世界を越えたその先で   作:コードα

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脱出2:少女の決意

シャナ=ミア様に報告した後、直ぐに現場に戻るよう命を承ったマナはカズマが生きていたことを喜んで良いのか、仲間の敵とその場で殺してしまいたいと思えば良いのか分からなかった。

 

あの通信の一言がずっと気がかりだった。

 

思いだせそうなんだよ!

 

つまり、カズマに以前の記憶が無いのではないか?或いは何かの原因で思い出すことが出来ない状態なのではと勘繰った。

 

(エ=セルダ様は、知っていたようだし・・・・シャナ=ミア様は知らないようだった。グ=ランドン様が関わっている?)

 

マナは考えながら、一般用の銀色《ヴォルレント》を駆る。

 

オルゴン転送装置まで、大破したカズマ機を牽引する同行者の《リュンピー》を警護

し、直ぐに転送。

 

思い出せば、グ=ランドンはソレらしい単語を使っていた。

 

実験体

 

それが、今の祠堂カズマの状態と関係があるのなら・・・・私はグ=ランドン様の口車に踊らされたのか?

 

そう考えると虚しくなった。

 

もしもカズマを殺した所で仲間達は帰ってこないのだ。

 

分かっている、分かっていたはずなのに。

 

「何をやってるんだ、私は!」

 

吐き捨て、自身も転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガ=ウラ・フューリア、その最端にある格納庫に布を被り、鎖で吊るされている騎士機がある。

 

その布が引き剥がされ、調整が再開されたのは二日前のことだ。

 

「漸く、お前の出番が来たんじゃないか?」

 

騎士にランクアップした彼女を知る彼は、浅黄色を主体に塗装された騎士機を見上げる。

 

試験型《ヴォルレント》から取ったデータを元に新造したオルゴナイトシールドが、クレーンで吊るされて腕に装備される。

 

「アイツの戦い方は随分突撃思考みたいだからな。頑丈に仕上げてやらないとお前も辛いだろう?」

 

二人を知り、友人であると自負している青年、ラ=ルク・オーヴァは、唯“その時”を待つ騎士機《ラフトクランズ・レイス》へ語りかけるようにそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!」

 

マナは自室に戻るなり、忌々しげに吐き捨ててベッドへ飛び込んだ。

 

良かった、生きていてくれて・・・と心底思った。

 

発見した当時、カズマに寄り添う少女の存在に心当たりがあった。

 

以前、シャナ=ミア様が言っていたうちの一人だと感が告げていた。

 

こういう時の感は良く当たる。

 

形は違ったがフューリーの血縁者といたのだ。彼は完全に敵に回ったわけじゃないようだと思えた。

 

直ぐに話を聞けたのは少女、メルアからだ。

 

その話によるとカズマは記憶障害を患っていると、一定の期間より前は思い出せないと言っていたらしい。

 

そして、点々と思い出した事柄の中で実験体にされたと言うこと。

 

それが本当なら、あの時の台詞が合点が行く。

 

(調べてみるか。)

 

そう思い至り、マナは騎士のアクセス権をフル活用して秘匿エリアを閲覧していく。

 

(フー=ルー様、いえ・・・・師匠。私は、私の道を突き進みます!)

 

ある決意を胸に秘めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、死んでなかったのか?」

 

牢獄の廊下で、意気揚々とジュア=ムがある牢の前で嫌味を言っていた。

 

「おかげさまでな、拒絶反応も出なくてこの通りだ。丸二日寝たからバリバリだぞ」

 

「ハッ!ソイツは残念だ、マナの泣き叫ぶか拝みたかったのになぁ!!」

 

拒絶反応、それはカズマとメルアが回収されて最初にぶち当たった問題、輸血の一件を指している。

 

最初はメルアに白羽の矢が立ったが、血液型の違いで断念。

 

カズマを生かしたいシャナ=ミアは、数が激減してしまった融和派に助けを仰いだ。

 

名乗りを上げたのは案の定、マナである。血液型も調べると合致して輸血が施された。

 

唯、医師の話では地球人にフューリー人から輸血するケースは前例がなく(当然)どんな拒絶反応がでるか想像もできないという見解だった。が、カズマは持ち前の回復力で丸二日を要して復活を果たして現在に至る。

 

「前から思ってたが、趣味悪いぞ・・・」

 

「ゴキブリ並みのテメェに言われたくねぇ!何なら今殺してやろうか!?」

 

「以前、ボロ負けしたのは誰だっけ?」

 

「死ね!」

 

そう言うとジュア=ムは忌々しそうに吐き捨てて檻を蹴飛ばして何処かに行く。

 

「カズマさん、以前って?」

 

メルアが尋ねてきた。

 

「そうだな、どの辺から話そうか」

 

戻った記憶、フューリー人たちが人類と特に変わり無いところから話していく。

 

 

 

 

 

 

 

「カズマさんはフューリーの人たちと交友関係を持っているのは、分かりました。それにマナさんの質問も納得です」

 

メルアが頷いて、疑問が晴れてスッキリしたと表情で語る。

 

「は?」

 

思わず聞き返すカズマにメルアは言った。

 

「カズマはお前の何だ!?って」

 

瞬間、カズマは一気に冷や汗を搔いた。

 

可笑しい、後ろめたいことは無い筈なのに冷や汗が止まらない。

 

そもそもマナとはそういう関係ではない、唯、フューリー人と地球人が手を取り合えると言うスタンスを民に見せるためのモデルだったはずだ。

 

「因みに、メルアはどう答えたの?」

 

「“カズマさんは私の居場所を作ってくれた人”・・・と」

 

口ごもり、メルアはそう言った。

 

本来はもっと明確なことを言っているが、今のメルアにソレをカズマに伝える勇気は無かった。

 

「そう、か」

 

「モテモテですわね、両手に花ですか」

 

肩越しに振返ると其処にはフー=ルーが居た。

 

「また、尋問ですか?」

 

恐る恐るメルアが尋ねる。

 

「ああ、そうではなくて。貴方に確認しないといけないかと思いまして」

 

「俺に?」

 

「貴方、マナをどう思っていますの?」

 

瞬間、カズマが凍り付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラ=ルクは整備士であり、看守でもある。

 

看守と言うのは、非常時借り出される予備戦力のような物でガ=ウラに攻め込まれたりしない限りは出番が無い。

 

そして、主体となる仕事も暇そのもの。

 

投獄されるのは、現在で言うと秘密を暴露しそうになったアル=ヴァン。

 

マナが漸くの思いで連れ戻した(ルクはそう思う)カズマとそのおまけの美少女、玉座機を操っていたパイロット二名。

 

「お、珍しいですね。フー=ルー様がお出でになられるなんて」

 

軽い口調で、五枚ほどのカードキーをパチパチと音を鳴らしながら歩いてきたルクは、牢の前で柔和な笑みを浮かべるフー=ルーに言う。

 

「ええ、一度決めたら曲げない弟子を持つと苦労しますわ。貴方から見てこの二人はどうかしら?」

 

「ああ、カズマと可愛い子ちゃんですか?マナとは違うベクトルでお似合いかと」

 

「へぇ・・・そうですの?」

 

瞬間、フー=ルーの目が狩人の目になった。

 

その鋭い視線に貫かれたルクは、あはは・・・と乾いた笑いを漏らす。

 

「ま、最後に決めるのはカズマです。フューリーに居座るにせよ、また出て行くにせよ・・・ほら、どっちにしろ男なら責任取るって話ですよ!!」

 

言い訳の様に良い連ねるルクを再びフー=ルーは笑顔で「そうね」と言って去っていく。

 

ルクは心底思った。

 

発言を間違えたらココで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マナの私室の机には、グ=ランドン実務室の監視カメラの映像がリアルタイムで表示されている。

 

(やっぱり、改竄の痕跡があった。集中医務室の使用記録もカズマが消えるまで使用中になっている・・・・改竄できるのは騎士の中でも上位の・・・グ=ランドン様だけだ)

 

シャナ=ミアの危惧しているグ=ランドンの暴走、それはシャナ=ミアの側近に言わせれば他愛の無い些事で済まされる事だ。何より、グ=ランドンも現在の地位に至るまでかなりの信用を勝ち得ている。

 

融和に走るシャナ=ミアを疎ましく思っている側近も居るくらいだ、彼女の耳に入らなかろうと側近が処理してしまえば大抵のことは事足りる。

 

纏めた報告書を出そうと執務室前でフー=ルーとグ=ランドンが話しているのを立ち聞きする形になった。

 

どうやら、エ=セルダの息子が折れてしまったようだ。

 

(もっと粘るかと思ったけど・・・・やっぱり子供か)

 

カズマを始めとする四名の捕虜を逃がさないとマナ達融和派が望む未来は無い。

 

『サイトロン受信機を使う』

 

扉の先から不穏で非人道的な器具の名前が飛び出した。

 

思わず身を耳を疑ってしまった。が、今まで点だった推論が線になった。

 

マナは思わず駆け出す。

 

次は無い、そう思わずには居られない。

 

このまま分かれ、次に会うとすればとある川の先でだと妙な確信を抱いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足が痛む、体中が悲鳴を上げている。未だ痛覚が残っている・・・まだ、死ねない!

 

「ふざ、けるなっ・・・!カロ=ランッ」

 

匍匐前進で牢を出るとルクが腕を組んで待っていた。

 

「お前、あの子を助けるんだろ?」

 

「分かってんじゃないの・・・・」

 

「その割にはボロボロだな、今度は痛めつけられたか。」

 

「止めるか?」

 

「いや、俺が止めたところでお前は行くだろ?一度消える前もグ=ランドン様に正面きってメンチ切った・・・・お前はどうして其処まで動けるんだ?」

 

ふざけた様子もなく、真剣な表情でルクは尋ねる。友として、唯一緒に乗り合わせた少

女のために命を捨てるのかと。

 

「俺は、もう失くしたくねぇ・・・・こんな俺にも泣いて、泣いてくれる子を見捨てたら・・・・俺は自分を許せなくなる。何より、祖父さんに祟られる」

 

「おい、真顔で最後の一言はなんだ?けど、まぁそれでこそお前だよ。持っていけ」

 

ルクは鎮圧用ゴム弾が装填された拳銃を投げて寄越した。目の前に落ちた銃を拾ったカズマは、壁に手をついて何とか立ち上がる。

 

「良いのか?お前も反逆者扱いだぞ」

 

「良いんだよ、俺はお前に襲われて気を失っていた。そんな筋書きさ・・・・現にもっと危ない橋を渡ろうとしている奴を知ってる。」

 

そう言ってルクは駆けて行くカズマを見送る。

 

(お前は自覚して無いだろうがよ、マナを頼む。多分、一番危険な行動をしでかすから)

 

それは幼馴染を心配して、彼女の想い人に託すような形を取った。

 

自分じゃ、無理だ。才能を言い訳に逃げた自分じゃ・・・。

 

「なっさけねぇ・・・・」

 

ルクの呟きは、牢獄の闇に飲まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様たちは忌むべき存在だ、ならばせめて心は真のフューリーになってもらう」

 

グ=ランドンの言う言葉、そして背後の装置にメルアは思う。

 

トーヤの取った行動をカズマも取れたはず、むしろカズマはフューリーと交友がある分

幾分か交渉の余地があるのでは?と。

 

それをしなかったのはコレが原因だ。

 

メルアは確信が持てた、そして、押し出される自分とカティアがこのままだとどうなるかも。

 

「いや!」「放してください!」

 

「止めろ!言う事を聞くって言ってるだろ!?」

 

トーヤが懇願するような叫びも、グ=ランドンは聞く様子もなく諜士たちに「続けろ、薬で眠らせても構わん」と告げた。

 

「ぐはっ!」

 

その後ろで、一人の諜士が倒れた。

 

「グ=ランドン様、コレは一体何の真似ですか?」

 

マナが、銃の持ち手で首を強打したのだ。しかも、グ=ランドンに何をしているのかと睨みながら尋ねる。

 

「貴様こそ、何の真似だ?フィ・リース」

 

(私は、こんな行いが騎士の所業であるとは思わない。せめてお前に胸を張ってまた合えるように)

 

グ=ランドンが尋ね返すとマナは内心そう思いながらカズマを思い出す。同時に怒りも覚えている。

 

正直、グ=ランドンは苦手な人間だ。出来れば会話も最小限にとどめたい部類に入る。

 

そんな人間に、騎士のあり方を問うた所で解決しないのは分かっている。

 

「アンタは、確か」

 

「シューンの息子を押さえつけ、その関係者で実験ですか?シャナ=ミア様は勿論、承知の上ですよね?」

 

トーヤがマナに視線を向ける。トーヤだけではない、メルアとカティア、二人を押さえつける諜士もだ。

 

「フィ・リース、お前には期待していたんだがな・・・」

 

「良い駒として・・・ですか?」

 

マナは思っていることを言った。

 

「・・・・小娘の浅知恵で出し抜けると想ったか?」

 

グ=ランドンが腰のホルスターに手を伸ばす、マナは、銃を抜くのかと思い銃口を向けた。

 

 

「なら、小僧の悪知恵はどうだ?大差ないけど」

 

 

部屋に響いた声音は覚えのある物だった。

 

その主は、しっかり痛めつけたのだ。

 

今は牢で倒れているはず、よしんば起き上がれたとしても直ぐには動けないはずだ。

 

グ=ランドンが僅かに思考したその刹那、乱入してきたのは何も声の主、カズマだけではなかった。

 

天井を破り、部屋の中を覗き込む鋼鉄の守護神はトーヤとカティアを攫っていく。

 

「玉座機だと!?」

 

グ=ランドンが驚き、注意が逸れた。メルアを押さえつける諜士も同様、その隙を逃す理由が無いと言う様にマナが間合いを詰める。

 

「くはっ!」

 

マナが一撃を繰り出すより早く、別の人物が諜士の眉間を撃ちぬいた。そのまま流れるようにマナをホールドし、拳銃を突きつけて耳打ちした。

 

「悪い、少し我慢して」

 

「なっ!?」

 

マナが目を見開いて驚く、玉座機が去ってグ=ランドンは視線を戻した。

 

忌々しげに睨む先にはマナを人質にしたカズマがいて、メルアを庇うようにしている。

 

ああ、ドイツもコイツも思うように動かない!

 

「小僧・・・!」

 

「痛めつけた程度で俺が動けないと想ったか?残念だったな」

 

銃口をグ=ランドンに向けるカズマは視線を走らせる。

 

このまま、逃げるには何処を通れば良いか?位置が悪く、出入り口はグ=ランドンの後ろ側。

 

障害物を利用して銃撃戦を行いながらにしてもメルアとマナを連れてでは辛い。

 

「その娘は反逆者だ、まとめて処刑してくれよう「ほれ、プレゼント」!?」

 

グ=ランドンは、カズマが投げて寄越したパイナップル形状の物を見てとっさに障害物に身を隠す。

 

何処で調達したかは知らないが、カズマは手榴弾を投げて寄越したのだ。

 

「待て!私は「良いから」人の話を聞け!」

 

「ちょ、カズマさん!今出て行ったら危ないですよ!?」

 

マナの素っ頓狂な声が聞こえ、メルアの声も聞こえる。

 

机の影に身を潜めたグ=ランドンら一派は駆け抜けていく二人にしてやられたのだ。

 

グ=ランドンの目の前に落ちたグレネード、しかしピンは抜かれていないので起爆はしない。

 

駆け抜ける三人に銃を抜こうとした諜士たちは次々に腕や胸、足を押さえて痛みに呻く。

 

しかもだ、グ=ランドンの神経を逆なでする捨て台詞が響いてくる。

 

「またな。グッさん!」

 

「何をしている!?追わぬか!!」

 

グ=ランドンの怒声が響いた。




・カズマの装備調達&扱い

SEEDの後半でアスランが逃げ出すときのラクス派がした様に融和派が恵んだ物。
銃は最初のルクから受け取った物だけ。

理由?芸術は爆発だ!(笑)

基本的にシャナ=ミアがマナに一任しています。トーヤよりも扱いはかなり優遇されてます。

かつての交友があった方々がよく尋問と世間話&説得に良く来るよう。


・フー=ルーのお節介

マナを実の妹のように可愛がっている(師匠面としても期待の弟子、可愛い!)ので、見抜いている以上は気になる姉的な気分。

本作のフー=ルーさん、戦闘大好きの女傑という一面よりも妹分の恋路の行方が気になる様子です。

書いてて楽しい。


・グ=ランドンの呼び名

カズマが勝手につけた愛称、呼ばれるとグ=ランドンはブチギレます。


・ラ=ルクのキャラ確立

改変前は死人扱いだったが、改変後はマナの幼馴染ポジ。
カズマとはフューリーサイド友人第二号と言う関係、一号はマナ。パイロットとしての才能に恵まれず、整備側に転身した設定で長々と使えるキャラに。
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