警報が鳴り響き、先日知り合ったばかりのブリットが、その上司の二人が走り去っていく。
(戦うんだよな、あの人達)
幾ら記憶障害を抱えてある時より昔を思い出せなくても思う所はある。
確かに
しかし、そのせいでただ乗せただけのメルアに辛い思いをさせたのは間違いない。
そう、この時のカズマは思い込んだ。
(何だ?さっきから見られているような・・・・いや、見られているなんてモンじゃない)
「あの、カズマさん?大丈夫ですか?」
ロブ博士は今、カティアとトーヤの二人と供に《グランディート》に取り掛かっている。
手持ち無沙汰の四人は、それぞれ時間を潰している。
最も、欠伸をするフェステニア、腕を組んで眉間にしわを寄せっぱなしのカルヴィナ、髪を弄っていたがカズマの様子が気になり、尋ねるメルア。
そして、まるで銃口か何かを突き付けられている様な違和感を感じ続けているカズマである。
「ん?ああ、大丈夫大丈夫。」
「さっきから怖い顔してますけど、やっぱり無理しているんじゃないでしょうか?」
「本当に大丈夫、心配してくれてありがとさん。」
「貴方、彼の父親に助けられたんですってね?」
メルアにそう答えているとカルヴィナが突っ掛かってくる。
彼女の境遇も理解はしているつもりだ。
「ああ、その通りですとも」
「なら、敵の本拠地に居たんじゃないの?」
「ご明察、とっても俺も何処だか解らないのさ。ギリアム少佐にも言ったけど思い出せない部分があるんだから。」
「ふんっ!誤魔化しているだけじゃないの?その怪我だって演技でやったことの後遺症程度でしょう?」
「いやいや、演技で眼球潰す奴がいたら是非とも教えてくれ。そいつの顔を見てみたいもんだ」
険悪の一言に尽きるカルヴィナとカズマのやり取り、その様子をハラハラしながらメルアは見守る。
「ESウェーブ反転!転移してきます!!」
丁度同時刻に、敵勢力の伊豆基地襲撃は始まった。
《量産型ヒュッケバインMkⅡ》が計五機でて警戒し、《ゲシュペンストRV》が上空から
警戒する。
警備としては申し分ない戦力だが、ギリアムが駆る《ゲシュペンストRV》は、身を盾にする形で管制塔の直撃を防いだ。
「くっ!何とか直撃は避けたか」
瞬く間に三機を屠り、立ち尽くす敵機をロックしながらギリアムは機体の状態を確認する。
「冷却に六十秒、キャンセルすれば1アクションが限界か・・・」
次々と転移にしてくる敵機に状態はどんどん悪くなっていく。
敵機《ラフトクランズ・アウルン》が、徐にオルゴンライフルを倉庫へ向ける。
「玉座機は、あそこか」
閃光が放たれた。
同じく地下で調整されていた《ソウルセイバー》が、外の戦力差から出撃していく。
アキミが必死に頼み込んだと言うのもあるのだろうが、揺れは酷くなっていくばかりだ。
「不味いな、ココも長くは持たないぞ!キミ達も避難を」
ロブ博士がそう言った。
集まっているのは格納庫中心部、出来るだけ上に何も無いところと集められたが、音を
立ててきしみ始める鉄骨や床のパネルが余計に不安をあおる。
「テニア!」
カティアの悲鳴が木霊した。つられてるようにフェステニアが上を見て、何処かの壁
か、階段通路のパネルが落ちて着る。
カティアは凄いと思う、フェステニアは思わずしゃがみこんでしまっている。トーヤは
何が起きた状況を把握しようと、メルアは一歩後ずさる。カルヴィナはあたりに使われていない量産機が無いか視線を走らせる。
そんな中でフェステニアを突き飛ばそうと手を伸ばすカティア、彼女たち二人を突き飛ばす影がもう一つ居た。
バコンッ!と凄まじい音が響く。一瞬証明が落ち、また明かりがついた。
「無事?」
「うっ、私は・・・・でも、テニアが」
左側が暗い、当然か。視界の左側にフェステニアの脚が見えた。
カティアのニュアンスから直撃を受けずとも無事ではないようだ。
起き上がろうとしたとき、左肩から先がまるで糸の切れた人形のようにだらんと垂れていた。不味い、左腕が言うことを利かない。
「大丈夫、気絶しているだけだ!ソレよりも君は何て無茶を!!」
「博士、あまっている機体は無いの!?」
「無いよ!仮にあったとしてもどうする?」
「このままだとココも危険よ、こうなったら《ベルゼルート》で
「フェステニアがこの状態で?君一人では起動しないだろう!?」
ロブと言い合っていたカルヴィナが、その一言で押し黙った。
そう、一人では満足に《ベルゼルート》を起動できない。
「私が乗ります!」
その沈黙を破ったのは、メルアだった。
そこで、再び意識は闇に呑み込まれる。
暗闇に居たのはどれほどか、《ベルゼルート》と《ソウルセイバー》、続いて《グランティート》のメンテナンスハンガーが競り、ハッチが開く。
その機械音で気がつき、自力で再び脱出を試みるカズマ。
やはり、左腕は言うことを聞いてくれそうにない。
「待って、今退かす!」
ロブが、フェステニアを移動させて戻ってくると瓦礫の隙間に身体をもぐりこませて踏ん張った。
「良いです、出れました!」
這いずる様に脱出するカズマは何とか起き上がる。
「ああ、左肩の関節が外れている。少し堪えてくれ」
ロブがそう言うと左腕を支えながら
一瞬、痛みで顔を顰めたが直ぐに視線を残った《ヴォルレント》に向ける。
「君一人で起動は出来ないだろう!?それに、アレは未だ調整ができていないし、それ以前に怪我人を乗せるわけには行かないだろう!」
「そんなこと言ってる場合ですかね?もしも突破されればここもお釈迦だ、間違いなく死にますよ。俺はそんなのごめんだし、武器が一つしかなくとも上で落ちてるだろうしね、ライフルとか」
「規格が違うだろう!?それに素人が相手に出来るレベルでは・・!?」
ロブが、素人の理屈を並べるカズマに強く言い返そうとしたときだった。
両足を失った《ベルゼルート》が、何とかスラスターを使って滑り込んできたのである。
ハッチが開き、降りてきたカルヴィナとメルア。
カルヴィナの表情は険しく、壁に拳を叩きつける程だ。
「メルアちゃん、ごめん。
カズマはそう言って、立ち上がる。
「やはり、直撃を受けたか」
敵機《ラフトクランズ・アウルン》のコックピットで、アル=ヴァンは膝を折る《グランティート》を見ていた。
上司に当たるエ=セルダは死に、その息子が今は玉座機を駆っている。
それでも、動かすのやっとだろうかと言う程度だ。
通信を開き、仲間の騎士に連絡を入れる。
「フー=ルー、オルゴン転送装置を送ってくれ。玉座機を回収する」
今の基地に脅威となる機体は無い。
陽動で主力は市街地に赴き、手薄。
出てきた新型だろう機体も満足なパイロットが居ないようだと結論付ける。
『あら、私の出番が無いようですわね』
「無用な争いが無いに越した事は無い・・・何だと!?」
アル=ヴァンは純粋に驚いた。
動きは実にシンプルだ。
まっすぐ、愚直に左腕に装備されたテスト武装を展開した青い《ヴォルレント》が突っ
込んでくる。
驚いたのは、アシュアリーにエ=セルダが、同化計画後のテスト機として持ち込んだ物だと知っていたからだ。
(破棄されたと聞いていたが、なんと無茶苦茶なマニューバか!)
すれ違い様に《ラフトクランズ・アウルン》の腕へ蹴りを放って、ソードライフルの照準が一瞬ぶれた。
しかも、後ろの《リュンピー》を撃ち貫いて脚をつけた《ヴォルレント》が、落ちていたライフルを拾ったのだ。
「メルアちゃん、悪いね」
「メルアで良いですよ?カズマさん。」
メルアは、逃げ込んだ地下格納庫から殆ど休みなしにカズマと供に《ヴォルレント》で飛び出した。
ロブが止めるのを無視してまで、戦場に戻ったのだ。
トリガーを引くと空に一発、弾丸が放たれる。
「よし、コイツは実弾か。なら装備は整ったな・・・・・」
向かってくる《リュンピー》が、一撃の元に沈む。
オルゴンステークの残弾が二発とモニターに表示され、メルアがモニターをタッチすると随時チャージされるように設定された。
「これで!カズマさん、どうぞっ」
その言葉を受けて、カズマはペダルを思いっきり踏み込む。
間合いがつまり、突き出したオルゴンステークが空ぶると敵機が《ヴォルレント》の腕を掴んで放り投げた。
「くっ、まだ!!」
カズマが吼え、ライフルから鉛球が吐き出される。
しかし、《ラフトクランズ・アウルン》を撃墜するには至らなかった。
なぜなら、当たらなかったのだから。
「カズマさん!」
メルアが悲鳴を上げ、カズマは間髪居れずに機体を翻す。
何とか《グランティート》の前に着地した《ヴォルレント》を追撃するように《ラフトクランズ・アウルン》が肉薄し、オルゴンソードを振り上げているのだ。
「こんのっ!」
通常の《ヴォルレント》にはない、各所に増設されたバーニアが、青い《ヴォルレント》の最大速度をたたき出す。
装甲に掠めるが、オルゴンソードがアスファルトを抉った。
同時に、《グランティート》に驚くべき変化が起きた。
「バスカーモードだと!?」
《ラフトクランズ・アウルン》のコックピットでアル=ヴァンは驚く。
形成は、優位だが、この二機のせいで間違いなく狂い始めているとアル=ヴァンは確信する。
傷は癒えている。
コレばかりは医療技術の高さに感謝するしかない。
後は、操縦に違和感がなくなってきている。
(なるほど、馴れは恐ろしいもんだな!)
カズマはそう思いながら、弾切れを起したライフルを放り投げてオルゴンステークを叩き込む。
《ヴォルレント》の動きを見ていたギリアムが息を呑む中、異常なまでの動きを見せる《ヴォルレント》。
戦場になった区画は広い、さらに言えばギリアムの元には《ヴォルレント》の状態も報告で上がっている。
「あの戦い方は、まるで《アルトアイゼン》ではないか・・・・!」
ギリアムも《リュンピー》を高出力ビームで撃ち抜き、《グランティード》の周りを汁払いのように駆け回り、戦闘を継続する《ヴォルレント》。
その戦い方は、左腕のシールド兼パイルバンカーを使用した一撃離脱だ。
ギリアムの知る中にそのような戦い方をするパイロットが居る。
しかし、カズマがキョウスケの戦い方を見たことがあるとは思えない。
そう思うギリアムは、自身も次の標的をインサイトした。
「カズマさん、再チャージ終了まで後五秒です!」
「うっし、トーヤのほうは!?」
路面を大きく削り、《ヴォルレント》が滑っていく。
そのコックピットで、《ラフトクランズ・アウルン》との勝負を邪魔させんように立ち
回ったカズマは、メルアの報告を聞いて、《グランティード》に視線を向けた。
敵機は動揺しているようで、動きがぎこちない。
《グランティード》は、装甲を展開して間違いなく必殺技級の兵器を使っているのだろう。
「メルア、トーヤと通信を繋いで。もう一突き行『その必要は無い』って何時のま!?」
『本隊に連絡が取れた。先行してATXチームが向かっているそうだ、君がこれ以上無茶をする必要は無いんだ』
《グランティード》の肩に手を置いている《ゲシュペンストRV》、接触通信でギリアムが現状を伝える。
一杯一杯だったカズマは、ソレを聞いて僅かに気を抜いた一方で、敵機は撤退していく。
可笑しい、なんて都合が良いのか。
『それに、キミは大分無茶をしている。あんな動きはキミの思っている以上に体に負担を強いているんだ』
「言われてみれば・・・・・ですが」
『敵もこちらの戦力を軽んじているわけではない。撤退したのが証拠だ。』
そう言われ、戦場となった滑走路を改めて直視する。
機体の残骸、敵味方問わず死傷者はかなり出た筈だ。
「・・・・ふざけるなよ」
「え?何ですか、カズマさん」
その呟きは同じコックピットにいたメルアでさえ、聞き取れないほど小さい物だった。
「いや、何でも無いよ。悪いね、無茶苦茶で」
「いえ、カズマさんはやっぱりやさしいですね」
左肩越しに振返り、後部シートに居るであろうメルアに言うとそう返答があった。
いけないな、《ソウルセイバー》がおざなりだ。
アケミとアキミも叱り。
さて、時折ココからオリジナルを挟みます。
次回は教導隊と絡みます、コンビといえばあの二人。
あとは、ヒューゴ&アクアですかね