上司が猫耳軍師な件について   作:はごろもんフース

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九十九、同士と会う

……。

「♪」

 

 おはこんばんちは、九十九でございます。

現在私の前には、痴女が居ます。

相手は、漫画でしか見た事もない大きなお胸をR-18にならない程度まで極限に布の面積を減らした服を着ているお人です。

というか、服のせいでコスプレ感が凄い……いや、文若様達の服も十分にコスプレっぽいのですが。

 

 そんな痴女のお方の名は、陳珪(ちんけい)さんです。

字名を受け取っており、漢瑜(かんゆ)さんと呼んでいます。

元は豫州沛国の相であったのだが、黄巾の乱の最中に華琳様に下った経緯があったりなかったり。

華琳様の軍の中でも珍しい背の高いお人で、体系もありとても色気のあるお姉さんに見えます。

実際にはお子さんがお一人居るご年齢と言う事で、熟女と言うのもおかしな見た目であるが、熟女です。

 

こんにちは、漢瑜さん。

「えぇ、こんにちは、九十九様」

……何かご用事でしょうか?

 

 にこにこと人の良さそうな笑みを浮かべて、此方を見てくる漢瑜さん。

何と言うか、元々の地位といい煙に巻く話し方と言い全てにおいて胡散臭い。

まさにザ・腹黒い悪女と言うのが似合うなと思える。

実際に華琳様含めてうちの上司以外にも警戒をしているお人達が一杯います。

 

「ご用事がないと話しかけちゃいけません?」

いえいえ、別にそんな事はありませんよ?

「それでは……何故、後ろにお下がりに?」

 

 あちらが一歩近づけば、此方も一歩後ろに足を進める。

後ろ向きに歩く私に、にこやかに近づく漢瑜さん。

傍目から見れば、何してんだコイツ等と思われるかもしれませんが、知ったこっちゃありません。

この人は嫌いではありませんが苦手意識があり、どうしてもこうなります。

 

「ふふふ」

……困った。

 

 ずりずりと歩くと、何時しか背が壁に張り付き逃げ場がなくなった。

それでも相手の方も知ったこっちゃないと近づき、放漫なお胸が自分の胸辺りにむにゅっと当たり形を変えます。

その際に漢瑜さんは、此方の体に優しく触る様に両手を付け、見上げる形でお顔をぐぐっと近づけました。

何とも恋人同士のような遣り取りですが、此方は本気で困っております。

 

 何と言いますか、子供をお一人生んでるだけあって母性が凄いのですよ。

優しく包むような、此方を労わろうとしているような雰囲気に浮かべている笑みが外れそうになる。

何もかも捨てて甘えたいと思ってしまう。

この人は最初に会った時から、こういった行動を良く取って来る。

だから苦手です。

 

「甘えればいいのに」

……ごめんなさい。

 

 相手の瞳の中の自分が見える位に顔が近づく。

その中の瞳の自分は、半分笑っていて、半分泣いてるような表情をしていた。

 

「あまりにあまりだと、壊れてしまいますよ?」

私は、出来た人間ではないので……一度崩れれば甘え切ってしまうので。

それに十分に甘えさせて貰ってますし、これ以上は過度と言う物です。

「もう……」

 

 実際の所、何の才能もない自分に対して華琳様達は時間をわざわざ割いて下さっている。

本来であれば、そんな事をせずとももっと才ある者を指導すれば効率がいい。

それでも自分の目標に対して、チャンスをしっかりとくれているのを甘えさせて貰っていると言わずに何と言うのか。

 

「まったく……強情な子ね。そういう子には……」

え?……わひゃひゃひゃひゃ!

「くすぐりよね♪」

 

 そんな遣り取りをしていれば、漢瑜さんがくすくすと笑い、顔を胸に付け抱きしめる形を取ったと思えば、脇をくすぐり始める。

壁に背を付け、既に懐に入り込まれている為にこの行動を阻止する事が出来ない。

持っていた書簡を床に落として、慌てて漢瑜さんの肩を掴んで引き離そうとするも、くすぐったさと位置のせいでそれもままならなかった。

 

ひー……げほげほ。くっくっく。

「はい、お仕置き終了」

 

 結局、思う存分遊ばれた後にようやく解放された。

その時には体の力が入らず、そのまま床に倒れるように崩れ落ちる。

 

お、お仕置きと言うか……拷問では?

「実際に拷問としても使われてたりするもの」

ふっ……この楊徳祖、どのようなことをされようと屈するものか!

「……♪」

ごめんなさい!屈します!今、食べたい物はプリンです!

 

 そんな事を床に倒れ込みながらかっこつけるも、漢瑜さんが舌なめずりし手をわきわきとさせて近寄って来るので屈します。

最初会った時にラッキースケベ的な演出をされて、床に押し倒されて胸に顔を埋めると言うイベントがあったのですが、その時以来ずっとプリンが食べたいなと思っています。

 

「またそれですか……初めて会った時も言ってましたわね」

えぇ……プリンはいいものです。

 

 あの時は凄かったですよ。

皆が集まる広場で挨拶がてらのラッキースケベ。

文若様が吠えて、子廉様が絶叫、子考と公明が混ざろうとし、華琳様は呆れる。

まさに阿鼻叫喚でここは地獄かと思いました。

 

『遺言はある?』

荀彧様、プリンが食べたいです。

『……なんて?』

プリンです。卵と砂糖で作れるお菓子でぷるんぷるんの美味しい奴。

『……はぁ』

 

 キャーキャーと言いつつ抱きしめる漢瑜さんとじたばたと暴れる自分。

そんな攻防を数分ほどした後に、助けられた自分を見下ろすのは鬼と化した文若様。

自分の部下の破廉恥な行動に躾ですね!と思いつつも、思った事を口にします。

そうすれば、文若様含めその場がしんっと静まり、暫くした後にため息を付かれて終わった。

 

「色気よりも食い気……本当にもう」

食わねば生きていけず……食わねば色気も来ずです。

 

 一番大事で真っ先に必要なのは食欲である。

食無くして色も無く、餓死寸前の状態で食べ物と美女どっちを取ると言う話だ。

未だに自分の中で食に関しては、餓鬼状態である。

あれも食いたい、これも食いたい、もっともっと食いたいだ。

 

それで……本当に用事はないので?

「ふふふ……言付けがお一つ」

 

 床にだらりと寝ながら、見上げる形で聞いてみれば、漢瑜さんがしゃがみ込んで『困った子』と此方の鼻の頭をぐっと指で押してきます。

何と言うか、完全におもちゃと言うか、ペットと言うか、子供扱いと言うか……そんな感じだ。

 

喜雨(すぅ)から伝言が……」

なんと!なんて言ってました!?

「ぶー……態度が違いませんこと?」

しょうがないじゃありませんか、彼女は心の友ですよ?ビバ農業!人類よ!畑を耕せ!農業に力を入れるのだ!

 

 漢瑜さんの口から出た喜雨と言う人物にテンションが上がります。

寝転がっていた姿勢からびしっと立ち上がると、両手を天に掲げたのちに片膝をついて祈りを捧げます。

彼女の口から出た人物は、漢瑜さんのお子さんで陳登(ちんとう)字名は元龍と言う。

 

 彼女は政事よりも農業に力を入れている同士様であり、話が合うこと合うこと。

あまりに合い過ぎて会話が尽きない上に、あれやこれと農業に関して改良をすべく暴走した結果、華琳様から会う事を制限されてたりもしている。

 

会う事が許されたという事ですよね!

「えぇ……華琳様の許可を頂き、前に言っていた土の改良の件で成果の報告とこれからについて話をと」

それでは会いに行って参ります!お土産は必要ですかね?何がいいかな……やっぱり食べ物?それとも秘密裏に作っていた農産物かな?それとも……。

「……はぁ、それと喜雨は客室のほうで待ってますわ」

ありがとうございます!あぁ……時間が勿体ない!それでは、これから部屋に戻り準備をして参りますので!これにて!ドロン!

 

 それだけ言うと、床に落とした書簡を全て拾って全速力でその場を離れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

楊修、ただいま参上いたし……ました?

「遅い」

えー……?

 

 お土産を持って、元龍さんが待機しているお部屋へと向かったのだが……扉を開けてみると中には華琳様含め上司の文若様と更に子廉様まで揃っていた。

 

失礼しました。

「失礼するな!」

な、何で居るですか!?仕事は!?

「あんたを監視するのも仕事よ!」

えぇー……。

 

 てっきり、元龍さんと二人っきりと思っていたのでこれは面喰らう。

というか、二人っきり禁止とか……どれだけ警戒されてるのでしょうか。

 

「普段はいいのに食べ物関連になると金銭感覚が……」

「話し込んで脱線しまくるでしょ!」

「普段は信用しているけど……農業に関しては二人とも信用は出来ても信頼は出来ないもの。未来の知識ででたらめな事をするでしょう?」

「ごめん。ボクも抑えられる気がしないし、また暴走しそうで」

 

 上から子廉様、文若様、華琳様、元龍さんである。

何と言うか負の面で信用されているようで何よりであった。

 

「それで……その農作物は何かしら?場内で見た事もないのだけど?」

えーと……その、あっ!部屋に資料を忘れました!取ってきます!

「待ちなさい!その農作物は置いて行きなさい!」

 

 内緒で城の片隅で作っていた作物を、華琳様がにっこりと『また報告なしに何かしやがったな?』と怒りのオーラを纏って見てくる。

てっきり二人きりと思っていただけに、これはまずいと踵を返す。

まぁ、見られた以上逃げてもしょうがないのだが、こればかり恐怖から逃れる為の本能だ。

 

ぐえー……。

「置いて行きなさい!」

 

 走ろうとするも此方の行動を良く把握しているのか、一歩早く文若様のタックルを背に喰らう。

力は大した事もないが、走ろうとしたタイミングと不意を突かれて、その場に倒れ込んでしまった。

そして、逃げられない様に倒れ込んだ自分の背に座り込み、頭をぺしぺしと叩かれるのであった。

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