「ESパターン反転!反応はフューリー!」
オペレーターの声に、ハガネの新たな艦長・ギントは頷いた。
「補給が済んだ機体から順次発進!」
「マジかよ、さっき定時パトロール終わったばっかりだぞ!」
「ぼやいても始まりませんよ、敵さんは待ってくれるわけじゃありません」
とんぼ返りで発進した《ヴォルレント》のコックピットでぼやくカズマをメルアが珍しく嗜める。
脇に最低限の補給を済ませた《サーベラス・イグナイト》が並び、前方に転移してくるフューリー機を眺めている状態。
フューリーが相手だと主立って《グランティード》を狙ってくる。なので対策として
は、《グランティード》を隠しつつ、各個に撃破と言うのがコレまでの方針だ。
何より今回は、先日の戦闘が響いてメンテナンスが長引いている機体がちらほら。
全力で戦えるという訳ではない。
『《ヴォルレント》を出せ!』
転移してきたのは桜色の《ヴォルレント》と《ラフトクランズ・ファウネア》。
しかも第一声がコレである。
『《ヴォルレント》を指名してきた?』
「コレまでと違いますね、狙いが分からない・・・・乗ってみるのも一興ですが」
『罠かも知れないのよ?バカ言わないで!』
《サーベラス・イグナイト》と通信を開き、対応を相談する。
カズマのとりあえず敵の誘いに乗ってみる案はアクアにバッサリ切られてしまった。
『祠堂カズマ!私と戦えッ!!』
スピーカーから響く高い声音、少女特有のソレを聞いてカズマは思い当たる節が無い。
いや、無いわけではない。欠落しているのだけで理由が思い出せないだけで。
数時間前に遡る。
ガ=ウラ・フューリアで出された結論、それは皇女シャナ=ミアの一言が物語っている。
「玉座機の奪還にラースエイレムの使用は許可しましょう。ですが、パイロットは生か
して捉えるのです。試験機も落としては成りません、回収するのです」
現在のフューリー騎士団の事実上のトップであるグ=ランドンは、試験機が何を指すか
知っている。
地球側に与する“紛い物”の《ヴォルレント》だ。
それにはエ=セルダと供に逃走した
融和の道を進むシャナ=ミアの姿勢が気に食わない。
グ=ランドンは、事故ならばと考えた。
事故と言っても
そうすれば、どちらかが死者となるは必然。
それが、部下の弟子であろうと、シャナ=ミアのお気に入りの準騎士であろうと。
その指示は直ぐにフー=ルーの元に届いた。
彼女の部下であり、愛弟子であるマナ=フィ・リースを使った実験体の排除。
フー=ルーは、何故彼女なのか思い当たる節があった。
マナは、囚われの身であった改造前のカズマと和解していたのだ。
「アイツ、死んでなかった・・・・」
目下、件の彼女は、家族を亡くして傷心に浸っている。
そんな時に戦えというのはどうなのだ?と思わずに入らない。
(グ=ランドン様・・・・本当にコレで良いのでしょうか?)
部下を騙し、捨て駒として。
そう考えるフー=ルーが下した苦渋の策が「二機だけで赴き、彼を指名して決闘させ
る」ものだったのだ。
マナの実力は知っている。
シャナ=ミアが、近衛騎士と言う役職と民に示す融和の姿を任せたのだ。
つまり、皇女もマナ=フィ・リースと言う準騎士の実力は熟知しているし、信頼していると言うこと。
「マナ、貴方に、確かめる機会を与えます。」
「フー=ルー様!それは指示に反しては・・・」
「ええ、そうなりますわね。私も女ですし貴女の師、貴女の気持ちを察せ無いわけではなくてよ」
言うなれば、フー=ルーは迷っていたのだ。
こんなことをするのが騎士のあり方かと、愛弟子の思いを成就させる為にはコレしかないのかと。
桜色の《ヴォルレント》、このパーソナルカラーに彩られた機体をマナはもっと前に乗り換える筈だった。
《ラフトクランズ》の
しかし、融和の象徴として脇に立つ筈だった
り、シャナ=ミアの話も進まなくなってから久しい。
そんなマナが、カズマと戦場で再開することになった。
しかし、当人は忘れていた。否、抜け落ちていた。
「アンタが本当に見せてくれると思っていたんだ・・・・」
エ=セルダや数人のフューリー人が、地球人と成した希望のように。
供に歩める未来を。
そんな想いとは裏腹に鋼龍戦隊といた彼は引き金を引く。
多くの同士を殺した、それでも私は彼への思いを捨てきれない!
マナの眼前にゆっくりと浮上してきた青い《ヴォルレント》を睨んだ。
間違いない、乗っているのは祠堂カズマだ。
「私の想いと供に散れ!」
「恐らく、彼の言う目覚める前に関わりのあった者だろう」
艦橋へ一切の抵抗ができないように《ラフトクランズ・ファウネア》がオルゴンライフ
ルを突きつけている。
下手に動けば一巻の終わりだと示しているから《サーベラス・イグナイト》は余計な手出しが出来ない。
その艦橋でギリアムが推論を立てた。
そして、カズマも信頼にたる腕を確立させている。
「だから、決闘させると?」
ギントが問う。
「恐らくはフューリーにとってもキーマンだったのでしょう。先ほどの台詞から察するにあのパイロットとも親しかった・・・」
『もしもの時は自分が割り込みます。艦橋を抑えられてしまっている以上、今は・・・』
ヒューゴの口調からも、本当なら直ぐにでも割り込み、助け出そうとするのだと察することが出来る。
「各機、発進体制にて待機。祠堂君、聞こえたな?」
ギントはマイクに向かって言うとモニターにカズマが映った。
『ええ、向こうは騎士を名乗る以上手出しはしないでしょう。よほどの自信が無い限り、二機でなんて来ないでしょう?それに決闘と言うのはどちらかが死んで終わるなんて誰が決めたんです?』
桜色の《ヴォルレント》(後をマナ機)が、青い《ヴォルレント》(後をカズマ機)と鍔競り合う。
「カズマさん、どうするんですか?どちらかが死んだら終わりじゃないって・・・」
「うん、メルアの思っていることは当たりだ。聞こえるな?フューリーの騎士娘」
何を考えているのだろうか?そう思うメルア。
接触通信を開き、相手に確認を取っている。
メルアはカズマの性格上、きっと撃墜しないで終わらせる気だと何と無く推測できた。
ハッタリやブラフ、口先だけで敵を自滅に追い込むのは何度か目にした事がある。
(前の生き埋めはやりすぎの様な気もしなくも無いですけど)
そう考えているとカズマ機のコックピットに怒号が響いた。
『今更なんだ!?命乞いでも?』
「いや、その気は無い。質問に答えてもらう。何故、アシュアリークロイツェル月支部を襲った?」
『答える義理は無い!お前は多くの仲間を殺した・・・出来る限り手を貸すと言ったのにだ!!』
「だよなぁ?ならばお前等ならどうする?殺意を持って凶器を突きつけてくる相手に対して和解しましょうとでも言うか!?」
カズマ機が、マナ機を蹴り飛ばして距離をとった。
「このっ!」
マナがオルゴンガンを放つ。
『強情だな!?それよか何で俺はお前の声を知っているような気がするんだ?てかマジ何でアシュアリー襲ったの!?あとちゃんと狙え~。』
砕けた口調で、怒りに駆られて満足に実力を発揮できないマナを嗜めるカズマ。
馬鹿にしているような言い回しだが、随所に質問を織り交ぜている。
「答えるまで待てないのか!?」
『答える気が無いの間違いだろ?さっき義理は無いって言ったばっかりだし』
「黙れッ!お前が、お前が悪いんだ!!」
癇癪を起こした子供のようにマナは吐き捨てて機体を駆る。
『答える気はあるんだな?頭を弄られる前にお前さんに責任問題的な何かをしたのか!?』
「そうだ!」
『なん・・・だと!?』『カズマさん、最低です』『ちょっ!メルアさん!?マジ覚えてないんですってば!!』
マナが自棄になり肯定するとスピーカーの先から動揺するカズマの声と供に少女の声が
聞こえた。
つまるところ、アシュアリー関連の質問は本来彼女のものだろうと推測できる。
冷静な
「こっちの気も知らないで他の女と!?」
『楽しんでませんか!?アンタ!!』
鋼龍戦隊の中でもカズマの株価は先の一言で大暴落である。
勿論、そんな事実はなく、カズマの人柄を知るメンバーは「口先だろ?」としか思っていないが弄るネタが増えたのは言うまでも無い。
コレを聞いて微笑んでいるのはフー=ルーだけギリアムとギントは「シリアスな決闘はいずこ?」と心底思っている。
リュウセイは大爆笑、ブリットとクスハは苦笑、エクセレンは言わずもがな。
アケミとアキミ、キョウスケは呆れて物が言えない。
(あんなに感情を剥き出しにしたマナを見るのは何時以来かしら?)
師としての思考は、弟子の感情の起伏が消えてしまった時期の記憶を探り出している。
全ては、あの日から。
フューリーサイドにもオリキャラ。
・マナ=フィ・リース
・性別:女性
・年齢:19
・身長/体重:159/50
・階級:準騎士
・備考:フー=ルー・ムー・ルーの部下であり弟子/フューリー融和騎士第一号
・キャライメージ/アンダーグラウンド・チェルシー・ローレック(シャナ=ミアと同じ緑髪)
拘束されている最中のカズマと交友を持ったフューリー人。
シャナ=ミアの友人でもアリ、信頼されている準騎士。
皇女の勅命で当時は、拘束されていたカズマと対談し、そのあり方を確かめた。
メルア達の事を聞いていた(濁されていたようだが)様で、シャナ=ミアと自分に対して「出来うる限り、協力するよ」と断言したカズマにグ=ランドンの言うような非道で愚かな者と言う見方が出来なくなっていく。
フー=ルーには見抜かれている様子。
親しかった友人準騎士の死がカズマのせいだと聞かされ、荒れていた。
決闘と言う名目で捨て駒にされたが、フー=ルーの独断で再び対話の機会を得ることに。
オリジナル編の構想を練っていく上で生まれたキャラ、必要不可欠な存在になってきた。
フューリーと地球人の架け橋的な意味で。