IS‐インフィニット・ストラトス‐ 蒼の軌跡   作:FULCRUM

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第2話

 

その後は特に何事も無く授業が終了した。

一夏の専用機が届くのがまだ先だったり、箒が束さんの妹だと分かって少々騒がしくなったりもしたが、別にどうでもいいので割愛。

あ、昼食はもちろん食堂。当然男二人は注目の的………え?三人じゃないのか?

一人……箕鏡は女生徒を連れて消えてったよ。

それはともかく、結構な視線にさらされたものの敢えて顔を不機嫌そうなものにしていたのが効いたのか、誰も話しかけてこなかった。

 

その後の五時間目は昼食後特有の満腹感に伴う眠気に悩まされたが。授業自体が暗唱できるほど覚えた事項の繰り返し、眠くならないわけが無い。

まあその眠気も見透かされて、ありがたくも出席簿を喰らったわけだが。

 

 

閑話休題

 

 

今は放課後。俺は保安担当だとかいう先生に連れられて校舎を歩いていた。

なんでも、IS学園に専用機を持ち込む際はある程度のデータを渡しておく必要があるらしい。主に個体識別に用いるためのもので、展開時にどうしても放出されるエネルギーの波長とか、その時に発生する磁場とか、レーダーに映ったときの影の形とかその他もろもろを申請しておかないとアンノウンもしくは敵対勢力と見なされて攻撃されるらしい。

以前勘違いでIS学園を襲撃した時にある程度のデータは取られているらしいが、まだ不十分ということで絶賛連行中というわけだ。

 

「……ここです」

「ありがとうございます」

 

10分ほど歩いて着いたのは、『第十五整備室』と書かれたプレートのある部屋。

周りは装飾なんて一切ないコンクリートの白い壁だが、長年触られているのだろう。扉の付近はどこか色がはげているし、壁や床もところどころ欠けている。

学校が出来て大体10年ぐらいとはいえこれぐらい損耗しているということは、割と普段から使われているような施設みたいだな。

 

「では、この円の中に立ってISを起動させてください」

「わかりました」

 

中に入って誘導された先には、黒色の何かで書かれた直径3メートル程の円。

円に接する部分から様々なコードが出て、周辺にゴチャゴチャと置いてある機械に複雑に繋がっている。

…こうやって見ると絡まってるみたいだけど、きっと違うんだろうなぁ……

 

「……あ、言い忘れてました」

「なんですか?」

「さっき教えてもらった放出エネルギーの波長とか計測するのはいいんですけど、私のISには機密保持のために電子的攻撃を防御するシステムが搭載されてますので、取れなかった情報は無理して取ろうとしないでください。最低でもそちらの機器が破損しますし、最悪コイツが自爆するんで」

 

まあ自爆しても母体の謎金は損傷しないし、俺も謎金の発生させたフィールドに守られて無傷なわけだが。

 

……なに?フィールドって何かって?

謎金は俺の体に触れている場合に謎の防護フィールドを展開するんだよ。もちろん理由は不明。詳しいことはわかってないが、ISのシールドバリアーと同じような物だ。

ってか、多分シールドバリアーがこのフィールドのパチモンだと思う。

んで、このフィールドに加えて今の俺には外部からの電気的干渉を妨害するフィールドが展開されていたりする。このフィールドと電子防御(アクティブ)が連動してるから、ハッキングと認定されると事前に用意してある情報(ウイルス含む)を大量に送りつけ、処理能力をパンクさせる。場合によってはコンピュータ基盤に過電流を流して回路を焼き切ることも……

「やっぱ蒼聖はいろいろ特殊だから勝手にスキャンとかされると面倒なんだ」、とは束さんの言葉だ。

 

「それに、間違ってもコア周辺のエネルギー供給回路やフラグメントマップ、ましてやコアの識別データまではアクセスしないでくださいね。IS学園が消し飛んじゃうので」

 

コア周辺の情報を読み取ろうとするのは「明確な敵対行動」とみなされ「攻撃に対するカウンターアタック」として「自機破壊による物理的機密保持」が実行される。一切のパーツを残さないために爆発の威力もジュール値で8桁ぐらい違うんだよね。

もちろんこの爆発にも俺と謎金は耐えられるんだけど。

 

「……わかりました。他にアクセスしないでいたほうがいい場所はありますか?」

「あとは基本的にアクセスしようとすると警告が出るので大丈夫です。してほしくないところはこっちで拒絶しますので」

 

警告を無視して無理矢理スキャニングするとその時点で0.1秒の自爆タイマーが作動するらしいし、その警告画面にも書いてあるからさすがにやめるはずだ。

俺も機体いじってるときに何度か遭遇してヒヤヒヤしたが、起爆しなかったら問題あるまい。

……さすがに怖くなったから「人間の限界反応速度と同じタイマーとかほとんど自爆ボタンと同じじゃないですか」と束さんに突っ込んだが、笑って流された。

マッドって怖いわー。

 

「わかりました。では展開してください」

「はい」

【蒼聖、武装の並列展開機能をオフに設定し一次移行(ファーストシフト)モードで起動】

 

思考で指示を出す。イメージインターフェイスを通じてその思考を読み取った蒼聖がすぐさま展開作業を開始。

数瞬を要して光の粒子が身体の表面を覆い尽くし、次の瞬間には光が弾けて蒼聖が展開状態で出現する。

青と水色の中間のような薄い青を主体に白のスポットペイントが入った装甲が手足に装備され、肩にスラスターと姿勢制御翼を装備した固定ユニット、さらに左腕を肘まである銀色の巨大な籠手『アサルトシールド』が覆い隠す。

本来ならここで右手にビームカービンライフル『ライトニングVer.2C』が展開されるのだが、今回兵装の展開はキャンセルしてあるので出てこない。背中にはスラスター兼独立行動ユニット『IMU』が四機出現し、背中に刺さるように装着される。

……展開の前に「了解」みたいな簡単な返事でも返してくれると嬉しんだがな。

 

【…展開確認しました。スキャンを開始します】

 

真上のスピーカーから声が聞こえると同時に目の前の空間ディスプレイが大量のウインドウで埋め尽くされる。

……うん、さすが世界最先端。使っている処理装置も半端じゃないようでシステム一個一個のスキャン開始から完了までが短い。

それなりに自信がある俺の反応速度を超えてくれているので、ログを見ながらどこをスキャンしているのかを追跡するとしよう。

……っと、そこは駄目。そこのシステムはTCの第二種機密だから。

 

【……!ハッキング!?】

「なんだと!?」

「取られると困るデータを取られた場合はこっちから侵入して消去しますんで。主にTCの機密関連は自分としても流出されると困るので」

「流出なんて…」

「無いとは言い切れないでしょ。IS関連の情報はただでさえ貴重なのに、所属している俺が言うのも何ですが秘密しかないTCの技術となればどんなに小さい情報でもアウトなことをしたって欲しがる連中は居るでしょう?」

「………」

 

今日会った組織が信用できるわけもないしね。

それにしてもミスったな。対電磁干渉フィールドに頼りっぱなしでプログラムそのものにプロテクトをかけるのを忘れていた。

一々ハックして消すのも面倒だし…先回りしてプロテクトするか。

 

【………】

「………」

 

無言の空気が続くが、双方忙しいのでどうしようもない。

……あ、またやられた。

 

【蒼聖、あちら側のディレクトリXDG-11574のデータを消去。接続ラインはHSG-1005を使用】

【……っ】

「………」

 

あれ?また拒否したデータがスキャンされた…?

もう、データの消去は結構面倒なんだから手を煩わせないでくれるかな。つーか、三回リトライしたら自爆するって警告したじゃないか、もう忘れたのか?

 

【もう面倒だから対ハッキングシステムをレベル1で起動。同時にデータ消去を実行】

 

【………っ!】

「…………」

 

よし、プロテクト完了。

……ん?データ消去に失敗……アクセス失敗?

接続ラインが切断されたか。

しょうがない、G-564とFSE-448791を経由してラインを再構成……よし、消去成功。

 

【………くっ!】

「………………」

 

……スキャンのペースと総容量から考えてそろそろ終わってもいいと思うだけどな。

まだなのか?

 

【………うぅ】

「……………」

 

……呻き声…?何故に?

 

【……負けた。生徒に負けた…………】

「…あの、まだですか?」

「あ、あぁ。もういいぞ」

 

よし。

 

【装着解除。待機状態に移行】

 

展開した時と同様に数瞬光に全身が包まれ、それが霧散すると同時に展開する前のIS学園の制服に戻る。

……はぁ、肩凝った。展開した直後のあの十センチぐらい浮いてる感じが未だに慣れないんだよな~。飛んでるときはいいんだけど、あの浮いてる感じが慣れない。低高度でもいいから飛んでたら大丈夫なんだけど……なんでだろう?

 

「ありがとうございました」

「……お疲れ様でした」

「負けた、生徒に負けた……」

 

そのまま部屋を出る。

先生が一人orzってたけど、何故だろう?

 

 

 

 

「あ、教室に教科書忘れちまった。取りに行かないと」

 

ふと喉が渇いたので近くの自動販売機に寄ってバッグから財布を出した時、あの特徴的なタウン〇ージモドキの教科書がなくなっていることに気付いた。

別に復習するわけでも予習するわけでもないが、置いて帰ったことが千冬さんにバレたらまた出席簿をくらいそうだ。

そう思って出口に向かっていた身体を反転させた。

 

…ああ、言い忘れていたがIS学園は全寮制だ。普通なら俺も寮の一室に入るはずなのだが、いかんせん女性しか使えないと言われていたISの操縦者を育成する学園。男性が居ることを考慮して作られていないのでとりあえず部屋割を再編成するまでの一週間ほどは入寮が出来ない。

よって自宅から通う予定だったのだが、自宅からここまでは新幹線とかを乗りついで3時間という明らかに通学には向かない立地だったので、一週間ホテル住まいをする予定になっている。

箕鏡と一夏がどうするのかは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、丁度いいところに居てくれました!」

 

教科書を取りに戻ると、教室のドアで例のスイカこと副担任、山田真耶先生に鉢合わせした。

……うん、いろんな意味で眼福だわ。

 

「何か御用でしたか?」

「え、っと、その……」

 

けど、そんなことを表に出さないように発言しながら足を止める。

目を見てしまえば男の性として目線が下に行くのを抑えられる、と思って真っ直ぐ山田先生の目を見て話すと、山田先生がどこか挙動不審になり始めた。

 

「そんなに見つめられると、困るというか、その……照れるんですが……///」

「あぁ、すいません」

 

頬を赤く染める山田先生。何この子可愛い。

けど、生徒に真っ直ぐ向き合って『照れる』とか言ってて先生なんて出来るんだろうか?

 

「え、えっとですね、部屋割が決まりました!」

「…えっと、部屋割については再設定に一週間かかるからそれまで無理じゃなかったんですか?」

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な措置として部屋割を無理矢理変更したらしいです。……これが部屋番号でこっちがキーです」

 

なになに……部屋番号は……1503?

 

「これってどこですか?」

「そうですね……たぶん五階だと思いますよ」

「いや、それぐらい俺だってわかりますよ………」

 

寮って五階もあったっけ……?

まぁ行けば分かるか。

 

「その部屋はVIP用の休憩室だ」

「あ、織斑先生」

 

教室の中からさらに現れたのは千冬さ、織斑先生。

…え、休憩室ってどういうことですか?

 

「言った通りだ。学園は日本という海に囲まれた地形にあるが故、来たはいいものの気候などで帰りの飛行機が出ない可能性がある。そういうときのためにある部屋だ」

「なるほど、了解しました」

 

IS学園に来るような人間を外のホテルに泊めるわけにはいかないんだろう。

……必要なのはわかるが学生寮に作るなよ。せめて教師寮だろ。

 

「家具やキッチンなども完備しているから安心しておけ」

「荷物はもう運び込んであるそうなので、普通に生活してください」

 

普通に生活してくださいって……

……ちょっと待て、荷物は一週間後に届くように俺の方で調整しておいたのになんで届いてるんだ?

 

「私が用意しておいた。着替えとその他諸々をな。生活に不便はないだろう」

「……ありがとうございます」

 

この人ちょっと大雑把なところがあるから不安だけどな。

一日おきに洗濯すればいいや、って2セットしか私服を準備してなかったりしそうだ。

…え?それのどこがダメなのかって?雨降って乾かなかったらどうするんだよ。俺は生乾きの服だけは着たくない。

 

「では、私達はこれから会議なのでちゃんと寮に帰ってくださいね?」

「……ホテルのキャンセル料、学園に請求しないとな」

 

荷物も早く送ってもらわないと。

あれの中には俺のオタク生活を支えるハイスペックPCがあるんだ。一応スマホでも代用は可能だしノートPCも持ってきてるから問題はないが。

 

「ケチなことを言うな」

「学園が予定にないことをしてくれなければ発生しなかったお金なんですけど?」

「…ぐぬぬ」

「ほら、会議なんでしょ。さっさと行かないと間に合わなくなりますよ」

 

反論できずに廊下へ消えて行く先生ズ。

織斑先生の目が「後で覚えてろ!」って感じだったけど、気にしたら明日学園に来る気がなくなるのでスルー。

 

「お、一夏も寮行くのか?」

 

話を終えて教室に入ると、ちょうど中から織斑が出てくるところだった。

 

「ああ。少なくともここよりは静かだろうからな。志遠は」

 

言われてから周りを見渡す。

 

「あ、織斑君と弥代君が話してるよ!」

「あの二人、もしかして…」

「え、どういうこと?」

「だから………――」

 

……何か不愉快な称号を付けられそうな気がする。

ここはさっさと離脱すべきか。

 

「……忘れ物の教科書を取ったら俺もすぐ帰るさ」

「そうか。じゃあまた明日」

「おう、明日な」

 

一夏と別れ教室の中に入って俺の机へ向かう。

教科書は………ん?

 

「はい、これでしょ?君の忘れもの」

「あ、どうも…」

 

机の中に手を突っ込んで探していると、目の前に教科書が差し出される。裏を見ると相変わらず汚すぎて俺しか読めない字で俺の名前が書いてあった。

間違いなく俺のだ。

 

「えっと……、君は確か」

「セイラ、セイラ・アンクライド。一緒のクラスにいたけど覚えてる?」

「ああ、たしか趣味がお菓子作りで、特技がヴァイオリンのオランダ出身だっけ?」

「そう!すごいね、全部覚えてくれてるんだ!!」

「……これぐらい普通じゃない?」

 

親が勝手に人を呼んでほぼ強制的に叩きこまれたスキルだがな。

理由は「もし自分の息子として表に出すことがあったときのために」とかだろう。

まあその恩は離縁状という仇で返したわけだが。

 

「普通は覚えられないと思うけど……?」

「そういうもんかねぇ、誰でも練習すれば出来るようになると思うけど…」

 

俺も前世で英単語を死ぬ気で覚えてから記憶力が上がったのを実感したことがあるから、これも努力の賜物なんだろうし。

 

「ま、それはともかくありがとう。じゃあ、俺は部屋に戻るから…――」

「…ね、ねぇ、志遠君の部屋ってどこなの?」

 

どこか興奮した面持ちで詰め寄るように問いかけてくるアンクライドさん。

頬が紅いのは恥ずかしいからだと思う。……思いたい。

 

「ん~。知りたければそれなりの代償を払ってもらおうかな」

「…わ、私に払えるものなら……」

 

体クネクネ、顔真っ赤。めっちゃかわえーんだけど初めて会った男にこんなことを言われてそんな反応してたら悪い男に引っかかっちまうぞ?

それこそ俺みたいなやつにな。

 

「……そうだな。これから――」

「こ、これから!?」

 

 

「校内を案内してくれないか?」

 

 

体でも要求するかと思ってたか?んなわけねーじゃん!

これがハニートラップだったらどうすんだよ。

 

「…よろこんで!」

「ならよろしく。時間が無いから生活に必要な購買部とかだけでいいよ」

 

時間があれば自分で散策しておきたいが、少なくとも今週はそんな時間が取れそうにない。

その間の生活必需・生活消耗品とかはそろえないといけないからね。

 

「くっ!初日で早速出し抜かれるとは……」

「ヨーロッパ人恐るべし…!」

「まだだ!まだ終わらんよ!!」

 

よし、周りの女子の声が聞こえてきたのでとりあえず突っ込ませてもらおう。

最後の1人、ちょっと落ち着け。あと出し抜かれたってなんだよ。

…知らないほうがいい?なら知らなくていいや。

 

「じゃあ、行きましょう!」

「ちょ、引っ張らないで!ちゃんと歩けるから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが売店。歯磨きとかシャンプーとかの消費物はここで大抵そろうよ。営業時間があるから気を付けてね」

「何時までかわかる?」

「確か、朝8時から夕方6時だったかな?」

「“かな?”かよ……あとで確認しておくか(ボソッ」

 

 

 

 

「ここがコンビニ。ここまでなら申請すれば夜間も外出できるって先輩が言ってたよ」

「先輩ってことは、部活?」

「うん、オーケストラ部に入ってるんだ」

「ふぅん。弦楽器は結構好きだから機会があれば聞きに行こうかな」

「是非!!」

 

 

 

 

「この辺りはカフェとかおしゃれな飲食店がある一角だよ。今は閉まってるけど、お昼は結構混むみたい。けど、食堂のほうがおいしいとかってクラスの友達が言ってた」

「流石IS学園、学生生活も充実してるな(無駄な方向に、だと思うがな)」

「……いつかお昼をここで――」

「ん?何か言った?」

「何でもないですっ!」

「…そう、ならいいけど」

 

 

 

 

「ここが教員棟。何かない限り勝手な侵入は厳禁だって。ま、入っても特に何かがあるわけではないんだけどね」

「ふむふむ。平和な学園生活を送っていれば来ることはないと」

「まあそうだね」

 

 

 

 

「で、ここが学生寮。一階は食堂とかになってるんだけど、昼食のときは営業してないから気をつけてね。校舎の食堂はあいてるけど」

「……それは気をつけないとな(ということは休日の昼は自炊か……)」

 

「……さて、案内してあげたんだから、部屋の番号教えてもらうよ!」

 

 

「わ、わかったっ、わかったからそんなに顔を寄せんなっ!」

「あ……ご、ごめん!」

 

一気に詰め寄ってくるアンクライドさん。

もう顔が鼻までしか見えない距離まで近寄ってきている。それに気付いたのか、後ろに大きく一歩下がる。

二人とも後ろに下がったためかなりの距離が開いてしまったが、まぁ必要以上に近いよりはいいだろう。大は小を兼ねるというし。

アンクライドさんの顔が赤いのは、きっと恥ずかしいからだ。

 

「ふぅ……俺の部屋は1503。無理には聞かないけど、アンクライドさんは?」

「セイラでいいよ。私は1021号室。……気軽に遊びに来てね?」

「行かねーよ。男が女性の部屋を理由も無く訪れるわけにはいかないだろ」

 

女三人寄れば姦しいとかいうけど、この学校はほとんどが女性で構成されている。ゆえに姦しさも半端なものではない。

それに噂や人伝の伝聞は尾ひれがついて行くのが普通。その結果大騒ぎになる可能性も大きい。

いい方向ならいいが、悪い方向に行くと学校全体からハブられることになる可能性もある。男の部屋を訪れた、男を部屋に入れたなんていいネタになるから軽々しくするべきではない。

 

「そうかな……」

「君だって変な噂は立てられないほうがいいだろ?」

「それはそうだけど……でも私は志遠君なら―――」

「じゃ、お休みセイラ。また明日教室で」

「……うん、また明日~」

 

…?どこか表情に疲れがあるような気がするが……

うん、気のせいだな。むしろ疲れてるのは俺のほうだから気のせいだろう。

玄関に消えていく後ろ姿を見送り、学生寮を見上げる。

 

「上まで上るの面倒だなぁ……」

 

待てよ、IS学園ならエレベーターぐらいついてるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「階段五階分って駆けあがると結構クるよね…」

 

先の発言でわかると思うが、IS学園は予想を見事に裏切ってくれた。

一応エレベーターはあったのだが、家具搬入用の業務用大型エレベーターで人は乗れないとのこと。

日本政府の金の使い方は絶対におかしいと思う。

ってか業務用入れるなら普通の大型エレベーターでいいだろ。そして人が乗れないとか舐めてるとしか思えない。

 

「……言っても仕方ないか。部屋行こう」

 

織斑先生の話だと一番奥だったはず。1503、1503……

お、あった。

 

「……なんかここだけ違う」

 

これまでの扉は何というか、木で出来ていてどこか高級感があったのだが俺の部屋のドアはそれとは明らかに異なる。

まず、素材が違う。木であることは変わりないのだが、色が明らかに黒っぽい。俺の記憶が正しければ黒炭、じゃなかった。黒檀という結構レアな木材のはずだ。

次に装飾のレベルが違う。こういう感性的なことには自信がないのだが、それでも簡単に作れるような模様ではないことが良くわかる。

そしてこれが一番重要だが、隣の扉との距離が明らかに広い。正確にはわからないが、隣とその隣を見る限り大体1.5倍ぐらいの幅がある。

 

「わかりやすいぐらいVIPだな……それも最上位の」

 

ま、持ち上げられるのに悪い気はしないけど。

どうせTC関係者だからだろ。IS学園にも商品卸してたはずだし。

別に普通の部屋でいいんだけど…ないなら仕方ないね。さっさと中を確認しよう。

家具とかキッチンは完備していると言っていたけど、どのぐらいのレベルなのだろうか。

 

「……やっぱり広い」

「だろう?」

「のわぁ!!?」

 

扉を開けて中を確認。俺しかいないと安心して独り言をこぼした途端、真後ろから聞こえてくる声。

飛び上がってズザザザザッ、と下がっても仕方ないと思う。

 

「だ、だだだだ誰ですか!?」

「誰とは失礼な。お前のクラスの担任で、一年生寮の寮長だぞ?もう忘れたのか?」

「ち、千冬さん!?」

 

驚くべきことに、俺を後ろから脅かしたのはあの千冬さんだった。

……キャラに合わない行動とらないでくださいよ。

 

「私が冗談を言わないキャラだと思っていたのか?あと、ここでは寮長と呼べ」

「思ってました。だって子供の頃から冗談言ってるの聞いたことありませんし。了解しました、織斑寮長」

「……そう言えばそうか」

「で、何でこんなところに居るんです?寮長の部屋は一階だって相場が―――」

「ここの隣が私の部屋だ。誰かが通ったのを感じたのでな。こんな時間まで何をしていたかを聞くのと同時に脅かしてやろうと思ってついてきた。光栄に思え」

「光栄にって……まあいいです。こんな時間まで出歩いていたのは校内を案内してもらっていたからです。俺地図に疎いんで」

「……疎かったか?」

「疎いんです」

 

元から鋭い目をさらに鋭くさせて睨みつけて来る寮長。どうやら疑っているらしい。

…よし、ちょっと遊んでみよう。

 

「……(ニヤッ)」

「……!(ボンッ)」

 

……やべぇ!顔が赤くなるほど怒らせちまった!!

 

「すいません、シャワー浴びるんで出て行ってもらえます?」

「……ッ!?そ、そうか、なら失礼するとしよう!」

 

背中を押しながら強引に千冬さんを部屋から追い出す。

いくら鬼教官でも、いや、鬼教官だからこそマナーには細かいのが千冬さんの特徴だ。怒っていてもちゃんとした線引きは守る、昔からそういう人だった。

現にちゃんと出ていってくれたし。

 

「……さて、部屋に置いてあるもの確認するか」

 

えっと、家具一式にはやっぱ装飾があって無駄に高そう。冷蔵庫、キッチンは……ずいぶん本格的だな。……うわ、机もなんか装飾が細かい。これ欠けさせたりしたら大変なことになりそうだ。

……ん?このドアなんだ……って

 

「ベッドルーム……リビングにベッドが無いから予想はしてたが……」

 

置いてあるのがダブルベッドだとは予測できなかったぜ……誰か連れこめって言ってるのか?

 

「どこの高級マンションだよ………ん?」

 

寝室を見渡していたときにふと気にかかった。

この部屋、明らかに狭い。

 

……いや部屋の広さじゃなくて、リビングの大きさから考えた寝室の大きさよりかなり小さく作ってある。

つまり、空間的に余りがあるのだ。

 

「どっかに隠し部屋が作ってあるな……蒼聖、サーチだ」

【了解………発見、左方向48度に出入り口らしき空間を確認】

 

………そっちは本棚なんですけど……?

偽装のために置いてあったのか。まぁいいや、どけてみよう。

 

ズッ……ズズズズッ

 

「…わぉ」

 

本棚をズラした壁にはドアっぽい四角形の切れ目。ノブも何もないが、隠し部屋なら当然だろう。

えっと、どうやって開ければ………

 

「…これか?」

 

近くにあった手のひらサイズの四角形を押してみる。

たぶんこれが何らかのインターフェイスだと思うのだが……

 

ガシュッ!パシュン!

「……ですよねー」

 

出てきたのはテンキー。明らかにパスワード入力です本当にありがとうございましたぁっ!

 

「そりゃあそうだよな。これはたぶんセーフルームだから簡単に侵入されたら意味ないし」

 

ハッキングして開けてもいいけどめんどくさいしいいや。見なかったことにしよう。さて本棚を戻して……っと。

でも頑張ったなIS学園。VIPルームとはいえセーフルームまで作るとは……

 

「……色々過剰だなこの部屋………」

 

今ある家具に俺の持ってくる物を合わせても結構な空間が余る。ちょっと無理すればもう一人ぐらい住めそうだ。

 

「待てよ……?隣が千冬さんの部屋だって言ってなかったか?」

 

それなんて防犯システム。

ってか、さっき気配で誰か来たのがわかったって言ってたから誰か連れこむのなんて不可能じゃないか。そんなことするつもりはないが。

 

「……疲れた。今日はさっさとシャワー浴びて寝よう。そうだそうしよう、そうするべきだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side セイラ・アンクライド

 

ヤッホー!みんなのヒロイン、セイラさんだよ~♪

……え?呼んでない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………チッ

 

 

 

 

 

私はセイラ・アンクライド。

IS適正が普通より少し高くて、祖国オランダの選考にうまくのこれたおかげで、故郷から遠く離れた日本にあるIS学園に来て所謂留学生をやってるんだけど、女性にしか使えないはずのISを使える男子ということで大騒ぎになってた三人が同学年で入学してきてくれた。

 

今までずっと女子校に通っててあんまり男子と一緒になる機会が無かったから、最初はどう接していいかわからなかったりもしたんだけど、ほかのみんなも同じみたいでどこか遠巻きに見てた。

特に弥代志遠君。彼はSHRで迫力満点の一喝をしたから、近づくのはおろか目線すら合わないようにしている始末。

 

まぁ普通はそうだよね、怖いし。一部の人は敵意を持ってるみたいで険しい顔で見てるけど。

でも私はその二つとは全く違う。その一喝を聞いて、不覚にもときめいてしまった。

 

だってさ、今の男尊女卑時代で女性に向かって意見できる男性すらほとんどいなんだよ?こんな変わった……ゴホン、貴重な人を放置しておくなんて持ったいないじゃない。これは是非ともお近づきにならないと!

と思ってたんだけど、やっぱり怖かった。

だって、話しかけて「うるさい」とか言われたらもう話しかけられないじゃない?それでみんなと同じように機会を窺ってたんだ。

 

まあ結局、放課後まで話しかける機会はなかったんだけどね。

それで仕方なく帰ろうとしてたときに、志遠君の机の中に教科書が置きっぱなしになっているのが見えた。

 

「……(これは使える!)」

 

そう思って教科書をネタにちょっと志遠君と話したんだけど、自己紹介のことをしっかり覚えてくれてた。

これってもしかして……って思ったから、敢えて言うことを聞くって言ってみたんだけど、結局校内を案内して終わってしまった。

どうやら私の勘違いだったみたい。…名前を覚えてもらえたからってその人にとって特別だなんて、調子に乗ってたんだろうね。本人もそれが当然みたいな言い方だったし。

 

「でも、これで一歩……」

 

ほかのみんなよりは先に行くことが出来た。

 

「このまま仲良くなって、あわよくば……フフフッ」

 

私にはあのセシリアさんみたいに専用機を持っている訳じゃないけど、ISが使えたからって志遠君に好かれるわけじゃないし。

 

「折角見つけたいい人なんだもの。そう簡単には諦められないわ」

 

なんか押しに弱い感じだったし、明日からはもっと積極的に行かないと!

 

「じゃあ、お休みなさい。浅海さん」

「………今までのセリフ、全部聞こえてるからね」

 

………―――

…お休み、浅海さん。

 

 

 

「……弥代君を狙ってるのがあなただけとは思わないことね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side レイロード・箕鏡

 

 

やあ諸君、俺はレイロード・箕鏡、転生オリ主だ。

……なに?説明しろ?

いいだろう、今ので理解できないなら説明してやるのも力を持つものの務めだからな。

 

転生前、俺は普通の中学生だった。高校受験を推薦で決めてから持て余した時間を消費するためにライトノベルと呼ばれるものに手を出してみたんだが、最初の一冊目<IS・インフィニット・ストラトス>がとても面白かったから後は一気にのめり込んでいった。他にもいくつか買ったし、春休みはずっとライトノベルを読んで過ごしていたんだが、そんな楽しい時間ほどすぐに終わる。

あっという間に入学式の日になってしまった。正直不満だったがラノベ数冊をかばんに忍ばせて通学。その途中バスに乗っていたんだが、これが事故を起こして俺は死んだ。

 

で、その後白い空間で目覚めたんだがその後は何と言うか……テンプレ?

実は俺の隣にいた奴が死ぬはずだったんだけど、死神が刈る魂を間違えたらしくて俺が死んだらしい、って自称神様が言ってた。

で、生きているべき魂が死んでいるといろいろ問題があるらしいので俺は別の世界で生き返ることになった。

あっちの不都合で殺されたからある程度の希望は聞いてくれるとのことなので、俺はISの世界に行くことにしてISが使えるようになることに加えて身体能力を上げてもらった。容姿は銀髪オッドアイでイケメン。あと、ISを一機作ってもらった。名前は『聖騎士』。もちろんチートスペックだぜ!

ほんとはゼロ魔とかの魔法も使いたかったんだけど、それは世界のバランスを破壊する可能性があるからって拒否された。

 

使えない神だ。

 

そういうことで『レイロード・箕鏡』というかっこいい名前でISの世界に転生した俺は、早速IS学園の受験場に侵入。置いてあったISに触ってISを起動できる二人目の男子ということで大騒ぎになった。

予想通りすぐに日本政府の人が来て、あっという間に専用機をくれて代表候補にしてくれた。急だったからか量産機の試作型になったけど、それでも専用機を持っているのには違いない。俺はまさしくエリートの中のエリートってわけだ。

寿命の関係から生まれたときからやり直すことが出来なくて篠ノ之箒とは関わりが持てなかったけど、一夏を叩きのめせば俺に靡くだろ。強い奴に惹かれそうなタイプだし。

セシリアは決闘で勝てばフラグは立つし、凰鈴音はクラス対抗戦で出てくる正体不明のISを一緒に倒せばフラグ立つだろ。シャルロットは同情すればイケる。ラウラもセシリア&凰鈴音戦の時に介入して倒せば大丈夫だろう。

 

ごめんね一夏君。君のハーレムは俺がいただくよ。

そう思ってIS学園に入学したんだが……

 

「えっと……さっきまで気絶していたせいで状況が良く飲み込めていませんが、弥代(やしろ)志遠(しおん)といいます。趣味はプログラミング、特技は特にありません。好き嫌いもそんなにないです。一人でぼーっとしていることが多いので、うるさくない程度に話しかけてください。弥代でも志遠でもお好きなように呼んでオッケーです。これから一年よろしくお願いします」

 

クラスに現sなく主人公の織斑一夏ともう一人、弥代志遠とかいう男がいた。

コイツ誰だよ!!?原作にはいなかったし……まさか俺と同じ転生者!?

まあ、いいか。邪魔になれば消せばいいだろ。なんてったって俺はチートオリ主だからな!

 

そして、授業が終わって放課後。

 

「あ、箕鏡君。ここに居ましたか」

「……山田先生?何か御用ですか?」

 

校内を探検していると、山田先生に声を掛けられた。

これは確か箒との同棲フラグ!よっしゃ!やっぱ俺はオリ主ってことだな!!

 

「箕鏡君の部屋なんですが、日本政府から特別に個室が用意されてます。これがカギです。確かに渡しましたよ」

「……え?個室?」

「えぇ、個室です」

 

日本政府め!余計なことを!!これで同棲フラグが立てられなくなったじゃないか!!

 

「………」

「…どうかしましたか?急に黙り込んで」

「いえ、何でもないです。ありがとうございました」

「それじゃあ気を付けて帰ってくださいね」

「はい。では、また明日」

 

校舎の中に戻っていく山田先生を見送り、渡された封筒を開けるとカードキーと紙が一枚出てきた。

 

「あれ?IS学園の寮ってカードキーだったっけ?確か普通の鍵だった気がするんだけど……」

 

もしかしてVIP待遇ってやつか!流石日本政府、よくわかってるね。

一緒に入っていた紙に部屋の場所が書いてあるんだろう。箒と同室になれなかったのは残念だが、どこかで挽回すればいいか。

えっと、場所は……――

 

「…………うそ、だろ……?」

 

IS学園の”外”のマンションだと!!?保護義務はどうしたんだIS学園!!

 

「…【注意:あなたはすでに我々日本国の戦力に組み込まれています。故にIS学園に通っていること自体が異例であり、IS学園寮への入寮は認められません。なので近隣のマンションの一室をお借りしました。セキュリティは万全ですし、家賃等は日本政府から出ているのでご安心ください】だと!?ふざけんなゴラァ!!」

 

俺は……俺はチートオリ主なんだぞ!!

 

「こんな扱いあってたまるか―――っ!!!」

 

 

 

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