久多良木夫妻の帝国漫遊記   作:椿リンカ

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前回のあらすじ
だいたいそうなる予想はついていた
以上


久多良木陽子は運命を感じない

 

「陽子さんでしたかな?お子さんを探していると聞きましたが、とても経産婦には見えませんねぇ」

「あらあら、ふふふ・・・美容には気を付けていますもの」

 

「お子さんを探しているとなると大変でしょう?」

「大丈夫よ。家の子たちは成人している子がばかりですもの。それに私には夫がいるから平気ね」

 

「そこの旦那さんをですか・・・へぇ、そうですか。お強いんですねぇ」

「ふふふ、そうね。自慢の夫よ」

 

オネスト大臣はシュラがウェイブと戦うということすら忘れて、陽子の隣に陣取っていた。陽子に話しかけており、大地は睨みつけている状況だ。

なお、オネスト大臣は気が付いていながらもスルーしている模様。

 

ブドー大将軍は沈黙を貫き、クロメは事の事態を静かに見守っているようだ。

 

「へぇ、子供が多いのですね」

「・・・7人よ。どの子もいい子なんですの」

 

【7人】という数を聞いて、大臣の笑みが一瞬だけ引き攣った。

見た目には30代ほどにみえるが、7人の大半が成人していると聞けば・・・まぁ、年齢は気になるだろう。気になってしまう。

 

・・・実際は8人なのだが、まぁ、この場合は言わなくてもいいことだろう。なまじオネスト大臣を相手に話しているのだ、余計な弱みは言わなくても良いだろう。

 

別に見た目が綺麗ならば、オネスト大臣としては問題が無い。これはあくまで彼の好奇心が訴えかけるのだ。

仕方がないことである。

 

「・・・7人産んだようには見えませんねぇ」

「あらぁ、それほどでもないわ」

 

「お世辞ではありませんよ、とてもお若く見えます」

「ふふふ、そんなに褒めても何も出ませんわ」

 

会話がまだ続けられる。ウェイブは多少準備は出来ているものの、シュラは完全に意識がそちらに向いているのか、先ほどウェイブに殴られたことすら忘れてチラチラと大臣のほうへと意識を向けていた。

 

「お前・・・」

「うるせぇ、てめぇなんてノシてやるからな!・・・親父、いつまであのバ・・・女を口説いてんだよ・・・」

 

 

 

 

「・・・すみませんが、ちなみに年齢は?お若いように見えますが」

 

 

大臣がにこやかに聞いた。そう、にこやかに聞いたつもりだった。

しかし陽子は少しだけ間をおいて、ゆっくりと答える。

 

「・・・・・・あら、聞こえなかったわ。なんて言ったのかしら?私、聞き逃してしまったの」

「いやだから、貴方の年齢・・・」

 

そして再び、一呼吸おく陽子

 

 

「・・・ごめんなさい、聞こえなかったわ。何を、聞いたのか、もう一度、言ってくれないかしら?」

 

 

ゆっくりと、まるで幼子に聞かせるように彼女は笑顔を張り付けて尋ね返した。

 

 

「アッハイ、もういいです。なんでもありません」

 

 

好奇心は猫をも殺す、というよりも、好奇心は悪徳大臣すらをも毒牙にかける。

戦闘能力がずば抜けて高いとは思えないが、明らかに何か触れてはならない何かを感じる・・・オネストはすぐさまにこの話題を変えようと、「さぁ!シュラ、存分に戦ってみせてください!」とシュラへと声をかけた。

 

「おう!任せとけ!こんな田舎者、すぐにぶっ飛ばしてやるぜ!」

「・・・言ってろ」

 

 

 

 

はてさて、彼らの戦いの顛末は読者諸君ならばわかり切っているだろう。

完成されつつあるシュラと、すでに完成された強さであるウェイブ・・・その二人が戦ったならば、その結果はある程度分かることだ。

 

(もちろん、勝負は時の運・・・という言葉もあるけれども)

 

 

「・・・お前らが傷つけた、帝都の民の分だ」

 

 

勝負は、ウェイブの勝ちとなった。

ブドーは満足そうに「その力を存分に帝国のために使うと良い・・・」と去っていく。彼らの実力を自身の目で確かめることができたからだろうか。

 

「はー・・・こんな田舎者にヤられるなんて。まったく、気が抜けてますねぇ」

 

オネストは興味が無さそうに呟いて、適当な兵士に運ぶように言いつけて運ばせようとする。そして、さっさと陽子の手を引こうとする。

 

「さて、私と一緒にお酒でもどうですか?」

 

だが、陽子は「あら、ごめんなさい」とオネスト大臣の横をすり抜けて、シュラの元へと歩いた。

 

 

「私は貴方の息子さんの手当てがありますので」

 

 

その切り替えし方にクロメとウェイブは驚嘆を隠せないが、大地は「そうだな。父親である貴方がついていないなら、こちらでやっておこう」と陽子に寄り添った。

 

どうやら大地は、陽子が「オネスト大臣にお誘いを受けることを前提として、どういった切り替えしで切り抜けるか」を分かっていたらしい。

そのまま倒れこんで気絶したシュラを大地が抱え、陽子はそれに寄り添いながら移動することにした。

 

「あの、俺も手当て、手伝います」

「ウェイブも手当てが必要でしょ」

 

ウェイブもすぐに理解したのか、自分も発言に乗っかるのだがクロメにさりげなくツッコミを入れられてしまう。

 

 

「それじゃあ私はこれで。今日は楽しかったわ。用事があるなら・・・”エスデス将軍”を介してくださいませ」

 

 

陽子は上品に笑みを浮かべつつ、牽制を含めた台詞を言って大地と共にイェーガーズの本部へと向かうのだった・・・

 

 




大地さんと陽子さんは48歳同級生です。
アラフィフ!アラフィフ!
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