上司が猫耳軍師な件について   作:はごろもんフース

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あれやね、荀彧をデレさせすぎた。
あと、主人公を少し活躍させすぎたね。
そこに違和感を感じてたので書き直ししました。
ちなみに、次回オリキャラ出ます。
この人が三国志で荀彧と共に好きなんです。


九十九、過去を語る

天気いいですね。

「喋らないでくれる? 妊娠するじゃない」

……。

「息しないでくれる? 孕むじゃない」

死ねと申しますか!?

というかなに、その神秘的な体。

「あと私から離れてくれないかしら」

スルーされた……ちなみに、どのぐらいですか?

「そうね……アンタの身長と同じ位の距離でいいわ」

ここ馬の上なんですけど、落ちますけど!?

 

 ハロー、九十九です。

現在、荀彧様と馬に相乗り中です。

お蔭で先ほどから荀彧様が不機嫌を通り越して危険な域に入っております。

 

「何で私がアンタなんかと馬に乗ってるのよ」

別に俺じゃなくていいですけど、その代わり夏侯惇様か他の兵士になりますよ?

「……………………………なら、いいわ」

そこまで悩みますか。

 

 馬の手綱を握ってる関係上、荀彧様は自分の腕の中で考え込んでいます。

どうしてこの様な状況になってるかと言いますと、戦場に借り出されました。

何でも、計算以外でも才能があるかも知れないので様子を見るとからしいです。

 

 それで何で荀彧様と相乗りなのかと言えば、この人馬苦手なんですよ。

乗れないわけではないのですが、力もなく身長もなく、馬を乗りこなせません。

乗っても振り回されるのが落ちと言う状況です。

 

 それに加え、現在黄巾党討伐の遠征中で急遽走ることも多々あります。

その際に荀彧様が付いて来れなくなるので補助として乗ってるという訳です。

オマケに体力もないですからね、この人。

 

「……それにしても馬に乗れるのね」

村に居た時は村から村へと荷物を運んでいました。

「それで乗れるわけ?」

はい、それなりに。

 

 何処までも続く荒野を眺めながら進軍を続ける。

敵が居れば忙しくなるが、居ない時はとにかく暇でしょうがない。

 

「ふ~ん……そう言えば住んでいた村が壊滅したって言ってたけど生き残りは居なかったのかしら?」

聞きにくい部分を聞いて来ますね。

「別に話さなくても良いわよ」

……何人かは居ますね。

「そう……全滅はしてないのね」

はい、何とか免れました。

 

 荀彧様の言葉に怒りはしない。

彼女の言葉の節々から村人を心配するものを感じるからだ。

この遠征で幾つか襲われて無くなった村を見た。

そういった事もあり、気になったのだろう。

 

残った人は、遠い親戚の下へと避難したり、隣の村に移ったりですね。

「アンタはしなかったわけ?」

……そうですね。

頼れる人も居ないですし、少々人を探してたもので。

「ふ~ん……人ね?」

あっ、ちなみに恋人ではありませんよ?

「誰も聞いてないわよっ!」

ぐふっ……!?

 

 位置が丁度良く、肘がお腹へと打ち込まれた。

意外にいい部分に入ったため、かなり痛むも何とか我慢し耐える。

 

ち、ちなみに……居候させてもらっていた所の娘さんです。

「居候?」

自分は、流れ者なので。

「変な姓だと思ってたけどここの生まれじゃなかったのね……いろいろと納得したわ」

 

 いつもがいつも変な事ばっかりしてる上に現代の言葉を使っている為か同僚から変人と思われている。

それは荀彧様も変わらないのだろう。

納得し頷いている上司を見て苦笑した。

 

流れ流れて、三ヶ月位経った時ですかね。

村に滞在して腰を下ろしたのは……。

「何……アンタ自分の国で何かしたわけ?」

……したわけではないです。

むしろ巻き込まれたというべきですかね。

「ふ~ん……そう」

本当に興味ないんですね。

「何で男のアンタの生い立ちを私が知らないといけないわけ?」

いや、上司ですし……部下の事は知りませんと。

というか、聞いたのはそっちじゃないですか

「部下とは冷めた関係を目指してるのよ。あと詳しく話せとは言ってないもの」

常に心の中、冬ですね。男性限定で。

あと屁理屈屋め!

 

 腰に手をあて胸を張る荀彧様。

慣れたと思ったけど、まだまだのようだ。

いつか心を開いてくれる時がくるのだろうか?

それにしても……心を開いてくれた荀彧様か。

 

『九十九……疲れてない? 休憩取って良いわよ』

……きもい。

「なに想像してるのよっ!」

がふっ!?

 

 少し想像してると声に出していたようで、綺麗なアッパーカットが放たれた。

小柄な体からは想像出来ない力に抗えず、顔が空を向く。

というかこの人、力あるじゃないか。

 

イタタタタ……。

「それで……なんでその人を探してるのよ」

あぁ……約束を破ってしまいまして。

「約束?」

えぇ……。

 

 荀彧様の言葉で思い出す。

あの子が私塾へと旅立つ時に交わした約束。

 

『お母さんの事よろしく頼んだ。九十九』

『任された……しっかりな、()()』 

 

 真名を託してくれて、信頼してくれたのに約束も守れなかった。

時々届く文を見て楽しみ、彼女の卒業が近づいた時だ。

村が賊に襲われて壊滅した。

 

 たまたま隣の村に荷物を届けて帰る時、遠くの自分の村に上がっていた黒煙を鮮明に覚えている。

馬を駆けさせ、村に戻るも家は焼き払われ、人は殺され血と焼ける臭いが充満していた。

まだ賊が居るかもしれないのに走り、家に戻り崩れ落ちる。

三年近くお世話になっていた家は崩れ、その中に彼女の母親が居た。

周りが焼け、熱いのに彼女の母親の手は冷たかった。

 

「……アンタも仕事してたんだし、しょうがないんじゃない?」

……。

その後の事はあまり覚えてません。

気付けば、仲良くしてくれていた商人の人の所で寝てました。

「寝てた?」

定期的に来てくれていた商人の人が俺を見つけてくれたらしくて。

そのとき、自分はひたすら死体を担ぎ、地面を掘り埋めていたらしいです。

 

 最初の荀彧様の言葉に答えず、そこで一息ついて心を静める。

思い出すだけで気分が悪い。

何よりこの先の事を考えると怖くてしょうがなかった。

 

「……続きは?」

彼女に謝らないと……知らせないとと私塾へ文を飛ばしました。

しかし、彼女は私塾を出た後でした。

彼女が私塾を出て、村に向かうまでの時間と自分が寝ていた時間を比べると、どうも入れ違いになったみたいです。

それからも私塾に連絡があれば、俺の居場所を知らせて欲しいと言っているのですが……。

「連絡無しと」

 

 荀彧様の言葉に静かに頷く。

話をよく聞けば、彼女は村がなくなったことを知った後、後輩に付き添い旅に出てしまったらしい。

その話が、俺の文が届いてからなのか……届く前の話かは分からない。

俺の文が届いてからで連絡がないと言うなら……そういうことなのだろう。

 

「言っておくけど……同情しないわよ」

はい。

「今の時代、アンタみたいな人で溢れてるんだから……」

分かってます。

「ところで……アンタが何時も笑ってるのって」

あははは、こうでもしないと落ち込むんです。

無理に調子を上げて笑ってないと下を向いてしまいます。

「……」

 

 今の世界、理不尽で死んでいく人が多いのだ。

俺だけが不幸なのではない、むしろ俺以上の人も多いだろう。

理不尽はなくならない、けど……減らす事は出来る。

 

期待してます。荀彧様。

「ふん、人任せにしないでアンタもしっかりと働きなさい」

はい。

「伝令!! この先で戦が起きています!」

「戦ってる相手の旗は!」

 

 そんなことを話していれば、兵士の一人が此方に走ってきてそう伝えてくる。

荀彧様は真剣な表情で伝令にそう聞いた。

 

「旗は十文字です!」

「十文字……間違いないのね?」

「はっ! 最近この辺りで活躍している義勇軍だと思われます!」

「……華琳様は何て?」

「荀彧様にお任せするとのことです」

「九十九!」

はい!

 

 荀彧様の鋭い声に、馬を駆けさせ前へと出る。

 

「遅い!」

「落ち着きなさい、春蘭」

「……肩!」

はい。

 

 前に出れば今すぐでも駆け出しそうな夏侯惇様を曹操様が抑えていた。

そんな夏侯惇様に荀彧様はチラリと横目で軽く視線を送るだけで済ませ、此方を向く。

その声に従い、少し頭を下げれば荀彧様は肩に登り、肩車の姿勢で体を安定させる。

安定させた事を確かめたら背筋を伸ばし、荀彧様が高い位置から見下ろせるようにした。

 

「下ろしなさい、駆け足」

はい。

 

 暫く高い位置から戦場を見ると頭を軽く叩かれそう言ってきた。

その言葉に首を下げ、荀彧様を馬に戻すとそのまま少し戻り曹操様の下へと寄せる。

 

「優秀な将が居るようで辛うじて賊と戦えているようです」

「なるほどね、それで私達はどうすべきかしら?」

「はっ、幾ら将が優秀とはいえ、兵士はそうでもありません。ここは相手が義勇軍に気を取られているうちに横から攻撃を仕掛けるのがよいかと」

「助けるのね?」

「義勇軍も民です」

 

 暫く曹操様は荀彧様をじっと見つめ頷くと夏侯惇様のほうへと向いて指示を出した。

 

「春蘭、聞いたわね?」

「はい! 蹴散らしてやります!」

「待ちなさい……良い? 横から付いてそのまま抜けるのよ?」

「そのまま戦わないのか?」

 

 駆けようとする際に荀彧様がそう言えば、夏侯惇様は不思議そうに首を傾げた。

 

「二つの勢力が戦ってるのよ? その場で留まれば場が混乱するでしょう! そのまま突き抜けて大きく回り込み、相手の後ろから攻めなさい!」

「おぉ! なるほど、そういうことか! 季衣、行くぞ!」

「はい!」

 

 荀彧様が呆れた様子で答えれば、夏侯惇様は納得し嬉しそうに武器を振り回し馬を駆けさせる。

それに付いて行くのは、曹操様の親衛隊隊長の許緒(きょちょ)様……仲康(ちゅうこう)だ。

二人が駆け出すとその後ろを心得ているように彼女達の部隊の人が一斉に駆け出す。

急な指示だというのに即座に動けるのは、夏侯惇様の事をよく理解しているからなのだろう。

 

……自分達は何を?

「九十九はそのまま桂花に付いて、指示の出し方などを学びなさい」

御意。

「桂花は続けて指示を……義勇軍の詳細や私達が味方であると知らせを余裕があれば、後ろから援護して頂戴」

「はい、お気をつけ下さいませ。華琳様」

 

 そう言うと、そのまま曹操様も夏侯淵様などを引き連れて自ら戦場へと駆け出す。

それを深く深く息を付いて見送った。

 

「しっかりと働きなさいよ。九十九」

分かっています。

「働かなかったら蹴り落すから」

 

 最後にそう言って締める荀彧様に苦笑が漏れる。

こんな所でも実に彼女らしい。

 

……ところで十文字の義勇軍って有名なんですか?

「そうね……最近活躍をしてる所ね」

 

 何やら先ほどの行為で相手を知ってる風だったので聞いてみた。

相手の事を知らなければ対応できる範囲も狭まる。

 

劉備玄徳(りゅうびげんとく)……何でも天の御遣いと組んでる義勇軍として有名ね」

劉備……天の御遣い。

 

 その言葉を聞いて気持ちが深く落ち込んだ。

落ち込んだ理由が二つ。

一つ目は、天の御遣いの部分だ。

自分がこの世界に紛れ込む原因となった北郷一刀(ほんごうかずと)

その人が天の御遣いだと貂蝉(ちょうせん)から聞いていた。

自分の苦労の元となった人物でもあり、少々思うところがある。

 

 二つ目は、劉備という名前にある。

劉備には特に思う事はない。

それでも落ち込むのは、彼女の経歴に関わる事だ。

曹操様の元に身を寄せていたのは、このため……劉備の軍と近づく為である。

なにせ……自分が探している少女は、彼に一度仕える子なのだ。

真名を預かりながらも約束を破ってしまった相手。

劉備軍最初の軍師にして、親思いの人――『徐庶(じょしょ)』。

彼女もやはりあの中に居るのだろうかと、この後の事を考えて胸が痛んだ。




~なぜなに三国志 トキドキ間違いもあるよ!~
《徐庶元直》
今回はちょろっと出てきた子について
撃剣の使い手で、義侠心に厚く友人の敵討ちを引き受けるが役人に捕らわれる。
その後は、友人に助けられるも、思うところがあり、剣を捨て学問に励む。
いわば、戦える軍師さんである。ロマンやね。

母親思いの人で劉備の軍師をしてるさいに曹操に母親を人質に取れられ魏へと下った人。
その際に劉備に諸葛亮を推薦していた。
劉備が諸葛亮を呼べと言った時に『会い行かなければ連れて来れないと』と進言した。
これが有名な『三顧の礼』へと繋がる。
特にこれと言って目立った事をした人ではない。
それでも優秀で人材豊富であった魏軍でもしっかりと出世していた。

演戯での活躍
魏軍の5000に対して2000で打ち破り。
25000の軍勢に対しても見事に叩きのめしている。
程昱(風)の策による徐庶の母親の筆跡を真似た手紙を受け取り、泣く泣く魏軍へと行く。
しかし、この事を知った母親は自殺し、徐庶はそのことで曹操のために献策をしないと誓う。
赤壁で龐統が仕掛けた連環の計の真意に気づきながらもこれを見逃し、龐統の助言により、赤壁を離れ、被害を免れた。

恋姫での徐庶
名前だけは出ている。
何故か朱里や雛里からは元直ちゃんと字よびである。
あとはお菓子が得意らしい。

《実は……》
実は……恋姫で活躍する春蘭こと夏侯惇。
実際は戦下手でした。
史実では後ろで後方支援をしていたらしいです。
むしろ弟の夏侯淵のほうが戦が得意でした。
恋姫のように猛将ではなかったりします。不思議だね。



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