチルノ、それと似たようなことを今さっき、依姫さんにしちゃったんだよ?」

 

「むー、けどあたい、むー……」

 

チルノにも言葉の意味はしっかりと伝わっているようで、自分の非を理解し始めたようだった。それが分かるなら問題はないかな。

 

「もし、チルノが少しでも悪く思ってるなら、依姫さんに謝ろう。思ってることをちゃんと伝えよう。ね?」

 

チルノは僕の言葉を正しく受け止めてくれたようで、少しもじもじしていたけど、やがて顔を上げて依姫さんの方を向いた。

 

「……あたい、悪かった。ごめんなさい……」

 

チルノが此処に来てから、初めて謝罪した瞬間だった。

 

「いえ、私は深く気にしてはいません。しっかりと自らの行動を見直せたのならば、それで良いと思いますよ。そして次に活かしましょう。」

 

依姫さんはチルノの頭を撫でながら、優しくそう言った。初めて経験する感覚なのか、チルノはむず痒そうに少し頰を赤らめた。そんなチルノが少し新鮮で、何だか得した気分になった。

 

「あら、依姫ちゃんったら小さい子には優しいのね。私のときはいつも拳骨が飛んでくるのに。」

 

「お姉様は故意にやっているではありませんか。ですから有罪です。」

 

そして、また姉妹のじゃれ合いが始まった。うんぬんかんぬん、すったもんだ。

 

態々怒ると分かっていて言う豊姫さんは本当に依姫さんを弄るのが好きみたいだ。それにしっかり反応する依姫さんも律儀だとおもう。いや、これがこの姉妹のコミュニケーションの取り方なのかもしれない。だって全然仲が悪そうには見えないから。少し憧れる関係だと思う。

 

因みに、そんなじゃれ合いは依姫さんの拳骨で終わりを迎えたとだけ言っておこう。

 




よっちゃん、もとい依姫を嫌いなわけではないです。むしろ好きな部類です。よっちゃん、可愛いよよっちゃん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。