上司が猫耳軍師な件について   作:はごろもんフース

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何かお気に入り件数が凄いことになってる……。
桂花が好きな人が多くて嬉しいわ。
あっ……最初の半分は春蘭サイドです。


桂花は、はなさない

 

「……」

「……何してるんだ?」

 

 目の前の桂花を見てそんな感想しか出てこなかった。

桂花は、草むらに隠れじっと道端を見続けている。

道端に何かいるのかと思い同じように覗いてみるも、そこには何もない。

いや……正確には桃と籠が置いてあった。

 

籠は木の棒で不自然に浮き上がり、籠の下に桃が置いてあるのだ。

何処からどう見ても罠だ。

馬鹿馬鹿と言われる私でも分かる。

 

「なぁなぁ」

「うっさい、なんだっていいじゃない!」

「いや、だってお前凄い怪しいぞ?」

「むむむっ……はぁ……」

「……?」

「……最近」

 

 きゃっかんてきに言ってみれば、桂花もようやく喋りだす。

その時の顔が酷く悔しそうにしていたが、何なのだろうか。

そんなに私に話すのがいやか。

 

「九十九の奴が私に馴れ馴れしいのよね」

「はぁ?」

「私の方が上だって忘れてるんじゃないかしら?」

 

 意味が分からない。

先ほどの罠と今回の話がどう繋がるのだろうか。

 

「それで?」

「一回懲らしめて私のほうが上って事を知らしめてやらないと」

 

 胸を張って答える桂花に私より馬鹿なんじゃないだろうかと思った。

九十九の奴を見ていれば分かるが、奴は桂花を凄く好いている。

桂花の無茶に答え、罵倒にも耐え、桂花の悪口も言わないし馬鹿にもしない。

明らかに他の男と違い、桂花を敬っている。

 

 しかし、この目の前の同僚はそれが分かってないらしい。

私より賢いくせに変なところで抜けている奴だ。

そもそもこんな罠に掛かるわけないだろうに……。

 

「きた!」

「……」

 

 そんな事を考えていれば、九十九の奴が歩いてきたらしい。

桂花がうきうきしながら手に持った紐をぎゅっと握り締める。

そんな桂花を呆れた視線で見るが、桂花は気づかなかった。

 

「……なぁ」

「なによ……てかまだ居たの?」

「あいつ、本当に九十九か?」

「はぁ……? 頭だけでなくて目も悪いわけ?」

 

 色々と酷い事を言われるが目は物凄くいい。

いいからこそ、本当に前から歩いてくる男が九十九なのかと不思議に思った。

 

「……いやだって、あの男笑ってないぞ?」

「何言ってるのよ?」

 

 気になっていた点を言って見れば、小馬鹿にしたような視線を此方に送ってきた。

そんな視線を受け、怒鳴ろうと思ったが大人な私はぐっと堪えた。

流石私だ。

 

「九十九って何時見てもふにゃ~と笑ってるだろ」

「……あぁ、そういうこと」

 

 ようやく私が言いたい事が伝わったらしい。

まったくここまで言わないと分からないとは、駄目な奴だ。

 

 私が知る九十九は何時もふにゃっと笑っていてお調子者で少々馬鹿っぽい奴だ。

しかし、前から来る男は顔こそ九十九だが笑っていない。

しかもキリっとした表情で真面目に竹簡を持ち歩いていた。

あいつが九十九だと言うなら、嬉しそうに笑いながら軽く跳ねながら歩く筈だ。

 

「仕事をしてる時とか一人の時は大概あんな顔で真面目よ」

「そう……なのか?」

「そうよ。むしろ一人で笑ってたりしたほうが怖いじゃない」

「……そうだな」

 

 そう言って桂花は少し眉を潜め言ってきた。

それもそうか、確かに秋蘭とかが部屋で一人で笑っていたと考えると怖いものがある。

それにしても普段が普段だから余計に今の九十九に違和感を感じる。

 

「引っかからないわね」

「引っかかるわけないだろ」

 

 暫し待っていれば九十九は不思議そうに桃を取ると首を傾げていた。

勿論、籠の下から手を伸ばすなんてことはせず、籠を取り外してからだ。

暫しその桃を眺めるも少し口元を緩め、そのまま持っていってしまった。

 

「……アイツっ!!」

 

 桂花が怒るも今回ばかりは九十九に同情した。

あいつもこんな上司相手に何時も大変だろうに……。

 

「そうだ」

「何よ」

 

 そこまで考えて天啓が私に舞い降りてきた。

 

「九十九の奴を私の部隊にくれ!」

「へ?」

 

 いい事を考え付いた物だ。

あいつは他の男と違い、私を馬鹿にしない。

計算を間違えても優しく教えてくれるのだ。

何より自分の部隊に専属の文官の一人や二人ほど欲しいと思っていた。

流石だ、私。天才だな!

 

「というわけでくれ」

「……」

「男が嫌いなんだし、いいだろ」

 

 

 そう言ってみれば桂花は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば……俺って転属あるんですか?

「何よ、いきなり」

 

 ふと休憩中に気になり聞いてみる。

元々は曹操様が荀彧様の男嫌いを克服する為に寄越したのだ。

荀彧様の男嫌いが緩和するか、治すのを諦めた時、俺は用無しとなる。

その場合、また書庫に戻されるのか、はたまた何処かに転属になるのか気になった。

 

「書庫に戻りたいなら、華琳様に打診するわよ」

いや、気になっただけです。

「そうねー……私の男嫌いが治ったらじゃないかしら」

……それって何時になるんですかね。

「言っておくけど治す気ないわよ」

そうですよね。

 

 そう言って荀彧様は試しに作って持ってきたドライフルーツに手を付けて食べる。

どうやら俺の転属はないようだ。

幸せそうに頬を緩め、ドライフルーツを食べる荀彧様を見てこのままでもいいかなと思った。




《桂花は、はなさない》
春蘭に話さないのか
九十九を放さないのか

どっちなんだろうか?
ちなみにどっちにしろ、まだ恋愛感情はないけどね

《拾った桃》
無事にドライフルーツになり、持ち主の中へと戻りました。

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