久多良木夫妻の帝国漫遊記   作:椿リンカ

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久多良木陽子は皇帝陛下と出会う

 

______________side久多良木大地

 

 

シュラの質問に大地は沈黙する。

焦っているわけではなく、正直に話したところで信用はされないだろうし、仮に本当のことを話したことでどうにもなるわけではない。

そもそも、自分が話したところでシュラという人間はそれを信用するはずもないだろうと踏んでいるのだ。

 

「なんだよ、話せないのか?適当に吐かせるまで痛めつけてもいいんだぜ?」

「・・・話したところでお前が一笑に付すだけになるぞ」

 

「あぁん?いいから話せよ」

「・・・話半分で聞け、どうせお前は信用しないだろうしな」

 

 

 

 

______________side皇帝陛下

 

 

皇帝はオネスト大臣に詰め寄られたが、会話を盗み聞きしたことを素直に話すことができなかった。

オネスト大臣を信用していないわけではない。むしろ皇帝からすればオネストを信頼したいという気持ちに満たされているのだ。

 

「皇帝である自分」が「会話を盗み聞きした」ということを叱られること

 

・・・オネストに失望されるのが、少し嫌だったのだ。

 

「いや、なんでもないんだ。そういうことを偶々聞いて・・・」

「相手は?どんな人間がそれを言ったのですか陛下?」

 

「その、余にも分からなくて・・・だな・・・。余も歩いていただけで、相手の顔も姿も見ていないんだ」

「・・・本当に?」

 

「ほっ、本当だ・・・!だからその、オネストは気になるかもしれないがっ・・・余には、誰が、言ったかまでは・・・」

「嘘では無いんですね?誰が言ったか、陛下は分からなかったのですか?」

 

念押しするように尋ねるオネストに対して、皇帝はなんとか取り繕って答える。

 

「・・・・・・余は、お前のことを信じてる。お前は・・・そのようなことをする人間ではない。父上もお前のことを懇意にしていた」

「そうでしょう?私は前皇帝陛下も、陛下自身にも忠誠を尽くしております」

 

「そう、だな。すまない」

 

それだけ答えて、皇帝は食事を終わらせた。オネスト大臣と普段は遊ぶことも多いのだが、さすがに今日は遊ぶ気になれなかったらしい。

一度は部屋に戻った皇帝だったが、あの時の久多良木夫妻の会話が気になってしまった。

 

「(・・・あの会話が気になる。帝国が終わると言い切ったことも、オネストが父上と母上を・・・)」

 

しばらくベッドに寝っ転がって悩んだ後、彼は起き上がった。

 

「(行くしか、ない。今度こそ会って、直接聞いてみよう。あのような言動も、もしかして帝具か何かを持っていたのかもしれない・・・)」

 

そう思い立って彼は部屋から出て、イェーガーズ本部へと向かった。

 

 

 

本部に近づくと、甘い匂いが漂ってくる。

匂いがするほうへと自然と向かっていくと、何人かが話している声が聞こえてきた。どうやら複数人で何かを作っているらしい。

 

「フレンチトースト、上手く焼けたよ!」

「あら、上手ね・・・ふふ、クロメさんはどうですか?」

「・・・ちょっと焦げちゃったかな」

 

「クロメちゃんもローグちゃんも、美味しそうに出来てるわよ」

「陽子さん、卵液の追加が出来ましたよ」

「あぁ、俺もパンが切れました。エスデス将軍が帰ってきたらみんなで食べましょう」

 

賑やかな声に誘われて、皇帝が部屋の近くまで来ると・・・どうやらイェーガーズの隊員であるウェイブ、ラン、クロメ、そして皇帝からすると見知らぬ女性二人と、少女と共にフレンチトーストを作っているらしい。

 

「・・・あれ?誰かいるの?」

 

少女のほうが皇帝がいることに気が付き、扉のほうまでやってきた。

 

「っ!え、えっと、余は・・・」

 

皇帝の姿を見たイェーガーズの3人はしばし止まったあとに、すぐさま跪いた。それを見て、女性の一人は少女を引き寄せて、すぐさまお辞儀をした。

なお、もう一人の女性・・・久多良木陽子は「あらあら」とにこやかに挨拶をする。

 

「皇帝陛下っ・・・!?あ、あの!こんにちは!」

「ウェイブ、そこは挨拶じゃなくて・・・陛下、どうしてイェーガーズ本部に?」

 

ランの言葉に、皇帝は少し言い淀んだ。

話を聞こうと思ってやってきたのだが、完全にタイミングを外してしまったようで・・・「見回り、みたいなものだ」と誤魔化してしまった。

 

「あらあら、それじゃあフレンチトースト食べる?」

 

陽子は相手が皇帝に関わらず、とてもフランクに話しかける。ウェイブたちがその行動に戸惑う中で、彼女はフレンチトーストをお皿に寄せた。

 

「よ、余にか?」

「えぇ、みんなで食べると美味しいわよ」

 

「陽子さん、あの、その方は皇帝陛下で・・・」

 

クロメが声を掛けるが、陽子が「そうみたいね~」と気軽に返事をした。

 

「皇帝陛下でも、みんなで食べるごはんは楽しいんじゃないかしら?皇帝も軍人も市民も、みんな人間よ?」

 

その言葉に全員が硬直した。

だが、その場に空気を読むことなく、部屋に大地とシュラが入ってきた。

 

「陽子、話が・・・・・・どうした?」

「・・・げっ」

 

「あら、貴方。フレンチトーストが出来たの。そこのやんちゃな貴方も食べてみない?」

 

陽子の言葉に大地は「あぁ」と答えて視線を移し、彼も皇帝陛下に気が付いた。

 

「あぁ、もしかして皇帝陛下か。こんな場所に来るとは思ってなかったが・・・フレンチトーストでも食べていきますか?」

「えっ」

 

「子供はたくさん食べるのが一番ですからね」

「・・・お、おぉ、そうだな・・・」

 

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