久多良木夫妻の帝国漫遊記   作:椿リンカ

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前回のあらすじ

皇帝陛下の返事にシュラさん思わず「やばたにえんのむりちゃづけ」


ご都合主義編
久多良木大地は頭を抱える


 

久多良木大地は、自分たちの境遇を全面的に信頼されると思っていなかった。

 

むしろ不敬であると牢屋に入れられたり拷問の類を受ける可能性が高いと踏んでいたし、それに対してのある程度の対策も考慮していたほどだ。

 

だが実際はどうだ。皇帝陛下は全面的に信じると宣言したのだ。

 

「(どうしてこうなった・・・)」

 

皇帝陛下の発言で大地は頭を抱えてしまった。

陽子もこれにはさすがに驚いたのか、呆気にとられてしまっている。

 

「おいおい、信じるってそんな・・・あんな馬鹿な話を信じるって・・・」

「シュラ、余はこの者たちの言葉を信じよう。その上で帝国が滅ばぬように対策を立てれば良いだろう?」

 

「いや、あのなぁ・・・!ってことはなんだ、親父が暗殺したっていうのも信じるつもりか!?」

「それに関しては保留だ。言っていただろう?あくまでも可能性の一つとな。・・・余も大臣のことは信頼したいのだ。本当はそんなことをしていないとな・・・」

 

「それは・・・」

「だが、その可能性があるならば考慮しなければならない。ましてや至高の帝具の存在や姿かたちを知っている人間からの情報ならば猶更だ」

 

シュラの言葉に皇帝陛下はきちんと返答していく。少し戸惑いを含みながらも、そこにはしっかりと為政者としての振る舞いが滲み出ていた。

 

「・・・まずは帝国の危機を対処してからだ。暗殺の一件に関しては確たる証拠がない限りは犯人扱いなぞしない。安心してほしい」

「・・・」

 

「イェーガーズの・・・ウェイブ、クロメ。エスデス将軍が戻り次第、話をつけたい。余はブドーを呼んでおこう」

「は、はい!ですがあの・・・本当にさっきの話を・・・」

「・・・本気ですか?」

 

ウェイブとクロメの二人もさすがに戸惑っているらしい。

 

「あぁ。余に信じてほしいと言っていたなら、疑っていたかもしれないがな」

 

皇帝陛下はそう答えながら少し目を伏せる。

 

「今までも嘆願を聞いたことはあるが、どれも自分を信じてほしいと訴えていた。他の者だってそうだ、信じてほしいと言われることばかりだ。・・・だが、この二人は違った」

 

そこで一区切りしながら顔を上げる。

 

「”信じなくてもいい”という前提で話されたのは初めてだ。だから余は信じたいと思った・・・それだけだ」

 

「・・・あらあら、どうします、お父さん」

「・・・どうもこうも・・・はぁ。厄介なことになった」

 

皇帝陛下に対して、少し困る陽子と完全に困ってしまった大地・・・

ウェイブとクロメも二人の様子を見てさらに困惑している。

 

そしてシュラはこの状況に最初は面食らっていたが・・・

 

 

「いやー!それなら俺は協力するぜ。陛下、何か調べてほしいことがあれば俺に言ってくれ」

「良いのか?」

 

「あぁ、親父がそんなことしてるって俺も思いたくないが・・・この国の皇帝がそう言うなら俺もそうするしかないしなぁ」

「そうなのか・・・疑いとはいえ、心苦しいだろう。ぜひ協力してくれ」

 

「あぁ!任せてくれ!」

 

この発言に大地は完全に頭を抱えた。

 

「あの、大地さん・・・?大丈夫ですか?」

 

こっそりとウェイブが大地に耳打ちして、大地に声を掛けた。

 

「・・・なんでこうなったのか、面倒なことに・・・」

「いや俺も驚きましたけど、でもあの大臣の息子が陛下の味方になってくれますし・・・」

 

「あれは違う。恐らくは・・・」

 

 

 

 

 

【シュラ視点】

 

親父が前の皇帝と皇后を暗殺したって話がマジなら、親父の箔がつくってもんだ。

そう思っていたし、親父を超えなきゃいけないと益々やる気が出た。

 

皇帝陛下に話を聞かれたときは一族粛清されるのかと思っていたが、面白い方向に話が転んで・・・・・・まさか信じると思ってなくて、びびっちまった。

 

だがこれはチャンスだ。

 

親父は基本的に俺より何枚も上手だし、頭も回る。性悪さで言うなら俺なんて親父に比べたらまだまだだ。

そんな親父を超えることができるかもしれない。

 

・・・正直、まだこっちのおっさんとババアのことは許してないが利用しがいがある。

 

皇帝陛下を俺の味方にしちまえば、あの至高の帝具だって俺の手札に加えることだってできるかもしれねぇ

 

「よろしくな、シュラ。この話はブドーとエスデスにも通すが・・・大臣には秘密にしてくれ」

「あぁ、任せてくれ」

 

お前も俺のために役立ってくれよ?

 

そう考えていた瞬間に脳天に痛みが走った。

 

 

「~~~~~~~~~っっっ!!!!」

 

 

「どうせくだらんことを考えていたんだろうが、余計なことはするなよ」

 

 

このおっさん、この俺にチョップ喰らわせやがった・・・!!

 

 

「こら、お父さん。怪我人だった子にそこまでしないの」

 

・・・なぜかあのババアが俺のことを庇ってきた。

よくわからねぇが大丈夫か声を掛けてきたので、ちょっと仕返ししてやろうかと思った。

 

が、胸元からはしっかりとすりおろし器が見えていた。

 

「ひっ・・・・・・!」

「・・・ふふ、皇帝ちゃんに協力してくれるのはいいけど悪いことはしちゃだめよ?」

 

いいから胸元のすりおろし器をどっかに捨てろ!!!

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