世界を越えたその先で   作:コードα

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閑話1

目の前にはパズルがある。

 

“祠堂カズマの記録”と言うパズル。

 

崩れているパズルは三分の一が抜けている。俺と言う人物が、“この世界”に訪れる前に何をしていたか、訪れてから何を紡いだかが組み立てて行く内に明白になっていた。

 

最後のピース、《クストウェル・ブラキウム》の一撃を避けきれずに撃墜される瞬間

(ピース)を嵌めて、ぽっかり明いた穴を埋めていく。

 

「お前は未だ、ソレを見に来ただけだろう?」

 

死んだ筈の祖父が立っていた。

 

ヤバイ、どうやら走馬灯を見ていたらしい。

 

「・・・・失くした部分が埋まって無い」

 

完全には完成していないパズルを見て言う。

 

「阿呆、今は先のピースまでだ。神様に答えたんだろ?変わり果てた現実を乗り切ってやるって」

 

いや、知らない。

 

「助けてと言うなら助けてやるって」

 

知らないって。

 

「それに、あの子・・・メルアを放って死の国(こっち)に来る気か?あの子も、男ならまいた種くらい狩って来い!」

 

そう言って随分前に亡くなった祖父が俺を押し戻す。

 

止まる事無く、滑っていくような感覚は滑り台に近い。

 

と言うか何処まで行くんですかね!?

 

 

 

 

「どんな世界に居ても、見守ってるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もみたいに冗談を言って!」

 

泣きながら必死に揺するメルアが目に入った。

 

必死に叫ぶメルア、そうか。意識を手放して・・・・。

 

「メルア、無事・・・?」

 

カズマの開口一番の言葉だった。

 

「気がついたんですか!?私は大丈夫です!カズマさんはもっと身体をいたわるべきです!そんなんじゃ何時か死んじゃいますよ!?・・・・私の気持ちも考えてくださいよ!!」

 

涙目で捲くし立てるメルアに呆気に取られてしまう。

 

普段の彼女からは想像出来ない剣幕だ。

 

「今降ろしますねっ!落ち着けるところに行ったらもっと言いたいことあるんですから覚悟してください!!」

 

「いや、メルアさん?今外したら落ちますけども・・・」

 

シートベルトで何とか席にぶら下がっているカズマのシートベルトの金具を弄りだすメルア。

 

カズマの抗議は弱弱しく、メルアの剣幕に比べれば可愛い物だ。

 

「大丈夫です!支えられますっ!!」

 

そう言って外した。

 

普段なら支えることも出来たろう。だが、足場が不安定な上に殆どぶら下がった成人男性を少女が受け止めるか?と聞かれたら否と答えよう。

 

ましてや、カズマのパイロットスーツは血を吸って重くなっている。

 

「きゃっ!」「おわっ!」

 

 

 

 

 

やわらかい何かが触れ合った。

 

 

 

 

 

血を流しすぎたカズマは、眼前にメルアの顔があると深く考えずに乗ってしまったかと退こうと腕に力を込めた。

 

「すまん、今の退くか「っ!?」っ」

 

驚くことに叫んだメルアはカズマを突き飛ばして見せた。

 

カズマは背中を強く打ちつけ、再び意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「捜索は行わない!?」

 

「何故ですか!?」

 

アキミとアケミがそう告げたカイに食って掛かる。

 

戦闘自体はフューリーの撤退で終わり、補給も済んでいる機体が殆どだ。

 

本部()の決定だ。本当なら俺だって飛び出して行きたいさ」

 

そう言うカイ、それは紛れも無い本心だ。

 

カイが知る中でクセのある鋼龍戦隊のメンバーに短期間で好かれ、教導隊が総動員で教えていたのだ。

 

教え子を無くした事と同じ。

 

「アキミ、そこら辺にしろって」

 

制止するリュウセイもまた表情を曇らせている。

 

「《グランティード》なら、見つけることが出来るかもしれないのに!」

 

「危険よ、皆一緒なの。トーヤ君!」

 

飛び出していきそうなトーヤをカティアが制止する。

 

トーヤも生きているとは思う、思いたい。

 

「大丈夫だ、アイツラは生きている」

 

キョウスケだけはそう言い切る。

 

「キョウスケ、根拠はあるの?」

 

尋ねるエクセレンのテンションも低い。が、こう言う時のキョウスケの言葉は案外当たるのだ。

 

「ない。分の悪い賭けだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し遡る、そのメルアがカズマを支え、受け止めようとして失敗。

 

カズマがメルアに覆いかぶさるような状態になったのは言うまでも無い。

 

そして、重要なのは何が触れ合ったか。

 

そのワンアクションがメルアの怒りを吹き飛ばして冷静にさせた。

 

そう、唇だ。

 

「カズマさんとキスしちゃった・・・初めて、ファーストキスだったのに・・・・」

 

呆然と呟くメルアが現実に戻るのはホンの数秒後だが、渓谷の一部に凭れる様に停止す

る《ヴォルレント》の近くに小さな洞窟があったのは幸いだった。

 

「ハッ!カズマさん!?」

 

今度は大の字になっているカズマに駆け寄り、状態を確かめる。

 

左前頭部を切っているだけ、クスハが何時か教えてくれた知識が役に立った。

 

《ヴォルレント》のコックピットに戻り、救命ツールを取って戻る。

 

「死んじゃったり、しないですよね?」

 

急に心細くなった。

 

最初、両親を失った悲しみと崩壊した瓦礫に埋もれてこのまま死ぬのかと恐怖に怯えていた自分を助けたカズマを思い出す。

 

「大丈夫ですよね!?」

 

後で知ったカズマの記憶障害、自分が何者かと思い出せないと笑っていた彼は恐らく不安にさせないために笑っていたのだ。

 

「また、冗談言って皆さんの真ん中で・・・」

 

涙が溢れてきた。

 

視界が潤み、良く見えない。

 

あの食堂の一幕を思い出す。

 

知らず知らずの内にメルアはカズマに頼っていた、慕っていたと自覚した。

 

「トーヤさんとカルヴィナさんの仲を持って・・・くずっ」

 

思い出してしまう最初の顔合わせ、噛み付くカルヴィナと言い返すトーヤ。

 

そんな二人の間に入って行ったのはカルヴィナが言う楽観的でも、トーヤの言う記憶が無いからへらへらしていられる訳でも無い。

 

メルア自身も腕には痣がいくつも出来ている。カズマほどでは無いにしても被弾の影響は受けている。

 

自分の手当ても行うメルア、当たり前のように一緒にいたカズマが安心させてくれる存在だと自覚した。

 

「大丈夫、生きているよ。」

 

「カズマさぁぁん!!」

 

「ちょっ!?」

 

(メルア)は、(カズマ)を失う事が怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、アシュアリークロイツェルに居た。

 

顔を合わせたばかりのカティアと話すことも無く、軽い自己紹介だけを済ますと後は何も離すことは無い。

 

ぼうっと外眺めていると《ベルゼルート》が稼動テストの前倒しで飛び立っていくのが見える。

 

(また、あの時の・・・・)

 

夢だと気がつく、父と母が顔を覗かせてカティアも両親と談笑している。

 

この夢は最初頃に何度も見た悪夢だ。

 

襲撃している機動兵器、焦ながらも必死にパニックにはなるまいとする職員が、逃げるように促す。

 

「あの!お父さんとお母さんは!?」

 

夢の中の私は、そう尋ねた。

 

「きっと大丈夫だから!」

 

そう言って先導していた職員を通路ごと閃光が飲み込んだ。

 

「いやあああ!」

 

カティアの絶叫し、私はぶつかった。

 

天井が崩れてきた、視界が暗転する。

 

 

 

 

「お父さん?お母さん!?」

 

暗闇の中に両親が立っていた。

 

私は急いで駆け寄ろうとする。

 

けれど、まったく前に進まない。足も動かない。

 

「何処に行くの?置いていかないで!お母さん!お父さん!!」

 

ゆっくりと離れていく両親に叫びかける。

 

私の懇願に返答は無く、両親は遠ざかる一方。

 

父がある方向を指差して何か言っている。

 

「何!?聞こえないよ、置いていかないでよ!お父さん!お母さん!!」

 

必死になった、漸く動いた足は酷く重い。

 

それでも私は走る。

 

両親に追いつきたくて、泣きじゃくりながら走っていると優しい声音の知っている声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「大丈夫、置いていったりしないから。ここに居るから」

 

 

 

 

 

泣き疲れて寝てしまったメルア、相当疲れていたんだろう。

 

カズマは、無茶をさせてきた《ヴォルレント》を見上げていた。

 

「悪い、無茶させたな。助かったよ、救助されたらロブ博士に頼んで修理してもらおう。お前も片足じゃ嫌だろう?」

 

月の光に照らし出される《ヴォルレント》からは返答が無い。

 

当然といえば当然だ。

 

フラフラしながら戻るとメルアが魘されていた。

 

「置いていかないで・・・・お父さん!お母さん!」

 

「大丈夫、置いていったりしないからここに居るから」

 

そう言ってメルアの頭を撫でるとメルアの表情が和らいでいった。

 

「・・・・確かに置いてはいけないよな。」

 

不謹慎だろうが、メルアがいつも以上に可愛いと思えてしまう。

 

「つり橋効果って奴だ、深い意味は無いんだよ!」

 

そう言って自分を納得させるとメルアの脇に座って空を仰ぐ。

 

上手く発見されることを願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

グ=ランドンの思惑は見事に外れたと言って良い。

 

カロ=ランを嗾け、ジュア=ムを向かわせて二機とも撃墜し両者を殺す。そのシナリオはカズマの“敵も庇う”と言う奇妙な行動によって崩された挙句、マナは生きて帰ってきた。

 

今はシャナ=ミアが呼び出し、報告を聞いている最中だろう。

 

「あの男さえ消えれば、あんな小娘を言いくるめる事ぐらい・・・」

 

机に座り、思わず独り言を漏らした。

 

シャナ=ミアは、カズマが意識を回復したことを喜んでいたが鋼龍戦隊に参加している

と知った時も疑って居なかった。

 

「操縦者は生かして捕らえるよう、これは厳命です」

 

その一言だけは覆ることはなかった。

 

玉座機のパイロットとカズマ、この二人がフューリーの未来を切り開く上で必要だと。

 

シャナ=ミア皇女殿下はそう信じて疑わない。

 

口に出さすとも態度がそう語っている。

 

気に食わない!

 

「何、主導権は我らにあるのだ。焦ることはあるまい」

 

「カロ=ランか。どういう意味だ?」

 

スキンヘッドの男性、カロ=ランが不気味な笑みを湛えていた。

 

「面白い報告があってな、敵《ヴォルレント》とそのパイロットを回収したそうだ。皇女の命で男のほうは治療された後、一緒に回収された小娘と同じ牢に入れられるそうだ」

 

ソレを聞いたグ=ランドンの表情は歪んだ笑みに変わった。




感情を書くって難しい。

カズマ、三途の川のほとりでパズル。

記憶を八割がた回復、完全じゃない。走馬灯で見てきたみたいな?ネットでそんな漫画があるとか無いとか・・・其処から拝借。

メルア、キレる。

いくらマイペースな彼女でも怒るだろうと思ったので、書いといてアレだがコレでメルアなのか不安です。多分、メルアは怒らせてはいけない子。

ヒロイン的イベントで今回フラグ回収と思いたい、作者は思う。

夢でのショッキングシーン。

きっとこんなこともあったのだろうという妄想。幾ら何でもお客を放置して逃げ出す職員は居ないと思う、管理職辺りが回ったはず・・・・そんな余裕はあったのか?ないだろうな。

フューリーが回収。

グ=ランドンが思っているより早くシャナ=ミアが指示を出して回収。

本作のシャナ=ミアさん、メッチャ行動派。

向かったのは融和賛成派の一派、マナも向かっています。次回辺りから本格的にマナも絡ませていく予定。

部下に信頼されない上司って結構無視されたりする。

カロさんの後に部下が報告に来るくだりは省きました。
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