久多良木夫妻の帝国漫遊記   作:椿リンカ

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これが事実上の最終回


久多良木夫妻は世界を旅立つ

前回までのあらすじ・・・といえど、特筆することもない。

奇妙なまでのご都合主義的な幸運によって、久多良木夫妻は生き残った。

 

帝国は腐敗しきった政治家や軍人を一掃することになり、革命軍との和平交渉へと移った。

革命軍が危険視していたエスデスは、なぜか戦争を引き起こすことなく満足そうに和平交渉に望んでいた。

 

無論それにも理由はあるが・・・とにもかくにも、久多良木夫妻は悪魔との賭けに事実上勝利したのだ。、

 

 

 

「陽子、片付けは済んだのか?」

「えぇ、もちろん」

 

イェーガーズ本部にて、久多良木夫妻は借りていた部屋を掃除していた。

彼らの目的は娘や息子に再会すること・・・だからこそ、勝利したのだから離れるのは当然のことだ。

 

「もうすぐここからも離れるのね・・・」

「存外、苦労も少なくて助かった」

 

「あら、楽しかったわよ?」

「疲れた・・・はやく露子の顔が見たい。それに露子は可愛いんだぞ!?変質者や良からぬ男が手を出しているかもしれない!!」

 

「あなた、朝人は?」

「あいつはまだ多少未熟なところもあるが、しっかりしている。自分に降りかかった火の粉を振り払う力強さがあるが、露子はか弱いんだぞ!?」

 

久多良木夫妻が和やかに会話をしていると、ウェイブとクロメ、ランが入ってきた。

 

「会話中すみません、お二人とも」

「なんか楽しそうに喋ってたんですが・・・」

「・・・皇帝陛下から呼ばれてる。一緒に来てほしい」

 

皇帝陛下からの呼び出し

突然のことに、久多良木夫妻は顔を見合わせた。

 

 

 

_________謁見の間にて

 

「これから民たちに国を任せることになったから、余をお前たちの国に連れていってほしい」

 

皇帝からのとんでもない発言に、その場にいた久多良木夫妻もエスデス以外のイェーガーズのメンバー、シュラ以外のワイルドハントのメンバーも言葉を失っていた。

 

「・・・陛下が国を治める方向にまとめたかったが、陛下が進言なされた。陛下のお言葉なら、それに従うまでだ」

 

ブドー大将軍は諦めたようにため息と共に簡単に説明をしたが・・・

その簡単な説明で納得できるはずもなく、ウェイブからは「どうして?!」と声があがった。

 

「奸臣を見抜けぬなぞ、ただの暗愚だろう。例え許されたとして、余が許可を出して処刑された者たちは数多い」

「それは・・・悪いのは騙した奴らでしょう!?陛下に非はありません!」

 

ウェイブの言葉に、皇帝は沈黙する。

その代弁なのか、ブドー大将軍がそれに答えた。

 

「悪心を見抜ける力も皇帝には必要・・・陛下は、真意を見抜けなかった自らに力不足を感じたまでだ。だからこそ、陛下はこの国を我々たちに託すのだ」

「・・・ですが、大地さんたちの国ってことは・・・」

 

「・・・ようは、自ら幽閉されようとしておるようなものじゃなぁ」

 

にやりと、猫のようにドロテアは合いの手をいれる。

 

「・・・だめか?」

「いや、いきなり言われても・・・待ってください、色々こちらもそれは準備が必要になるんです。それで・・・」

 

大地は珍しく焦りながら言葉を濁した。

 

異世界の、しかも自分たちの世界では架空のキャラクターが生きていけるものなのかと。

戸籍制度や保障面、そもそも見た目もそうだし、何より未成年で・・・そうなると学校はどうするか・・・

 

彼の頭の中に駆け巡るのは、受け入れてからの心配だ。ぶつぶつと言葉に出していたそれらを陽子はしっかりと聞いていた。

 

「あなた」

「どうした?やはりお前も心配・・・」

 

「さっきから心配してること、受け入れてからのことばかりね」

「そうもなるだろう?!まず年齢からして義務教育を受けるし、それに病院はどうする?!戸籍がなければ保険証も・・・」

 

「断らないのね」

「?」

 

陽子の言葉に大地は首を傾げた。

 

「当たり前だろう。断る理由があるのか?」

 

当然のように彼は答える。

 

「あなたらしいわね。そういうところが好きなの」

「なんだ突然、惚れ直すほどのことだったか?」

 

「あら、惚れ直してるのは毎日よ」

「俺もだ」

 

このやりとりにその場にいた何人かは微笑ましくしているし、一部の人間は胸焼けで倒れそうになった。

そんなやり取りをしていると「話はまとまったか?」と聞き慣れた声が謁見の間に響いた。

 

「エスデス将軍!もう終わったのか?」

「陛下、交渉は終わりました」

 

そこにやってきたのはズタボロにされたシュラを引きずっているエスデス将軍であった。

 

「交渉・・・?」

 

大地が怪訝そうに呟くと、エスデスはそれに答えた。

 

「あの悪魔と交渉して、私と大臣の息子も異世界を巡るつもりでな。その拠点を陛下が住む場所にしてもらうつもりだ」

 

その言葉に、静けさが部屋に訪れる。

大地はぎこちなく動きながら皇帝へと向き直った。

 

「少し考えさせてください」

「そんなにエスデスちゃんが苦手なの?」

 

 

 

久多良木大地は抵抗したものの、エスデスに押しきられた。

 

異世界があると知ったエスデスは強者と戦うために国から離れることを選んだ。ついでに帝国で権力を得ようとしたシュラをブドーがエスデスに託した形となった。

 

「部屋ならいくつかあるが、まずは日本の法律から学んでもらわないと・・・」

「とりあえず、一度帰って露子たちを迎えに行かなきゃ」

 

「楽しみだな、エスデス、シュラ」

「なんで俺まで!いやほんと首輪はずせよ!?」

「ふふ、あのロッドバルトとも戦いたいが異世界の強者も楽しみだ・・・」

 

 

そのあと、エスデスによる異世界旅行や露子の婚約者問題、朝人の転生など、まだまだ彼らの話は続きます。

それはまた、別の話で




露子との再会小話などは予定(予定は未定)となります

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