《クロガネ》が《ハガネ》と《ヒリュウ改》と合流し、封印戦争時の最大戦力プラストーヤ達のような状態であるというのは、非常に心強い。また、正規の軍人であるタスクやアラド達はパトロールや警戒のシフトが一個埋まって負担が減ったと上機嫌だ。
加えて言えば、度重なる戦闘で厄介ごとは払えてきていると鋼龍戦隊の誰もが感じている。
残るはクロスゲート、フューリーくらいだろう。
「ねぇ、メルアは何処にいるか知っている?」
そんな若手達の中にいるトーヤとカティア、フェステニアにアクアが尋ねる。
相談されていた近接戦でのフォローについてアクアの経験から答えられる範囲での回答が細かく纏めたディスクがその手にあるのを見てトーヤが答えた。
「多分、カズマの部屋ですよ。最近カズマに付きっ切りですから」
「融和機取ってきて以来、一緒にいる時間増えたよね?あの二人」
とフェステニアが言った。
合流後からカズマは医務室に拘留(誤字に非ず)されていた時期があった。暇さえあれば訓練させてくれとカイに頼み込んで《ラフトクランズ・レイス》に慣れようとしている。が、勿論許可など降りるわけも無く、キョウスケとヒューゴとカイ、教導役の三人が見出したのがカタログスペックや詳細レポート入りディスクを手渡して目を通させる処置だった。
「何だかんだいってヒューゴに似てきたからなぁ、カズマ君。心配なんでしょう?ほら、なんだかんだ言ってライバルも一緒に来たわけだし」
アクアが見透かしたような妹を見る姉のような表情で言うとトーヤとフェステニアは首をかしげ、カティアは「ああ、そう言うことですね」と相槌を打った。
「この状況俺が邪魔者みたいじゃねぇ?」
「見たいじゃなくて邪魔だ。」
「マナちゃんははっきり言うタイプだな・・・所謂ツンデレか」
バキバキとマナが指の関節を鳴らす。イルムの軽口は危険だと判断したカズマは話題を
変える。
「で、何か用か?」
「ああ、お前はフューリーに対して“殺さず”の姿勢を貫いていると聞いたのだ。それは何故だ?」
「お前もその疑問か?分かると思うけどなぁ、お前は。」
「戦場に居る者は騎士としての誇りを持ってきているんだ。それを適当にあしらうような真似を「してませんよ」何?」
嘆息するカズマにマナが言うとそれを遮ったのはメルアだった。
「カズマさんは、咎められるのを承知でオープンチャンネルで言ったんです。“お前等の信じる正義がまだグッさんにあるのか一度考えろ。”って」
「お前、それで仮に落ちたらメルアちゃんまで」
それを聞いて呆れ気味にイルムが口を挟んだ。
イルムの言うことはキョウスケにも、カイにも言われたことだ。しかし、カズマは辞めるつもりはない。
「落ちないよ、それに何も考えず尖兵にされてるだけの奴を殺しても意味がないだろ?そいつらが考えて答えを出した時は、な?」
「所でグッさんって誰だ?」
「ああ、現在実権を握って調子に乗っているタカ派の長だ。俺が勝手にネーミングした。呼ぶときれるんだよ」
格納庫で一機の機体がメンテと補給を終え、第二ブリーフィングルームのメインモニターに映し出されている。
《クストウェル・ブラキウム》、追い込まれたジュア=ムが乗り捨てた機体を回収した物だ。現在、サイトロンシステムに適応するメンバーを初めにチームリーダー達が集められ、誰が乗るのかと話になっている。
コックピットレイアウトは一人乗りと思いきや、複座式になっていてカティア達が同乗すれば、恐らくではあるがリュウセイやアラド達でも起動は可能だろう。
問題は、パイロットの不足。
カティアはトーヤと《グランティード・ドラゴデウス》、シャナ=ミアも最近では戦場
に乗っていくので阿吽の呼吸と言うか互いに意思疎通の図るコンビが良いだろう。
フェステニアはカルヴィナと《ベルゼルート・ブリガンディ》、理由は以下同文。
メルアはカズマと《ラフトクランズ・レイス》、理由は上に同じ。
「こうしてみると敵の機体を回収しても利用するという訳にはいかんか」
とため息混じりに言うカイ。
他勢力の機体を回収して利用と言うのは戦時中ならよく聞く話だが、フューリーの場合
は少々システムが特殊だ。適応しているメンバーはかなり限られてしまう上にそれぞれコンビには既に受け持ちの機体がある。
慣れた機体ほど戦力に成るのはカイとて承知の上、なので無下に乗り換えろとは言え無い。
「あの、一つ提案よろしいでしょうか?」
誰もが首を捻り、代案を考える。
このままでは《クストウェル・ブラキウム》は研究用として地上に送る羽目になる。戦力を遊ばせておく余裕が無い鋼龍戦隊にとってそれは避けたい。
ましてや戦闘は激化の一途をたどるばかりで疲弊し、メンテナンスも追いつかない状態の機体もある。
そんな沈黙を挙手したカズマは破った。
「何だ?」
「カイ少佐、マナに預けてみるのはどうでしょう?」
「正気か?」
隣に座っていたキョウスケがジッと睨みながら言う。
「ええ、マナの腕は間違いなく一流。即戦力になるでしょうし、彼女は裏切りませんよ。」
こういう時、割とはっきりものを言うカズマが凄いと密かにトーヤ達は思う。
「・・・カズマ、一つだけ疑念がある。キミは彼女が何故裏切らないと断言出来るんだ?」
ギリアムの疑問は、チームリーダー達の総意だ。
シャナ=ミアは玉座機に乗る、そうすることが代々の役目と言っていた。
創造神フューレイム覚醒に必要なものだと、しかしマナは違う。一介の準騎士で特にシャナ=ミアのような役割染みたことがあるわけじゃない。力を与えれば裏切たれた
時、首を絞めかねない。
そんな思いがギリアム達にはあった。
「皆さんから言えば根拠にならないと言えるでしょうね、俺は信じているだけですよ、同胞を敵に回すだけの信念を持った彼女を。サリー達の一例もありますから」
「分かった。上層部へは私から進言しよう」
ギリアムがそう言ってカイとアイコンタクトを取り、お開きとなった会議室に残る。
「って言うのよ!?男前よねぇ!」
と会議内容の一幕をエクセレンが何時ものように吐露し、話題を絶やす事はないが、ブリットもクスハも相槌を打つ程度で決して盛り上がらない。
何時もならオーバーリアクションかノリツッコミで出撃前なら場を和ませ、緊張を取り
除く役割を担うATXチームの末っ子も腕を組み、時を待つ。
チームで使用する第二ミーティングルームに集まったATXチームと発言主であるカズマ、そしてメルア。
「それで、私が呼ばれたのか。」
マナがエクセレンの言葉を聞いて、呼ばれたその理由に納得してカズマに視線を投げた。
「何故、私を指名した?」
「信じてるからな・・・・対峙するには力がいるだろう、弟子ってのは何時か師を越え
ていかなきゃならん存在だ。」
「それは、私に師匠を討てと言うのか!?」
「そうじゃない。」
カズマに掴みかかるマナをブリットが制止する。
「手早く決定を伝える。マナ=フィ・リースに《クストウェル・ブラキウム》を預け、以降はATXチーム預かりだ。尚、次の作戦では突破力のある俺達が先陣を切ることになるだろう」
キョウスケが何時ものように書面に目を通しつつ、淡々と告げる。
次の作戦、それはフューリー補填の制圧作戦だ。本格的に動き出すグ=ランドンをどうにかしないと冷凍睡眠中の民にまで被害が及ぶ可能性がある。しかも、グ=ランドンはフューリーの実権を握っているので厄介極まりない。
刺激し、民を危険に晒すは避けたいというシャナ=ミアの願いから先陣をATXチームとフューリー所縁の機体たちだ。
《グランティード・ドラゴデウス》《クストウェル・ブラキウム》《ラフトクランズ・レイス》《ベルゼルート・ブリガンディ》が今回の作戦のキーを握ると言っても過言ではない。
途中までは護衛としてSRXチームとATXチームも同行するが、基本玉座の間に突入してしまえば挙げた四機での行動となる。
「カズマ、分かっているな?」
キョウスケが鋭い視線を向けてカズマを射抜く。
「分かっています。誰も欠けさせやしませんよ」
キョウスケが、カイが、実戦で指揮を経験した誰もがカズマの未来視に近い発言や行動
に感心を抱き、先日の戦場でも仲間を救ったことに繋がったのは記憶に新しい。
だからこそ、彼に託す。
分の悪い賭けを乗り越え続けた彼に。
・クストウェルの議題
きっとこうした会議あったと思ったので。
時期的にガ=ウラ・フューリア突入作戦開始少し前、次回は戦闘パート盛りだくさんになりますな。
・メルアの態度変化
基本的には変わらない物のトーヤの言う通り「カズマと一緒に居る」時間が格段に増えたので、アクアにも心境の変化は見抜かれております。尚、カティアも察している。
オリジナルパートに向けて加速させていきたいな。